善セフィロスを目指したら三兄弟と戦う羽目になった 作:ハイキューw
――声が聞こえてくる。これは……ザックスかな?
【そういやぁさ。オレ達、何処に行くんだ?】
――ザックス、だけじゃない。こっちはセフィロス?
【ニブルヘイムだ】
声が聞こえるだけでなく、目の前の真っ黒な世界に光が、色が生まれた。彩られたその場所は神羅ビル。整列し 2人のソルジャーを待っていて、そして同行メンバーの皆が揃った。
「おいクラウド。どうしたんだ? ぼーっとして」
「あ、いや……。あれ? ここは……」
「うん? やっぱ寝惚けてんのか?? 今から任務開始~! なんだぜ。寝惚けてないで頼むぞ。行先 お前の故郷、なんだろ?」
それは 身に覚えのある光景だった。
だが、何かが違う。決定的に何かが違うと異質さを感じられた。
……その異質さの正体は直ぐに判明した。
「ニブルヘイム。……そこで ジェネシスの襲撃が十分に有り得る。……その時は 覚悟をしておけ」
「あったり前だ。そのくらいはしっかり頭ん中に入ってるよ。……アンジールの事もある。絶対、絶対にジェネシスを止めて見せる」
「…………」
ジェネシス、そして アンジールの2人の事だ。
話の内容から推測すると、ジェネシスは敵としてまだ何処かに潜伏していて、アンジールは死亡している様だった。
だが、自身の持っている記憶が正しいのなら、この2人はセロス……セフィロスが治療をする為に 神羅には内密で匿っていた筈だった。
表向きは2人とも死亡報告を済ませていた。神羅カンパニーを裏切った為 同じく1stソルジャーであるセフィロスが対処をしたと。
それを知るのはザックスと自分自身だけだった。
なぜかセフィロスが信頼してくれて、打ち明けてくれた。勿論、誰にもその事は漏らしていない。寧ろ一兵卒程度の自分の話をそう信じられるとは思われないだろう。
相手が英雄セフィロスなら尚更だ。
でも、何処からかそれが漏れてしまった。その為 神羅から軍を寄こされ、それに自分の故郷の村が巻き込まれたのだ。あの時――誰も自分を疑ったりしなかった。弁解する必要など無いかの様だった。その時のセフィロス……セロスの顔は今でも覚えている。
でも、今のセフィロスは何処かが違った。姿形は間違いなくセフィロスそのもの。だが、違和感がどうしても拭えなかった。
――いったい、これはどういう事だ?
今の自分でさえよく判らなくなる。
まだ、色々と理解しきれていないが、それでも任務は始まってしまった。
自身の故郷へと向かう任務。確かに経験がある筈だ。その記憶の中のメンバーと今のメンバーは全く違うが……。
記憶が混濁し、身体と心が分断されていく様な感覚がしつつも……、身体は動いてくれる。奇妙な感覚だった。
そしてその後、程なくして故郷のニブルヘイムへと到着した。
その移動中のザックスとの何気ないやり取り。
そこに違和感はなかった。ザックスはザックスだった。
メンバーがおかしい事もとりあえずはそういうものなのだと 無視する事が出来た。ただ――どうしても違和感が拭えないのはセフィロスだった。
彼は会話に全くと言っていい程入ってこないのだ。
当初から自分が憧れた英雄セフィロス。
確かに彼のイメージは 孤高の存在であり、常に冷静沈着。最も秀でた能力を持っている存在がゆえに、周りからは疎遠されるイメージを持ちがちだった。……が、ふたを開けてみたら そんな気配は全くなかった。
少なくとも、自分自身が彼と知り合った時は 気さくであり 色々と話も聞いてくれたりもした。故郷の話も沢山した。
だが、今のセフィロスはやっぱり違った。
そう――言うならば、かつての自分が
「……ここは久しぶりの故郷なんだろう? どんな気分がするものなんだ? オレには故郷が無いからわからないんだ」
「そうだったんだな。ええっと、両親とかはいないのか?」
「―――母の名は■■■■」
セフィロスが母親の名を語ろうとしていたその時だった。強烈なノイズが頭の中を走り、全く話が聞き取る事が出来なかった。
強烈なノイズ。それは故郷の景色を掻き消した。
軈て周囲はおろか、大地が そして時の流れさえもが 出鱈目に動いている様な感覚が走る。それでも、周りは問題ない、と言った様子で進んでいく。
次に目の前に広がったのは―――紅蓮の炎が故郷を蹂躙している場面だった。
「なん……だ、なんだ、コレ……っ」
錯乱するのが解る。
こんなのは知らない。こんな光景は知らない。でも、目の前に広がってる炎の熱気は、息をする度に身体の内から焼かれるようなこの感覚は、本物そのものだった。目の前で、間違いなく村が焼かれている。ティファの家も――自分の家も。
「母さん!!」
家に駆けこもうとするが、炎が行く手を阻む。玄関部分は完全に崩落しており、家の全ての窓から炎が噴き出している。この中で誰かが生存しているなどありえない。だが、それでも理解したくない。いつの間にか 傍に落ちていた剣を拾って思いっきり振り上げる。
それはザックスがいつも使うバスターソード程は大きくないが、それでも十分に炎を吹き飛ばすだけの威力は出た。
この時の自分は、此処までの力は無かった筈、と一瞬だけ頭の中を過ぎったが、直ぐに振り払い、家の中へと入ろうとした所で 何かが横から押し倒してきた。
「よせっ!! クラウド!!」
「っ…… ざ、っくす?」
炎の中に入ろうとしている自分を止めたのはザックスだった。彼もまた身体中が煤だらけで汚れ切っていた。
「な、なかで母さんが、かあさんが……っ」
「っ……もう 無理だ」
「っっ!!」
判っていた。判っていても認めたくなかった。こんなのありえないから。
そんな時だ。身体を凍てつかせ、そして貫かれるような感覚が身体を襲ったのは。
その気配の先を本能的に振り返ってみると、そこには何かがいた。
炎に包まれながらも……佇む白い影。長身長髪……そして長い長い刀。
目を疑った。でも、間違いなかった。炎の中に立っているのはセフィロス。
丁度、その長い刀で村の人を切りつけていた。炎の中でせせら笑うと、そのまま村にある神羅の屋敷がある方へと向かっていった。そして 屋敷を横切り、山へと入っていったのだ
「ッ……!! クラウド。悪い。お前を止めてる暇はなくなった。オレはセフィロスを……アイツを追いかける」
ぎりっ、と歯を食いしばるザックス。いったい何があった? と聞く間もなくザックスは走っていった。それに必死に追いすがる。家の事もあるが、それ以上にあの光景が信じられなかったから。
走って走って走って――――たどり着いたのは ニブル山の頂上にあるニブル魔晄炉。
更に走って走って走って走って――――そこに見たものは再び目を疑いたくなる光景だった。
「っ!! ティファ!?」
血を流し、倒れているティファの姿だった。
右肩口から左の脇腹にかけての刀傷。かなりの重症だったのが一目でわかった。
「大丈夫かティファ! セフィロスにやられたのか!?」
ザックスが傍にいた。ティファは何も言わず、痛むであろう身体を懸命に動かして、ザックスを見ない様に身体を背けていた。
「しんらも、そるじゃーも、あなたも…… みんな、みんなだいっきらい……っ」
ザックスはそれを聞くと、拳を握りしめ、そして剣を握りしめて駆け出して行った。上にいるであろうセフィロスの元へ。
だが、クラウドはティファを放っておく事など出来なかった。備蓄している緊急用セットを広げ、ティファを介抱する為に。
「しっかりしろ! 頼むっ ティファ!」
「……っ、くら……うど? なん、で ここに……」
「っ。オレはずっと居る。いつだって、いつだって傍に……ッ!!」
自分は、
【剣を教えてやるよ。それに 鍛えてやる。まだまだお前は強くなる。ズルなんかしなくてもな?】
セロスの言葉は今でも耳に残っている。
だから約束を交わして、そしてティファとも正面から再会を果たした。
でも、ここにいるティファはそれを知らないらしい。恥ずかしいから、情けないから黙っていたままだったらしい。
でも今はそんなのは関係ない。回復マテリアも使いつつ、手当をしていく。その時ティファが手を強く握って来た。
「おね、がい……。上に、アイツが…… パパや、みんなの仇が……。おねがい、くらうど……」
自身も握り返し、落ち着かせようとした時だ。
「ぐああああああ!!」
悲鳴と共に、ザックスが吹き飛んできた。ザックスの剣も同じく飛ばされ、自身の足元へと突き刺さる。
「ザックス!?」
「う、が……。く、くそ、が……!」
ザックスもまた、刀傷を全身に浴びており、致命傷とまではいかないが 遠目で見てわかる程重症だった。
「クラウド……! セフィロスを、止めてくれ……!」
血に染まりながらも、ザックスは指をさした。
壊された扉の先が見える。黒く、黒く塗りつぶされている世界が見える。
【母さん。一緒にこの星を取り戻そうよ。オレ、いいことを考えたんだ。――■■■■へ行こう】
姿が見えてもいないのに、頭に響いてくるのはセフィロスの声。
「クラウド……! たのむ!」
ザックスの声に弾かれる様にクラウドは動いた。
持っていた剣を投げ捨てて、ザックスが使っていたバスターソードを手に取る。手持ちのマテリアを全て剣に込めて、駆け出す。
【オレは選ばれし者。この星の支配者として選ばれし存在】
声だけが届く。
その声の方へと駆け出し、そして飛び込んだ。
その場所は、おかしな空間だった。建物の中のハズだったのに、開けており周囲には光輝く岩が連なって山の様なものを形成している。それがその場を取り囲んでいる。
この光景も……見覚えがあった。色は全く違うが、あの日…… あの時の村で襲撃が合った時。セロスが助けてくれた時だ。岩を使って山を作り、皆を護ってくれた。
でも、目の前のセフィロスは違った。
「セフィロス!! よくも、よくも皆を! よくも村を!! どうして、どうしてなんだよ! 信頼……していたのに!」
力の限り、叫んだ。
セフィロスは、それに何かを言う訳でもなく、ただただ佇んでいた。奇妙な物体を抱きかかえながら。
「―――来たか、クラウド。……これが
「何を、言っている!」
セフィロスはゆっくりと振り返った。
そして、抱いているものをゆっくりと下へとおろすと、刀を握りしめる。
「俺、―――いや
セフィロスが刀を振るうと、それは真空の刃となり、迫って来た。
それを剣で受け止める……が、あまりの威力に身体ごと吹き飛ばされてしまう。
「ぐ、おっ……!」
「さぁ、忘れられない痛みをその身体に刻もう。罪の数だけ刃を、お前が代わりにその身に受けるが良い」
それはまさに神速の剣撃。
あの長い長い刀をどうやったらそんなに軽々と振るえるのか。
懸命に弾き、時には躱し、捌き……繰り返すがどうしても2手対処すればその倍の4つの傷を受ける。
軽傷で済んでいるが、なぶり殺しにでもしようと言うのか、わざと手を抜いている様にも見えた。
時間にして、ほんの一瞬の戦いの出来事なのか、それとも長く戦っているのか、それさえ判らない。永遠に続くのか……? と思えてしまう感覚だった。
だが――終わりは訪れた。
「う、おおお!!」
最後の一撃。
その神速の剣撃をかいくぐり、宙に浮いて叩き下ろすが、それは読まれていた。
先ほどまで目にもとまらぬ速さだった筈なのに、動きがゆっくりに見えた。自身に迫るのがはっきりとわかった。……そして、その刀で腹部を串刺しにされたのだ。
「ぐ、がぁ……」
「どうだ? 消えぬ痛みだろう……? これが本来の私なのだクラウド。……どういう訳か
「ぐ、く……ッ!」
一体何のことを言っているのか、全ては判らなかった。
だが、判る事はある。……この男は
そう思った瞬間から、身体の奥から力が湧いてきた。
貫かれた身体の事など忘れ、その刀を思い切り握ってセフィロスを持ち上げた。
「ふざけ……るな!!」
「っ!」
思い切り、セフィロスを投げ飛ばす。勢いのままにセフィロスは光輝く岩にたたきつけられた。
「
「……ふん。何処までも甘く、何処までも愚かだ。敵である筈の
セフィロスが手を上げると、空から何かが降って来た。轟音と共に着地しあの形成されていた岩を吹き飛ばす。……そこに立っていたのは3人。
「――やぁ」
「!!」
見た事がある男たちだった。何処となくセフィロスに似ている雰囲気を持っている3人組。
「これで、家族が揃った。母さんも傍にいる。……たのしぃなぁ? おい」
「嬉しすぎて泣くなよヤズー。こっからが楽しい遊びなんだ。……なぁ? おい」
3人組の内の2人が前に出てきた。手には其々の武器、銃・パイルバンカーが構えれている。
そして、その3人組のリーダー格であろう男も剣を構えた。
「母さんは、僕と
「……ああ。家族でゆっくり考えよう。……私はどちらを選ぶかなどは考えていないさ。……私達は家族だ。等しく母を愛し……そして、我ら兄弟は その愛を等しく成就しよう。母は私達を受け入れ、愛してくれる」
「本当……?」
「ああ。本当だ。……私はお前たちの兄だ。嘘は言わないよ」
おぞましささえ思える会話が続く。
前に出てきてる2人も気味が悪い笑みを浮かべながら迫ってくる。
剣を思い切り握りなおした。
「……俺が、お前たちを倒せるなんて思ってない。だが、限界を超えて、抗ってやる!」
「ほう」
「へぇ」
剣に気迫を、漲る闘気を宿らせる。
それはマテリアを用いて使う力ではなく純粋な人間の、自分自身の力。
魔晄や細胞? などは必要な。人間の可能性に限度は無い。あるとするなら、自分自身がそれを決めてしまっているのだ。
「おおおおッ!!」
全力で、自身の全てを剣に込めて【凶】の文字を刻む。
「っ、うおっ!! く、くふふ!」
「くっ……! ふはっ!!」
その技の勢いは、少しだけあの2人を上回る事が出来た。
だが、それだけだった。後ろに控えている2人の内の1人…… カダージュの一撃には反応する事が出来なかった。
「ぐあァっっ!」
そして、続けざまにセフィロスの真空の刃が飛んでくる。咄嗟に剣で防御をしたが、あまりの勢いで壁に叩きつけられてしまった。肺の空気が全て吐き出され、内臓が持ち上がり、息もできない。でも、気を失う事はなかった。
「ふふふ。ビックリしたよ。まさか君がこんな事出来るなんてね。折角新調した武器だったのに」
ちらりと後ろを見るカダージュ。ヤズーやロッズの持っていた武器があの一撃で破損していた。もし、武器を出して構えてなければ これだけでは済まされなかっただろう。
その2人も武器を捨てて、歪な笑みを浮かべながら迫って来た。
「でも、所詮はその程度。……人の領域だね。母さんの力を貰ってないんだからさ」
「―――く、くっくっく……。さて。戯れはこの辺りで終わりか。もう、眠らせてやろう。ライフストリームとなり、星を巡ると良い。……軈て、母がこの星を取り戻すその時まで、な」
――ここ、までか。いったい、なにがどうなったら こんな……。なにもかも、わからないままだ。……ごめん、な。ティファ……、ザックス……。
目を閉じようとしたその時だ。
「「「!?」」」
「ふん……きたか」
空から一筋の光が差し込んだ。
その光は軈て大きくなり、一人の男を生み出した。
「ったく。まさか
自身の前に立っているのは、紛れもなく―――。
「スパルタ過ぎだろ。こんなもん。普通にトレーニングルームみたいな所で1対1させるだけだったのに、何の冗談だこれ。
「せろ……すっ」
「とりあえず、今回の件は俺が悪かった。それによく頑張ったな。……1回寝とけ。全部後はやっておくから」
たった少しだけ。それだけで目の前の人物が自分のよく知るセフィロス……セロスなのだと理解出来た。理解出来たの当時に、強烈な眠気に襲われる。
セロスの手に握られていたのは【ふうじる】のマテリア。使用する魔法は【スリプル】
先ほどまでは、どんな痛みでも衝撃でも絶対に負けない、例え死んだとしても、死ぬその瞬間まで戦う、と言う強い意思があった。だから、決して気を失う事は無かった。……が、これには抗う事が出来なかった。いや、抗う必要が無いと感じたのかもしれない。
軈て、意識が遠のき 完全に闇に包まれた。
最後に、届いたセロスの言葉は【んで、回復マテリアを……いや、フルケアの方が良いか】だった。