「「ダリゃあぁぁぁあああ!」」
とエースとサボが持ち前の棍で敵のサクラに襲い掛かる。対するサクラは徒手空拳。しかしそれはサクラがエースたちにはハンデを出した訳ではない。覇気をまだ武器に纏わせられないということもあるが、サクラは元空手全日本ジュニアチャンピョンであり三段、合気道と柔道は初段をたった十二才のときに取得してして、神童と呼ばれた才女なのだ。剣道も一級を持ってはいるが、本人としては無手の方がやりやすい。
「サボが正面から棍を降り下ろして、エースが右から薙ぐじゃん」
サクラがそういったその直後、サボが正面から棍を降り下ろして、エースが右から薙ぐ。それをサクラはサボのは一歩ずれるだけで回避して、そのままお辞儀をしてエースのをかわす。
「サボはそのまま突きでエースは棍を放棄して左フック」
そうサクラが言った瞬間にサボの突きがサクラに当たろうとするが、サクラは棍を軽く押して突きの軌道を変えてエースの拳にぶつける。
「いってえ!」
「叫ぶ暇は無いじゃん」
とサクラが踵落としを繰り出し、エースがそれをバックステップでかわす。しかしそれはサクラのブラフに過ぎない。降り下ろした左足で確りと踏み込み、
「でりゃあじゃん!」
飛び膝蹴り。knee him in the groin.(日本語訳:彼の股間に膝蹴りを食らわす。出典、ジーニアス英和辞典)
エースはそれも間一髪だが、転がってかわす。格闘の技ではインファイトを越えるまさかの威力130だが外しても自分のHPの半分が削れるなんてことはない。
飛び膝蹴りを外したサクラはそのまま飛んでいき木を五本もへし折って綺麗に着地する。
「左右からの挟撃」
サクラがそう言った瞬間、エースが左、サボが右から襲い掛かる。
「はあああ……じゃん!」
と少し溜めを作りタイミングを見計らって放たれたサクラの両拳は鉄製にもかかわらず、二人の棍をへし折って勢いを弱めることなくカウンターの要領で二人の顎も捉える。
「じゃん、これで今日俺も百戦百勝じゃん」
ここはゴア王国から少し離れた場所にあるジャングル。三人はあの後は海に出ることなく地力を上げていこうと四年間模擬戦などをやっていくことにした。当時のサクラはいくら覇気を使えると言っても身体能力が圧倒的に低かったせいで"ボロボロ"の能力による受け流しを使わなければ勝負にすらならなかったが、今では身体能力も追い付きもはや能力を使わずに二人を相手取っても完勝できるほどだ。
だが折角手にした能力だ。そちらもサクラはちゃんと磨いていった。能力者だけが強者とは決して言えないが、能力もまた強者たる要因のひとつであることは決して不思議じゃない。寧ろ当然のことと言える。
そんな能力の披露はまた今度として、今は日課の一人百戦を終えて自主練を行っている。夕飯がてら猛獣と戦うも良し、棍の素振りをするも良し、極端な話、疲れを取るために寝ててもいい。
そしてサクラは体力を付けるついでに散策がてらにジャングルの中を駆け回っている。あわよくば『剃』なんかを体得出来ればいいなんて思っているが、六式はそんなに甘いものではなく一向に向上の兆しが見えないままだ。
そして、気が付くと町に出ていた。
町の雰囲気は一言で言えば平和そのものである。老若男女元気にあるものは商いを、あるものは漁で大量の魚を、あるものは畑を耕し、またあるものは花壇の花に水をやっている。まさに"平和の象徴"|東の海(イーストブルー)を体現しているような小さな村である。
そしてその中のあるお店から発せられる匂いに惹かれて今日の昼食をそこで食べることにサクラは決める。
「こんにちはー………じゃん?」
サクラが店の扉を開けるとそこはある意味"新世界"だった。ガヤガヤと騒がしい店内。浴びるように酒瓶を傾ける屈強な男たち。トランプを取り出して賭け事を興じる男もいれば、殴り合いを興じる男もいる。そこは"平和の象徴"とは程遠い世界だった。
その中でサクラの目に留まったのはある一人の男。そのものである男の目立つ特徴と言えばなんと言ってもその赤色の髪の毛だ。そう、その男とは"赤髪"のシャンクスである。
もうそんな時期か、なんてサクラには思う余裕なんて全くなく、ただひたすら焦っていた。何故なら彼らは"海賊"でサクラはそいつらを狩る"賞金稼ぎ"なのだから。
シャンクスは賞金稼ぎだからといって問答無用で叩き斬るような人間ではないが、サクラは突然のことで少しパニックに陥り、疑心暗鬼になっていた。そんなときに、
「よお、お前。こっちに来て一緒に飲まねえか?」
突然そのシャンクスに話し掛けられれば、もう本格的にパニックに陥ってしまう。
「『手鞠桜』!」
別名ロケットパンチ。殴る瞬間に手首を壊して文字通り打撃を"飛ばす"。
「おっと」
厚さ五センチ鉄板すら紙のように貫通してしまうサクラの"飛ぶ拳"をシャンクスは驚くことなく、そしていとも簡単に酒瓶を持っていない左腕で防ぐ。しかしサクラの攻撃は止まらない。
「『桜前線』!」
今度は身体全体を、左手と右足だけ残して"壊し"、シャンクスの元に飛んでいった右手に集まる。これがサクラの能力を使った移動手段だ。当然走るよりも速い。そして、
「『蹴鞠桜』!」
今度は敢えて残しておいた右足を本体の元に"飛ばす"。そしてその勢いを殺さずにシャンクスの左腕を蹴る。
「おお、なかなかやるな」
今回は少しだけシャンクスは顔をしかめたがそれだけ、有効打であったとは言い難い。そして空いている右手で易々とサクラの右足を掴み、宙吊りにする。しかし簡単に捕まるサクラではない。
「『桜前線』!」
身体全体を壊して残した右手に向かう形でシャンクスの手から脱出する。そしてサクラは自分の最高の手札を切る。
サクラは懐から中に何かが詰まった試験管を八本シャンクスの方に投げ、それを自分の銃で撃ち抜く。何十回もその動作をやっているサクラにとって試験管を撃ち抜くことは朝飯前だ。シャンクスの方サクラが銃を出したときは身構えたが、自分に銃口を向けられていないことが分かると、今度は何をするのだろうかと目を輝かせて見ている。
サクラが撃ち抜いた試験管から出てきたのはピンク色の粉末、詳しく言うと細かく"壊れた"サクラの髪の毛だ。
そして素早くサクラはマッチを取り出す。これからサクラがしようとしていることは自分も巻き添えを食らうが、サクラは今自爆覚悟の大技を出さなければシャンクスに殺されると勘違いしていて正常な判断が出来ていない。
そさてマッチを擦って、
「枯レ木ニ花ヲ咲カセマショウ、さくらまんか…「何子供襲ってんだよお頭」」
何も出来なかった。シャンクスの右腕、ベン・ベックマンがサクラが自爆テロを行う前に、得物のライフルの台尻でこめかみを殴ったのだ。ガツンと鈍い音を立ててサクラは店の床に崩れ落ちた。
「うっ…」
暫くしてサクラが目を醒ますと、先ず目に入ってきたのは木張りの天井。そして起き上がると誰かのベッドに寝かせられていたことがわかる。しかも丁重に布団もかけられている。そして周りを見回すと、
「やっと目を醒ましたか」
この事態の元凶のシャンクスがいた。
「ひいっ、食べるなじゃん!」
と叫び、怯えながらベッドから飛び起きるサクラ。そして、
「まあまあ、落ち着け」
「むぐっ」
と言いながらサクラの口に酒、それもかなり度数の高いやつ、をねじ込むシャンクス。流石は億越えの海賊、常識が通用しない。そこに痺れる憧れる。
「はひっ…じゃん?」
と生まれて初めての"酔った"感覚に戸惑うサクラ。
「落ち着いたか?」
とシャンクスが再度問うが、
「じゃんじゃん」
コクコクと頷きながらも酒瓶を一気に傾けて酒を飲み干すサクラ。シャンクスの話なんて当然耳に入っていない。
「じゃんじゃん…」
と飲み干すや否やまた眠りについてしまうサクラ。落ち着かせる為にサクラに酒を与えたものの落ち着き過ぎたと少し後悔するシャンクスだった。
「うっ…ううう~」
そして再びサクラが目を醒ましたときに感じたのは激しくそして重い頭痛。所謂二日酔いだ。
「やっと起きたか」
と言ってサクラに水の入ったコップを出しながら言うシャンクス。
「うーありがとうじゃん」
二日酔いのお陰でずいぶん落ち着いたサクラは今度は叫ぶなんて真似はしない。
「あー、俺はどうしてここにいるじゃん?……えーっと、修行で走ってたらいい匂いに惹かれて店に入ったらシャンクスがいてパニクった俺が暴れて………どうしたのかじゃん?」
一度起きて泥酔した記憶が抜け落ちているが、取り合えず今に至るまでの自身の行動をサクラは振り返ってみる。
「済まないな、うちのモンがお前を殴って気絶させたんだ」
「いやいや、あの状況は暴れた俺の方が悪いじゃん」
と双方謝り合う。これで一応仲直りだ。
「ところでお前「サクラじゃん」サクラって悪魔の実の能力者なのか?」
仲直りしたところでシャンクスがサクラに気になっていることを聞く。シャンクスは十中八九サクラが能力者だと思っているが念のためだ。十中八九の残り一、二の確率でサクラが唯のビックリ人間というのも有り得るかもしれないのだ。
「ああ、勿論能力者じゃん。俺が食ったのは"ボロボロの実"じゃん。そんでもってそれを食った俺は身体を自由自在に壊せる"崩壊人間"じゃん」
「へえ~中々面白い奴だな、サクラ!」
とサクラと突然肩を組むシャンクス。この東の海では滅多にお目にかかれない悪魔の実の能力者、しかもなにかしら面白く、トリッキーな|超人系(パラミシア)の能力者に出会えたシャンクスのテンションはうなぎ登りに上昇している。
「じゃあ、サクラの能力ってどんなことが出来るのか見せてくれよ!」
「おう、いいじゃん」
これが四皇と呼ばれる海賊の器の大きさなのだろうか、サクラは直ぐにシャンクスに打ち解けてしまった。
この日、サクラがシャンクスと遊び過ぎたせいで、エースとサボの元へ帰ったのは夜遅くとなり心配した二人に怒られたのはまた別の話。