その日、珍しく狩りで失敗をした『私』は、久々にチコ村に訪れて――――。


※この短編はすぴばる小説部でも投稿しています。

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【短編】オトモのすゝめ

「――――私に会いたいものがいるだと?」

 

 久々に訪れたチコという小さな村の村長の言葉に、“酒”を飲みながら考え事をしていた『私』は耳を疑った。

 浜辺にそのまま作られた建物のために、酒でやんわりと火照った顔が急激に冷える。それでも肌寒くないのはここら一体が温暖な気候だからだろう。

 とにもかくにも、『私』に会いたいものがいる。それには驚かざる得なかった。

 なんせ『私』は世間で言う変わり者ではあるものの、わざわざ会いに来る者など一人もいなかったのだ。そもそも居場所を転々をする『私』には弟子さえいなかった。

 しかし、『私』の疑惑とは裏腹にチコ村の村長は、首を縦に振る。

 

「そうなのよォ。この村の子なのだけでけど、少し事情があってねェ」

 

「『この村』ということは、アイルーなのか。そもそも、なぜ私なのだ?」

 

 チコ村には多くのアイルーが住んでいる。村に人間は居らず、竜人族の村長が一人だけで住んでいるのだ。本人曰く、アイルーちゃんたちはいるから寂しくはないらしいが。

 どういう訳かこの村は滅多によそ者が訪れることはなく、いつの間にかこういう形になっていたらしい。

 近頃はとあるキャラバンがここを訪れることはあるらしいが、どうやら今日はいないようだ。一度は会ってみたいと思うが、きっと『私』の姿を見れば、きっと驚いてしまうだろう。だから諦める。

 少し意識を飛ばしていると、村長は語りだしていた。

 

「――――――――それでねェ、その子ったら、ぽかぽか島の管理人さんが貸したあなたの本を読んだらしくて、それはもうあなたに会いたがったのよォ」

 

「私の本? そんな昔に書いたもの、まだ残っていたのか」

 

「そうよォ。管理人さんのお気に入りの本らしくて、あの子にも読ませたらしいのわァ」

 

 苦々しい思い出を掘り返す。

 確かあれは、まだ『私』が若い頃に書いたもののはずだ。今となっては、かなり恥ずかしい思い出であり、懐かしい思い出でもある。

 あれをお気に入りと言われるとなかなかに恥ずかしく、苦いものだが気に入ってくれてるのだと思うと、気が和らいだ。

 それと同時に、村長の語る『あの子』に興味が出てきた。あの本を読んで、何でわざわざ『私』に会おうと思うのか、少し疑問である。

 

「その子は一体、何で私に会いたいのだ?」

 

「あら、だいぶ前に言ったと思うのだけれどォ?」

 

「すまん、少し考え事をしてて聞いていなかったのかもしれない」

 

 実際、久々にここを訪れた『私』は、少々上の空だった。

 何年も一人でハンターを続けていたのだが、つい最近の狩りで大きなミスを犯したのだ。大事には至らなかったものの、反省と今後のことで村長の話を聞くことをおろそかにしてしまっていた。

 少し唸る『私』に長年の知り合いである村長は、若干呆れているようだったが、もう一度教えてくれた。

 

「――――あなたのオトモになりたいらしいわァ」

 

 思わず口に含んだ酒を吹き出しそうになった。

 なんとか液体を飲み込んで、咳き込みながらも答える。

 

「――――ゲホッごほっ……オトモ……だと。アイルーがっ!? この私に!?」

 

 いくらなんでも、それはおかしい。

 いや、本当ならそれは普通のことだが、『私』には普通のことでないのだ。

 しかし、あろうことか村長は首を横に振ってみせた。

 

「あなた、また話を聞いてなかったわねェ」

 

「何?」

 

 何か嫌な予感がした。静電気がピリピリするような、えも言われぬ予感が。

 

「その子はアイルーちゃんじゃあないわァ」

 

「ならメラルーか? それは確かに珍しいことだが……」

 

 確かにメラルーがオトモをするというのはおかしい話だ。

 しかし、これにも村長は首を振ってみせる。

 

「それも違うわァ」

 

「じゃあ一体……?」

 

「それはねェ――――」

 

 村長が口を開こうとした時だった。

 

「――――オトモのすゝめ!」

 

 高らかなソプラノボイスが『私』の耳を打った。

 オトモのすゝめ。それは確かに『私』の書いた本だ。色々黒歴史も綴られている本。

 あの鼻につく説明口調を思い出すたびに、当時の自分を殴りたくなる。

 ゆっくりと、ゆっくりと本のタイトルを口にしたものの姿を見るために振り返る。

 

「――――あなたが、このオトモのすゝめを書いたハンターさんですよね!?」

 

 興奮が冷めない様子で、その――――人間の少女は語った。

 

「……………………は?」

 

 待て。待て、それを考えるな。考えすぎるのが『私』の癖だ。

 いや、いくらなんでも絶対にそれはない。

 ギ、ギ、ギと首を鳴らしながら、村長を見る。笑っていた。

 果てしなく嫌な予感がした。

 

「――――これからよろしくお願いします。旦那さん!」

 

 人間の男なら間違いなく、オチていただろう笑顔を少女は振りまく。

 意味がわからなかった。言葉の意味が飲み込めない。

 というか理解したくなかった。

 

「という訳なのよォ。お願いねェ――――()()()()()()()()()()()()

 

 これがハンターであり、アイルーである『私』に、きっと史上初となるだろうオトモのハンター、『オトモハンター』が出来た瞬間だった。

 

 

◇ ◆ ◇

 

 

 ちなみにこの『ニャンター』と、『オトモハンター』が後々、大事件を起こすことになるのだが、この時は誰も知る由はない。

 ただ言えることは、これが史上初の『ニャンター』と『オトモハンター』のコンビだったということだけである。




 元ネタはモンハン4のぽかぽか島の管理人さんの一言です。
 単なる息抜きとリハビリとして書かせていただきましたので、続きはありません。

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