<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
本編はどうやっても間に合わないので、閑話入れます。
来週は本編更新します。
□■皇都・ヴァンデルヘイム付近
ドライフ皇国は端的に言えば、機械の国だ。
しかし、リアルの機械とは異なっているし、ロボットアニメのようなフィクションの機械とも実態が異なる。
人間の魔力を、電力などといった他のエネルギーに変換する動力炉を用いて、機械を運用するのが現実との差異。
そしてフィクションとの差異は、いわゆるロボットが存在しないことである。
皇国が作っているのはパワードスーツや戦車がほとんど。
特殊装備品の人型ロボットは原則この国にはない。
あるいは、のちに人型ロボットが産み出される日が来るのかもしれない。
しかし、今は
逆を言えば、例外といえるものが少しはある。
例えばロボット型のTYPE:チャリオッツの<エンブリオ>であったり。
例えばどこかに埋まっている遠い過去の遺産であったり。
--例えば、今ここを走っている一体の機体であったり。
『背後に地竜が一体、速度はこちらがやや上』
『了解』
「VAMOOOOOOOOO!」
機体の後ろから追ってくるのは、【三重衝角亜竜】。
特殊なスキルこそ持たないが、ステータスは亜竜の中でもかなり高い。
そして、それよりもわずかに速度で勝る、体高五メテルほどのロボット。
『近接用ブレード【火事刃】、展開』
それと同時、ブレードからケーブルが飛び出して、機体に接続される。
魔力を消費して【火事刃】に熱量が宿り、刃が赤く発光する。
そのブレードを構えて、【三重衝角亜竜】に立ち向かった。
そして、何度か交錯して、三本角の地竜が倒れ伏した。
直後、竜の体は光の塵へと変わり、ドロップアイテムだけを残した。
亜竜の中でもステータス最上位のモンスターが、機械仕掛けの人型に敗れ去った。
『どうやら、亜竜クラスでも相性次第では問題なく倒せるみたいだね』
『うん、操作性も悪くない』
機体のスピーカーからは二人の声が、ルストとモルドという名前の<マスター>の声が漏れていた。
この機体は、マジンギアではない。
そしてどちらかの<エンブリオ>そのものでもない。
【高位操縦士】ルストの<エンブリオ>であるヘパイストスが作った、【万死染紅】という名前の複座戦闘機である。
機械式特殊装備品の生産を能力特性の一つとする、TYPE:キャッスル・ルールの<エンブリオ>。
いまだ第四形態でありながら、いくつかの理由によってすでに亜竜級の戦闘能力を持つロボットを作ることができる。
のちに皇国最大のクランとなる<叡智の三角>でさえこの時はまだ達成できていないというのに、だ。
『でもルスト、本当に出て行っちゃってよかったの?』
『問題ない。
『あの設計図、僕の<エンブリオ>前提だから役に立たないと思うんだけど……』
そんな風に、彼らが話している場所ーーコクピットこそが【
TYPE:アドバンス、【双頭一心 オルトロス】。
複座コクピット兼、動力炉の<エンブリオ>である。
彼女らがいるコクピットの後部には赤い宝玉が取り付けられており、それが動力炉になっている。
機体そのものだけではなく、【火事刃】のエネルギーも賄っている。
これがなければ、ヘパイストスのみで亜竜クラスのロボットを作ることはできなかっただろう。
稼働時間に制限がないことも含めて、【万死染紅】は亜竜と同等の戦闘能力を誇る。
そして《操縦》をはじめとするジョブスキルによる強化を含めれば、その性能は軽く亜竜を凌駕する。
『モルド』
『そうだね、まだ夕食の準備までには時間があるし、このままテストと狩りを続けようか』
そうして、二人を乗せた真紅の機人は、性能テストを続行した。
この後、どこかのプロゲーマーと遭遇したりトラブルに遭遇したりと、二人にもいろいろあるのだが、それはまた別の話である。
□■ドライフ皇国内部・某所
「ねえフーちゃん?ほんとによかったの?」
「なにが?」
とある安普請の木造の小屋で、二人の人物が会話していた。
一人は、露出の多い恰好をした赤髪にメッシュの入った美女。
服装も赤であるため、ド派手という言葉でも言い尽くせないほどだ。
もう一人は、白衣を着て眼鏡をかけ、白衣を着た痩身の男性。
マッドサイエンティストという言葉がぴったりな外見だ。
「ルストちゃんとモルド君のことだよ」
「……ああ」
女性ーーAR・I・CAの指摘を受け、白衣の男ーーMr.フランクリンは納得する。
<叡智の三角>を脱退するものは多いが、ルストとモルドに抜けられるのは大きく思える。
カサンドラの危険予知を含めれば、<叡智の三角>最高のパイロットはAR・I・CAである。
だが、純粋な操縦技術ならばルストのほうに軍配が上がるかもしれない。
さらに言えば、彼女たちの<エンブリオ>はいずれも<叡智の三角>に多大な貢献をしてくれていた。
しかし。
「仕方ないわ。彼女たちの目的ーー巨大ロボット創造は果たされているんだもの。うちに留まる意味はないし、最後に手土産まで残してくれたしね」
「まあそうだねー」
その<エンブリオ>こそが彼女たちの脱退の理由だ。
もとより<叡智の三角>は自由な創造を目的とするクラン。
縛り付けることなどできるわけがない。
【万死染紅】をはじめとした設計図や、町の外での動作テストで獲得したドロップアイテムを残していった。
「それに」
「それに?」
「いつまでもあの子たちがいたら、クランが崩壊しかねなかったもの。このほうがよかったのかもしれないわ」
「あー」
AR・I・CAはフランクリンの言葉の意味を悟った。
問題があるのはルストとモルドの人格ーーではなく、彼女たちの<エンブリオ>。
特にヘパイストスは、その
最も、ルスト個人には何のデメリットもないため、欠点というより仕様といったほうがいいかもしれないが。
「さて、せっかくだし何とか試してみようかねえ、この設計図の案」
「オッケーフーちゃん。テストパイロットは任せてね!」
「ええ。お願いするわ」
そうして二人は今後のプランの詳細を詰めながら、本拠地を出て歩き出した。
……厳密に言えば、フランクリンが話すのを、AR・I・CAが聞いていただけだったのは、ご愛嬌である。
◇
後に量産型亜竜級ロボット【マーシャルII】を作り出すことに成功し、ドライフ皇国最大のクランに成り上がる〈叡智の三角〉。
彼らがそれを成し遂げるのは、もう少し先の話である。
しかし、彼らがその名をとどろかせた後も、とある二人組の<マスター>の大きな貢献はあまり知られていない。
彼らの協力と最後に残した設計図がなければ、【マーシャルⅡ】の誕生はひと月は遅れていただろうというのに、である。
ルストとモルド。
彼らが”双宿双飛”の二つ名で呼ばれ恐れられるのもまた、もう少し先の話である。
To be continued
余談。
オルトロスは、ある程度サイズ調整できるし、モルドがログアウトしても残すこともできる。
ただし、モルドがログアウトしてる間はサイズは変えられない。
・【通信士】
操縦士系統派生職、視覚強化等のスキルに寄ったジョブです。