<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~ 作:折本装置
ありがとうございます。
今後も頑張ります。
ついに、三章が本格化します。
□【猛牛闘士】サンラク
いやー、ギリギリだった。
ルストもそうだけど、本当に負ける可能性もあったからな。
最後何?どうやったのあの飛び膝蹴り。
瞬き1フレームに差し込まれたのか?
やはり人力TASじゃったか……。
道理でいまだに格ゲーじゃ勝てないわけだ。
「グッドゲームだったわ、
『ああ、こちらこそグッドゲームだといわせてほしい』
勝ったほうが言うと上から目線に聞こえてしまうかもしれないが、本心だ。
いや正直、本当に、マジで危なかった。
HP残り1で食いしばる、《ラスト・スタンド》がなかったら負けてたからね。
確実に勝てる様に、初見殺しの塊で詰めていったのに。
《
それでも最後、ダブルノックアウト寸前まで持ち込むんだから、やはり全一は全一だと思える。
最後の交錯に関しては、俺の負けとさえいえるだろう。
「うん、いい試合だったね」
『お、おう』
シルヴィア・ゴールドバーグはにっこり笑って俺の手を握ってくる。
え、何なんかこわい。
にこにこ笑ったまま、がっちりと俺の手を掴んでいる。
というかあれだ、目がまったく笑ってない。
シンプルにアカン奴や。
「また、やろうね?この後で」
『あ、はい。またな……』
リベンジしたいという心意気は俺も理解できるんだが、圧がすごいんだよ。
ええい、がっちり手を掴むな!
STRが低いとはいえ、振りほどきにくいんだよ。
怖い怖い。
というか今日は初見殺しだから勝てたんであって、次やったら勝てるかどうかわからん。
多分あと三回、いや二回やったらもう勝てなくなってる。
格ゲーと違って、こっちではステータスの合計値に差があるから、初見殺しで意表をついてそのまま押し切るしかないのだ。
◇
「お疲れ―、サンラク」
『おう、二回戦突破サンラクですよ。何か言うことはありませんか敗者の皆さん』
「すごいよね―サンラク君、順調にトーナメントを駆け上がっていって、バカと鳥頭は高いところが好きって本当なんだね」
「ダメだよペンシルゴン、事実でも言っていいことと悪いことがあるってもんじゃないか。バカとか言っちゃかわいそうだよ」
『ああ、まあ負けたからってそこをねちねち言うのもよくないよな、いくら敗者だからって』
「お、やるか?」
「うーん、王国有名PKの力、見せてあげようかな?」
そろそろデスぺナしたほうがいい気はするんだよな、こいつら。
「もうデスぺナのリスクがなくなったから」とかいって当然のようにPKしてるらしいし。
とはいえ、俺にも理性はある。
こいつらとやりあうと多分、というかほぼ間違いなく相打ちになる。
そうでなくても装備とか破損するだろうし、できれば今は戦いたくない。
ペンシルゴンとか絶対こっちに最大限の損害を強いる戦い方をしてくるだろ。
デンドロでも、他のゲームでも、結局プレイヤーの命より重要なものがあるのだ。
『というか、PKかなりしてるらしいけど、コスト面とか大丈夫なのか?』
本人から聞いたから知っている。ペンシルゴンはコストを大量消費するタイプのビルドだ。
カッツォもペンシルゴンほどではないが、それでもかなり蓄積に頼る短期決戦型のビルドのはず。
「私は大丈夫かなあ、何しろここではコストが尽きることがまずないからねえ」
『そうなのか』
「うん。ここの道外れにもいっぱいあるからねえ。一番ヤバいのはコルタナだけど」
「……あー、あれはねー」
『?』
よくはわからないが、どうやら鉛筆のコスト面は大丈夫らしい。
「俺も必殺スキル切ってないから、コスト面は問題ないかな。ときどきメグに武器のメンテをお願いするくらいで、コストはあってないようなものだよ」
「……サンラク君、こいつ一回シメたほうがよくない?」
『同意』
「えっちょっと待って、おかしくない?今俺にヘイトが向く要素あった?」
そういうところだよカッツォ。
◇
『サンラク君、本当におめでとうございます』
『ああ、ありがとう。でも、レイも突破したんでしょ?』
『ええ、サンラク君とキヨヒメのおかげです』
「……当然。私達の力をもってすればこれは当然」
「実際強かったわね、
レイやステラ、キヨヒメと道を歩いている。
あらあら可愛らしい、キヨヒメちゃんドヤ顔してる。
レイも無事、相手を撃破して勝利したのだ。
相手も普通に強かったんだが……まあ彼女が強すぎるんだよな。
天地にいる京ティメットと秋津茜はわからないが……それ以外の元旅狼メンバーの中では、総合的に考えておそらく彼女が一番強い。
それこそ、
超級職についていないにもかかわらず、だ。
あれ、あそこにいるのは。
「お、あんたらは」
『お、また合ったな』
シオンと、グライだった。
『もしかして、もう行くのか?』
「まあな、もう食料品の類は買い込んだし。ここにとどまる理由はもはやない。ちょうどすぐ近くまで来ているドラグノマドを目指す」
『そうか、じゃあせっかくだし門の手前まで送っていってもいいか?』
「それは構わない。むしろ、そうしてくれた方がありがたいくらいだ」
門の手前まで、送っていくことになった。
手前で歩きながら楽しそうに話しているシオンとレイ達を見ながら、俺とグライは話していた。
『シオンに会うまで、普段はどんな活動してたんだ?』
「ああ、まあ俺はカルディナで活動しているんだよ、ずっとさ」
『ああなるほど。シオンを送り届けたらどうするんだ?ドラグノマドに残ったりしないのか?』
「それはない」
断言しちゃったよ。
シオンがさすがに不憫だよ。
『なあ、何で、シオンを助けたんだ?』
「それは……」
こいつのスタイルは、いまいちよくわからない。
そもそもシオンを護衛することのうまみは、ほぼゼロに等しいだろう。
こいつが何を考えているのかまるで分からない。
無論、世の中には俺のように効率を鑑みずにプレイするNPCに入れ込むタイプがいることは知っている。
実際、こいつの振る舞いはそんな風に見える。
じゃあドラグノマドに放置する理由ってなんだ?となる。
まあ別にいいけど。
単なるロリコンの可能性もあるし。うん、そんな気がしてきた。
「似ていたから、かもな」
『ほーん、似ていた?』
どのあたりが?
「境遇が、な」
『……そうなのか』
あんまり触れないほうがよさそうだな。
お、ちょうど門の手前に着いたな。
『ここでお別れだな』
「ああ、そうだな。ありがとう」
お別れしようとして。
「ーー《引力掌》」
それは、誰の声だったか。
俺の声ではない。
レイでも、キヨヒメでも、ステラでも、シオンでも、グライでもない。
誰かの声。
そのスキル宣言に従って、ふわり、とシオンの体が浮き上がって。
引き寄せられる。
引き寄せられた方向には、誰だあれ?
レジェンダリアの亜人だろうか。
魔法職のようなローブを着て、杖を構えた男がいた。
「シオン!」
「――《サプライズ・インパクト》」
グライが反応してシオンを抱きとめて。
それと同時。
スキル宣言と同時、グライの体が、ぐらりと傾いて。
何かが、固いものが砕け散る音が聞こえた。
To be continued
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