第四十六話 ゴア王国で破壊者は原作の破壊を
悪魔の皮を被ったような英雄の衝撃の襲撃から数日後、サクラの火傷が完治したそのお祝いに、パーッと皆でゴア王国の中心街でサクラの奢りで旨い物を食べた日のことだった。
「サボを返せよ!!!ブルージャム!!!」
「フフフ……」
サボの父親が海賊のブルージャムを使ってサボを取り返しに来たのだ。
「『返せ』とは意味のわからない事を…サボはウチの子だ!!!子供が生んで貰った親の言いなりに生きるのは当然の義務!!!よくも貴様らサボをそそのかし、家出させたな!!ゴミクズ共め、ウチの財産でも狙ってるのか!?」
「何だと!!?」
ルフィの叫びに逆ギレしたサボの父親の無礼極まりない発言に今度はエースが激怒する。しかし所詮は子供。大人の海賊にその行動は読まれている。だからエースがサボの父親に飛びかかる前に殴り付けられ、
「……え?」
無かった。相手は海賊とはいえ所詮東の海の雑魚。サクラには海賊が今から何をしようとしていたのかなんて筒抜けだ。
「どうして…おれを庇って………!?」
そしてエースを庇って海賊に殴られたサクラの耳は一撃で千切れサクラの顔は左右非対称な愉快な顔になっていた。
「コラ海賊!!子供を殴るにも気をつけたまえ!!ゴミ山の子供の血がついてしまった、汚らわしい……消毒せねば」
しかしサクラの大怪我なんかゴア王国の貴族が気にするはずもなく、むしろサボの父親は自分が汚れた事に気を使っている。
「やめてくれよ!!……おれはそそのかされてなんかいねェ!!自分の意思で家をでたんだ!!!」
「お前は黙っていろ!!!……後は頼んだぞ海賊共」
「勿論だダンナ。もう代金は貰ってるんでね。この二人が二度と坊っちゃんに近づけねェ様に"始末"しときます」
サクラの大怪我に我慢ならないと叫ぶサボにもその父親は耳を傾けずブルージャムに指示を淡々と出す。
「!!…ちょっと待て!!ブルージャム、お父さん、もういいよ、わかった」
サボは子供だが温室でぬくぬくと育ったガキじゃない。だからブルージャムの言う"始末"の意味が直ぐに分かった。
「何がわかったんだ、サボ」
「やめろよサボ!!!」
何を分かったか分かったかのだがそれを敢えてサボの口から言わせようとする父親。しかしそれは絶対に言ってはいけない言葉、サボが自分から自由を捨てて、何十年先まで決められた人生を送る事を決定付ける言葉だ。だからエースは反対する。自分達は兄弟、一蓮托生なのだ。一人が連れ拐われようとしている時に命を賭けずに何時賭けるというのだ。
それはサクラも一緒だ。
「俺は絶対にお前を裏切らない、一人にはしないじゃん。そのためならこんなちっぽけな国でも、東の海の連中が束になって来ても、偉大なる航路の海軍本部がこぞって来ても、新世界の四皇がお前に牙を剥こうとも俺は最強無敵で居続けるじゃん。俺がサボ、お前を守ってやるじゃん………で、どうするのかじゃん?」
耳を押さえてた右手に付いた血をべっとりとサボの顔をのじりつけるように、サクラは右手でサボの顔をなめ回しながら聞く。その言葉にハッとした顔でサボが言った、
「お父さん、何でも言う通りにするよ…!!言う通りに生きるから!!!この三人を傷つけるのだけは…やめてくれ!!お願いします……大切な…兄弟なんだ!!!」
自分の自由を捨てる言葉を。サボはサクラの実力は一応は信じてはいる。たった一人でこの国を潰すことは余裕だろう。東の海の秘境を探してもサクラの膝を地につける者は誰もいないはずだ。あの悪名高き偉大なる航路でも十分に通用する実力を持っているとは思う。
だけどそれまでだ。先日、サクラは海軍本部"中将"ガープに手も足も出ずに殺されかけた。だったらその上の大将を相手取ったらどうなる?そんな世界政府が認めた、ある意味で屈服した王下七武海を相手取ったらどうなる?そんな二大勢力と三つ巴でいられる四皇を相手取ったらどうなる?
確かに王下七武海や四皇と直ぐに敵対することはないだろう。だがサボの家は貴族だ。特異で強力な能力者がとある国の貴族の御曹子を誘拐したと騒がれたらどうなるだろうか。海軍がやって来るのが妥当だろう。そしてサクラを一向に捕まえられない世界政府はいずれサクラも敵わないような強敵をぶつけてくることも当然と言える。故にサボは自らの道を閉ざした。大切な兄弟のために。
しかしサクラもこのくらいのことは予測できた。だが今は、
「じゃあ俺はお前の事をみ…み守ってるじゃん」
この程度のことしかできない。全ては未来を知るサクラの考える最高の未来の為に。
「…おい…!!?行くなよ!!!振り切れ!!!おれ達なら大丈夫だ!!!一緒に自由になるんだろ!!?これでどうにか終わる気か!!?サボーーー!!!」
だから今は兄弟と泣くことしかできなかった。
「お前らとはポルシェーミの一件での因縁があるが…あれはもういい。……むしろ強ェ奴は好きだ。歳は関係ねェ。今…人手が欲しいんだが、おめェらおれの仕事を手伝わねェか?」
サボと別れたサクラ達はブルージャムに連れられてゴア王国の不確かな物の終着駅の海岸に停めてあるブルージャムの海賊船の中にいた。
「……これがこと"ゴミ山"グレイ・ターミナルの地図だ」
「サボがいねェとイヤだ、おれ」
「我慢しろ!!おれだってそうさ…!!……だけど本当のサボの幸せが何なのかおれにはわからねェ。様子をみよう。あいつは強い!!本当に嫌ならまた必ず戻ってくるさ」
しょうがなくブルージャムの仕事に参加することにしたエースとルフィ。しかし
「なあ、サクラどこだ?」
「……え?」
「「逃げやがったな!!あいつ!!?」」
そこにサクラの姿はない。
「あいつらにはあれもいい社会見学じゃん」
一人森の奥の木の上でくつろぐ片耳のサクラ。中々イイ性格をした兄貴である。
『あのゴミ山の二人の友人の命は今海賊の手の中、私の采配一つだ。二人がそんなに大事なら…今どうすべきかよく考えろ』
『……全く、こんな頭の悪い息子をもってしまう不幸……わかってくれるかね?…キミ』
『"養子"だよ…!!当然貴族の家系で優秀な子だ』
『お前がもし人生を失敗しても………』
『おめェバカなんだって?…ふふふ、お父様とお母様が散々言ってたよ、陰で…』
「あー、まさに見ると聞くとは大違いじゃん。実にムカつくじゃん」
サボを"耳守ってる"、言い方を変えると盗聴なう、なサクラはエース達を放置してサボに万が一の事態が起こらないか必死に、先程海賊に潰されてサボのポケットに忍ばせておいた右耳をそばだてて今すぐにゴア王国にケンカを吹っ掛けていきそうな勢いで激怒していた。文字通り今にも飛んでいきそうな勢いだ。
「今は落ち着くじゃん。"これ"が完成したんじゃん。俺の計画に狂いなんてもう有り得ないじゃん」
怒りを何とか収めたサクラが見下ろすのは、必死に逃げる一匹の鹿と、胴体が爆発してしまったかのような鹿のものと思われる足四本だった。
「いやー、中々はっちゃけて燃え盛ってるじゃん」
サボが連れ去られた翌日の深夜、サクラが原作で見た通り、そして昼間にサボから盗聴した情報通りに、ゴア王国の側にあるゴミ山は不自然な大火に見舞われていた。
「さて、そろそろ俺も動くかじゃん。『破壊的にぶっ壊す為に』」
「熱ィ!!熱ィよォ!!」
「はあ、お前ら、あんな大人に着いていくからこんなことになるんじゃん」
ちゃんとエース達の居場所を前もって把握してあったサクラは、ブルージャムに炎の中縛られていたエース達の拘束を解く。
「じゃん、本日の天気は快晴じゃん。湿度が低く、雲一つ無く満天の星空が望める遠足、放火日和じゃん」
「くそっ!!とんでもねェモンに巻き込まれた!!」
「もう逃げらんねェ!!」
とんちんかんでアッパラパーはサクラと悪態をつくエースと泣き叫ぶルフィ、大火事の中反応は三者三様だ。
「泣き言言う奴は置いてくぞ!!!」
「ウ!!あつくねェ!!」
「じゃん、ルフィ、エース!家に帰るまでが遠足じゃん」
ルフィをエースが諌めるがサクラは相変わらずゴーイングマイロード、言動が我が道を行くお方である。
「あの夕日に向かって走るじゃん!!」
「「いや、今夜だから!」」
現在十一時。太陽は店じまいをし、満天の星空が輝いている。