<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~   作:折本装置

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再会は必ずしも喜ばしくないとは限らない

 □【猛牛闘士】サンラク

 

 

「ふきゅう……」

「……母上」

『大丈夫?』

「だ、大丈夫れす……」

『まだ無理っぽいかな……安静にしててね』

「は、はい……」

 

 

 俺は今、顔を真っ赤にして目を回して、寝転がっているレイを介抱している。

 隣には、そんなレイを心配そうな表情で見ている、キヨヒメがいる。

 さて、どうしてこんなことになっているのか。

 ぶっちゃけ言えば、要因はおおむね俺である。

 俺はジョブのレベルアップに伴うステータスと、<エンブリオ>の補正とスキルの効果の相乗によりそこらの亜竜クラスを優に上回るAGIを獲得している。

 さすがにレイをお姫様抱っこした状態では速度は落ちるが、それでもそこらの乗り物より断然早い。

 そう判断した俺は、竜車に乗るなどということはせず、自分の足で移動することにしたのである。

 なお、両手がふさがっているので出てくるモンスターは基本的に避けている。

 どうしても避けきれない場合は、レイが倒す。

 彼女の今のメインジョブーー【狙撃魔手(マジック・シューター)】で獲得した追尾系のスキルや威力を上げるパッシブスキル。

 これらとキヨヒメの火力が組み合わされば、AGI型のモンスターなら耐えられない。

 大体一発で死んでいった。

 むしろその後、ドロップアイテム回収のほうが手間取ったくらいだ。

 耐久型のモンスターなら耐えられるかもしれんけど、鈍足モンスターは俺の足で振り切れるからなあ。

 そんな感じで順調に進んでいた俺達だが、ついに一つの壁にぶつかった。

 お姫様抱っこされていたレイが、ついに限界を迎えたのである。

 

 

「……す、すみましぇん」

『いやいや、大丈夫大丈夫』

 

 

 以前、【ロウファン】と戦うためにお姫様抱っこした時もギリギリだったからなあ。

 それにレイがバグるのは今に始まったことでもない。

 むしろ今までよくもったよなという感じだろう。

 とはいえ、どうしようかな。

 レイにお姫様抱っこによる移動を提案した時、彼女がすごい乗り気だったから、他の案は考えてなかったんだよな。

 何らかのテイムモンスターとか買えばよかったかな?でも俺並みの速度で動けるモンスターってめっちゃ高いんだよなあ。

 三百万リルはあかんて。

 いくら狩りやクエスト順調にこなして、かなり儲かってるって言っても買う気にならんわ。

 

 

「提案。私が母上を背負っていけば」

『キヨヒメってAGIどれくらいなの?』

「五十。下級職カンストした程度」

『それだとあんま意味ないかな……』

「それなら、俺のバルドルに乗っていくクマ?」

『お、乗り物乗れるのはありがた……』

 

 

 あれ?

 今……。

 俺たち以外に、もう一人いた。

 だが、それを人間と呼んでいいのだろうか。

 いつの間にか俺の背後にいた、二足歩行の、黒い狼を。

 

 

『っ!』

 

 

 とっさに後ろを向いて、《瞬間装備》した武器を向ける。

 

 

『おっと、俺は怪しいものではないワン。ただの着ぐるみ愛好家ワン』

 

 

 着ぐるみ?

 いや、確かにモンスターにしては愛嬌がある。

 それに、モンスターがしゃべるとも思えない。

 最強格と思える<UBM>でさえ、しゃべってる様子がなかったし。

 手の甲が見えないからプレイヤーなのかNPCなのかもわからん。

 指名手配犯とか、正当防衛以外でNPCをキルすると指名手配されちゃうからなあ。

 

 

「俺はシュウ・スターリング。<マスター>ワン。よろしクマー」

 

 

 どうやら、目の前にいる着ぐるみの中身は<マスター>であるらしい。

 《真偽判定》はもっていないが、プレイヤーを騙るNPCがいるとも思えないし、事実だろう。

 実際《看破》したところ、名前は本当みたいだしな。

 ジョブは……【破壊者】?

 え、何そのカッコいいジョブ。

 AGI死にきってるSTR特化はロマンがあるよな。

 そういえば、さっきバルドルとか言ってたな。

 確か北欧神話の神だったはずだから、それがこいつの<エンブリオ>だと思っていいのだろう。

 とはいえ、信頼できる相手には見えない。

 

 

「質問。あなたは熊なの?犬なの?」

『おっと。これは狼の着ぐるみワン。最近までクマのぬいぐるみだったから、まだ癖が抜けてないワン』

 

 

 そもそも、着ぐるみ着たからって、そんな語尾をつける必要はないんだが……まあ、ロールプレイをいちいち指摘するのもあれだし、別にいいだろう。

 話を聞けば聞くほど、信頼できる相手には見えなくなってるんだが……。

 まあ、<マスター>っていうことのは間違いないだろうし。

 

 

『最悪キルすればいいか』

「父上、心の声が漏れています」

 

 

 おっとしまった。

 つい「<マスター>同士なら何しても罪に問われない」っていう本音が漏れてしまった。

 

 

『ははは、まあ初対面の着ぐるみが信用できないのもわかるが、ちょっと考えてみるワン。俺がお前らに何かするつもりなら、気づかれる前に背後から襲ってたはずワン』

『確かに』

 

 

 ぶっちゃけ声かけられるまで気づけなかったからな。

 王国、変人多すぎでは?

 いや、変人というより達人の類かな?

 俺みたいにVRゲームをやりこんでるタイプか。

 --あるいは、リアルでの戦闘経験があるタイプか。

 おっと下手に詮索すんのはマナー違反だな。

 

 

『信用されないのは、仕方ないワン。でも俺は、単にお前らを町に送り届けたいだけワン』

『……じゃあ、お願いします』

『おう、頼まれたワン』

 

 

 まあ見るからに変人だが、多分悪い人ではないんだろう。

 

 

 

『ところで、やっぱりサンラク達はレジェンダリアから来たワン?』

『そうだな』

『その面とか、全部<エンブリオ>ワン?』

『そうだな。<エンブリオ>のスキルのせいで、他の防具きれないからな』

『……フィガ公といい、レジェンダリアはこんなのばっかか』

 

 

 おいコラ。

 こんなのってどんなのだ。

 俺はレジェンダリアのそこら中にいる変態とは違うぞ。

 俺は単に効率と強さを重視した結果として、鳥の覆面をつけて、上半身裸で、首輪付けてて、腕輪付けてて、蛇革のブーツ履いてるだけのただの……ただの……結局ただの変態じゃねえか!

 ああクソ!クソゲー!

 パーソナルの一部が切り取って晒されるって、よくよく考えたらただの罰ゲームじゃねえか!

 ……というかフィガ公って誰だよ?

 

 

 ◇

 

 

『思ったより早く着いたな……』

「ありがとうございました」

『気にするなワン。どのみち俺もギデオンに戻るつもりだったから、そのついでワン』

 

 

 シュウは、結局何かをしかけてくることはなく、俺たちは無事ギデオンにたどり着いた。

 単に裏表のない親切だったらしい。

 人の厚意を疑っちゃだめだよな。

 やはり、人を見た目で判断すべきではない、ということなのだろう。

 

 

『じゃあ俺は友達と会うから、ここまでワン』

『ありがとうございました。あと、なんかすいません』

『いいってことよー』

 

 

 

『サンラク?』

 

 

 後ろから、名前を呼ばれた。

 うーん、男性の声っぽいしカッツォか、な、あ?

 

 

『はっ?』

 

 

 振り返ると、ライオンの着ぐるみがいた。

 王国じゃなくてここは夢の国なのだろうか。

 そういえば最近そんなクソゲーもあったな。

 

 

『君もいたのか。久しぶりだね、サンラク』

「サンラク君。お知り合いですか?」

『人違いです』

 

 

 いや、こんな着ぐるみ知らんし。

 マジでなんで俺の名前知ってるんだ?

 まさか天下の天音永遠や魚臣慧が、着ぐるみなんて珍奇な格好をするとは思えないし。

 いや、性能次第じゃありえるか?

 隠蔽系の装備を付けてるらしく、《看破》も《鑑定眼》も効果がない。

 もしかして:ゴリライオンの人とか?

 

 

『ああ、そうか。この格好じゃわからないよね』

 

 

 彼がそういった直後、ライオン着ぐるみを、光が包み込む。

 おそらくは俺も持っている《瞬間装備》の同類、防具を一瞬で着替えるスキルなのだろう。

 さしずめ《瞬間装着》とでもいったところか?

 スキルの使用直後、彼の外見は一変していた。

 青色の、外套。

 金属質なグリーブ。

 上半身の軽装鎧に、下半身は袴。

 両手には、いくつかの指輪がはまっている。

 --そして、見覚えのある長髪と、糸目の整った顔立ち。

 

 

『……フィガロ』

「うん、そうだよ。改めて久しぶりだね、サンラク」

 

 

 悪友に呼ばれてギデオンへとたどり着いた俺たち。

 そんな俺達を待っていたのは、予定外の再会だった。

 いや、こんなことってある?

 

 

 To be continued




ついにクマニーサン登場。

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