ラヴィサメに稽古をつけてもらった三年間は御劔にとっては地獄と形容できる、いやそれ以上だったと言えるだろう。
斬殺、刺殺、撲殺、銃殺、絞殺、毒殺、爆殺、圧殺 、感電死、溺殺、凍殺、焼殺……
ありとあらゆる方法で、そのなかでも百を越えるバリエーションで、例えば毒殺ならば毒の種類を変えるなど、で殺され続けた。
いや厳密には殺される寸前で回復させられ続けた。故に御劔にはこの三年間は地獄以上であったと言えるだろう。
勿論女性も唯殺し続けるだけではない。ちゃんと六式や覇気のコツなどを伝授している。もっともそれらを考慮したとしても明らかにこれは一般的には やり過ぎと言えるだろう。そう、ただしそれはあくまで一 般的には、である。女性にとってはこれはかなり甘い方である。
しかし女性は全くドロドロの実の能力の制御については教えなかった。そもそも女性は御劔が能力を持たせるべきかどうかですら悩んでいたのだ。つまり泳げなくなる、という大きなデメリットを抱えてまで手に入れるべきかと思っていたのだ。しかし女性が御劔に結局"ドロドロの実"を渡したのは事故死を避け、この三年間を生き残らせる為である。いくら最強の戦士と言えど一瞬の油断と一発の弾丸で容易 に絶命することがあるし、今まで数百越える人間がこの三年間を耐えられずに絶命してきた。だが"悪魔の実"シリーズ最強と謳われる|自然系(ロギア)の能力者であれば相手が格下である限り百パーセント敗北は有り得なくなるしこの三年間の生存率が多少は上昇するだろう。だから御劔に"ドロドロの実"を渡すことにしたのだ。 つまり別に御劔 帝が能力で敵を葬り尽くす事には全く興味が無いのである。
つまり剣技と六式に関して御劔は女性のパクり、または多少のアレンジを加えた程度のものであるが、能力に関しては全く別次元、女性の未知の領域なのである。故に能力を使えば女性と互角、いや互角以上に戦えるようになった。ただし能力を使わなかったらまだまだ女性に勝つことは出来ないが。
「面白れーな。アタシも本気でいってやるよ、化け物。『神通力』」
と能力を全開にしている御劔に対して、女性は管轄外の世界であるが故に全力の百分の一パーセントも出せない。とはいえこの世界で間違いなく指折りの実力を持っていることは間違いない"創造主" が本気をだす。
ボコッ、ボコッ、ボコッ…
とその島の周りにある島々が不可視理解不能な力によって持ち上げられる。その数は十五。
「本気で行くから死んだら一応ゴメンな?」
こうして"創造主"と創造主に育てられた"化け物"の戦いが始まった。
「……やるじゃ…ねえか………化け物が……」
「全く…師匠の戦い方も異常だね。……五分間脳みそと心臓止めて隙を待つだなんて出来ないよ。」
「バーカ。言っ……たろ?原型が……あるかぎ…り気…抜くなっ………て」
「って言うかあのときは右手首以外ミンチだったよね」
その戦いが始まってから直ぐに二週間が経った。双方時間を忘れてただ殺し合った。互いにその時間を楽しんだ。御劔は前世では蟻一匹殺せない、とは言わないが ここまで好戦的性格ではなかった。これも女性による性格の改変だろうか、それともその三年間で性格が歪んだのだろうか。
とにかくこの二人の戦闘狂のせいで周りの島々は砕け、偶然近くの海域にいた不運な魚は当然被害を受け自らの血で海を彩った。そして半分が海に沈んだ無人島で何とかで立っている化け物と最早顔の下半分しか残っておらず奇跡的に残った口でなんとか会話をする創造主。普通に戦えば絶対に勝てなかった世界でトップクラスの創造主を相手取って勝つことの出来る能力が手に入る"ドロドロの実"。当然デメリットもあるし使いこなせてないがゆえに出来る事も少ないがそれでも使えれば世界最強にだってなれるだろう。
「そうだね…イープ。スコウェルト・イープ。それが名前を忘れた化け物の名前にしよう」
「アタシの名前はラヴィサメだ。一応覚えときな。 アンタの旅路が血で塗り固められてアタシを楽しませられるものになることを祈ってる」
「あとこれからは宜しくね、"僕の帝"」
イープは元の主を殺したことで自分のものとなった現在の身長90cmのイープが丁度人を斬り殺し易いと感じる刃渡り20cmの帝に語りかけた。もうこの三年間帝を持ち続けて感じていた違和感は全く無く、帝を持った時から響いていた怨嗟の声も無く、極度の殺人衝動も自殺志望も無くなっていた。
こうして御劔 帝改め、スコウェルト・イープは師である創造主のラヴィサメを殺し、そして彼の新しい生活が始まろうとしていた。
イープがラヴィサメを殺して数日が経ったある日。 この島が無人島と知らないのか海賊が来た。
ところ変わってその海賊船の空気は異常にピリピリしていた。というのも原因は彼らを追っている海兵にある。しかし彼らは|偉大なる航路(グランドライン)でも多少有名な海賊。船長は賞金五千万ベリーの"惨劇"のディティーと名乗り海軍の軍艦一隻位なら余裕で勝つことの出来る猛者である。 しかしそんな彼らがが今たった一人のただの海兵に撤退をしている。 …… いや、海の上で自転車こいでる時点でただの海兵な訳がないが。
「船長!!向こうに島があります!!」
「よし!直ぐに着陸して住民を人質に取るぞ!」
「「「「おう!!」」」」
と僅かな生存の兆しにすがり自分に気合いを入れるために叫ぶ海賊たち。この世界で は人質なんて常套手段である。例外はあるものの大抵の海兵はこれでどうにか出来る。
数分後、無人島ではイープの目の前にあるのは大きな船。しかもマストにはドクロのマーク。間違いなく海賊船である。
そしてそこからゾロゾロと五十人ほど人が出てくる 。
そしてリーダー的な人が、
「こっちにきなクソガキ!」
と叫んでいるが彼は誘拐の初心者なのだろう。そんななりでそしてそのような口調で子供が寄ってくるとでも 思っているのだろうか。尤も誘拐の上級者というのも可笑しな響きだが。
つまり普通の子供はこんないかついオッサンに近寄る事なんて有り得ない。しかし、
「おk」
スコウェルト・イープは子供の中でも異質の中の異質。例外中の例外である化け物である。たかが賞金額五千万程度の男に臆することなく、むしろ男の目にも止まらぬ速さで近寄ると、
「えいっ」
と可愛らしい掛け声と共に軽く蹴りとばす。 しかしその威力は掛け声とは裏腹に馬鹿げたものであり、海賊はまるで最初から居なかったかのような速さで飛んで行き、少し離れたとこにある大きな岩を破壊してやっと止まった。
「軽く蹴っただけで死んじゃうなんてここの海賊は本当に弱いね。ここって|東の海(最弱どもの巣窟)なのかな?」
偉大なる航路でもそこそこ有名な|大型新人(ルーキー)である船長がこんな小さい子供に子供扱いされさらにディティーの部下である自分らも侮辱されたがは怒ることなんてしない。彼らは今の一撃で目の前にいる相手が自分とは次元が全く違う生き物であることを悟ったからだ。奇しくも転生者であるスコウェルト・イープに対する彼らの評価は正しく、スコウェルト・イープは文字通り次元の違う生き物である。そんな化け物が目の前にいるときにとるべき行動は当然逃走の一択しかあり得ない。逃げる事は恥ずかしい事ではない。勇気と無謀は違うものであるし、そもそも人それぞれ価値観が違うから恥ずかしい事も違う。しかしイープは禍根を残さないように船長を失った船員が騒ぎだして船に戻る前に、
「嵐脚『大鎌』」
巻き付くような『嵐脚』によって、一撃で全員の上半身と下半身を泣き別れさせる。
因みにこな嵐脚『大鎌』は名の通り嵐脚の応用技で、攻撃範囲の広さに特化したものである。彼の師匠であるラヴィサメが見せたときはたったの一撃で島の木々を全て刈り取ってイープをドン引きさせたのは彼の記憶に新しい。
一応イープは見聞色の覇気で船員はもう居ないことを確認する。しかし海賊ではない誰かが自転車でここに 向かっていることを認識した。ONE PIECEファンならば自転車で海を渡るような人間に心当たりがあるだろう。当然イープも前世は熱烈なONE PIECEファンであったため直ぐに分かった。
「いきなり青キジ大将に会えるなんて僕はついてるね」
しかし、青キジが全身をラヴィサメと海賊の返り血で染めた帯刀少年(帯刀と言っても今持っている"帝" は刃渡り五十cmしかないが)をどう認識するかはイープの中でも不安である。
「あらら、これは人質を取られる前に凍らせるべきだった……か?」
未来の青キジ大将で現在中将であるクザンは島に上陸する前に異変に気が付いていた。海賊が人質を求めて島に上陸したら必ず何かしらの騒ぎになるはずである。しかしそれが全くない。恐ろしいほど静かである。
「何があったか確認したほうがよさそうだな」
とクザンが少し自転車の速度を珍しく立ち漕ぎすることで上げて島に上陸する。そしてそこにいたのは大きな岩を砕いて死亡している海賊らしき男と上半身と下半身がバラバラになっている海賊らしき男たちの死体の数々。そしてその死体と血だまりの上に立っている返り血で全身血塗れで帯刀している四才くらいの男の子だった。
状況的には確実に少年がこの事態を引き起こしているが普通に考えて男の子とはいえ小さい子供が偉大なる航路で有名な大型新人を倒せるはずがない。そこで当然ながらクザンは事情聴取をすることにした 。
「おい、そこのボウズ。ここで何があった?」
「……いや、特に無かったかな」
勿論イープにとっては、である。イープは今まで命のやり取りなんて日常茶飯事であっ、この程度の雑魚を倒したくらいで一々"海賊"を倒した何て言っていたら一週間で"四皇"やその傘下の海賊たちの首で一山築けるだろうと思っているのだ 。
それを察したのか察しなかったのかは定かではないがこのままでは話が進まないと感じたクザンは質問を変えることにした。
「じゃあ、この海賊たちを倒したのはお前さんか? 」
「うん、そうだよ。まぁ、東の海で海賊旗掲げるのに満足してて実力も伴ってないようななんちゃって海賊たちを"海賊"って呼んでも良いかどうかは疑問だけどね」
重ねて言うようだがイープの認識がおかしいだけである。彼がさっき倒した海賊は"惨劇"の二つ名を持ち、さらに懸賞金五千万ベリーの将来有望な大型新人として注目されるほどの実力者であったことから 、世界で指折りとは言わないがそれでもそこそこ強い人間で あることは確かだったはずである。しかし、彼の認識がおかしいのも仕方がないだろう。何故なら彼が今まで戦った相手は"神"であり世界で指折りの強者だけだったのだから。
「お前さん、名前は?」
「スコウェルト・イープだよ」
「歳は?」
「うーん、多分四才くらいだね」
「ここで何してるんだ?」
「生活してたよ」
「親はどうした?」
今までの質問では淡々と答えてたのにこの質問では 答えるときにイープの顔に影が差した。
「さぁ?どうでもいいよ、そんなの。忘れたよ」
話を聞いているとこの少年は親に捨てられた孤児だ ろう。実際は違うしクザンも違和感を感じ取ってはいたが今は信じることにして、
「お前さん、海兵になるつもりはないか?」
イープに飴玉を渡してクザンが尋ねる。この大海賊時代なんて言われる今、海軍は人材 の確保に忙しい。素性が少しくらい怪しかろうと、 その子が四才児であろうと、懸賞金五千万ベリーの 大型新人を雑魚呼ばわり出来る程の実力者ならば海軍は喉から手が出る程欲しいのだ。そんなことをしているからドンキホーテ海賊団のヴェルゴがG-5支部の基地長になるのだ。
そんな話は置いておき、イープにとってもこの申し出は嬉しいものだった。 例えラヴィサメから生きてるだけでいい、と言われようが彼女の性格の改変によって超好戦的な戦闘狂と化しているスコウェルド・イープ。出来れば暴れるとしたらやはり、合法的に暴れたいのである。彼の中には多少海軍本部と全面対決したいという願いもあるがやはり、合法的に暴れたいのである。 だから勿論返事は、
「うん」
に決まっていた。
こうしてこの物語の主人公"最強の転生者"スコウェ ルト・イープの人生が始まった。
ここは誰かの研究室。そこにいるのは白衣の研究者と絶世の美女ラヴィサメだ。
「ちょっ…ラヴィサメ先輩また僕の世界に人入れましたね!」
と叫ぶ研究者。彼女のイタズラは間違えなくろくなことにならないと彼は経験で知っている。
「ああ、オマエこの前プリン買ってきたろ?アタシが食べたかったのはコーヒーゼリーだ」
「ええっ、この前はプリンが食べたいって言ってたじゃないですか!?」
「ああオマエが行った後に心変わりした。察しろ」
「念話使って下さいよぉぉ!」
山の天気と女心は変わりやすいと言うがこれは酷い。ラヴィサメの心変わりは酷い。この研究者はラヴィサメの心変わりを察する程鋭くない。ここで研究者はラヴィサメの腰に本来あるべき刀が無いことに気付く。
「あれ…ラヴィサメ先輩"帝"はどうしたんですか?」
「あれか?あの世界に送り込んだ奴にやった」
それに研究者は信じられないと言ったような驚きの顔を見せる。
「何やっちゃってるんですか!?"近代三大妖刀"をあげるだなんて正気ですか!?しかもよりによって"心"の妖刀"帝"って……よりによって封印をしてない"帝"って……なんで封印をしてる"将軍"か"法王"にしなかったんですか!?」
「いいじゃねえか減るもんじゃあるまいし。それにあの二振りはやっても面白くないだろ。チート過ぎる」
項垂れる研究者を慰めるラヴィサメ。しかし元凶に慰められてもなんの意味もない。しかも、
「減りますよ!主に"帝"と人命が!忘れたんですか!?先輩があの世界の八千年前にしたことを!?あのときは三億人が死んだんですよ!?」
前回ラヴィサメが面白半分で送り込んだ転生者は実はそんな惨劇を起こしていたのだ。そしてそれに関しては悪いと思っているのか目を反らすラヴィサメ。
「胃薬買ってきます」
研究者は今回は胃に穴を開けまいと失敗から学ぶ。
小ネタの出典紹介
・おk……OK