伝説の転生者の物語   作:ゆっぴー

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第十五話 孤島で剣士達は味の濃いディナーを

この前ラヴィサメに言われた通りに甘美なデザートを楽しんだ"剣帝"スコウェルト・イープ。確かに一時的に嫌なことを忘れさせるにはデザートが一番だ。だがデザートは所詮は一時しのぎに過ぎない。直ぐに嫌なことを思い出す。ただこの海は海賊が多くて嫌な事を忘れるデザートに困ることはないから鬱状態にはなっていないのだが。寧ろ海兵が鬱になりそうである。あれからまだ一週間しか経ってないのにイープが食らったデザートは軽く千を越え、海賊団の数にするともう二十を突破する。そのお陰でイープの正義のコートが真っ赤に染まってしまい、自慢の茶髪も返り血で赤黒くなってしまった。デザートを食っちゃ寝なんてしていたらそれはコートの汚れは取れないし、髪だって血がこびりついて固まってしまうだろう。別にイープは後悔はしてないが。

 

しかしあの事を完全に忘れさせてくれるには甘ったるいデザートではダメだ。それでは腹は膨れない。満足出来ない。やはり理性をぶっ飛ばすような強敵、メインディッシュでなくては全然足らない。満腹になるような、満足出来る様なとびっきりのメインディッシュでなくては。

 

そんなある時かなり強い海賊団、しかもその中の二人は下手すると大将クラスの化け物を発見した。これならイープを満足させられそうである。

 

「海賊発見。潰して来るよ…」

 

とだけ言い残していつも通り『月歩』でその海賊船に迫るイープ。後ろで海兵が色々言ってるけど、そんなものには無視を決め込む。今のイープにとっての最優先事項はメインディッシュなのである。しかしその海賊団の掲げるどくろでさっきは皆してイープを止めようとしてた理由が分かる。左目に三本の傷があるドクロの後ろで剣が交差した海賊旗に、竜の船首。 間違いなく"四皇"シャンクスの赤髪海賊団の船レッド・フォース号である。

 

そしてその船に乗っているもう一人の怪物はシャン クスのライバルで友人、世界最強の剣士"鷹の目"ジュラキュール・ミホークである。

 

初めて会うシャンクスはともかくとして、一度闘ったことのあるミホークの気配にも気付けないなんて、イープは相当参ってるようである。

 

そしてレッド・フォース号に乗り込んで、

 

「スラマッパギー。久しぶりだね、ミホーク。全然変わってないね」

 

「そう言うお前は雰囲気が変わったみたいだな」

 

取り合えず挨拶をする。戦う気は満々だけど、原作でもイープはこの人たちの事は結構好きだったのだ。速攻で宣戦布告はしないでおく。下手したら戦争になるということもある。出来れば戦争にならないように殺し合いがしたいのだ。

 

「ちょっと職場の雰囲気が合わなくてね」

 

「だったら俺の船に乗らないか?同じく赤髪だしな 」

 

とシャンクスは誘ってくるが、

 

「有り得ないね。あとこの髪は海賊の返り血で染まったものだからね。本当は茶髪だよ」

 

速攻で断る。イープだって正義を背負ってる海兵なのだ。上司が気に食わないからって海賊に身を落とす気はない。

 

「あっはっは!!そうか、それは悪いことを言ったな 」

 

「別にいいよ」

 

とシャンクスはすぐに諦める。

 

「それにさ、」

 

とイープは再び口を開き、

 

「僕より弱い奴の下につく気は無いしね」

 

と付け加える。 ぶっちゃけた話、こっちからでなくあっちから宣戦布告してもらうように喧嘩を吹っ掛けているのだ。海賊なんて殆んどの奴が単純である。子供に馬鹿にされ、喧嘩を売られたら、

 

「誰がお前より弱いって……?」

 

大抵の奴は買う。笑いながら剣を構えるシャンクス。

 

「なら試してみる…?」

 

全てはイープの計画通りである。しかしやはりシャンクスとミホークの両名は凄い。流石は"四皇"と"王下七武海"である。そこにいるだけでイープの理性をぶっ飛ばしそうである。

 

「それでは私もそれに参加しよう」

 

と"夜"に手をかけるミホーク。役者は揃った。しかしこんな所で三人が本気で戦うとなると被害が半端ない事になる。少なくとも船は沈むだろう。それを避けるために海賊たちが近くにある無人島で戦うように言う。

 

そして三人が移動して来たのがヤマメッチャオオイ島。この島の名前を付けた人のネーミングセンスを疑うが 、確かに山は多い。

 

そしてイープたち三人が自分たちの得物に手をかけたま ま静止して全く動かなくなる。

 

これはサシじゃなくて、三つ巴の戦いである。下手に抜刀した瞬間に他の二人から袋叩きにされてしまうのだ。サシだったらまだ対応出来るかもしれないが 、流石に世界最強クラスの人間二人が相手だったら化け物と名高い"剣帝"スコウェルト・イープも流石に不利である。

 

そして数秒、数分、いや数時間経ったかもしれない。とにかくシャンクスの目が一瞬、ほんの少しだけミホークに向いた瞬間にイープがシャンクスに仕掛ける。

 

『剃』で急接近し、

 

「非抜刀『瞬打』」

 

抜刀する勢いで"帝"の柄でシャンクスの溝尾を狙う。もっともこの刀身の短い"帝"で抜刀に時間がかかるとは思えないが。それでも抜刀には抜刀の戦い方があるのだ。そしてそのメリットを受けるために敢えて抜刀術を使ったのだ。厳密には抜刀してないが。しかし、

 

「危ないだろ」

 

とそれを軽々とジャンプでかわす。しかしイープの攻撃をかわすだけでは駄目である。そのかわした先には『夜』を構えたミホークがいるのだ。

 

だけどそれを今度はシャンクスも刀を抜いてそれを受け流す。だったら次はイープの番である。さっきの『瞬打』で"帝"を抜き、その勢いを殺さずに回転してミホークに斬りかかる。でもそれはミホークの"夜"に止められて、イープがミホークを力技でぶっ飛ばすだけに留まる。

 

これで皆得物を抜いた。こっからが前哨戦である。

 

全員が刀を構えて、三人の真ん中に一斉に斬撃を繰り出す。

 

ゴォォォオオオ!と三人の斬撃が衝突し、その衝撃が曇天の空をこの島の上空の雲だけを切り裂き晴天に変える。

 

各自相手の遠距離の実力は測れたことだし、次は手元が得意かを計る番だ。

 

全員同じことを考えていたのかイープと同時に先程斬撃がぶつかった所に駆け出す。ミホークの"夜"がシャンクスを縦に切り裂こうとし、シャンクスがそれを回転してかわして、そのままイープを横に切ろうと襲いかかる。 そしてイープはそれを跳んでかわし、ミホークの側頭部 に『大槍』を入れるも、それはしゃがんでかわされ る。

 

ザァァアン、ヒュン、バアゴォン!と外れたミホーク、シャンクス、そしてイープの斬撃が海を割り、森を切り、山を破壊する。

 

「"四皇"と"王下七武海"の名前は伊達じゃないね。 まるで化け物だよ」

 

「ふん、私たちとまともに打ち合える貴様も十分化け物だ」

 

「悪かったな。えーっと、スコウェルド・イープだっけか?お前は十分強いな!」

 

と小手調べの感想をそれぞれ述べる。

 

「でも……」

 

僕が口元をニヤつかせながら、

 

「「「ここからが本番だよ ((だ))!!」」」

 

と三人でハモらせる。

 

そして三人で再び打ち合いを始める。 今度は本気で。誰かが一人を攻撃すれば、もう一人が攻撃した人間を攻撃し、次誰かが一人を攻撃すればもう一人もその人間を攻撃して、一時的な二対一を作ったりと、 戦いはその瞬間に姿形、又優勢劣勢すら変えてゆく。

 

戦いの余波や当たらなかった斬撃が、空を割り、山を砕き、森を消し飛ばし、そして海を荒れ狂わせる。まさしく天変地異。 この言葉がぴったりと当てはまるだろう。

 

そして数時間打ち合って、三人とも満身創痍になり、そろそろ限界に近づいてきた頃。確かにイープは、もっと冷静に時間をかけてゆっくりと勝利を最優先に考えて戦えば、もう少しは優位に戦いを進められただろう。でも今回はそれが大切じゃない。今イープが求めているのは勝利ではなく今まで考えている悩み事何かをぶっ飛ばすような強烈な素晴らしい香辛料のかかったメインディッシュ。それを楽しむためなら自分の体を、命を度外視した過激な戦い方をするのだ。

 

それで今の状況はシャンクスとミホークに見事に挟まれている状態。相談してないがこのまま挟み撃ちが来るだろう。

 

そして二人が接近して前後から同時に襲いかかって来るが、二人の攻撃が当たる直前に、

 

「かかったぁ!『ミキサー』!」

 

ブワァァァアア!とカウンターで完全に決まったイープの『ミキサー』は世界最強クラスの剣士二人を巻き込んで斬り刻みながら巻き上げる。 そして落下した瞬間に二人の脳天に人指し指を構えて、何時でも『指銃』を出来るとアピールする。

 

しかしイープは今回はギリギリであった。やはりここ最近食っちゃ寝ばかりで食べた物も肩ロース、タン、ホルモン、ハツ、もも肉だけだと栄養も偏ってしまう。つまりイープの体調は万全とはほど遠いのだ。 だからこの『ミキサー』でもそこそこ斬られはしたが、完全に決まったはずなのにミホーク、シャンクス共に致命傷は一つも無く、落下した瞬間は蓄積してきたダメージがでかくて流石に綺麗な着地は出来なかったものの、直ぐに立ち上がるだけの体力も残っていたのだ。

 

しかしこんな強烈で美味しかったメインディッシュを味わった後もデザートと違って虚無感がない。残ったのは味わっていた時と同じ位の強烈な後味である。

 

それを味わってイープは今までウジウジしてたことが馬鹿らしく感じた。今の海軍が気に食わないんだったら、自分がトップの元帥になって海軍を変えれば良いのだ。それで世界を変えるには"四皇"と"王下七武海"ぐらい片手間で倒せるくらいにならなくては駄目だ。人は目標が出来ると努力ができる。そして目標の為の努力は嫌なことを忘れさせるのだ。

 

「なんか吹っ切れたよ。ありがとうね。二人とも! 」

 

と二人に手を貸して立つのを手伝ってやる。

 

「気にすんな!」

 

と笑顔で返してくるシャンクスと、

 

「ふん」

 

と照れて、そっぽを向くミホーク。

 

そこに現れる謎の海賊船。物凄く興醒めである。空気くらい読めと言いたい。自分らがお呼びでないことくらいは分かって欲しいものだ。

 

無言で縦と横にスライスするシャンクスとミホー ク。そしてイープは、

 

「空気読もうよ!!狙撃『大槍』ぃ!!」

 

全てを瓦礫に変える。

 

さっきのは完全に無かった事にして、レッド・フォ ース号に乗り込む三人。

 

仲良くなったしシャンクスは討伐しなくていいやと海兵にはあるまじき事を考えているイープ。

 

因みにこの戦いが"ヤマメッチャオオイ平野の戦い "として後世に語り継がれるのはまた別の話。

 

赤髪海賊団から海軍本部少尉"剣帝"スコウェルト・イープの噂が流れ、海賊の中で大将と同じくらい危険視 される事になるのもまた別の話。




小ネタ等の紹介
非抜刀『瞬打』…イープの技。抜刀術と見せかけて、帝の柄でそのまま相手を突くフェイント。

イープは栄養の偏った物ばかり…生肉ばかり。カニバズム。

三人の実力…シャンクス>=大将>=ミホーク等(王下七武海)>=イープ
ただしこれらの人間は実力よりも時と場、運や気合いによって勝負の結果が左右される。
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