伝説の転生者の物語   作:ゆっぴー

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ネタ回です


第五十一話 スリラーバークで魔術師は最強の証明を

旅にアクシデントは付き物と言うが、アクシデントから旅が始まるのは中々珍しい。

 

ジンベエの"王下七武海"入りを聞いたイープは竜宮城の宴も程ほどに、深海からシャボンディー諸島へと向かった。タイトリーとはそこで別れて、二人はシャッキー'Sぼっくりバーに向かい、あわよくばかつての戦友、イープが一方的に巻き込んだ男、シルバーズ・レイリーに会えたら良いなというちょっとした願いが込められている。

 

「スラマッパギー!」

 

どこぞのアクション映画よろしくといった勢いでその店の窓を突き破り一回転して華麗に侵入を決めるイープ。肩にはちゃんとヤマトが乗っている。

 

「……やあ、イープ君じゃないか…」

 

昼から酒を飲んでいた老人は突然の二人の訪問にただただ驚くばかりであった。

 

 

 

それからイープは五年間をどのように過ごしたかを答え、ついでにヤマトとも顔合わせを済ませてからレイリーから記録指針と地図を貰ってから店をあとにし、海岸に出た。目指すはコノミ諸島ココヤシ村だ。

 

「僕達にはー、時間が無いー」

 

「…………」

 

「だからー、船を使っている時間はなったからー」

 

「…………」

 

「故にー、再び海上を走らざるを得ないー」

 

「…………」

 

「しかしー、僕達はー、あの過ちを繰り返さないー」

 

「…………」

 

海岸線でイープ一人で叫ぶ光景は中々シュールだ。イープもそれを理解しているのか体が少し角張っている。ピカソも驚きだ。

 

ヤマトのテンションが低い中イープが打ち出した海難対策はこれだ。

 

「よっー」

 

すぱーん、といった効果音が付きそうなほど軽い雰囲気で繰り出された斬撃は海を割り、道となる。モーセもヤハウェもビックリな海割りである。

 

後はこのコノミ諸島に向かって引かれた真っ直ぐの斬撃を辿れば良いだけである。ヤマトは肩に乗せて、斬った海が戻りそうになればまた斬撃を放てばいい、それだけの話である。

 

「行こう!ブレーメンへ!!」

 

「…………否定(コノミ諸島へ)」

 

第一無骨な猫と剣士じゃ音楽隊は作れない。

 

 

 

イープが走り続けて丸一日、音を置き去りにする速度で走った為、距離は相当稼げた。しかしここで問題が起こる。濃霧に遭ったのだ。これでは斬撃を辿ることができない。困ったイープは仕方がないので、一度最寄りの島に寄ることにする。

 

便りの記録指針は魚人島ではない方向を指しているため、レイリーはこの記録指針を持っているときは正規の航路を使っていなかったのだろう。

 

「まー、でもー、ちょっと疲れたしここで休もうかなー」

 

しかし濃霧のせいで目の前に突然島が見えた為、一旦二人はそこで休息を取ることにした。

 

その島が千人の死体とそれを統べる王、"王下七武海"に名を馳せるゲッコー・モリアが住み着く"スリラーバーク"という巨大な船であるということは別の話、ではない。むしろ今回のメインの話である。

 

 

 

「いやー、この島にー食料とか水とかあるしー、貰っていこうかー」

 

イープの向かいに聳え立つ城からはむじんとは思えないただならぬ気配がひしひしと感じられて、それがこの島が無人島でない事を証明している。

 

「…………御意」

 

ヤマトを肩に乗せてイープは城を目指して歩き始めた時、彼らはそれに出会った。第一村人発見。いや、この場合村人と言うには語弊がある。なにしろ、

 

「しょっぱなからー、ケルベロスかー」

 

人形ですらないのだから。つぎはぎの目立つ三つ首に巨体、少なくとも初めて見る人に恐怖感を与えるには十分な風貌だ。

 

「おすわりー」

 

ただし実力が伴っていなかった、圧倒的に。そんな見かけ倒しの張りぼてではイープを引かせることなど不可能である。

 

イープが軽く頭を押さえ付けただけで、怪物は地中深くに埋まってしまった。もう穴を見下ろしてもケルベロスを見ることもできない。いくらモリアの能力によって得た不死の体と言えど万能ではない。身動きが取れなくなれば、死なずとももうイープに立ち向かうことはできない。いや、死ねない分むしろ凶悪だ。

 

「あー、なるほどねー。うんうん、ここはゲッコー・モリアのスリラーバークだったのかー。どうして中々面白くなってきたー」

 

「…………胸熱(相手は王下七武海…腕がなる)」

 

この日はスリラーバーク始まって以来の厄日となること間違いなしだ。

 

 

 

そして城に続く道を行く二人は墓場に差し掛かった。恐怖の悪夢を冠する島だ、墓場で何も起こらない、なんてことはない。そしてそこでイープにダメージが与えられることもない。

 

ボコッ、ボコッ…ズルズル…と不気味な音を立てて墓のある地中から手が延びて死体が這いずり出す。手足を縛って埋める屈葬ならこんなことにはならなかったのに…くっそう!

 

「あははははー、たかがサンドバックが何個来ようともー、僕らにはー傷一つ付けられないなー!」

 

イープはこの為ではなかったが、手札を増やす為にとある弱点を克服していた。それは"炎"。イープは五年前から既に"火"や"熱"の攻撃をその持ち前の覇気によって無効化することが可能だったが、当時はまだ自ら"炎"を扱うことはできなかった。しかしこの五年間、火を恐れる動物は沢山居たし、食人植物に対して大きな効果が有るのは火だった。こうかはばつぐんだ!ダメージは二倍となっていた。

 

故に"炎"を極めたイープは自分自身に敬意を表してこう名乗る。

 

「Fortis931(我が名が最強であることを証明する)!」

 

イープは知っている、このゾンビの弱点が塩と炎であることを。だから使う、炎を。だから名乗る、炎のスペシャリストである若冠十四歳の天才魔術師の名前を。

 

イープの前にわらわらと現れるゾンビ達。それをイープは、

 

「我が手には炎、その形は剣、その役は断罪、飛ぶ指銃『炎剣』!」

 

人差し指から伸びる一筋の炎で全て焼き払った。

 

 

 

「モリア様ッ!モリア様ーッ!」

 

ここはスリラーバークの城の最上階、ゲッコー・モリアの個室だ。そこに駆け込むのはモリアの数少ない生きた部下で幹部のDr.ホグバックだ。

 

「アァ!?どうした、ホグバック!うるせェぞ!?」

 

自室に飛び込んできた雑音に思わず声を荒げる、巨大らっきょう、ゲッコー・モリア。

 

「大変な事になった!この島に現れた侵入者が…」

 

「侵入者くらい、お前がやれ!そして俺様を海賊王にしろ!」

 

「それがその侵入者が墓のゾンビ百体を全て浄化しました!!」

 

「何!?」

 

「しかもいまだに大量のゾンビを向かわせているのにまだ堪えた様子はありません!!」

 

「……キシシシシ!!」

 

「……も、モリア様?」

 

「欲しい!!そいつの影が欲しい!!アブロサムに伝えろ!"ジェネラルゾンビ"を総動員して侵入者を捕まえろと!!」

 

「かっ、かしこまりましたー!」

 

原作では残念な王下七武海だったゲッコー・モリアだが、それでもやはり腐っても王下七武海、彼の発する雰囲気は"本物"だ。それに当てられた哀れな医者は飛ぶように同僚の元へ駆けていった。

 

 

 

屋内への侵入を果たしたイープ。ここがただの島ならば交渉して物品を色々と譲り受けるつもりだったが、これは政府公認と言えどやはり海賊船。もう既に彼はここから様々な必需品を盗む気満々だった。そしてここに盗んできた物品が二つ。

 

「キキキキキー!コイツ、人間だー!捕まえろー!!」

 

少し広い客間に出たところで、シャンデリアが、絵画が、絨毯が、暖炉が、銀食器がイープに襲い掛かる。

 

それに対するイープは至って冷静。先ず盗ってきたマッチを擦る。これは当然ゾンビの弱点の炎を突くためだ。そしてその火をこれまた盗ってきた煙草に火を着ける。

 

「炎よ(Kenaz )」

 

そして覇気で煙草の火を強化し投げる。

 

「巨人に苦痛の贈り物( PuriSazNaPizGebo)!」

 

マッチ一本火事の元。煙草の不始末火事の元。気を付けなくてはならない。

 

ホグバックの屋敷、全焼。

 

 

 

「アーーー!ワタシの屋敷がー!!」

 

その時、何処かで医者が叫んでたとか叫んでなかったとか。

 

 

 

その後とある下準備を終えたイープは意気揚々と技を繰り出そうと、声高らかに呪文を唱える。

 

「世界を構成する五大元素の一つ(MTOWOTFFTOIIGOIIOF)…… 」

 

しかしそこに入る妨害。百体ものジェネラルゾンビを率いたアブロサムだ。全く、こういうときは邪魔をしてはいけないと習わなかったのか、空気嫁。

 

しかしイープにとっては逆に好都合だった。イープが今繰り出そうとする呪文の詠唱が成功すれば、この城の住人を"必ず殺す"ことが可能だ。しかしイープにはまだ使ってない技が一つあった。それをやらずに決めてしまうのはいささか面白くない。

 

「飛んで火に入る夏の虫…いや、ゾンビだねー」

 

百体のジェネラルゾンビ、せめてネタと散れ。

 

「灰は灰に(AshToASh)」

 

「塵は塵に(DustToDust)」

 

「吸血殺しの紅十字(SqueamishBloody Rood)!」

 

左右の腕をクロスさせて両手から放つ『炎剣』を鋏で切り裂く様に振る。

 

摂氏三千度の炎は人体を燃やすのではなく"溶かす"。当然それが火である以上燃えるが、その鋏はゾンビも鎧も当然のように溶かし切り、たった一撃でその全てを浄化してしまった。ちなみに鉄の沸点は摂氏二千八百六十二度。即ちイープの炎に晒された鎧は溶けるを通り越して蒸発する。

 

こう書いていると、ステイル=マグヌスがいかに捨て犬ではなく強キャラであるかがわかるだろう。さらに加えると溶岩の温度は普通は約摂氏九百~千百度。つまり『溶岩は火の上位互換』とイキっている溶岩を焼くことができるのだ。

 

さてさてこれで邪魔者は全て燃やし尽くした。後はネタに走るのみ。

 

「世界を構成する五大元素の一つ、偉大 なる始まりの炎よ それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり。 (MTOWOTFFTOIIGOIIOF) 」

 

「それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。(IIBO LAIIAOE IIM HAIIBOD) 」

 

「その名は炎、その役は剣。 具現せ よ、我が身を喰いて力と為せ( IINFIIMS ICRMMBGP)!」

 

「『魔女狩りの王』イノケンティウス!!」

 

その意味は『必ず殺す』。

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