善セフィロスを目指したら三兄弟と戦う羽目になった   作:ハイキューw

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4話 作り物の世界

 

 

―――随分長く夢を見ていた気がする。……それもとんでもない悪夢を。

 

 

 

 

クラウドは、悪夢が去り、仮想世界から現実世界へと意識が覚醒していくのがわかった。

 

恐ろしくて身が竦み、声も出ない。そんな悪夢を長く長く見続けていた気がしていた。

 

なかなか身体が言うことを聞かないが、それでも起こそうとし続ける。

そして、漸く身体が動く、動かせると感じた瞬間に、上半身を起こした。……直ぐ眼前にザックスがいるのも気付かず。

 

「うおっ、っと! あぶねーな」

 

ザックスも驚いてどうにか飛びのいて頭突きを回避。

 

そして、跳び起きたクラウドだったが、その頭をがっちりとホールドして、自身の膝へと置きなおすのはティファ。

 

「落ち着いてクラウド。さっきまで凄くうなされてたんだよ? 起きるのは もうちょっと落ち着いてからにしなさい」

「っ……、あ、あれ? オレは一体……」

 

クラウドは、とりあえず ティファが居る事(勿論 膝枕されてる事も判った)、ザックスが居る事、その隣でエアリスが居る事も理解した。何故、こんな風になっているのかはまだわからない。頭の中で整理がつけられてなかったからだ。

ザックスはザックスで、エアリスと何やら話している。

 

「てゆーか、ザックスが起こしちゃったんじゃない? 覗き込んで何かしたんでしょ」

「いやいや、クラウドくんは 彼女さんのお膝を枕にしてお眠とか役得ですなぁ~、羨ましいですなぁ~、まさにご褒美ですなぁ~ とか思ってただけで、なーんもしてないって」

「ふぅ~ん……、ティファの膝枕が羨ましいんだ~……。ふぅぅぅ~~~ん。そぉぉ~なんだぁぁ」

「あ、いや、それは言葉の綾ってヤツですよ。エアリスさん? それ以上の他意はありませんですよ??」

 

2人が何だか楽しそうに言い合ってる。

それはいつもの事なので 一先ず置いといてクラウドは現状整理を頭の中でしだした。ティファの膝枕は なかなか解放してくれないので、する事と言えばそれくらいしかない。

後頭部に柔らかい感触が合って、少なからず煩悩を刺激してくるが、邪念退散、頑張って現状理解。

 

 

 

まず――今日は、ザックス・エアリス・自分自身の3人でプレートの上まで行き、花屋を手伝う依頼を受けた。

 

 

出足は好調で、エアリスが持ってきていた花も完売。それに自分自身に掲げていた目標(ノルマ)も何とかクリアして帰路についた。

今日はもっと大事な用事があったから、いつもエアリス主催の打ち上げ等はせず、真っすぐに帰ってきてガレキ通りにある広場にまで行って……それで―――。

 

「っ!? セロスは!?」

 

色々と思い出せた所で、目を見開いてクラウドはティファに聞いた。

突然の大きな声に開ききった目、眼光に少々気圧されそうになったティファだが軽くため息を1つした後に、クラウドの頭をもって ぐいっ! と右側に捻じった。 グキッ!! と鳴ってしまう手前だったりするが、その辺りは格闘家でもあるティファ。万全である。

 

クラウドは少々痛む首を気にしつつ、向けられた方向を見てみる。

そこには、セロスと―――もう1……人?

 

 

 

「あのなぁ。毎度毎度 お前らやってくるみたいだけど、そろそろ迷惑してるんだ、って親玉にいっといてくれないか? 結構メンドクサイんだぞ。お前ら相手にすんの」

「――? ―――??」

「わからん! 何か喋れ! ……っつっても無理だよなぁ。とりあえず、お前が【アンタ何言ってんの?】って感じなのは判ったわ。ほれ、もう戻っていいぞ。さっさといけ」

 

 

セロスが何やら話しかけている相手は、何と言えば良いのだろうか、ボロボロのローブ姿の人物。……いや、人かどうかは疑わしい。何故なら宙に浮いてるから。座り込んでるセロスと正面に向き合ってて、ゆらりゆらりと宙に揺れている姿は中々に恐怖を覚えるものだった。

 

そして、セロスはどっか行け、と言わんばかりに 手をパタパタさせてるが……、何処かに行く気配はなかった。寧ろまとわりついてる様に見える。

 

「おいコラっ! 来るな寄るな引っ付くな!」

 

何となく、あちらもなく楽しそうに絡んでいる……とも見えなくはない。

楽しそうに絡んでいる対象……片方が正体不明の物体でなければよかったのだが、気にならない筈はなかった。

 

「……ナニあれ?」

「さぁ? クラウドが倒れてる間、ずーっとセロスが相手してたみたい。相手にされてたりもするかも??」

 

当然ながらクラウドは疑問を浮かべ、後からやって来たティファも同じく判ってなかった様だった。

 

そんな2人を見た、ザックスは 未だにご立腹気味なエアリスにそっと耳打ちをしていた。

 

「――あいつら(・・・・)も見えてきた様だ。なんでか最初は俺らしか見えてなかったのにな」

「え? あー……そう言えば。うん。見えてるみたいだね。これが良い事なのか悪い事なのか、判らないケド。でもま、良い感じになってくるのかもしれないよ」

「そうか?? クラウドの仮想訓練するって時、イキナリ俺達襲ってきたじゃん。良い風には思えねぇけどねぇ……。それに、セロスが言うには、あの訓練機械にまで干渉してきたって話だし。何でもありなのかい? あいつらは」

 

ザックスは、やれやれ と言わんばかりに首を左右に振りつつ 地面に突き刺してた剣を引き戻して自身の背中に仕舞った。

 

そう―――クラウドが仮想空間で、襲われてた? 時。現実世界ででも襲撃があったのだ。それこそが、今セロスと面白おかしくナニカをしているボロきれ。

 

今はあの1体だけだが、ついさっきまでは無尽蔵にやってきていて、黒い竜巻かと思った程である。

 

突然の襲撃だった。でも、セロスとザックスが丁度2人揃っていた為、撃退する事は容易かったりする。……が、如何せん数が多すぎるので時間はかかった。

何処からか異変を感じたティファもやってきて合流し、4人で対応に追われて……漸く終わる事が出来たのだ。嵐の様に現れて、去っていった正体不明の物体。

つまり、あれは訳が分からない存在、とザックスの中では自己完結していた。何より脅威はとりあえず去ったし、判らない事を考えていても判らないままである事はザックスがよく知っている。ザックスの中で一番? の物知りなセロスも【わけわからん】とぼやいていたので、これ以上知りようがないから、と言う訳でもあった。

 

 

そんな中で―――エアリスだけは違った。

 

 

 

 

「……フィーラー」

 

 

 

 

ボソリ、と小さく消え入りそうな声でそう呟いていたから。

ほんの少しだけ、ザックスの耳に届いた様で、ん? と振り返った。

 

「何か言ったか? エアリス」

「……んーん。何でもないよ。この辺りにも出てくるみたいだし、ザックスやセロスはこれから大変だなーー、って思っただけで」

「うへぇ……。って、なんで俺らだけが大変なんだよ」

「そりゃ、見える人と見えない人がいるんだし、仕方ないじゃん? それに2人ともなんでも屋所属なんでしょ? ほーら頑張れ男の子! 目の前のでっかい背、追いつけ追い越せ引っこ抜け~~~」

「……へいへい。あー、ハードルたけーな、目の前の背」

 

エアリスは、笑顔でザックスの背を叩いた。

そして、向ける方向は決まっている。……セロスだ。

 

 

エアリスは、正体を知っている。でも、それを打ち明けて良いものかどうか、今迷っているのだ。

 

「(運命の番人……。流れを変えようとする者の前に現れる存在―――。なら、あの時(・・・)、セロス……セフィロスの前に現れた時も……きっと、そう。流れを変えようとしているから現れた……つまり)」

 

エアリスは、セロスの方を見た。

まだ、そこにはフィーラーが存在している。でも、先ほどと違って攻撃をしようとしたり、邪魔をしようとしたりとはしていない。ただただ、セロスと遊んでいる風にしか見えない。

 

 

それはまるで 運命の番人を懐柔してしまったかの様に見えた。

 

 

「………最近、悪い夢見る事があったんだけど、大丈夫かもね」

「あん? 悪い夢?」

「そう。………足元から崩れちゃう様なそんな夢。でも、なんでかな。皆が居れば大丈夫なんだって、スゴク思える様になってきたんだ」

「………そりゃそうだ。揃えば出来ない事なんかなーんも無いってな。だから、安心しろよ」

 

ザックスは、そういうとエアリスの頭をそっと撫でた。

二度、三度と撫でられた後 ぽんぽんっ、と優しく叩かれて終い。

 

それを受けて、エアリスはニコッ、とザックスからは見えない様に笑ったが、直ぐに表情をもとに戻すと、ザックスに振り返りながら不満を言った。

 

「そこは抱きしめてくれるんじゃないの~? ふあんでふあんでしょーがない彼女を優しく抱きしめて、とかさぁ?」

「へっ。そりゃ高いぜ? デート一回よりよっぽど高い」

「うわっ! お金取るんだ。なら良いもん! セロスのとこ、行くから」

「ちょ~~っとそれは待って。わかったわかった」

 

ザックスは慌ててエアリスにハグをしようとするが、スルッと華麗に躱され、迫っては躱されるの繰り返しだった。エアリス的には何だか投げやり気味のザックスハグはムードに欠けるし、色々と情けないし、と言うのがあり。ザックス的には少々選択肢を間違えた事は認めつつも、エアリスが選んだ相手がやば過ぎるから仕方がないだろ、と言うのがあった。

 

エアリスにはまだ少々不安に思う所があるにはあるのだが、何だかんだ思いつつも2人ともが楽しそうなのだった。

 

 

 

 

そして、暫くしての事。

 

「……セロス」

「ん? おうクラウド。もう良いのか? ティファの膝枕」

「茶化さないでくれって……。それよりも、何だったんだ? アレ(・・)

「それは、オレに付きまとってくるコイツ(・・・)の事か? それともさっきの仮想空間内での事か?」

「……出来れば両方教えてもらいたいけど」

 

ふよふよ~ と宙に漂いながらもセロスとの距離は付かず離れずの位置にいる物体を見て、クラウドは苦笑いした。変なのに好かれているセロスを見て、更に笑う。元々人望はトンデモナイくらいある男なので、こういうモンスター? に懐かれたとしても正直驚きはしない。

セロスは、手をまたパタパタ振って向こうへ行け、と促しつつ、クラウドに向き直った。

 

「ま、そりゃそーか。……それに謝っとかないとな。クラウド」

「謝る?」

「ああ。勿論仮想空間での訓練の内容だ。いくらオレでもあそこまで無茶な内容は要れてなかったよ。単純に、オレとマンツーマンでやり合うだけで。戦闘範囲は1㎞²。魔法は大規模なものあり。ガチンコとことんまで」

 

セロスの説明を聞いて、サァ……と背中が冷たくなったのは言うまでもない。

十分すぎる程鬼訓練だから。精神面は兎も角。

 

「とまぁ、それはまた今度って事にしといて。……問題はコイツら(・・・・)なんだよなぁ」

 

またふわふわやって来た物体の丁度頭部分をぎゅむっ! と掴んで引っ張って前に出してきた。

丁度、ローブの中、顔でも見えそうになったが………、中は空洞で何にも無い様だ。余計に気味が悪く、幽霊と称した方が良いような気がする。

 

「丁度クラウドの仮想訓練開始! ってなった時、コイツが、あぁ、いや厳密には他の奴らがわらわら出てきてな。その辺はティファに聞いたと思うけど。マジでいきなりだったんだよ。クラウドは意識無いから、とりあえず無防備のお前は守る形で陣形取って撃退したんだけど……、なーんか、ちゃっかり仮想世界にまで行ったらしくて。勝手にプログラム書き換えててさぁ。……コイツ、ハッカーにもなれるみたいなんだよ。人間業じゃねぇ精度で。ほんと厄介っていうか何て言うか」

「―――! ―――!!」

「【どんなもんだい!】って感じになんなよボケ。褒めてねーぞ。胸張んな」

 

 

丁度セロスが頭の部分を引っ叩いて、ぱすっ! と乾いた音が響いたが、それでも胸を張っている様にクラウドにも見えたので、苦笑いをしていた。

 

「訓練プログラムを変えたのは判った。……判っちゃいけないような気もするけど、とりあえず無理矢理に。でも、オレが一番気になってるのはあの内容。……どんな状況も生み出せる仮想世界とはいえ、何だか…… その、現実味ってヤツを感じたと言うか、芯に来たと言うか……。あの時の3人組がいた事もそうだけど、その―――」

「悪セフィロスが、なかなか堂に入ってた。って感じたか?」

 

クラウドが言いにくそうにしてた事をズバッ! と言い当てたセロス。

少しびっくりしたが、決して誤魔化す事などはせず、クラウドは頷いた。

 

「ああ。……誤魔化さない。あのセフィロスは作り物だって事は判る。実際に終わったんだから、尚更。……でも、何か引っかかるんだ。……あれも、勿論セロスも……実際にいる本物(・・・・・・・)なんじゃないかって」

 

クラウドの言葉を聞いて、セロスは考えた。これこそが真に来る、と言うものではないか? と思えたのだ。本物、と言う言葉を使っている所も結構堪える。何故ならいわば向こうが本物であり、自分自身は偽物だと言っても良いかもしれないからだ。

だからと言って、交代してやるつもりは毛頭ない。

 

「んーー…… ま、オレもそんな感じはしたな。仮想世界っつっても、会話とか普通に出来たし、憎悪ッポイのも感じ取れたし。……ま、あれだな。ありえたかもしれない未来(・・・・・・・・・・・・)を具現化した、ってオレは感じたかな」

「ありえた? 未来?」

「ああ。ひょっとした切っ掛けで、オレがグレにグレて、頭がヤバイ男になって、この星を全部ぶっ潰してやる! ってなってって感じ? 寧ろあのニブルヘイムもオレが攻撃しまくって、とかさ。歪みに歪んだオレがアイツ(・・・)みたいな? ……言ってて訳わからんけど、――もしも、オレが悪い男だったら? あんな風になってたってのが一番しっくりくるんだよ」

 

セロスの説明を聞いて、クラウドは考えた。

……セロスが言う様に もしも……、昔の様々な事件でセロスが、セフィロスが別の行動をとっていればあんな風になっていたのでは? と聞かれれば完全否定は中々難しい。 歴史に たら、れば は無いとは思うが……、この得体の知れない幽霊みたいな存在が、そういうのを具現化する事が出来るのであれば、更に悪意剥き出しで都合の良い人物像で仕上げたとするなら、……無いとは言えないだろう。

 

でも――

 

 

「今のセロスも結構ヤバイ所あるって思うのは変か?」

「……あん?」

「だってそうじゃん。無茶な事平気でやったり、信じられない事も平気でやり切ったり、この辺りの住民に大体慕われて、挙句の果てには幽霊を懐柔して……。十分ヤバイって思うんだけど」

「やかましいわ! 余計な事言うと訓練内容のグレード3段階くらい上げんぞ」

「げっ!」

 

クラウドの言葉にセロスは一瞬目を丸くしていて、次には怒った様に言っていた、でも、何だか笑っている様にも見えたのは気のせいじゃないだろう。

 

その後、ザックスやエアリス、勿論ティファも話を聞いてたみたいで、皆笑いながらクラウドの言っていた事を肯定。

 

そして何より、今のセロスがセロスであり、クラウドが体験し、そして戦った悪セフィロスが、もしかしたら、あり得たかもしれない存在(セロス) な訳ない! と一蹴するのだった。

 


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