伝説の転生者の物語   作:ゆっぴー

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これにて第一章は終了でごわす。




第十一話 偉大なる航路で為正者は引き継いだ粛清を

ここは偉大なる航路のとある海域。上も下も青一色だ。

 

「きゅぴーん!海賊船発見!狙撃『大槍』!」

 

こんな平和な晴天の空、また悪が滅んだ。

 

「わぁぁああ、おにーにゃんすごいにゃん!」

 

イープの超長距離型殲滅砲、通称狙撃『大槍』はスチルドパットのお気に召したようだ。彼女曰く、

 

「ぶおんがだーんとなってどっかんがすごいにゃん!」

 

とのこと。何言っているのは分からないが彼女が気に入っているのならばそれで良いだろう。

 

 

 

 

「うにゃー、すちーお腹すいたにゃん」

 

くぅーと可愛らしい音を立ててしょんぼりするスチルドパット。お腹の音があれだったからといってオレンジジュースで済ます気はイープにはない。

 

「スチーはお肉派?お魚派?」

 

「どっちも好きにゃん!」

 

イープの問い掛けにばんざいで元気よく答えるスチルドパット。イープはそれにふむふむと答えると『月歩』で何処かに行ってしまった。

 

 

 

そして巨大な海王類の巣窟、凪の帯上空にイープは到着して叫んだ。

 

「肉と魚の両方食べたいなら魚肉が良いよね!」

 

イープの中では牛肉の様な肉を持つ魚の肉が魚肉らしいのだが彼がそう思うのならそうなのでしょう。

 

しかしこんなところでおちおちしている暇はない。今のイープの唯一の家族で最愛の妹、スチルドパットがお腹を空かせてにゃーにゃー言っているのだ。時は一刻を争う。

 

「海は潜れないけれど!銛は突けないけれど!帝で奴らを刺し殺せる!狙撃『大槍』!」

 

丁度海王類の心臓を射抜くように手加減をして巨大な海王類を一匹仕留める。仕留めて浮き上がってきた海王類を背負って後は船に戻るだけだ。

 

 

 

「わぁぁああ、おおっきいにゃぁぁん!!?」

 

少し頑張りすぎたせいで非常に疲れたがそれもスチルドパットの笑顔を見れば吹き飛ぶというものだ。

 

スコウェルド・イープが会って間もない子供を家族として迎えて、そしてここまで手厚く、大切に扱っているのには理由がある。スコウェルド・イープの前世、御劔 帝は家族という物を知らなかった。別に両親と死別した訳ではない。ただ両親が全く御劔の相手を、子育てをしなかったのだ。所謂ネグレクトというやつだ。

 

それは御劔が物心ついて割りと直ぐの事だった。『もう子育てに疲れた』とだけ言い残した両親はそれっきり食事、洗い物、洗濯、掃除、ゴミ出し、それら全てを放棄したのだ。親のしたことといえば気まぐれにリビングの机になけなしの生活費を出すだけ。なまじ賢かった御劔は家事を少しずつだがマスターしていった。しかし自分の作った料理がどれだけ美味しく出来上がろうと、自分の編み出した食器洗剤の配合がどれだけ上手くいったとしても、ちょっといい洗剤を使って衣服がどれだけ上手く柔らかく仕上がっても自分で作り上げた小道具で家がどれだけ綺麗に成ろうとも、ゴミ出しで近所の人にどれだけ誉められても御劔は満たされなかった。もっと御劔自身も何かは分からないなにかに飢え求め続けた。それが家族ということに気がついてからはいくらか彼らの気を引こうと努力したが出来たことと言えば高校の授業料を払うようになっただけだった。

 

そんな飢えに飢えていた御劔 帝だったからこそ事故で死んだ後ラヴィサメに見初められてその世界に連れてこられたのだ。そしてラヴィサメとの死合で"殺し会うことで人と繋がれる"ことに気がついたイープはこんな性格に捻り曲がってしまったのだ。そしてそんな捻り曲がったイープだからこそイープは病的に家族を愛するのだ。

 

 

 

そんな船長脱走の連帯責任を取らされて和気あいあいと追加の航海を上から申し渡された一行に新たな指令が入る。

 

それは『定時の連絡が無かったとある軍艦の調査』だ。偶然本来連絡が無かった船が居るはずである場所の近くにこの船がいたから下った命令なのだが、これが終わればマリンフォードに帰っていいと許可が降りたので渡りに船、即刻首を立てに振った大佐であった。

 

 

 

その三十分後。

 

「おーおー、例の船はっけーん。状況は……成る程ね、うんうん、腐ってるね」

 

「……腐ってるとはどういう意味だ、イープ少尉?」

 

見聞色の覇気のこの船一番の使い手であるイープだけが例の船の状況を知ることができた。

 

「軍艦が謀反を起こしてるね。そして逆らうやつは皆殺しと。生き残った"海兵"はただ一人だけだね」

 

「まっ待ってください、少尉!」

 

「んー?」

 

状況を伝えてさっさとその軍艦まで飛んでいこうとするイープだが部下の忠言に一応耳を傾けておく。

 

「あの船の船長といえば海軍本部少将「"元"少将ね」海軍本部元少将キクリング・ポロは覇気を使えて更に悪魔の実動物系"トリトリの実モデル軍鶏"を食べた能力者で次期中将は確実と言われた猛者なんです!いくら少尉がめちゃくちゃだとしても…悪いことは言いません!悪魔の実シリーズ最強の自然系"ヒエヒエの実"の能力者のクザン中将を待ちましょう!」

 

この新兵は色々間違いを犯している。先ずはイープ自身も彼の言う悪魔の実シリーズ最強の自然系"ドロドロの実"の能力者であることだが、一番の間違いは違う。彼の一番の間違いは、

 

「僕が"たかが"能力者の"たった"少将"風情"に負けるはずがないよね。ね、スチー?」

 

「おにーにゃんは無敵にゃん!」

 

イープの実力が少将以下だと思ってたことだ。スチルドパットの声援を背にイープは『月歩』で敵艦まで走っていった。

 

 

 

「スラマッパギー、皆。僕は海軍本部少尉"剣帝"スコウェルド・イープだよー」

 

船に残った唯一の生き残りの十五、六ほどの女を庇うようにイープは着地して高らかに宣言した。

 

「ふえ!?きっ、君!ここは危ないから逃げてください!」

 

海軍のダサい制服を着ているところを見ると彼女は一等兵以下。それなのに少尉のイープに命令とはどういうことか。この船の船長のやっていることを鑑みると部下への教育が不徹底であることも頷ける。

 

「うん、先ず君、僕より階級下だよね。僕海軍本部将校だしね。敬語使おうか」

 

だがそれに納得できるかはまた別問題だ。例えイープが敬語なんて使う気が全く無かったとしてもだ。

 

「ふっ、ふえ!?しょっ、しょしょ少尉!?もっ、ももももと申し訳ありません!私は海軍本部雑用クランカー・ドーです!」

 

まさにこの紋所が目に入らぬか状態だ。びしっ、と敬礼を決め直立不動のドー。

 

「「「「無視してんじゃねー!!」」」」

 

「うん、クランカー・ドーだね。じゃあドー、君は泳げるかな?」

 

「ふえ!?はっ、はいっ!泳げまする!!」

 

口調が色々おかしなことになっているがそれが彼女の愛嬌なのだろう。

 

「「「「だがら無視すんなー!!!」」」」

 

周りが何やら五月蝿いがそこは無視だ。イープはドーの襟を掴んで、

 

「『クランカー・ボール』発射っ!」

 

船まで投げた。彼女はギャグ補正でなんとか助かっているだろう。メタい。

 

「んで、誰がキクリング・ポロなのかな?」

 

ドーを投げ飛ばしたイープは『良い仕事しました』と全身でアピールして一応聞いておく。覚えていたら彼の死体だけは身元特定できるようにしておこう、というイープなりの配慮なのだ。

 

「ああ?海軍本部少将の俺に何の用だ、海軍本部本部少尉君?この人数相手なら逃げた方が身のためじゃねぇの?ギャハハハ!」

 

群衆の中から出てきた大柄な男彼こそキクリング・ポロ。しかし彼もまた新兵と同じ過ちを犯している。

 

「はぁ~だからさ、"たった"二百人と"たかが"少将程度に僕が負けるはずがないよね」

 

そう言うや否やイープは身近に居た雑魚を真上に投げる。

 

「Go!Go!Go!Go!Go!Go!Go!Go!Go!Go!」

 

投げる。投げる。投げる。投げる。投げる。

 

「……まぁ、これで"たかが"少将風情だけになったけどね」

 

「はっ、雑魚が何人居ようと居まいと関係ねえよ!ギャハハハ!俺はあんな雑魚の様にはいかねえ!」

 

キクリングが身構え能力を発現しようとするが、ドカン!という破裂音と船の揺れによって失敗する。

 

彼はいくら雑魚は要らないという信条を持っていたとしても今回はイープを止めるべきだったのだ。もしそうしていれば船は失わずに済んだだろう。

 

「『ゲリラGo!雨』。うん、即興で作ってみた技だけど中々良さげだね」

 

落ちてくるのは先程イープが投げた人、人 、人、人、人。イープの武装色の覇気は纏った彼らの死を防ぐことは無かったが一人一人が高威力の砲弾にして見せた。計二百発の砲弾に晒される船の末路は沈没しかあり得ない。

 

「嘗めやがってクソガキが……お前も道連れだ!」

 

船が沈めば能力者のキクリングも一緒に沈むことになる。駄菓子菓子、この下手人のイープを道連れにしようとするのは当然の流れだ。

 

メキョメキョとキクリングが能力を発現してその姿を変えてゆく。

 

「わぁ…」

 

背も元から99cmイープの二倍の2mあったのだが三倍の3mに伸びた。だがイープが一番驚いたのはそこではなく、キクリングの姿だった。

 

「バッ、バシャーモ…!?」

 

確かにバシャーモの進化前は若鶏かもしれないがこれは無いだろう。"白ひげ"がこの世界を滅ぼす能力者ならばキクリングは世界観を滅ぼす能力者であろう。

 

「お前だけは生かしておけない『二度蹴り』!」

 

著作権的に非常に危険な技を放つキクリング。この小説ごとイープを葬る気か。

 

『紙絵』でキクリングの『二度蹴り』をかわし、『剃』で距離を取ったイープ。しかしまたキクリングがしでかす。

 

「『高速移動』!」

 

彼の父親も『高速移動』を使えたのだろう。イープの『剃』に近い速さでキクリングも移動し更に『二度蹴り』。イープはこれもかわして先程よりも速い『剃』で距離を取るもまた追い付かれる。

 

「俺は時間が経てば経つほど"加速"するぜ!」

 

最早何も言うまい。確かに夢の世界の彼は"加速"する使用であるのだが。何だこの釈然としない気持ちは、とイープは首を傾げる。その答えは『違和感』だろうがそう答える人はいない。

 

しかしいくら加速したからって、

 

「いくら雑魚の素早さが四倍になったところで僕に追い付ける筈がないし、僕に勝てるわけが無いのにね」

 

これが80族の限界。確かにキクリングは今までは一度相手の攻撃を見切ればどんな相手より速くなれる様に調整してきたかもしれない。だが今キクリングが相対しているのは130族、160、180族なんて枠組みに当てはまらない正真正銘の怪物"剣帝"スコウェルド・イープだ。こんな下司に帝を抜かないと決めているイープだが、それでも二人の差は埋らない。

 

「ここまで来たら…反動がキツいがそんなことは言ってられねえ!食らえ最終奥義『フレアドライブ』!」

 

炎を纏ったキクリングがイープに向かって自らを燃やしながら突進してくる。まさに最終奥義、ウルトラダイナマイトだ。

 

しかしいくら燃えてようが覇気を纏ったイープには関係ない。

 

「えい」

 

そのまま突撃してくるキクリングの首を掴まえると、乱暴に背負い投げするかのように掴みながら投げ、首から下を遠心力で何処かへ吹き飛ばした。

 

「あっ、手羽先どっか行っちゃった!」

 

イープは何時何処でも平常運転だ。

 




小ネタ等の解説

お腹の音、くぅー、オレンジジュース…Qoo果汁30%。作者はサンキスト派。

バジャーモ、小説ごとイープを葬る…バジャーモはポケモンというゲームのキャラ(ルビー、サファイア、エメラルド)。かくとう、ほのおタイプ。

二度蹴り…にどげり。威力30×2かくとうタイプ。

高速移動、父親…父親が『こうそくいどう』を覚えていてなおかつ母親がアチャモ、ワカシャモ、バジャーモならば『こうそくいどう』を覚えたアチャモが生まれる。アチャモが二回進化するとバジャーモになる。

夢、加速する…本来のバジャーモの特性は『もうか』なのだが"隠れ特性"またの名"夢特性"では『かそく』となる。素早さは最高で四倍まで上がる。また『かそく』バジャーモは『こうそくいどう』を覚えられない。つまりキクリングはチート仕様。

80族…バジャーモの素早さの種族値が80。また種族値が80のポケモンの事を指す。

一回加速すれば抜けるように調整…すばやさのステータスを134で130族が抜ける。70族まで可能。

130族…大体こいつらを抜ければいい。すばやさのステータスは200。サンダースやクロバットが有名。

160族…テッカニン。特性が『かそく』なため事実上抜けない。

180族…デオキシス(アタックフォルム)。幻のポケモンなためまずバジャーモとやりあうことはそうない。因みにデオキシススピードフォルムは190族。

フレアドライブ、ウルトラダイナマイト…フレアドライブは自分のHPを削る。ブレイズキックと応相談。ウルトラダイナマイトは自分の寿命を削るウルトラマンタロウの技。因みに削られる寿命は人で言うなら恐怖新聞より安全らしい。

手羽先…鶏の手。
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