<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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お待たせしました。
第二章、スタートです。
これからは週一投稿になると思われます。
今後ともよろしくお願いします。


爪牙を振るえ、獣共、
客観的に見れば親子連れ


 □【猛牛闘士(ブル・ファイター)】サンラク

 

 

「美味。やはりコーヒーはブラックが一番」

『……そうなのか』

「当然。ミルクや砂糖を入れるのは甘え」

「えっと。そこまでいわなくても」

 

 

 とある喫茶店では、俺は二人の人と食事していた。

 一人は、言わずと知れたレイ。

 俺のパーティーメンバーであり、リアルでは恋人。

 こちらでは銀髪で、魔法職のようなローブを羽織っている。

 もう一人は、随分とませたことを言いながら、コーヒーを飲む、幼女。

 蛇を思わせるような先が二つに分かれた長い舌を持ち、ところどころに鱗がある。

 銀髪は腰のあたりまで伸びており、瞳は炎を連想させる赤色だ。

 そんな一見すると、十歳の亜人にしか見えない彼女は、人間ではない(・・・・・・)

 彼女の名は、キヨヒメという。

 レイの<エンブリオ>であり、少女(メイデン)としての形態と、兵器(ウェポン)としての形態を併せ持つレアカテゴリーにして、ハイブリッドカテゴリーの存在らしい。

 中身がどうあれ、この見た目でブラックコーヒーはすごい違和感あるんだが。

 

 

「母上。コーヒーのお代わりを頼んでもよろしいですか?」

「はい、いいですよ。何杯でも」

 

 

 なんか、呼び名もすごいことになってるし。

 まあ、<エンブリオ>は<マスター>から生まれてくるものだから間違いではないんだろうけど。

 こいつのことを知ってもうリアル時間でも三週間くらいになるが、未だによくわからないことも多い。

 

 

 ◇

 

 

 俺達が【ロウファン】を倒してから、もうずいぶん経つ。

 現実時間でも一か月が過ぎた。

 その間に俺やレイにはいろいろ変化があった。

 二人とも上級職に就き、<エンブリオ>も第四形態にまで進化した。

 下級職は三つカンストしたしな。

 第四形態以降を<上級エンブリオ>と呼ぶらしいので、一線級に至ったと考えていいのだろう。

 

 

 ロウファンを倒した直後、特典武具の確認をして、ステラとともにアムニールに戻ってからログアウトした。

 ヘルプと、ステラから聞くところによれば、特典武具とは<UBM>討伐における最大の功労者に与えられるアイテムである。

 基本的に得られるのは<UBM>一体につき一つのみ。

 しかも特典武具は譲渡も売却もできない。

 他者に奪われることもない。

 特典武具は、例外なく<UBM>の性質を受け継ぎ、同じものは一つとしてないオンリーワン。

 ……この時点で、相当やばいよな。

 性能を見たときもはってなったし。

 装備攻撃力だけでも【シルバー・ブレット】より上。

 加えて、装備スキルも今使える(・・・・)ものが二つある。

 これを手にしたとき思ったね。

 「ああ、ここの運営ゲームバランスとか何も考えてねえな」って。

 閑話休題。

 ログアウトした後、二人とも睡眠をとり、起きてからログイン。

 そのまま俺はティックのところまで挨拶に行った。

 クエストはクリアになってたけど、話を聞かせるよう言われてたからな。

 お礼も言うべきかなと思ったし。 

 

 

 ティックは俺たちが討伐し、俺がMVPになったことを話すと、「そうか」と言った。

 その言葉には、どこか安堵するような響きがあった。

 そのあと、特典武具を見せるように言われた。

 ティック曰く、特典武具は通常のドロップアイテムとはまるで違うモノらしい。

 もとになった<UBM>の概念を核としてできるものであり、ロウファンの成れの果てである、ということを言っていた。

 近い設定なら何度か聞いたことあるな。

 もちろん別ゲーの話だが。

 「しゃべったりするのか?」と聞くと、「そういう特典もある」とのことだった。

 マジかよ。

 いきなり叫んだりしたら、ちょっと嫌だよなあ。

 いや、戦闘中はともかく逃走中や潜伏中とかに叫ばれたらマジで詰むから。

 そんなやり取りの後、クエストクリアの報酬ということで俺とレイはかなりの金銭をもらった。

 正直もらいすぎでは、と思ったがまあ貰えるものは貰っておいた。

 ……さすがに罪悪感があったので、金銭については無理やりレイに全額受け取らせたけど。

 いや、あれだけサポートしてもらえば、ね?

 効率考えたらサポート受ける一択なんだけど、だからといってそれへの罪悪感が全くないわけじゃないし。

 「また、作ってほしいものがあったら素材もってきてくれよ。作ってやるから」というありがたい言葉を受けて俺たちはティックのもとを辞去した。

 いい素材が集まったら、また来ようかな。

 

 

 ◇

 

 

 それから、俺はレイたちと狩りをしたり、討伐系や採取系のクエストを回している。

 時々ステラが加わることもある。

 索敵や隠蔽ができるから、結構有能なんだよな。

 特に採取系は、俺らのシラン知識も持ってくれてるので、非常に有用だ。

 俺とステラ二人の時は課題だった火力不足も、レイとキヨヒメのおかげで解消されてるし。

 割と隙のない構成である。

 

 

「質問。父上はコーヒーは飲まないのですか?」

『カフェインは、エナドリで十分足りてるから……』

「は?」

 

 

 おい、キヨヒメ。

 そういう目で俺を見るのやめーや。

 というか、ある意味生みの親であるレイのことはともかく、マジでなんで俺までその呼び方?

 <エンブリオ>は、<マスター>のパーソナルに基づいているから、俺たちのリアルについても把握してるってことか?

 まあ、実態はともかくとして、客観的に見ると……

 

 

 

『何か、本当に親子みたいだな』

「ほきゅっ!」

「母上!」

 

 

 今日も、いつも通り平和だ。

 クソゲーとか、なんだかんだ言ってもこのゲームは楽しい。

 リアリティがありすぎて血の臭いがひどいし、<アクシデントサークル>のせいか、そこにいないはずのモンスターが時折現れるが、あるいはだからこそ、俺たちはこの<Infinite Dendrogram>を楽しんでいた。

 こんな毎日がずっと続けばいいのに。

 --なんて、そんなフラグみたいなことを俺が思ってしまったからだろうか。

 

 

 ◇

 

 

 【旅狼】

 鉛筆騎士王:サンラク君、妹ちゃん

 鉛筆騎士王:ちょっとギデオンまで来て貰えるかな?

 

 

 ◇

 

 

 ……悪夢が、始まる。

 

 

 Open Episode【爪牙を振るえ、獣共、】




キヨヒメの食癖は、「火を通したものじゃないと食べない」です。
つまりジュースが飲めないし、サラダもダメ。
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