善セフィロスを目指したら三兄弟と戦う羽目になった 作:ハイキューw
頑張ってみます。
《ミッドガル七番街スラム セブンスヘブン》
スラム、と言う名を聞けば何を連想するだろうか。
極貧層が居住している極めて劣悪な環境?
安全・安心は皆無であり、暴力で支配し、されている場所?
荒廃した塵山に息をひそめる様に暮らしている人々?
色々と思い浮かべる事は数多くあるだろう。ただ――実際もそうか? と聞かれたなら、自分自身は首を縦には振らない。大きく横に振る。
確かに環境が良いか? と聞かれれば頷けないが、それでも此処は活気で溢れてると言っていい。毎日を一生懸命生きている、と言えば良いか。助け、助けられ、人間と言うのは決して悪いモノではないな、と思わせてくれる場所だ。
無論、反対側の人種もある程度は存在する。例えどんな所でも光と闇があるのは当たり前と言う訳だ。
そんな場所にあるセブンスヘブンと言う名のバーで一杯ひっかけてる男が1人いた。
その男1人であり、店主が居ないのに 勝手に一杯やってる様である。
「ふぅ……」
タンブラーに残された酒を全部飲み干すと、クキッと首をならしていた。
随分とお疲れの様な気がするのは気のせいだろうか。その背を見るだけで大分判る。哀愁漂ってる様に見えるから。
そんな閑散としてる店の扉が開かれた。
それと同時に掛け声と共に突進していくのは1人の女性。男は振り向かずただただのんびりと余韻に浸っている。
「やぁぁぁぁ!!」
構う事なく勢いのままに跳躍して、男に向かって拳を振り下ろす。
思いっきり背後を狙った奇襲攻撃である。
男は攻撃の瞬間まで全く微動だにしていなかったのだが、触れるか触れないかの刹那の瞬間に動いた。それは残像が見える程の速度。当たった、と錯覚してもおかしくない程だった。
いつの間にか、男は躱していて、その突き出されてた拳を受け止めていたのだ。
「んん~~~っ、もうちょっとだったかな? 後ほんのちょっと」
見事、背後から当てれなかったので悔しそうにそう言っていたが、表情は全くそんな気配はない。
何処となく楽しそうな感じだった。
その女性の名はティファ。
あのニブルヘイム事件もあって、このスラムに家族で引っ越してきたのである。
そして、その拳を見事ノールックで受け止めた男は……。
「いやさ、確かに あの爺さんにも頼まれてるし オレも了解していつでも相手してやるとは言った。それに オレに一発当てれたら次のステップな? とも言ったんだけどさぁ、流石に飲んでる時はゆっくりさせてよなティファ」
「えへへ。最初はドロボーか酔っ払いのどっちかが勝手に飲んでるのかな、って思ったから成敗! だったんだけど、ちょっと力入っちゃっててさ。セロスだ、って気付いたんだけど、勢いに任せてGO! って感じになっちゃったんだ」
「それはそれは。随分と楽しそうだな。元々 今日ここに来るって事前に連絡してたし。っつーか、水道のフィルター交換でいないと思うから勝手にやってて、って言ったのはティファだろうに」
「え? そーだったっけ??」
何だかお転婆に磨きがかかった様子のティファ。
「それでさ! セロス。前に貰った【かくとう】のマテリアなんだけど、十分に慣れたし、次に行っても良いと思うんだ! 【チャクラ】のマテリアとかどうかな!?」
「……まだ2日だろ? そうやって先々行こうとして ゲ〇吐きそうになってトイレに駆け込んだのは何処のどいつだったっけ? せめて定めた最低日数は慣らせてからってその度に約束させてんのにもう忘れたのか? 【マテリア初心者は原則1個ずつ】はい、復唱」
「えー! あ、あの時の私とは違うよ! 大丈夫だもんっ!」
【やれやれ、この巨乳娘は 栄養が全部胸に行って頭に回ってないんじゃないか?】 と思ってしまうのはセロスだ。
―――もう、言うまでも無い事だろうが、セロス、と言うのは セフィロスの超簡単な偽名である。
セフィロスと言う名は物凄く有名。神羅カンパニーの伝説的な英雄。
そんな男がこんな所に居たら ビックリを通り越して大騒動になってしまうのは言うまでも無い事だから、偽名を使っていて、更に腰程まであった長髪を肩付近までバッサリと切ってポニーテールで纏めている。
本当は もっと切りたかったのだが、スラムの女性陣達に最後まで反対されてしまったので、間をとってこのヘアースタイルに落ち着いた。……また伸びてきたら今度こそ、こそっ、と切っちゃおうと画策したりしている。出来るかどうかは疑問だが……。
何はともあれ、このスラム街に来て 日々楽しくを頑張っていた。
セブンスヘブンで日々頑張って働いていて その仕事の合間に鍛えてくれと頼まれたので、ティファの指導をたまに行ってる。当初は弟子を取るつもりは無かったのだが、よくよく考えてみると、クラウドにも剣を教える約束をして、それもティファと同時進行で行ってるので、もう弟子を取ってる様なものなのである。
「むぅ…… セロス、セクハラだよ それ……っ」
ティファの視線に気づいたのはその直ぐ後の事。胸をぎゅっ、と抱えている彼女を見て セロスは悟った。どうやら、考えていた事がちゃっかり口に出ちゃってたと言う事が。別に気にした様子は見せないが、ただただ苦笑いをしていた。
「そう言われたくなかったらしっかり頭働かせなさい、っての。どーせ後で後悔すんだから」
「ぶー」
「はいはい。ぶー垂れないで。ほら、これ今月言われてたやつ」
ひょいっ、と取り出した袋に入っていたのは生活必需品だったり、ポーション等の高価な消耗品。頼まれていたものだ。
因みにティファもたまに身体を鍛える一環として、街に出没するモンスターを狩ったりしているのだ。その報酬分だったり 剥ぎ取れる色んな素材だったりを売って得たモノから購入している。
「あっ、ありがとう」
「おう。それと ザックスとクラウドはどうだ? 帰ってきたか?」
「え? クラウドたち? まだみたいだよ。戻ってきてたら街も賑やかになると思うけど、そんな感じなかったし」
セロスは、ふんふん と頷きつつ、自然と笑ってしまっていた。あの2人がどこに何しに行ってるのか判ってるからだ。
「あの2人が花屋で色々やってる姿想像したら笑えるわなぁ、やっぱ」
「えぇ~ それ、セロスにも言える事だよね? だって スゴク可愛らしかったよ? お花に囲まれてたあの時さ」
「うっ…… 藪蛇だったか……。ま、まぁ それは兎も角 クラウド帰ってきたら、またいつもの場所に来いって伝えといて。オレの方の用事は全部終わってるし」
「んっ! りょーかい」
セロスは荷物を肩に担ぐとティファの頭を軽く撫でて、外へと出た。
ティファは撫でられた事が嬉しいのだろうか、頭に手を当てて笑っていたのだった。
ガラッ、と外に出るといつも通りの光景が目に入る。
人が行き交い、子供は走り回り、スラム全体に活気がある。
スラムはプレートの下にある街だから、空を見上げる事が出来ないのが少々さみしい所ではあるが、外へ出ればそれは解消されるので特に問題視はしてない。
セロスは、んっ と背伸びを1つした後に、セブンスヘブンの扉の直ぐ横に立て掛けてた刀を手に取って、腰に据えた。
こんな長い武器持って飲食するのはあまりにも不便なので店の外に置いてたりする。……因みに盗られるかな? と危惧していたのだが、この刀は 見た目に反してかなり重たい。マテリアの力を存分に吸収し尽しているからだろうか ザックスたちが扱ってる大型の剣 バスターソードよりも遥かに重たい。
なので、相応の実力持ちでもなければ 手に持った瞬間に挫折するだろ、と言われて納得した。それに加えてこの武器を使ってるのは、1人だけで、街の誰もが知ってるから、少なくとも住人でそんな男に盗みを働こうとするものは皆無だ、と言う訳もあったりした。
でも 流石に 武器を自分の傍から離すのはここセブンスヘブンか、自身が借りている部屋くらいだろうが。
「さて……と」
セロスは 店の前の階段を降り切った所で、ひょいっ、と身体を横にスライドさせた。
何故なら……
「つかまえたっっ! って ああっ」
物凄く上から気配を感じられたから。頭上危険な信号が頭の中で発生したから。非常に解りやすく。
「はぁ、いつもどこでもゲンキいっぱいなんだな。お前さんは」
頭に手を当てて、やれやれ と首を振るセロス。
見事、奇襲に失敗したのは女性。……因みに、この街の女性たちはセロスによく不意打ちを狙っているようなので 基本要注意、なのである。
「えぇ、そのお前さんは止めてよねー。もうっ、優しさや女の子に対する気遣いが足りんなぁ! イケメンが台無しだなぁ!」
「背後から襲ってくるヤツに 気遣いやら優しさやらが、必要なのか。ほうほう 成程。勉強になったわ。スラムの心得その30くらいか?」
「にっしっし。と言うより私の心得その1.不動のNo.1! 良い男を見つけたら迷わずGO! が信条なのよねん! なーんつって!」
「節操のないヤツ……」
セロスは改めて正面から彼女を見て苦笑いとため息を同時進行させた。
彼女の名はジェシー。明るき前向き正義の味方! ………らしい。
「らしいって何よぉ。ほんとよ? 私だって 星の為に戦ってるんだからねぇ!」
「OKOK。ナニに対して抗議してんのか判らんけど、今日はどうしたんだ? ジェシー」
「にひっ♪ やーっと名前で呼んでくれたね」
「わかったから キモチワルイ顔してないで さっさと要件言う」
「キモチワルイって ひどっ!」
グサッ、と何かに刺されたような見事なリアクション芸を見せてくれるジェシー。
今日はクラウドとの約束がある日でもあるので、当然 先客順なのである。
「へいへい。えっとね、前にセロスから渡されたマテリアの件なんだけどさ。その感想? みたいなのを伝えとこうと思ってね……」
「おう。オレの特別な新型だ。調子はどんなだ? 上手くいけてるか?」
「うぅ~ん……、正直初めて使った時 真っ青になった。セロスが来る前は 自力で侵入して内部から壊すか、外部を爆弾とかで景気よくドーンっ! ってぶっ壊すってばっかり思ってたのに、こんなのあったら反則じゃん」
「そりゃオレの特別な上に新型だし。ハンパなヤツ渡す訳ないじゃん。それに こうでもしねーとバレットのアホは強硬爆破! とかして汚ぇ花火あげそうだろ? 魔晄炉ぶっ壊すのは別に良いとして、後々の事考えてもっとスマートにヤれってなもんだ」
セロスはめんどくさそうに言うが、それでも目は真剣そのもの。
バレットと言うのは、この街に住む隻腕の大男で、恨み募る反神羅組織アバランチのリーダーだ。
星の為、と銘打っているがその根幹は家族を奪われてしまった事の復讐。と言う本当の理由もセロスは勿論 知っている。
神羅を憎む気持ちは判るし、曲がりなりにも自身が神羅側だったから思う所もある。――でも、だからと言って
「んっん~ セロスなら正面突破でも余裕! って思うんだけどねー。前に外でモンスターと戦った時を見たらさ? あんなの見せられたら惚れちゃうよ? 惚れちゃっても当然よ?? なんちってなんちって♪」
頬に手を当てて身体をくねらせるジェシー。
確かにジェシーの言う通り 武力全開正面突破、幾らでもかかって来い! は有効手段のひとつだろう。セロス――
知る世界では、神羅カンパニーを壊滅させた本人みたいなものだから。
だが、此処にいるのは非情になりきれない甘々なセロスなのでその選択は取らない。
「んー、正面衝突か。考えてなかったって言ったらウソになるけど、文字通り総力戦になっちまったら 街も何個か壊れる可能性が高いだろ? 自棄になったヤツが最後どんな行動取るかも判らねぇし」
「惚れた~の部分は華麗にスルーなんだね……。まっ そういうトコも良いけどさ♪」
ジェシーはマテリアを取り出して、差し出した。
「うん? どうしたんだ?」
「や。終わったし。返しに来たんだよ?」
「いや別に返さなくて良いぞ。ジェシーが持ってろよ、それ」
「………へ?」
ジェシーは目をまんまるにさせていた。
このマテリアは、セロスから【これを使え】と渡されたもの。確かに【後で返せよ】とか【貸してるだけだ】とかは聞いてないが、それでもこんな強力なマテリアをホイホイ寄越されるとは思いもしなかったのである。
「……マジ? このマテリアくれてたの?? マジで??」
「はぁ? 逆に作戦の度に渡すような面倒臭い事させるつもりだったのか?
セロスはそのままジェシーにマテリアを押し付ける。
「うわぁ……、大切にするね! セロスからのプレゼント、大事に大事に保管しとかないとっ! 綺麗にラッピングしてお花とか飾っちゃって! 一生ものの宝だねっ! うんうん」
「……だから ちゃんと使ってくれ」
「うわー、これ指輪とかにつけたら、アレじゃんっ!! 最早アレじゃんっっ!!! なんちてなんちてっ♪」
「………【どく】のマテリア付きの指輪か。ゾッとするなぁ」
マテリアを両手で上に持ち上げてクルクル踊るジェシー。
何でも女優目指してる、と言う表の顔? もあるらしいので、それなりにキレがある動きみたいだ。
因みに、ジェシーに渡してるマテリアはセロスが言う様に【どく】。
本来は、生物を毒で蝕む状態異常魔法のバイオ・バイオガが込められているマテリアなのだが、セロスの特製マテリアは少しばかり違う。
生物に効くだけではなく、なんと 機械にも効く毒なのだ。……即ち、現代風に言えばコンピューターウイルス。
なので、機械系担当のジェシーとの相性抜群、なのだが 当のジェシーは明後日の方へトリップしてる。
見てて別に飽きないが、そろそろ行こうか、と思ってたそんな時。
「あー、また始まってたっスか。ジェシー」
「そりゃ、そうだよ。セロスの旦那の前じゃしょーがねぇ」
ぞろぞろと現れたのは男2人組。ジェシーも合わせてお揃いな装備。
トレードマークは頭に巻いてる赤いハチマキ。ジェシーとは幼馴染の間柄のウェッジとビッグスである。
「その辺は男であり、馴染みでもあるお前らがもっと頑張れよ……。ポッと出のオレなんか余裕、って言えるぐらい」
「いやいやいや、そりゃ無茶な話っスよ! 何百年あったって勝てる気がしないっス!!」
「あぁ~ オレも同感だな。勝ち目が一切ない片道特攻ツアーにはオレら参加しないんで、その辺宜しく。幼馴染として盛大に祝福してやるほうに回るわ」
「……情けない事をすっげぇ饒舌に語ってんなお前ら。一体何を祝福すんのか分かんねぇけど、どうやら ジェシーも含めてお前ら疲れてるみたいだから、さっさとこれ使って休憩しとけ」
ぽんぽんっ、と取り出したのは、エメラルドグリーンに輝く【ちりょう】のマテリア。
「いやいや、オレら別に怪我とかしてねーから」
「そうっス! めっちゃ ぴんぴんしてるっスよ! あ、でも腹は減ってるっス」
「そーか? 性質が悪そうなの貰ってね? ほら、例えば モルボルのくさい息とか」
「んなの喰らったら死ぬわ!」「そんなの喰らったら死んじまうっス!」
元気いっぱいである事を確認した後、セロスは背向けた。
「これから用があるから。またな。とりあえずマテリアは貰っとけよ」
そう一言だけ添えて。
手を軽くあげ、離れてく背を眺めるビッグスとウェッジ。
何だか、ただ歩いていく。たったそれだけなのだが十分だ。十分絵になるシーン。
おまけに神羅最強のソルジャーの肩書。
堅物かと思いきや、スラムへの順応もハンパ無く 色々としてくれてる間にあっという間に支持率急向上。現在進行形。
馬鹿な話にも付き合ってくれる協調性。さらっと助けてくれる感じ。
貴重で希少なマテリアもポンッと、小遣いあげるのりで渡してくる器のでかさ。
あげ出したらキリがない。なので……。
――いやいや 絶対勝てるワケねーわ。色んな意味で。男でも惚れてまうわ。
と同時に思ったりするのだった。