異世界転生したと思ったらリアルと通じてるオンラインゲームだった件   作:北町スイテイ

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とおるの日常その2

「ユマ、おまたせ。」

 

待ち合わせ場所に行くと、友人の神崎ユマ(かんざきまゆ)が私を待っていた。

 

「ん。」

 

彼女は小学校以来の友人だ。

私は彼女の横に来ると、学校への道を歩き始めた。

 

「ねえユマ聞いてよ。昨日やばいやつにあってさ。」

 

私は昨日出会ったトールについて彼女に話した。彼女は時折相槌をするだけで、特に質問などはしないが、これはいつも通りである。

彼女は昔から感情を外に出さないタイプで、幼馴染の私でも何を考えているかは割とわからなかったりする。

 

「あんたも昨日来れたら会えたのにね。」

 

一通り話すと、そう話を切り上げた。

 

「今日は来れるの?」

「うん」

 

あまり感情を外に出さない彼女だが、セカンドワールドに私を誘ったのは、意外なことに彼女である。

無表情なせいで、冷たい印象を持たれがちな彼女だが、その心根はとても優しい。当時は彼女も辛かったはずなのに、私を励ますためにセカンドワールドを始めたくらいには。

 

「じゃあ今日は二人でレベル上げしよ。」

「...」

 

セカンドワールドを始めてから、私はもっぱら彼女と組むことが多い。

私は魔法職で、彼女は聖騎士というバランスのいいパーティだからというのもあるが、チームプレイにおいて信頼関係に勝るものはないからだ。

だからたとえ彼女が同じ魔法職だったとしても、私は彼女と組むだろう。

 

「...あってみたい。」

 

もうすぐ学校というところで、ユマが突然言い出した。

 

その時私は、近々行われるアップデートについて話していたため、最初なんのことかわからなかったが、すぐにトールのことだと気づく。

 

「え? トールのこと?」

「うん」

「なんで?」

 

あの会話の中に、彼女がトールに興味を持つような要素はあっただろうか?

彼女は身内以外にはあまり興味がないので、ゲームの世界であったトールのことなど気にも止めていないと思ってただけに、私は少し驚いて、思わず理由を聞いてしまった。

 

「十織、彼女のこと気になってる。」

「そんなこと!」

 

ないと言おうとしたが、ユマが真っ直ぐに私を見るものだから、結局ユマに隠し事はできないなあと観念することにした。

 

実際彼女の言う通り、なんとなく昨日出会ったトールのことが気になっているのは事実だったからだ。

 

「...そうね、なんでかわからないんだけど、彼女のことが気になるの。似たような名前だからかもだけどね。」

 

十織とトール、イントネーションは違うが、読みは全く一緒である。もしかしたらそのせいなのかもしれない。

 

「今日も遺跡に居るかも。」

 

彼女の発言に、それはどうだろうかと思う。

彼女の話を信じるならば、彼女は船であの崖の下まで来たことになる。

ならば彼女がまだあの場所にいる可能性は低いのではないだろうか? 今頃は船に乗って全く別の場所にいる可能性の方が高い。

ならば行くだけ無駄だ。

 

「別に気を使わなくても大丈夫。本当に少し気になっていただけだから。」

 

その言葉にしばらくユマは黙っていたが、やがて「わかった...」と返事をした。

 

 

校門近くまできたことで生徒も増えてきた、そしてその生徒の群れをかき分けて進む人影があった。

 

「十織さんおはようございます!」

 

人をかき分けて私に挨拶をしてきたのは、部活の同期の熊川(くまがわ)龍(たつ)である。

 

「おはよう。今日も元気ね、昨日もあの後遊んでたんでしょ?」

「はい!」

 

彼は大きな声で私に答えた。

なぜかは知らないが、私は彼にひどく気に入られている。自意識過剰と思うかもしれないが、これは事実だ。

彼はしょっちゅう私にちょっかいをかけて来る、それはもう所構わずだ。彼とは教室が違うはずなのに、毎回休み時間には私とユマのいる教室に足を運ぶくらいには気に入られているらしい。

 

「あの後あそこで狩りをするのはちょっとアレだったんで、別のフィールドでレベル上げしてました。」

「わざわざ移動してまでやるって、バカじゃないの。」

「仕方ないじゃないですか! セカンドワールドってチャンネル機能ないから、フィールドを移動するしかなかったんだもの。」

「だったらゲーム自体やめればよかったでしょ。」

 

彼がなぜそこまで私を気にしているのかはわからないが、お陰で学校では彼と私の関係について面白おかしく脚色されているのは納得できない。

私と彼はただの部活のメンバーで、それ以上でもそれ以下でもないというのに、何が楽しくてそんな不確かな噂を流すのか理解に苦しむところだ。

 

結局そのあと始業のチャイムが鳴るまで、彼とネクストワールドについて話し込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後

 

「ユマ、部室行こう」

「うん」

 

私はユマを連れて部活に向かう。

ちなみに熊川は先生に呼び出されていない。また宿題を忘れたのだろう、というよりネクストワールドをするために宿題をしていないだけだろうけど。

 

私たちが所属のはゲーム研究会、ゲームをしたり開発などもする部活である。

ぶっちゃけゲームを作ることに関してはからっきしだったが、うちの高校は部活強制参加だったため、仕方なく入った部活だった。

今では先輩たちのお陰で多少はいじれるようになったが、まだまだ素人のレベルを脱していないレベルである。

 

「やあ、今日もよろしくね。」

 

部室で私たちを出迎えてくれたのは、この部の副部長を務める 矢井田 真弓(やいだまゆみ)先輩。

 

「昨日は大変だったらしいわね。」

「情報早いですね。」

「部長からメールでね。」

「なるほど。」

 

そう言いながら私とユマにVRを渡すまゆみ先輩。

 

「もうすぐセカンドワールドのアプデが入るから、その前に収集できるデータは収集しときましょう。」

 

今日の部活は今のバージョンのセカンドワールドの散策になりそうだ。

 

「今回は随分大きなアップデートになるって聞きましたけど。」

「そうね、今回のアップデートでメインシナリオが出るらしいわよ。」

「え、シナリオですか?」

「そう。」

 

ネクストワールドは、もう一つの世界というコンセプトで作られたゲームだ。だから特に大きな目標とかは無く、好きなスキルを好きに上げて、好きに生活するという自由なゲームだった。

それぞれのプレイヤーが好きなロールプレイをできるようにするならば、大きなシナリオは必要ないのではないだろうか。

 

「まあ今までただ単にNPCのクエストをこなすだけだったし、ちょっとしたスパイスくらいに思えばいいんじゃない?」

 

私が難しい顔をしていたのか、先輩が私を見て言った。

 

「そうですね。」

 

疑念は晴れなかったが、とにかくそのことは忘れることにした。

 

アップデートした後に考えよう。今は部活部活!

 

そう思考を切り替えて、私はVRを装着した。

 

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