<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
追記
五月二十三日大幅修正
サバイバアルファンとエタゼロファンの皆さんごめんなさい。
□■某マンション内にて
『それで、どこの国で始めたの?』
とある高級マンションで一人暮らしをしている青年に対し、一人の女性が電話をかけている。
アメリカから海原を超えてきたその声は、いい回線を使っていることもあってラグもノイズもなしに耳に入ってくる。
「えーと、君は?」
『私は黄河で始めたわ!アイライクチャイナアンドカンフー!』
「ああ、最近中国拳法の動きにさらに磨きかかってるよね」
つい最近、やっと個人で勝てたと思ったら、中国拳法の動きにシフトしてフルボッコにされた試合を思い出し、青年は憂鬱になった。
『それで、ケイはどこ?』
「……アルターだよ」
嘘が外道二人の口から洩れたら面倒になると判断し、青年ーー魚臣慧は正直に答えることにする。
『そう、なら私もそちらに向かうわ』
「えーと、無理しなくてもいいんだよ?反対側だし」
『大丈夫、すぐ行くわ!』
「あ、うん、わかった」
「あ、これ止めても無駄だわ。というか止めるの無理だ」と言うことを慧は理解し、そしてあきらめた。
その後いくらか雑談して、電話が終わった。
「はあ……」
通話が終わった後、慧はため息を吐く。
別に彼女のことが嫌いなわけではない。
ライバルや目標という認識はあるものの、最近までご近所さんとして一緒に生活していたし、彼女を人間として嫌ってはいない。
また、どこぞの外道鉛筆と違い、恋愛対象として「こいつだけはダメだ」とまで思っているわけでもない。
ただ、彼女といるとどうにも精神が削れるのだ。
彼女といい変態半裸といい、テンションファイターの連中は自分の中にリズムを持っており、それを変えないから付き合うほうが合わせざるを得ない。
大体二人きりで朝まで(ゲームをして)過ごすことになるのだ。
体力的にも楽ではない。
「はい、もしもしメグ?……ああ、うん、君もか。え?もって何って、あーうん、俺も始めたよデンドロ」
電話終了直後、別の女性からの、ほぼ同じ内容の電話を受けて、対応に苦慮することとなった。
……なおその後、両名とデンドロで合流して慧は胃を痛め、他の外道からは散々に煽られることになる。
加えて、リアルの悩みとは無関係な騒動に、<Infinite Dendrogram>で巻き込まれたりすることになるのだが、それはまた別の話である。
◇◆◇
□■アムニール・???
「ここだな。ここで間違いない」
男はアムニールのセーブポイント、<光輝の広場>にてぽつりとつぶやいた。
ゲームが発売された日、彼はその存在を知らなかった。
知っていたとしても、それが本物であると知るまでは買わなかっただろうが。
しかし、初日組から「このゲームは本物だ」という情報が伝わった。
「<Infinite Dendrogram>は可能性と、あなただけのオンリーワンを提供します」という、謳い文句とともに。
「ここなら、見つかるのか?俺の理想が、俺だけの理想が」
現実ではだめだった。
自分の求めたものを与えてくれるはずの人は与えてくれず、代替品を探しても見つからない。
ならばと仮想現実に手を出しても、代替品でしかない。
神ゲーと謳われたシャングリラ・フロンティアでも、
「ーー魂が、オギャっているぜ」
男ーーエターナルゼロもまた、このゲームをスタートする。
◇
同時刻、まったく同じタイミングでログインしていた人物がいた。
その人物は見た目は女性だった。
背は高く、引き締まった肉体をしていたが、間違いなく女性の体だった。
しかし、観察力に優れたものがいれば、理解できただろう。
外見こそ女性のそれだが、中身はまるで別物であるということに。
その立ち振る舞いが、暴力的な野生に生きる獣のような雰囲気は間違いなく女性のものではなかった。
「ここが、理想郷か……」
その人物はリアルとは違うハスキー声でそんなことをつぶやく。
サバイバアルというプレイヤーネームをしたこの人物は、理想を求めてこのゲームを始めた。
「ーーガイアが俺に、ロリを探せとささやいている」
この時、二人の変態がレジェンダリアに降り立った。
それがどのような結果をもたらすのかは、まだ、誰も知らない。
To be continued
次回は三日後に更新します。