伝説の転生者の物語   作:ゆっぴー

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第三十四話 東の海で賞金稼ぎは無謀な勇気を

「こちらが懸賞金の八百六十万ベリーとなります」

 

「受け取ったじゃん」

 

|東の海(イーストブルー)を航海しはじめて一ヶ月がたった。しかしその時間に反して海賊貯金は既にサクラたちがゴア王国付近に居たときに貯めた額を遥かに凌駕していた。その際エースとサボが若干凹んでいたがそれは些細なことである。

 

「まぁ、今回も余裕だったな!」

 

とそこら辺にある鉄パイプから本格的な棍に武器を買い換え、それを肩に担いだエースが言う。

 

「おいおい、エースは背中刺されそうになってただろうが」

 

「アァ?そーゆーサボこそ今回一番最初に一撃貰ってだろうが!」

 

「うっせー!あれはわざとだったんだよ!」

 

懸賞金は百万単位で貯金、そして残金の半分を一番活躍したMVPに、そして残る半分を折半としているからこういったいざこざがよく起こるのだ。今回の場合は八百万ベリーが海賊貯金、三十万ベリーがMVP、そして残る二人には十五万ベリーずつ貰えることになる。子供の頃からそんな大金持っていると金銭感覚が狂いそうで怖い。

 

最近は懐の暖かさが異常なので食い逃げを止め、MVPがご飯を奢ることになっている。そうすれば皆機嫌を良くなりこの制度に対して文句を言う者はいなくなった。それに加え、この制度のお陰で互いに闘争心が湧き、切磋琢磨しあっているからいい刺激にもなっている。

 

「まぁまぁ、落ち着くじゃん」

 

とサクラが宥めるも、

 

「「うっせー!全く活躍しなかったやつは黙ってろ!!」」

 

「おいこら、俺が一番戦闘に関わったじゃん!年上嘗めんなじゃん!」

 

二人の暴言にあっさり振り切れて喧嘩に参入するサクラ。

 

「でも撃墜数一番少ねェだろうが!」

 

「黙れじゃん、エース!お前みたいな向こう見ずのフォローでこっちは忙しいじゃん!」

 

「あんなへなちょこ攻撃なんか当たるかよ、バーカ!」

 

「前回気失った奴が何いってんだよ」

 

「うっせー!いつもいいとこばっか取っていきやがって、かのハイエナヤローが!」

 

「なんだと!この向こう見ずの猪ヤローが!」

 

「じゃあ今回も腕っぷしでMVP決めるじゃん!」

 

「「望むところだ!!」」

 

そう、このMVP制度は実際戦闘で誰が一番活躍したかではなく、戦闘後の喧嘩で勝った者がMVPとなっているのだ。既に初めに決めたルールなんて影も形も無い。

 

因みにこの喧嘩の勝率はサボとエースが五分五分となっていてサクラは未だ勝った事がない。

 

 

 

「なー」

 

と顔を腫らしたサクラが二人に話しかける。今回のMVPであるサボの意向で今日の昼飯はラーメンだ。

 

「どうした?」

 

とそれに呼応するエース。

 

「次、こいつにしようじゃん」

 

当然次の獲物についての話である。サクラが持っていた手配書とは、

 

『"武人"ローブ懸賞金一千二百万ベリー』

 

だ。

 

「はあ!?一千二百万ベリー!?そんなん無理に決まってるだろ!」

 

と反対するサボ。

 

「でも今回の奴だって八百六十万たった けど全然余裕だったじゃん」

 

そう彼ら三人は既に全員八百万以上の実力が備わっている。

 

「だけど"一千万クラス"はまずい!レベルが違うんだよ!」

 

とサボが言う。平均懸賞金額が三百万ベリーの平和の象徴であるここ、東の海では懸賞金が一千万を超える海賊なんて文字通りここでは指折りの実力者。たとえ懸賞金九百九十万の男でも足元に及ばない化け物たちなのだ。尤も、そんな海賊たちも魑魅魍魎が巣食う|偉大なる航路(グランドライン)では赤子にも等しいのだが。

 

「でもじゃん、サボ。俺たちが偉大なる航路に行ったら一千万を超える海賊なんてざらにいるじゃん。一千万ごときでうだうだ言ってたらいつまでたっても東の海止まりじゃん」

 

とサクラは諭すように言う。

 

「だがサクラ、そんなに急ぐ必要なんかあんのか?俺たちまだ子供だぜ?」

 

しかし乗り気でないサボは反論する。

 

「じゃあじゃん、エース。お前はどうするじゃん?俺と一緒に"武人"を狩りに行くか、サボとここでぐだぐだと待ってるかじゃん」

 

「なぁサクラ」

 

「じゃん?」

 

サクラの問いにエースが問う。

 

「もし俺が『行かねェ』っつったらどうする?」

 

「もちろん一人ででも行くじゃん!」

 

サクラは内心焦っていた。サボはともかくエースは未来の大海賊となることをサクラは知っている。そしてエースが後に殺される事も。

 

この数ヵ月でサクラはもうエースたちを好きな漫画のキャラではなく兄弟として見るようになっていた。そしてできることならその兄弟を助けたいとも。

 

しかしサクラには実力が圧倒的に足らない。そんなことは本人であるサクラが一番分かっていた。エースたち三人の中で最弱である今のままでは間違いなくエースを助けるだなんて不可能である。だからサクラは二人に無茶言って海に出て、今も無茶言って上手の一千万クラスを相手取ろうとしているのだ。

 

そんなサクラの心境を知ってか知らずかエースは、

 

「もちろん俺も行くに決まってるだろ!」

 

サクラに付いていくことに決めた。

 

「もうお前ら勝手にしろ!俺は行かないからな!」

 

「じゃあ賞金はエースと山分けしてやるじゃん」

 

「勝手にしろ!命知らずども!」

 

「また後でじゃん。エース」

 

「おう」

 

とサクラとエースはサボを残して店を出た。

 

 

 

「ところでサクラ」

 

「じゃん?」

 

エースがサクラと一緒にサボと別れて暫く歩いて、サクラに聞く。

 

「肝心のローブがどこにいるのかしってんのか?」

 

「そんなこともちろん…」

 

それに対してサクラは満面の笑みで答える。

 

「知ってるに決まってんじゃん」

 

歩きながらサクラは続ける。

 

「今どこにいるのかも一応分かってるけど、海軍に手柄横取りされるのもしゃくだし船に隠れて襲ってやるじゃん」

 

とエースの腕を引っ張ってサクラは突然駆け出す。

 

 

 

それから数時間たって漸く武人海賊団の船が出航したとき、サクラとエースは船内の倉庫に隠れて息を潜めるついでに多少の保存食を食べていた。船には一応見張り番が居たのだが、居眠りをしていた彼はその役目を全く果たしておらず、サクラとエースはいとも簡単に船内に潜入することができたのだった。

 

それから一時間が経ちローブたちの陸への逃げ道を塞いでからサクラたちは戦闘を仕掛ける。

 

「お前が"武人"ローブかじゃん?」

 

と船内の壁を突き破って看板に出たサクラとエースが船首の近くにいる大男に向かって聞く。

 

「おぉ、いぃかにもぉおいがローブだがぁ、それがぁどうしたぁ?」

 

と海に目を向けていた大男が振り返って問う。

 

「俺は賞金稼ぎだ!覚悟しやがれ!」

 

とエースが吠える。

 

「おいおいガキどもこの人数相手にしてもそんなことが言えるのか?あぁ?筆頭!こんなガキ二人に筆頭が出るまでもありやせん!」

 

と看板にぞろぞろと現れたローブの配下たちの中で一番偉い男が叫ぶ。

 

「サクラ、何人いる?」

 

「じゃんじゃんじゃんじゃん…しめて三十二人じゃん」

 

「じゃあどっちが行くか?」

 

「一斉に出て先に三下一人につき一万、賞金首仕留めた方が三百万、もう一人が百万で残りが貯金ってのはどうかじゃん?」

 

「乗った!」

 

「何ぶつぶつ言ってんだ餓鬼がぁ…びぶるちっ!!」

 

敵を目前として未だ余裕の表情の二人に腹を立てた海賊が突っ走って、サクラの棍の餌食となった。

 

「まず一人じゃん」

 

サクラがエースに挑戦的な笑みで言う。

 

「まだ戦いは始まったばかりだ!」

 

「あべし!」

 

「ひでぶ!」

 

エースは一撃で二人を落としてサクラの挑発に応える。

 

「くそったれ!お前ら!人数で押し潰せ!」

 

この合図に丁度半々に男たちが別れてサクラとエースに襲い掛かる。しかし、

 

「じゃん」

 

「おっと」

 

身軽な二人はそんな攻撃を跳んで軽々とかわす。

 

「すばしっこいガキめ!」

 

「すばしっこくて何が悪いじゃん」

 

と愚痴を言う男を殴って沈める。いくら相手が賞金首でないと言えど大人である。しかしそんな年齢差をものとせずに相手を一撃で正確に沈めているサクラとエースはすばしっこいだけでなくパワーも兼ね備えているのだ。

 

そして海賊たちはサクラとエースに傷一つ付けられないままに沈められていき、残るはあと一人となった。しかし、その男はエースたちに襲い掛かるのではなく、

 

「筆頭!あいつら化け物です!助けてください!」

 

ローブにすがり付いたのだった。それに対いてローブは、

 

「まぁったくぅ、うちの船にはぁそんな子供ぉ相手にぃ弱腰になるぅようなぁ軟弱者はあああ…いらん!」

 

と弱く使えない男の頭を握り力を込めてもはや服の袖を破るほど筋肉を膨らませて、ポイっと打ち上げて後方、すなわち海に投げ捨てた。

 

「ピュー。流石"武人"じゃん。なかなかパワーはあるようじゃん」

 

「こいつ…仲間を捨てやがった…!」

 

サクラは台詞は余裕そうだがローブの力を目の当たりにし顔をひきつらせ、エースはローブの凶行に露骨に顔を歪ませた。流石は海賊王の息子、まだ旗揚げはしておらず実際は居ないが、船員に対しての思いやりは人一倍あるようだ。

 

「あぁ?あんなぁ弱っちくてぇ、根性のぉ無い奴ぅなんかぁいらん!」

 

とそんな二人の白い目線にもローブは臆さずにけろっとしている。そしてサクラとエースに向かって聞く。

 

「なあぁ、おめぇら、うちのぉ船にぃ乗らねぇかぁ?」

 

ローブは続ける。

 

「二人ともぉ子供ぉなんに"一千万超え"のおいに向かってぇきた勇気ぃとこれだけの人数相手に傷一つぅつかん実力ぅ!おめぇらは充分にぃおいのぉ船に乗るぅ資格がある!」

 

とローブは手を差し出す。しかし当然二人の返答は、

 

「生憎、まだ暫くは旗揚げの予定は無いじゃん」

 

「はっ、てめえみたいな奴の下に誰だつくか!」

 

拒否一択に決まっている。

 

「そおかぁ、ならばぁ力付くで連れてぇ行くぞ!」

 

と持ち前の巨大な円柱状のコンクリートの塊を掲げてローブは宣戦布告する。それに対してサクラとエースも、

 

「相手は今までとは格が違うじゃん。気を付けるじゃん」

 

「お前こそあれにぶっ飛ばされんじゃねェぞ!」

 

先頭体制に入る。そして知名度急上昇中の一人欠けたが"三悪童"のサクラとエース、そして東の海指折りの怪物"武人"ローブの死闘が始まった。

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