伝説の転生者の物語   作:ゆっぴー

37 / 59
第三十六話 東の海で勝者は不可能な山分けを

「……知らない天井じゃん」

 

サクラが町の病院のある病室で目を覚まして言う。

 

「おっ、エース!サクラが目を覚ましたぞ!」

 

それに気がついたシルクハットの少年サボが隣でサクラのベッドで看病疲れだろうが、うつ伏せに寝てしまっているエースを揺すって起こす。

 

「……どうしたサボ……っておおサクラ!やっと起きたか、ネボスケめ」

 

とエースはサボに起こされて最初は不機嫌だったがサクラが目を覚ましたことに気がついてパアッと満面の笑みを見せる。

 

「おいおい"おはよう"ってのは太陽が出ているときに使う言葉じゃん。」

 

サクラは窓の外を見て、綺麗な満月がちゃっかり南の空に高らかと輝いていることに気がついて軽く笑いながら冗談を言う。

 

「エース、サボ、"おはよう"じゃん」

 

「「って言うのかよ!」」

 

ビシイッと綺麗に二人の突っ込みが決まる。

 

「(ったく、一ヶ月も寝続けやがって…心配したんだぞ…)」

 

「ご飯百五十回も逃したじゃん!」

 

と多少暴走気味の見聞色の覇気でサボの心の中で思っていたことに反応してしまったサクラ。さりげなく一日五食計算だがこれは三人の中では常識だ。

 

「えっ?」

 

「じゃん?」

 

「えっ?」

 

上からサボ、サクラ、サボの順である。

 

「じゃん?サボ、今お前『ったく、一ヶ月も寝続けやがって…心配したんだぞ…』って言わなかったかじゃん?」

 

「いや…俺はそう思ったけど口には出してないぞ」

 

サクラは内心『見聞色の覇気キター!』と狂喜乱舞しているのだが残念ながらサボたちにはそんなものを持ったなど言えるはずがない。そもそも『見聞色の覇気ってなに?』と聞かれてしまっては自分が転生者であることがばれてしまう。

 

だから、

 

「サボ…俺、エスパーになったのかもしれんじゃん」

 

とそれらしい適当なことを適当に言っておく。

 

「へえぇぇぇ……ええええええエ、エ、エ、エスパー!?」

 

当然サボは驚く。

 

「じゃん、ローブと戦っていたときに死ぬかも、って思ったら突然ローブの次の攻撃が"聞こえてきて"じゃん…それが今も続いてるってことじゃん」

 

「へぇー、そんなこともあんのか…俺も戦いに参加すればよかったな…」

 

と兄弟の思わぬレベルアップに軽いショックをサボは受ける。

 

「まぁ、"可愛い子には死線をくぐらせろ"とはよくいったものじゃん」

 

「言わねえよ!」

 

サボのキレた突っ込みが決まり、

 

「病院で騒ぐな!」

 

キレた医者のゴツンという綺麗な制裁という名の拳骨が決まった。

 

「……!?じゃぁぁぁああん!!」

 

粉砕骨折した左の二の腕に。当然ぶちギレるサクラ。

 

「オイコラヤブ医者!ぶっ殺してやろうかじゃん!?」

 

今なら殺してしまってもサクラが正当防衛でギリギリ勝てるのではないかという気もするが、

 

「病院で医者に逆らおうとは良い度胸だ。病院食に怪しげな薬混ぜるぞ」

 

「調子コイテましたじゃん。本当に生まれてきてすみませんでしたじゃん」

 

そんな怒りは二秒も持たなかった。海でコックに逆らったら死ねるように、病院で医者に逆らったら軽く死ねるのだ。

 

「しっしっ、じゃん」

 

暴力的なヤクザ医師をサクラは追い払って、やっと三人きりになったところでサクラは多分状況を一番知っているであろうサボに問いかける。

 

「そういえばじゃん、サボ。なんで俺がここにいるじゃん?」

 

サボの懇切丁寧な説明がここで始まる。概要は、三人はレストランでケンカ別れをしたがなサボはんだかんだで心配だったので二人を尾行し、二人がローブの船の倉庫に隠れているときには一人でトイレに隠れていたとのこと。その後の戦闘ではピンチになったら助けようと思っていたがいざ二人がピンチになると恐怖で動けなくなり、恐怖で動けない自分の体に鞭打ってローブを殴ったところ意外と一発で仕留められて、そこから紆余曲折あり今に至るとのこと。

 

「それでよ、一旦俺達のお宝の隠し場所に戻らねえか?少し話したいこともあるし」

 

最後に神妙な雰囲気でサボが締め括る。

 

「まぁ、そろそろ今まで稼いできたお金を隠し場所に置いておくことに異論は無いじゃん。でもその話ってのは今じゃないと駄目かじゃん?」

 

とサクラは聞く。人目を憚らなくてはいけないほど重要な話とは何なのだろうかと。

 

「ああ、ここじゃマズい。それに少し用心して急ぎたい。まだ怪我が治ってないサクラには心苦しいが」

 

「なに、気にすんなじゃん」

 

と謝るサボを全く咎めずにサクラは笑いながら言う。

 

「んじゃん、"善は急げ"とも言うじゃん。だから今から戻るじゃん!」

 

と勢いよくベッドからサクラは飛び降りて、

 

「っっっっじゃぁぁぁああん…!」

 

響いた左腕の激痛に絶望した。なんとか声を押さえて叫び声を小さく出来たのは奇跡である。

 

 

 

「さて、やっとここに戻って来たじゃん」

 

と久々に隠し場所に帰ってきたサクラは感慨深く呟く。

 

あの島からここに戻ってくる一週間でサクラの左腕を吊るしていた三角巾はとっくに取れていた。しかしまだエースとサボの二人はサクラに戦闘をさせる気は全くなく、帰路に出会った海賊は二人で蹴散らしていた。海軍支部に首を差し出すのは億劫な上、そんな時間も無かったので海賊たちは丁寧に海から突き落として、金品だけ拝借していった。勿論無利子無期限でだ。返すつもりは全く無い。

 

 

「今回の航海で俺たちの海賊貯金は今まで貯めてきた三倍以上になった」

 

隠れ家のツリーハウス中でサボが話し始める。堅苦しい言葉とは裏腹に、その表情は明るい。

 

「しかも力だって今までの倍以上だ」

 

「ああ、だが今それは問題じゃない」

 

とちゃちゃを入れるエースの話題をサボはぶち切る。

 

「本題に入るぞ。お前らが倒れた後、エースは直ぐに目を覚ましたから、一緒にお宝を出来るだけかき集めた後にローブを海軍に引き渡したんだけど、「えっ、ちょっと待つじゃん?」……あ?」

 

「海軍からお宝をちょろまかして大丈夫だったのかじゃん?」

 

とサボを遮って、サクラは自分が懸念していることを聞く。本来は海賊のものは海軍のものとなるため賞金稼ぎが賞金首を捕らえてもお宝は手に入らない。手にはいるのは賞金のみである。しかしそんな規則はほぼ形骸化し、お宝を分けてくれる支部もあれば、全て譲ってくれる支部もある。しかし時々お宝をちょろまかして捕まる馬鹿もいるのはたしかである。

 

いつもは最年長のサクラが お宝をちょろまかした後に賞金首を海軍に引き渡している。ときより海軍からは怪しまれるが、そういったときはいつもサクラの巧みな話術で乗りきっていたのだ。

 

「あー、今回のやつは大丈夫だろ、お金にがめつそうだったけど。俺たちが抱えられる限界までお金を取っても全部のほんの一割程度にしかならなかったし。それにあいつ、頭悪そうだったし」

 

とサボが平然と言ってのける。二人が一杯に抱えても一割程度にしかならない程の宝の山とは、とそんなことには全く気付かずに眠っていたサクラは少しだけ自分を呪った。

 

「へぇ、あいつって誰じゃん?」

 

と頭が悪そうな男なら大丈夫か、と安心しておきながらサクラは一応聞いておく。

 

「たしか…「海軍支部の少佐のネズミじゃなかったか?」さうだ!たしかそんなやつだった!」

 

「じゃん!?」

 

口ごもるサボをフォローするエース。大丈夫かと思いきや全然大丈夫じゃないやつの名前が出て驚くサクラ。たしかにあいつの頭は悪いだろうが、お金に関しては人一倍の嗅覚を発揮しそうでサクラは少し怖く思う。

 

「って、本来はそこじゃねーんだよ!」

 

と声を荒げるサボ。たしかに微妙に話が脱線している。

 

「じゃあさっさとその本題を言うじゃん」

 

どの口が言うんだ、とサボはサクラを睨み付けるが、サクラはどこ吹く風である。見聞色の覇気でサボの考えていることなんか手に取るように分かるがあえて無視する。これ以上話を拗らせる必要はない。

 

「ああ、海賊から奪ったお宝の中にこんなものがあったんだ」

 

とサボは少し大きな箱を取り出す。この箱はそんなに価値の無い普通の箱だ。中には箱だけでウン百万するものもこの世界にはあるらしいがそういったことは全く無い、古びた傷だらけの箱だ。大切なのは中身である。

 

「おいおいこれって…」

 

「ピューじゃん♪」

 

「ああ、これは多分"悪魔の実"シリーズのなにかだ」

 

中身を知らないエースも箱を開けた瞬間に驚く。その中身はシルエットは葡萄のような果実だが、気味の悪い灰色をベースに所々渦を巻いた模様のあるそれは間違いなく悪魔の実シリーズのなにかである。

 

「当たりかハズレか分からないがどんなものでも売れば最低一億ベリー。どうする?」

 

|動物系(ゾオン)|超人系(パラミシア)|自然系(ロギア)のどの実を食べても普通は起こり得ないような現象を引き起こせるようになる悪魔の実を食べて弱くなることはないとない。だが、斬撃にはめっぽう強くても、打撃が通ったり足が離れられないという弱点があるバラバラの実よりも、その圧倒的火力で"頂上決戦"のときに悪夢のような雨を降らせた"マグマグの実"ではやはり百人中百人が後者を取るだろう。

 

悪魔の実シリーズ最強と言われる自然系は人気が高い。だが当然"自分が最強と勘違いした自然系の寿命は短い"。

 

「つーか、食うとしたら誰が食うんだ?」

 

と素朴な疑問を放つエース。一応止めを刺したのはサボだ。だがその一発しか打っていないサボに悪魔の実を渡して良いのかというとそうでもないだろう。逆にローブとの戦いで活躍したサクラはその後一ヶ月間眠ったままだったし、下っ端を一番倒したエースはローブとの戦いではあまり活躍していない。

 

今回自分が最も活躍したと思っている三人は悪魔の実を食べると泳げなくなるがそれでも悪魔の実を食べたいと思っている。この年は超人的な能力というものに憧れるものだ。

 

そこからサボが攻勢をかける。

 

「まぁ、戦いの後ずっと寝てたサクラはまずあり得ないだろ」

 

「ああ?」

 

サクラはこれには怒る。サクラはローブを追い詰めて後もう少しまで追い詰めたと自信を持って言えるし、ハイエナのように手柄を取っ手いったサボがMVPだなんてサクラは認められない。

 

「んなこと言うんだったらこうしてやるじゃん!」

 

「「あー!!」」

 

とサクラはその悪魔の実を摘まんで丸飲みするという暴挙にでる。当然二人ともビックリして怒るが、サボはもっと強烈だった。

 

「何してくれるんだよ!?」

 

とサクラの頭にご自慢の鉄棍を降り下ろす。

 

「あ」

 

「え?」

 

一瞬の出来事だったのでエースは呆けた声しか出せず、サボも予想外の出来事に呆けた声しか出せない。

 

ブオンと降り下ろされたそれはサクラの頭をいとも簡単に"壊し散らして"床に突き刺さった。

 

「どどどどどどうしよう!?サクラ殺しちまったああぁぁぁあああ!!?」

 

「おおおおおお落ち着けサボ!!こういうときは友愛数を数えるんだ、って友愛数ってなんだ、サクラ?ってサクラいねェェェェ!!」

 

「いたたたた…くないじゃん?」

 

カサカサと散った頭の粉末が徐々に集まっていき、頭が完成したところでサクラは不思議そうに言う。

 

「「「……ええええええー!!?」」」

 

三人の驚きの悲鳴はごみ山中に広がった。

 

サクラが後に図書館で悪魔の実図鑑を調べてわかったことだが、サクラが食べたのは超人系"ボロボロの実"で、それを食べた崩壊人間の体は非常に壊れやすくなりその結果、打撃や斬撃を無効化出来るとのことだ。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。