イープの周りを海兵たちが囲む中、一歩前に出てきたのはストロベリー准将である。
「元海軍本部少尉"剣帝"スコウェルド・イープ、貴様の罪状は分かるか?」
低い声で脅すように言うストロベリー。原作では罪状ストロベリーはフィッシャー・タイガーに、
「襲撃と逃走…かな?」
と言っていたが、現実は違った。実際は、
「いや、"生きている事"だ。貴様はもうこの世には生きていない人間だからな」
とのこと。生きていることが罪だなんてどこぞのニコ・ロビンのようである。そしてこのストロベリーの台詞から分かったことは海軍は世界政府上層部の言いなりであるということだ。そんな死刑宣告にイープは、
「あー、そう言うことか…許してヒヤシンス」
「「「「ヒヤシンスってなんだよ!!!!!?」」」」
冗談で返す。イープはテヘペロ☆と舌を軽く出して右の握り拳で軽く頭を叩いているがその程度で許されるはずがないだろう。イープは周りを殺伐とした空気に変えて今度は実力行使の交渉、所謂棍棒外交を行う。
「許してくれないんならこっちにも考えがあるんだけどねぇ…」
とイープは背を低くして獰猛な笑みを浮かべる。しかしイープのそれを虚勢であると判断して全く相手にしないストロベリー准将。
「こっちは三百の海兵がいる。手負いの貴様一人に何が「来るぞ!」っ!?」
と何かを察知して叫ぶガープ。流石は"英雄"と呼ばれ"海賊王"を何度も追い込んだ男である。しかしいくらガープが早い段階で警告していたとしてもその攻撃をかわす海兵の実力が伴っていないならは多くの犠牲が出ることには変わりない。
「遅いよ!『円卓』!」
と縦ではなく横に特化した回転斬りを繰り出す。その斬撃はかわせなかった海兵や『鉄塊』で受け止 めようとした海兵を易々と切り裂き、その時に出た鮮血がまるで円卓を描くかのように広がっていく。
余談ではあるがこれを縦に特化させると『斬撃撹拌』と呼ばれるようになる。
このイープの『円卓』で生き残ったのは五十人弱である。イープから見ると、思ったより残っていて、イープの望むような芳しい結果は残せなかったようだ。生き残った人間は全員が実力者であることからもピンポイントで強者を撃ち取れないイープの『円卓』が如何に未完成かが分かる。残った連中でイープが知ってるのは、ガープ、サカズキ、クザン、ボルサリーノ、モモンガ、ストロベリー、そしてイープの『円卓』をかわしきることが出来ず足を一本犠牲にし、今は髪の毛で足の代用をしてるオニグモぐらいである。イープはあれ程やられていてまだ前線に立てているボルサリーノに多少、ほんの少しだけ感動する。同時に次はちゃんと仕留めようと胸に誓いながら。
「確かに僕は今満身創痍だよ。でもさ、それが"僕が君たちに勝てない理由"にはなるかもしれないけ ど、"君たちが僕に勝てる理由"にはならないからね ?そこんとこちゃんと理解しときなよ?」
とイープは近くにいるストロベリー准将の背後に『剃』で移動して右足で准将の頭を挟む。
「んなっ!?」
そして攻撃されるその瞬間になってやっと背後を取られた事に気が付くストロベリー准将。
「何回も言うけどさ…本当に遅いよ、君たち。嵐脚 『独楽』」
とそれを合図にコマを回す糸のように右足を引く。その瞬間ストロベリー准将がコマのように回りながら巻き上げられ、さらに無数の『嵐脚』に切り刻まれてゆく。
「言っとくけど、君たちのほとんどが僕と戦う資格すらない位弱いってことに気付いてるのかな?」
海軍本部准将ですら満身創痍、全力にはほど遠いイープに手も足も出ないのだ。イープのこの一言で海兵は自分たちではスコウェルド・イープを"能力さえどうにかすれば勝てる相手" から"とりあえずガープ中将らの援護をすることだけを考えて自分たちは彼らの足を引っ張らないのが精一杯なレベルの強力な相手"と認識を変えて、再び距離を取って消耗戦に切り替える。
さらにそれから三日三晩休みなく戦いは続いた。イープはラヴィサメと一ヶ月不眠不休で殺し合った事なんてざらにあったから問題はないが、海兵たちはそろそろ限界が近いだろう。こんな死闘を経験したことのある海兵だなんて滅多にいない。だからイープはここを山場と決めて、この決断が吉と出るか凶と出るかは誰にも分からないが、仕掛けることにする。そんなことをイープはオニグモの髪の毛に卍絡めにされながら考える。そしてイープがオニグモの髪の毛で身動きの取れないのを見計らって、
「『大噴火』ァ!」
と超火力でイープを消し炭にしようとするサカズキ。
「捕まったのは僕か、それとも君か…」
それに対してイープは髪の毛を引っ張ってオニグモを盾にしてサカズキの『大噴火』にぶつけることによってかわそうとする。しかしサカズキもオニグモに当たる直前に軌道を変えてイープに拳が当たるようにする。
「があああぁぁぁあああ!!!?」
イープも慣れているとはいえど、多少溜まった疲労で十分な覇気を纏わせる事が出来なかったことと、攻撃がイープの"泥"の弱点である"マグマ"であったことが原因で左腕に被弾。かなりの重症を負うことになる。だけどイープの闘志はこんなことでは折れない。
「熱いんだよ!?かなり!」
と『大噴火』を使った際に伸びた腕をイープは仕返しとばかりに切り落とす。今回はちゃんと十分に覇気を込めて。これでサカズキはリタイアである。
しかしイープが多少頭に血が昇ってサカズキを始末することに集中した結果見せた初めての隙に当然皆反応する。
「お前はここで終わりだ『アイスタイ『大槍』』! ッ!」
真後ろに立ってイープを氷づけにしようとするクザンの心臓をイープは自分の腹ごと突き刺す。
自分も同時に刺した為、流石に覇気を上手く纏わせることが出来なかったから止めは刺せなかったがこれでクザンも戦闘不能は確実である。しかしイープの痛みも尋常ではない。流石はイープの『大槍』、生半可な威力じゃない。その痛みがイープのテンションを上げて、
「ははっ、ははは…アハハハハハハハ!キャハハハ ハハハ!!!!!!」
イープは壊れた。狂ったかのように思笑い転げるイープ。"帝"による殺意の増加とイープの願いの"自分が死ぬほどの過激な戦闘"この二つがこれ以上なく満たされたイープは歓喜のあまりに狂気に身を委ねたのだ。押さえつけていた"帝"の特性である殺意増加は今まで押さえ付けられていた分を発揮するかのようにイープの五感を刺激する全てを歓喜と殺意に変換する。
鼻腔をくすぐる血の臭い、網膜に映る死体、鼓膜を震わす海兵の悲鳴、自分の舌を潤す自らの血、そして確実に自分を蝕む激痛。これら全てはイープに戦いを感じさせ、戦いを感じたイープは歓喜し、より強い歓喜という名の戦いを求めて敵に殺意を抱く。
「痛いなぁ、うん今のはサイッコーにイタカッタよ ぉー?サイッコーにイタくてサイッコーにタノシイ なぁ。こんなにシヌかもしれなくてイタくてツラく てタノシくてユカイでエキサイト出来るような事なんてそう無いと思わないかなぁ!?ねぇ、皆ぁ!?」
狂喜のあまり言葉が意味不明になっているイープは数ヵ月前の自分の選択が正しかったことを実感する。こんなに楽しい経験が出来るのだからやはりりあの時クザンに付いて行き海軍に入ったことは正解だったと。
「ボルサリーノ、ワシが時間を稼ぐからでっかい一 撃を頼むぞ!」
完全な狂戦士と化したイープを止めるためにガープを筆頭にボルサリーノ以外の海兵がイープに向かって四方八方から迫る。
「アハハハハハハハ!サイッコーだねぇ!こんなにシヌかもしれない殺し合いが出来るなんてねぇ!!」
イープの笑い声と鮮血と人体の一部が躍り狂うこの戦場も必ず終わりが来る。例えば海兵が全滅するとか、逆にイープが死ぬとか。だが今回は違う。
「準備万端だよォ~」
上空で無数の光弾を携えているボルサリーノ。イープが能力者ならば陸地をなくせばいい。例え他の海兵が全員死ぬことになったとしてもだ。しかしいくら島を消せる攻撃の準備が出来たからといっても撃てなければ脅威ではない。
イープは『月歩』でボルサリーノ中将攻撃を阻止するために攻撃を仕掛けようとするがすんでのところで邪魔が入る。
イープの真横から迫る飛ぶ斬撃。下手人は地上にいるTボーンだ。Tボーンの斬撃は動かせない左腕に直進する。しかしカキッと軽い音を立ててその斬撃は呆気なく弾かれる。
「真っ直ぐな太刀筋は嫌いじゃないよ。だけどさぁ、ただ真っ直ぐいくだけで満足してるようなチープな剣士相手ほどツマラナイものはないね」
Tボーンは曲がったことが大嫌いだ。故に太刀筋は直進か直角しか有り得ない。イープは小手先だけの三流剣士相手よりはそういった剣士の方がましだと思っている。だがただ直進するだけじゃ芸がない。本人が曲がった太刀筋を嫌うなら、それを他の追随を許さない程速く、そして最短距離を直進する斬撃や他の防御を許さない強大で愚直な斬撃を極める一芸にしなくてはならない。ただこだわって自己満足するなら子供にだって出来る。しかし海兵ならばそのこだわりを一芸にしなくてはならない。そうしなくては"新世界"では生き残れないのだ。
「出直してきなよ」
Tボーンの斬撃を覇気で弾いたイープは"帝"でTボーンを斬る。イープが放つのは愚直なまでに直進し全てをうち壊す斬撃。その斬撃をTボーンは自らの剣で弾き飛ばそうとするが一瞬の鍔迫り合いも許されない。イープの斬撃は剣を粉々に砕きTボーンの右腕、利き腕を切り落とす。
そしてあと一歩の所でボルサリーノに届きそうになるがまたも邪魔が入る。
「邪魔だよ、モモンガ准将」
今のイープにはもうモモンガに構っている時間はない。故に自分の左足を敢えてモモンガに切り落とさせてモモンガをかわす。追撃されないように背後から『嵐脚』を撃つことも忘れない。しかし、その三秒にも満たない時間はボルサリーノにとって攻撃を放つのに十分な時間である。
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュ ンヒュン…一万に迫るのではないかという膨大な量の光弾がイープに降り注ぐ。それをイープはほとん"帝"で反射させて弾いていく。しかしかなりのエネルギーを誇る一万近くの光弾を全て捌くには万全な時のイープならともかく、満身創痍である今のイープには少し辛い。
しかし自分の負荷を減らすために致命傷になりうる光弾だけ"帝"で弾き、その他の多少かすったり抉ったりする程度の光弾を受けることに変更、丁度イープの手から"帝"が弾かれた時にボルサリーノが力尽きて倒れて光弾が消える。イープが周りを見回せば光弾をほとんど弾いたせいで陸は見渡す限り更地になっていて、その光弾は当然海兵にも被弾して酷い有り様になっている。イープが自分の分を弾いたときにそれが海兵に当たったりもしていて海兵の方が被害が多く見えるのは気のせいではない。