伝説の転生者の物語   作:ゆっぴー

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第十話 偉大なる航路で少尉は思わぬ拾い物を

その翌日、今イープは自分の上司である大佐(昇進した)と向かい合って互いをにらみ合っている。そして大佐の方は自分の身長と同じくらいの長さの金棒(約3m)を右手で担ぎ、一方イープの方は両手で飴であるチュッパチャップスを構えている。

 

何でこうなったかというのをアバウトにまとめてみると、船員の一人が「大佐と少佐ってどっちが強いのでし ょうか?」と言いい、 じゃあ実際にやってみよう的な雰囲気になって成り行きで互いに一触即発状態なのである。海兵たちも最近戦闘が無くてフラストレーションが溜まっているのだ、たまには発散しなくてはいけないのだ。

 

「少尉、本当にそんな武器で良いのか?」

 

「大佐にチュッパチャップの武器としての素晴らしさを教 えてあげるよ」

 

その一言を合図に大佐が金棒をイープ目掛けて降り下ろす。巨大な質量を持ち重力を味方につけた重い一撃はイープの得物とぶつかった時ガァン!という大きな音をたてるがそれだけである。それをイープは右手のチュッパチャップス、いやチュッパチャップメイスで軽く受け止める。

 

「なっ、そんな糖分の塊のような物で俺の一撃を防げるのか…!」

 

「技術(覇気)の差だよ、大佐。そしてチュッパチャップスの利点その一としては軽いから両手で扱えることかな」

 

そう、何を隠そうこのチュッパチャップス、本当種も仕掛けもないただのチュッパチャップスなのである。よって非常に軽いのだ。

 

イープはそう言って左手のチュッパチャップスで大佐の金棒を殴り壊す。普通はあり得ない事だが、この世界にはには"覇気" という不可能を可能にする素晴らしいものが存在するので飴で鉄の塊を壊すことも出来るのだ。

 

「んなっ「呆けている暇なんて無いよ、大佐ぁー?」… …くっ、鉄塊『剛』!」

 

と大佐は最強の『鉄塊』で受け止めるがそれでは甘い。 チュッパチャップスのイチゴ味の10倍は甘いのである。 そんな甘っちょろい『鉄塊』じゃあイープの蹴りを防ぎ切れるのは判断が甘いと言える。当然イープは大佐が『鉄塊』をかけているのにも関わらず力のごり押しで大佐を蹴り飛ばし、壁に叩きつける。

 

「チュッパチャップスの利点その二は、安いから大量生産が可能なことだよ!」

 

本当にこれは安い。もう剣一振りとか銃弾一発と比べるのが間違っているくらいに。 まさかの驚異の四十ベリーである。大体前世でも同じ値段だったことからやはり一ベリー=一円なのだろう。ガープ中将も「拳骨流星群!!」とか言って鉄球を飛ばすよりもこの飴を投げ飛ばした方が遥かに海軍の財政のためになる事は言うまでもない。それに並みの海賊ならそれでどうにかなるだろう。

 

そんなことをイープは考えながらコートに仕込んでおいたチュッパチャップスを何本か取りだし棒の部分を先にして投げる、投げる。そして大佐の服をチュッパチャップスで縫い止め、更に持っているチュッパチャップメイスを大佐の首に突き付け、

 

「この勝負は僕の勝ちかな」

 

「ああ、そうだな。俺の負けだ」

 

と試合を終わらせる。

 

「チュッパチャップメイスの利点その三は、非常食になる。あ、食べる?」

 

と言ってイープチュッパチャップスを一本くわえながら大佐にも一本渡す。因みにイチゴ味である。これはイープのお気に入りなのだ。

 

こうしてイープは自分がこの船で最強であることを証明した (クザン中将よりは強いけど、まだ戦っていない)。

 

というかクザン中将は何時になったら帰って来るのだろうか。

 

 

 

昨日この船で渇れの名が最強であることをここに証明したスコウェルト・イープ。別にFORTIS931を名乗るつもりは無いが。名前は"スコウェルト・イープ"で充分である。そして昨日の一件のお陰でイープの発言力が更に大きくなったりしている。最早実質の船のトップである。

 

海軍は四才児に色々任せてて大丈夫なのかどうか不安である。しかしイープの中身はもう既に二十二才程でそこそこの青年であるが。いや、それでも見た目四才児に任せている海軍は倫理的に問題があるだろう。

 

 

 

ピクンッ、と何時も通り海賊船の存在を相手に気取られる前に感知する。

 

「はーい、皆さん!海賊船を発見したよー!二時の方角に2km!」

 

今回も趣向を変えてみようと"帝"を構えるイープ。といつも通り軍艦の壁の上、海賊船に最も近い所に立って"帝"を使って海を『地平切り』の要領でたたき切る。

 

「しょ、少尉が海を切って津波を起こしたぞー!!」

 

ザッバァン、と当然イープに作られた巨大な津波は海賊船を飲み込み海の藻屑へと劇的なイメチェンを施す。これをどうにか出来る人はもう人間辞めてるだろう。こんな災害級の大技を遊び半分で出来るイープも十分人間辞めているが。

 

「よーし、今日もいつも通り回収宜しくねー」

 

何処をどう回収できるのかは分からないがこれは決まり文句なので仕方がない。しかしそれにしても、最近海兵の中でイープが本格的に人外として扱われてきているのは決して気のせいではないだろう。

 

例えば今、イープのことを約九割の海兵が化け物を見る ような目で見てる。それに食堂へ行くと入口で海兵が敬礼しながら道作る。極めつけはその時に「お勤めご苦労様です!」なんて言ってくるのだ。正直ここまでくるとイープも困る。イープは自由業の人ではないのだから。どちらかというと皆を守る海兵なのだから。加えて言うならば、チュッパチャップスが切れたとき に「早く補給してこい!少尉がこの船を沈めるぞ! 」とか言ってくるのだ。海兵の中でイープは何なのだろうかと小一時間問い詰めてやりたい。もっとも、そんな悩み事は翌日になればもう今日は吹っ切れているものだが。いや、吹っ切れたというかうか悟った(諦めたとも言う)という方が正しいが。

 

そして今日もいつも通り海賊船を潰していると、

 

「七時の方角に海賊船発見!距離は5km!でも……この感じは中に奴隷がいる…?」

 

『奴隷』。 その一言で船内がざわつく。奴隷と言ったら言わば人質のようなのであるからだ 。サカズキ中将ならば問答無用で焼くだろうがイープをはじめとするクザン中将の部隊の人たちはそこまで過激ではない。

 

「あの髑髏は……"外道"のラーチェトの海賊団だね 。あの船に寄せられそうかな?」

 

とイープの問いに、

 

「いえ、あっちの方が船脚が速いので追い付けそう にありません!それに追い付けたとしても、あちらには"人質"がいるのでそれは得策ではないかと… 」

 

と海兵が答える。確かに相手に人質がいたら海兵も全力で戦えないだろうし、それは命の危険に繋がるからだ。

 

「うーん、じぁあ僕が直接奴隷を人質に取られる前に殲滅するしか無いね」

 

と言い海兵が次になにか言う前に

 

「『月歩』」

 

船を離れる。 イープはあの島で体力もかなりつけたから、5kmならギリギリ『剃刀』でいけるのではないかと思い『月歩』から『剃刀』に切り替える。だが途中で無理だと悟ってやはり『月歩』で走ることにしたのだが。海賊船の上空で海賊たちに悟られないような高度にいるイープ。しかしここまではほんの準備運動に過ぎない。ここからが本番である。まずイープは人質の閉じ込められている部屋を見聞色の覇気で探す。それで人質は皆船の中の下の方にかためられていると分かった。 つまりは看板でどれだけ暴れても大丈夫、問題無いということである。

 

そして船の真ん中に『剃刀』で降り立ち、

 

「スラマッパギー、海賊の皆さん。海軍本部少尉の "剣帝"スコウェルド・イープですよー 」

 

と近くにいた海賊を斬って着地、自己紹介をする。

 

「早速だけどさ…」

 

満面の笑みを浮かべながら一度一呼吸置いて、"帝"を両手で体に巻き付ける ように構えて、

 

「壊滅しなよ、『ミキサー』!」

 

一気に横薙ぎに振るう。 そして、

 

グロォォオ!と看板上にある全て、人も壁も食べ物も財宝も、同じく無慈悲に天まで届く巨大な竜巻が巻き上げる。多分これが"普通"の竜巻だとしても彼等が無事であるわけは無いが、この竜巻は"剣帝"スコウェルド・イープクオリティの斬れる竜巻である。多分今頃巻き上げられた海賊たちはミキサーにかけられた野菜ジュースの様になっているだろう。

 

同時刻、先程イープ少佐が飛び出して十分も経っていない軍艦では職務怠慢も良いところだがトランプに洒落こんでいた。上司も上司なら部下も部下である。ただし、中将の直属とあって実力は折り紙つきだが。

 

普通四才の子供が六式の一つである『月歩』なんて使ったら驚くべきなのだろうがこの船ではそんなことはない。何故ならばその子供が"スコウェルド・イープ"だからである。そう、この物語の主人公である彼はたった数ヵ月で軍艦の海兵全員から圧倒的な信頼を勝ち取ったのである。

 

そして海兵の一人が、

 

「そろそろ回収に向かった方が良くないか?」

 

と口にしたその時、

 

グロォォオ!と轟音が鳴り響き、天まで届く巨大な竜巻が発生する。そして海兵の全員がその瞬間にこれを引き起こした人間が誰であるか悟る。実力のある海兵全員がドン引きである。

 

そんな中、海兵の1人が呟く。

 

「俺、少尉に昇格出来る気がしないんですが…」

 

彼は期待の新人としてエリート街道をまっしぐらするつもりだったのだが目の前にいるスコウェルト・イープ少尉に海軍本部将校の絶対的な越えられない壁を見せ付けられて諦め気味である。

 

「大丈夫だ、イープ少尉が異常過ぎるだけだ」

 

落ち込んでいる部下を慰めるのは上司の役目と言わんばかりにこの船で最も位の高い大佐が新人をフォローする。そのフォロー船員の全員が激しく同意した日常の一コマであった。

 

船底しか残っていない海賊船ではイープが一ヶ所にまとめられて鎖で首と両手を繋がれている男女五人を見つける。

 

「スラマッパギー、海軍本部少尉の"剣帝"スコウェルド・イープですよー。皆をこれから保護するけど…」

 

と五人を一瞥して、

 

「君、賞金首だよね」

 

と一人の男の首を何の予備動作も躊躇いもなくはねる。

 

「他の皆は大丈夫だね」

 

と残った四人に言うもののイープと彼らの間には既に溝があるようだ。当然だろう、見ず知らずの子供に目の前で一応知り合いが殺されそれから返り血で全身を染めながら何事も無かったかのように接してくるのだ。彼らはイープに対して恐怖以外の感情は抱けないだろう。

 

「じゃあ鎖の鍵鍵鍵かーぎ…」

 

と皆を解放するために鍵を探すイープはあることに気が付く。

 

「あっ鍵、斬っちゃったわ」

 

語尾に"(笑)"なんて付きそうな口調で言うが全く笑えない。非常に笑えないだろう。何故ならこれから一生涯この鎖と仲良く暮らしていかなくてはいけないのだから。つまりは自分が奴隷であったことを一生周囲に知らせながら生きていかなくてはいけないのだから。しかも都合悪く鎖は海楼石製、絶対に斬れないのだ。だから首の繋がっている四人はイープを睨み殺すかの様な勢いで睨む。

 

「てへ、悪かったね、ごめーんね。でもまさか鎖が海楼石製とはね…ちょっと首出してくれないかな?」

 

と言って"帝"を抜く様は自分の不祥事の証拠隠滅のために目撃者を殲滅するようであるため誰も首を差し出さない。差し出す訳がない。

 

「むー、やりにくくて少し難易度は上がるけど…」

 

と言ってイープにとっては無造作に、しかし見る者が見れば美しく洗礼された刃物さばきで"帝"を振るう。ガチャンと一斉に海楼石製の鎖が断ち切られて、奴隷たちが解放された。これは技術さえあれば何でも斬れる異世界最高の名刀"帝"とそれを持つに相応しい世界最高の剣士スコウェルド・イープだからこそ出来る技である。こうして男三人女の子一人の計四人の元奴隷を救出したのであった。

 

そして無事に元奴隷たちを保護し船底しか残っていない海賊船に軍艦の方から来てもらい彼らを乗せた後にイープが一言、

 

「拾ってきたは良いけど育てられる自信がない」

 

「「「「犬じゃねえよ!」」」」

 

呟いた瞬間に示しあわせたかの様に皆でツッコミを入れる。しかし厳密に言えばツッコミを入れた皆は間違っている。何故なら、

 

「ゴロニャーン」

 

「よしよーし」

 

元奴隷だった紅一点のイープよりも年下だった女の子は悪魔の実動物系"ネコネコの実モデル三毛猫"の能力者だったからだ。しかし三歳位の女の子を奴隷として飼っていた海賊たちは色々問題だろう。やはりペースト状の人肉ジュースにしておいて良かったのである。勿論大変美味しくいただきませんでした。

 

「あと奴隷の一人、海賊だったから首はねといたよ」

 

今回は珍しく死体が残ったので回収して本部に持っていかなくてはいけない。面倒だな、と言いながら海兵が辛うじてお世辞なら船と呼べるかも知れない木片に行って死体を回収してくる。

 

「で、お前らは何処に連れてけば良いんだ

?」

 

と大佐が事務的な話に移行する。当然と言えば当然の話だろう。彼らにも家庭があるのだ。奴隷から解放してもらったところで両手を挙げてハッピーエンド、なんて訳は無いのだ。寧ろここから家に帰るまでが本番と言っても過言ではない。

 

大佐が皆から下ろして欲しい場所を言っていき、紅一点の猫娘名前はシロン・スチルドパッドは家が無いということが分かった。というかどこにあるのか覚えてなかった。

 

「貴方には渡せない!この子はうちで引き取ります!」

 

「「「「何処で覚えやがった、そんな表現を!」」」」

 

「いやでも実際マジで年が近い僕がこの子と一緒にいた方が良いと思うんだよね、うんって言うか少尉命令異論は認めん」

 

「…まぁ、この子がいいって言うのなら良いだろう」

 

キリッと効果音が付きそうな勢いで後半捲し立てるイープ。これには上官の大佐も頷くことしか出来ずにいた。

 

「で、スチーはどうしたい?」

 

「にゃん?すちー?」

 

「うん、スチルドパッドだからスチー。スチーは僕の妹になりたい?それともなりたくない?」

 

「にゃん、よろしくお願いしますにゃん。おにーにゃん♪」

 

こくり、と頷いてイープに同意するスチー。

 

「こっちこそ宜しくね、スチー!」

 

「ふにゃぁぁあん!?」

 

と抱きついて喉を撫でるイープとその高い技術に悶絶するイープの妹シロン・スチルドパッド。名字も違うし血も繋がっていないが良い兄妹になるだろうとこの場にいる誰もが思った。




小ネタ等の解説
スラマッパギー…アニメ"日常"のゆっこがこの挨拶をしていた。

ごめーんね…漫画"凍牌"に出てくる五十何年間負けなしの男の台詞。

貴方には~私が引き取ります…浮気した夫に対して一児の妻が言いそうな台詞。
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