異世界転生したと思ったらリアルと通じてるオンラインゲームだった件   作:北町スイテイ

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最近缶づめなので昔の作品掘り起こしです

ストック切れるまで毎朝7:00に投稿します


それは誰かにとってのプロローグ

皆さんは異世界転生というものをご存じだろうか?

 

ある日ひょんなことから異世界に生まれ変わることになった主人公が、現代知識やチートを駆使して困難に立ち向かっていくという。最近はやりのジャンルである。

 

小説を読むのが好きな私は、もちろんその手のジャンルの小説は結構読んでいる。最近はネット小説などもはやってきて、本当にいつでもどこでも読書できる時代になってきた。

 

また、ネット小説のいいところは、一般の人の書いた数々の作品を読むことができる点にあるだろう。多種多様な作品の中から自分のストライクゾーンにはまる作品を探し出せた時の喜びはそれはそれはたまらないものがある。その作品の世界観の中で主人公たちが生きる様は私の人生の活力になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然だが、私は裕福ではないが幸せな家に生まれ、多くはないが趣味の合う大切な友達もいて、少々あたりはきついがかわいい妹もいて。これで恋人でもいればこれ以上言うことなんて何もなかったのだ。

 

「・・・っ!ぅ・・・」

 

今まで読んできた物語の主人公たちは、こんな痛みを感じていたのだと思うと、やはりすごいなあと思ってしまう。

 

「っ!」

 

体を冷たい地面に引っ付けたまま、私は声にならない声を上げた。

自然と涙がこぼれる。刺された背中から熱い熱が伝わってくる。

これが物語の主人公とかだったら、空を見ながら何かセンチメンタルな言葉でもつぶやいて、かっこよく死んでいけたのだろうか?

正直仰向けになるのは無理だ、痛すぎる。

せめて声だけでもと思って再び口を開けたけど、そこから意味のある音を出す気力はもうないみたいだ。まあ出せたからと言って、こんな誰もいないような場所でセンチメンタルなキメ台詞をかましてどうなるわけでもなし、やっぱり現実とフィクションは大違い。わかっているけど、やっぱり少し悔しかったりして。

 

「ひっく・・」

 

・・・もう。本当にままならない。

痛みで声を出すのもつらいのに、のどが引きつって仕方ない。ほほを濡らす雫がこんなにも熱いのは、やっぱり私の体から熱が失われつつあるせいなのかもしれない。そう思うとさらに悲しくなって、さらに涙が出た。

 

『____』

 

その時、聞きなれた音が聞こえてきた。

私と同じ着信音。音のほうに視線を向ければ、そこにはかわいくデコレーションされた『妹』の携帯が落ちている。さっき倒れたときに飛ばされたのか少し遠い場所にあった。距離にして0.5メートル。

手を伸ばせばギリギリ届くかどうか微妙な場所で壁に寄りかかるように落ちている。

 

「・・・っ」

 

表示されている名前を見て息が詰まる。

こんな偶然あるのだろうか。

私はきっと物語の主人公じゃないって思ってたけど。案外主人公向きなのかもしれないと、ちょっとだけ思った。こんな絶体絶命の瞬間に、こんなタイミングでとか、運命感じちゃうな。

ただでさえつらい体に鞭うって私は携帯に手を伸ばす。

 

痛い・・・

 

ものすごく痛い。

でも、たぶんこれが最後だから、つらくても頑張れるような気がした。さっきまで息をするのもつらかったのに、今は不思議と体が軽い。

 

「・・・っ!」

 

指を伸ばす。でも思った以上に動きは遅くて、早くでないときってしまうかもしれない焦りが出てくる。

 

届け・・・届け・・・!?

 

血に濡れた手を必死に伸ばす。その間にも涙はとめどなく流れた。痛みでの涙が半分と、うれし涙が半分。

 

 

うそだ・・・本当はすごくうれしい。うれし涙のほうが断然多い。

だからお願い・・・・とどいて・・・

 

そして私の指が・・・携帯に触れた。

 

『・・・・・・・・・・・・・・もしもし?みちる?』

 

携帯の向こうから妹の声がする。ふてぶてしい、いつも通りの妹の声だ。しかしもう顔を上げる気力すらない。

 

『あんた私の携帯勝手に持っていったでしょ。今日はケン君と遊ぶ約束してるんだから早く携帯返して』

 

・・・私がどうしても守りたかった人の声を最期の瞬間に聞けるというのは、これはこれでドラマティックなのではないだろうか? あの忌まわしい男の名前が入るのはちょっと・・・・いやかなりむかつくけど。もうあいつが妹にちょっかいを出すことはない。そのために妹と入れ替わったのだから・・・・

 

『ねえ、・・・返事くらいしなよ。聞いてんの?』

 

妹の声が遠くなっていく。返事をしなきゃと思うけど、もうそんな力どこにもなくて・・・

 

冷たくなっていく私の体とは裏腹に、私の心はどこか温かかった。

それはきっと電話越しでも・・・憎まれ口だろうとも・・・妹の声がそばにあるからなのだと思う。

生まれてからずっと一緒だった・・・私の双子の片割れ。

 

双子だけど全然そりが合わなくて、よくケンカもしたけど、不思議とそばにいるだけで安心できた。私の大切な妹(姉)。

もし生まれ変わることができたのならば、私はまた、あなたの妹(姉)がいい。

心から、本当に心からそう思える。だからせめて最期に伝えよう、あなたは私のこと嫌いだったかもしれないけど。

私はあなたのこと・・・

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

電話越しの彼女にはきっと届かない言葉は、暗闇に吸い込まれていった。




心だけでも前向きに行かないとね
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