伝説の転生者の物語   作:ゆっぴー

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第二十五話 無人島で悩み人は疑問だらけの正義を

カナリオッキイ島に来たイープ御一行。先ずは水と食料の確保が最優先課題だ。その為にイープは皆に指示を出す。

 

「男衆は火を焚くのと肉を探してきて、あと肉を探すのも三~四人一組で行動すること。女衆は四組程に別れて食べられそうな植物と水を探してね。やることがわかったら すぐ行動!」

 

と手を叩いて行動を促す。

 

そうして直ぐに一時間が経った。

 

「ざっとこんなもんかな?」

 

自分より大きな牛、豚、鳥、猪、熊、虎、ライオンのような生き物を大量に肉食、草食動物を問わず担いで火の焚いてある所に行くイープ。

 

「……よくそんだけ担げるにゃん…」

 

今更だがスチルドパッドに人外宣言されるイープ。そして他の面子も続々と食料を持って到着してくる 。

 

「皆集まったね。それじゃあアルコールが無いのは残念だけど、一先ず僕たちの"マリージョア襲撃成功を祝って"そして "奴隷解放成功を祈って"かんぱーい!」

 

「「「「「かんぱーい!!!!」」」」」

 

「肉焼こ、肉!」

 

「野菜も食べなきゃ駄目だよ、"お兄ちゃん"」

 

と相変わらず腹話術で話すカネル。しかし今の問題はそれどころではない。というかカネルの腹話術の上手さは今さらである。

 

「"お兄ちゃん"ってどゆこと、ネル?」

 

問題はそれである。この世界の人間でないイープに当然血縁者はいない。だから正しくはお義兄ちゃんなのである。いや、問題はそこではない。いつの間にカネルがイープを兄認定したかだ。

 

「私はお兄ちゃんに一生かけても返せない恩が出来 た。それに報いるためにお兄ちゃんと一緒に何処までも行くって決めた。だからお兄ちゃん」

 

と意味不明な理論を展開するカネル。しかし彼女はマリージョアから出た時点でイープをお兄ちゃん認定していたようだ。後はそう言う勇気が無かっただけである。

 

「最後の方はよくわかんないんだけど…まぁ、いいや。でも一応聞くけど僕に着いていくって言う人は他に 何人くらい居るのかな?」

 

とこの質問に殆どのの男どもが、あとハンコック、 マリーゴールド、サンダーソニア、ドー、そしてスチルドパッドが手を挙げる。戦闘が出来る輩はやはり肉体労働で恩返しがしたいようだ。

 

「うーん、僕の船に"船員"として乗りたいんだったら四皇とは言わないけれど、少なくとも王下七武海クラスは無いとね。それくらいないと僕の隣で戦える船員には為れないよ」

 

イープにとってはそれくらいの実力が無いと足手まといになりかねないのだ。だから彼らを乗せるとしたら船員ではなくゲスト、お客さんとしてである。

 

「じゃあそうなるまで修行するもん」

 

と拗ねたように言うカネル。

 

「別に自分がそれに相応しくなるまで頑張るのは勝手だけど、民間から海賊行為するんだったら許さないよ」

 

これは一応海兵ではないが、まだ"正義"を背負っている者として当然の考えである。

 

「「「「……」」」」

 

「まっ、今はそんなこと考えずに今は祝おうよ!」

 

「うんっ、おにーにゃん!」

 

と後ろから抱き付いてくるスチルドパッド。カネルに自分のポディションが取られそうで不安なのだ。

 

「妹が出来たってのも悪くない…かな?」

 

誰にも聞かれないように呟くイープ。やはり家族は多ければ多いほど楽しいものである。そして多くなったからって決してイープの一人に注ぐ愛情の量は変わらない。

 

「お兄ちゃん」

 

「おにーにゃん♪」

 

誰にも聞かれないように言ったはずなのに音人間と三毛猫人間の耳は誤魔化せなかったようだ。悪魔の実恐るべし。

 

「……///さあ、食べるぞ妹どもー!!」

 

と半分照れ隠しでスチルドパッドとカネルの肩を少しだけ強引に抱いて皆の元に向かう。

 

血は繋がっているだけの存在よりも血は繋がってはいないが家族のように暖かい関係を築いている存在の方が本当の家族と言えるだろう。そしてイープと彼女らの関係はまさににそうだ。

 

そしてアルコールが無かったために適度に騒いだ後、夜の部としてアトランティス号から寝袋を持ち出してキャンプファイヤーをすることになった。

 

「ねえ、知ってる?蝋燭百本に火を付けて怖い話を一つする度に消していくと最後には幽霊が出るんだってね…」

 

とイープが前世での百物語を紹介する。しかしここにいる殆どの人間は幽霊なんて信じていない。何故ならここにいる殆どの人間は真っ先に幽霊呪われそうな人間で、そして彼らは一度たりとも彼の岸の方々と遭遇したことが無いからだ。しかし一部女性は百物語には反対らしい。因みにハンコックは涙めになりながらも周りに煽られて『幽霊ごとき妾の美しさでどうにでもなるわ!』と豪語してしまい引くに引けない状態になっていて、彼女の妹たちはそんな姉を崇拝している。やはり見栄は張るべきでないものだ。

 

「でも蝋燭がないから木の枝に火を付けてやってみようよ」

 

とイープが提案する。

 

最後まで女性陣は反対するものの、興味津々な男衆に押されて結局やることになった。男は冒険心に溢れる生き物なのだ。

 

そしてこの時本当に幽霊に出会うなんて誰も考えもしなかった。

 

一番最初に話始めたのは言い出しっぺのイープである。

 

「じゃあ僕が一番バッターでいくよ!皆は魔の三角 地帯 フロリアン・トライアングル って知ってるよね?あの船が行方不明になることで 有名な。今では王下七武海のゲッコー・モリアが船を襲ってるからなんだけど、それ以前からもそういう事件があそこらへんで多発してたんだよね。それで 昔から海軍で有名な話があってね…」

 

とイープは語り出す。とこんな感じで始まった百物語大会。

 

次の話はとある男が知り合いのワノ国の侍から聞いたらしい。それは髪が伸びて捨ててもいつの間にか自分の手元に戻ってくる呪いの人形の話であった。

 

イープの前世でもその類いの話はよく聞いたものである。

 

ここでイープな思ったのは"帝"も忘れてきてもいつの間にかイープの手元に戻って来ているのだ。だからイープは実は"帝"が妖刀ではないかと疑っているのだがその予測は正しい。ついでにいえばイープら離れてても"帝"の位置大体特定出来る。所謂死ぬまでずっと一緒なのだろう。

 

そんな感じで進んでいく百物語大会。ある女性の賞金の手配書を見ると一週間以内に同じ手配書のコピーを誰かに見せないと死ぬという話や、未来から自分の断末魔の叫びを受信するでんでん虫などイープが前世で聞いたことあるような話と似た話もチラチラとあがる。

 

そして百物語が盛り上がってきたころにイープは少し席を外して林の中に入る。イープにだって一人で考えていたい時があるのだ。しかしそんな願いは叶えられない。

 

「お兄ちゃんどうしたの?」

 

「おにーにゃん発見にゃん♪」

 

と音もなく現れたカネルといきなり後ろから抱き付くスチルドパッド。家族と話すというのにイープの表情は暗い。

 

「うん、少しだけ考え事をね」

 

と無理矢理笑って表情をつくろうイープ。だけどそんな不自然な笑いは数ヵ月でもずっと一緒にべったりとくっついていただったスチルドパッドに見破られる。

 

「違うにゃん」

 

「違わないよ」

 

「違うにゃん」

 

「違わないよ」

 

「そんなに私たちが信用できない?」

 

「っ…!」

 

カネルの底冷えたような声に声をつまらせるイープ。だけどカネルは止まらない。

 

「お兄ちゃんは私を助けてくれた。それについては感謝してもしきれない。それにクルーは認めてくれなかったけど私を家族として迎えてくれた。私はそれが私の今までの人生で一番嬉しかった。なのに…なのに!肝心なときは私たちに弱みすら見せない!そんなの、そんな仮初めの家族なんて私要らない!」

 

泣きながら、そして最後は自分の口で叫んだカネル。

 

「でも僕は皆のお兄ちゃんだからね。絶対に弱みは見せられないんだよ」

 

イープの理想の"兄"は強くて優しくて家族で一番頼りに出来る存在なのだ。だから"兄"であるイープは人に、特に家族には弱みは見せない、見せられないのだ。

 

「違うっ!家族はお互いに頼るものなの!」

 

「おにーにゃんはスチーが大好きだって分かるにゃん。いっぱい助けてもらってるにゃん。でもすちーはおにーにゃんに何もしてないにゃん。だからおにーにゃんはもっとすちーを困らせてにゃん」

 

だが彼女らにとっての"兄"はイープにとってのとは違うものなのだ。彼女らにとっては"兄"は家族の一員。そして"家族"とは自分お互いに頼るものなのだ。これ以上自分の理想の"兄"を追求しても妹を失うだけだと判断したイープは自分の悩み、自分の深部を語りだす。

 

「…ふー。ごめんね、心配かけて。初めからぶっ飛んだこと言うけど僕、異世界から来た人なんだよね」

 

それからはイープは止まらない。もう妹がこの話を信じるかどうかなんて関係無い。いや信じていると確信して話を続ける。この世界は自分の前世での漫画の世界であること。神と名乗る女から連れてこられて鍛え上げられたこと。そして自分がある程度の未来を知っているということ。

 

「でこのマリージョア襲撃は本来は来年に僕がいなくても起こるはずだったんだよね。主犯は"冒険者"フィッシャー・タイガー」

 

「「!?」」

 

イープの言葉に驚くのも無理はない。何せイープが解放した奴隷の中に未来の奴隷解放の英雄がいたのだから。

 

「まぁ、彼はマリージョア襲撃から少し経って海兵に殺されちゃうんだけどね。でも、それでも魚人や人魚は何人か生き残ってたんだよ!だけど僕がその人たちを、罪の無い魚人たちを殺したんだよ!こんなことなら…こんなことなら…ばふっ!?」

 

殺しを是とする化け物イープでもゼファーの意思を継ぐ海兵。一般人を守るという矜持を持っているのだ。そしてタイヨウの海賊団の構成員の多くは運悪く捕まった一般人、イープが守るべき存在だったのだ。その本来は生きていた守るべき存在をイープは死に追いやった事がイープの心に重くのしかかっていた。しかしイープの言葉は最後まで言えなかった。それはカネルに殴られたからだ。しかもただの打撃ではない。白ひげのように音という振動を纏ったアッパーカットである。見聞色の覇気が乱れに乱れているイープはそれをかわせずに頭を爆散させる。

 

「そんなこと無い!お兄ちゃんが一年早く襲撃したことで救われた人はいっぱいいる!魚人の皆だって一年早く救われた事は感謝してるに決まってる、例え一年後に助けられたら生きられたと分かっていたとしても!だってあそこは私たちを人として扱わないから!それは死ぬよりも辛いことなの!だから…だから、そんなこと言わないでよ!」

 

もう泣きながら、最後には言葉に詰まりながらも言い切ったカネル。そんなカネルをイープは抱き締めて、そしてイープも泣きながら言う。

 

「ごめんね、変な心配かけて。色々あって少しだけナイーブになってたみたいだね。すっかり忘れてたよ、僕の正義。"自分勝手な正義"は『自分が正しいと思った時に正しいと思った事を正しいと思ったように行う』。故に独善的な正義。信念を持たなかったらただの犯罪者だね。だけどそんな正義でも確実に救われる人はいるんだよね。すっかり忘れてたよ」

 

と最後は笑って締めくくる。

 

 

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