伝説の転生者の物語   作:ゆっぴー

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今章最終回!


女ヶ島で乙女達は焦がれた想いを

未来に起こるとされているパンクハザード島での大将二人の決戦。その余波では島が死んだ。

 

そしてこの女ヶ島での決戦では王下七武海クラスが二人、大将以上が二人という超異常戦力が参加していながらもまだ闘技場で戦いが収まっている。その規模の小ささから全員が本気でないことが分かる。

 

それも当然、ハンコックとカネルは自分の島を沈める気はなく、ヤマトだって全力ではないし、イープも妹の第二の故郷を消すつもりはない。つまりこの闘いはある意味で茶番、落とし処を探るものであるといえる。

 

ヤマト、カネル、ハンコックの中で最も弱いのはハンコックである。勿論そうは言っても実力者であることは変わり無いのだが、いかんせんイープとの能力の相性が悪かった。

 

イッちゃってるイープはハンコックの魅力に落ちることはなくそして、

 

「『虜の矢』!」

 

「『泥侵食』」

 

相手を魅了したかどうかを問わない得意の石化の矢さえも"泥"のイープには通用しない。しかし五年間の努力の末に手にした能力の高速発動が災いしてカネルがイープの能力に気づく事ができなかった。

 

なんにせよ、能力の通じないハンコックは王下七武海失格の足手まといとは言わないが周りのレベルが高過ぎて、世なんの中ではずば抜けて最弱であった。

 

「『ドレ、ミなさい。ファっと広がっているシがドーんと……』」

 

手を仰々しく広げて叫ぶカネル。彼女の言う通り上を見てみると、空が歪んでいた。

 

いや空中という空間が歪んだわけではない。空に広がる空気が激しく震動し、その結果屈折率の変わってしまった大気が空を歪めていたのだ。

 

勿論その震動とは音、彼女の言う"シ"すなわち"死"とは空に広がる大音響だ。

 

その"死"がどーんと、

 

「『落ちてくる』」

 

イープに振るわれる。

 

「『鉄塊』!」

 

バリバリと服が、皮膚が揺れに"持ってきいかれて"裂ける。パンと鼓膜が破れる。

 

それでもイープは気にしない。聞けなくとも大丈夫だ。イープには見聞色の覇気、第六感があるのだから。皮膚、と鼓膜は破らせよう、だが肉はまだ切らせない、骨はまだ断たせない。

 

いくらでもイープはそれらをボロ雑巾の様に棄てる覚悟はあるがまだその時ではない。

 

しかしそんな覚悟も露知らず、即席チームはイープに休ませる暇を与えない。

 

「…………『蒼火謳歌』」

 

六尾の小さな六つに分割された炎と言えど、紛れもないイープの弱点である"火"さらに覇気が込められているから笑い飛ばす事はできない。

 

「『ミキサー』!」

 

纏めて消し飛ばす。

 

しかしここでやっと役に立てるハンコック。イープ本人には石化が効かない。ならばイープ以外の"技"ならばどうか。

 

「『虜の矢』!!」

 

渾身の一撃は見事竜巻が飲み込み、そして竜巻が石化して固まった。

 

「今じゃ!」

 

自分が作ったチャンス、自分の攻撃は通じないと分かりきっているから残りの二人に任せる。

 

「『地ヒビ…」

 

「『蒼火世…」

 

二人が決め技にかかるが感じた悪寒に従って二人共下がる。彼らの危機管理能力は正しい。もし技を打とうともう0.1秒そこに止まっていたらそこで退場だった。

 

「石は砕かれ、擦られ砂となり、砂は濡れれば泥となる。石は僕の劣化品ですよ『土竜』」

 

モグラに喰われていただろう。

 

「えっ、お兄ちゃん♪マジンガー♪♪」

 

「なっ、お主イープか!?」

 

そしてこの"泥"には二人共見覚えがある。

 

「だから先程から言っていたでしょう」

 

溜め息と供にイープが言う。

 

「では貴女方、やる気もそのまま萎えていきそうですし、次の一撃で終わらせましょう。ご安心下さい、貴女方の全力程度では僕は倒せません」

 

しかし終わらない。少なくともこんな不完全燃焼では済ませない。

 

「いや、私は止めておこう。通じる気がしないのでな」

 

しかしそこで素直に引き撤退するハンコック。勝てない闘いはやらない、その冷静な判断力も彼女が王下七武海である所以の一つなのだろう。

 

だが、二人は引かない。だってまだ奥の手を隠していたのだから。

 

「…………六対羽九尾」

 

「『二オクターブ』♪」

 

ヤマトは自分の真の姿を晒し、カネルは身体を構成する音の振幅を大きくし身体能力と能力の絶対値を大幅に引き上げる。

 

「…………『白虎世界』」

 

「響き壊せ♪『大地響き』♪♪」

 

純白のレーザーと大地を巻き込んだ大震動がイープに向かう。

 

「『斬衝波』」

 

そしてそれらを吹き飛ばす理不尽。

 

当然イープの勝利である。

 

 

 

招待が分かればイープは今度は歓迎され、夜は城で宴となった。というかそれくらいの勢いで迎えないとカネルがぶちギレそうであった。やはり兄と気づかず色々言ったことが答えているのだろう。

 

イープはハンコックら三人の幼少の頃の恩人、カネルの生き別れた兄として迎えられた。詳細は話していないが嘘はつはついていない。

 

「二十ゴルと言わず、タダで触っても良いよー」

 

宴の最中に自分の体で商売を始めようとする女の妨害はしておく。自分に許可なく売られるのは気に食わない物だ。

 

「とりあえず私とお兄ちゃんの邪魔したら散らすから♪」

 

そさて自分と兄の時間を邪魔されるのも気に食わない物だ。この国は"強さ"="美しさ"であり"偉さ"。見た目が子供なカネルもこの国では二番目に偉い。特に九蛇海賊団の連中はカネルのヤバさが分かっているから従う。

 

彼女らはカネルが敵海賊を音で爆破している事を見たことがあり、彼女の兄自慢は死ぬほど聞いてきたから分かる。彼女が機嫌を損ねたらマジで散らされる。

 

「はいはいー、ネルも物騒なことは言わないー」

 

そんな不穏な殺気を察知したイープが右腕に引っ付いているネルを膝の上に持ってきて、あーんと食べ物を運んであげる。

 

女の子とは現金なものだ、食べ物で簡単に機嫌が治る。

 

「お兄ちゃん、結婚しよう♪」

 

この五年間の寂しさの反動あってかテンションが可笑しな事になっているカネル。

 

「嫌だー」

 

しかし色恋には興味の無いイープ。バッサリと斬る。流石は剣士、切れ味が鋭い。

 

「ならば既成事実を作るまでっ♪チュー♪」

 

この子、既成事実の意味が分かってない。しかし、本物の既成事実に比べればそんなささやかなスキンシップもイープはやらない、興味ない。

 

「アッハッハー、それは予測済みさー」

 

迫る唇、それに顔を寄せてからの頭突き。

 

「ぐわぁぁああ♪」

 

相手が女であろうと顔面への攻撃は躊躇しない。イロゴトに興味の無いイープにとっては男女に差は無い。

 

 

 

「そーいやーさー、スチーはどうしたー?」

 

この島にいる筈のもう一人の妹、三毛猫のシロン・スチルドパッドの行方を聞く。

 

その問いに思わず顔を伏せるカネル。それは決して先程の頭突きが痛かったからではない。

 

「えっ…?」

 

まさかと最悪の事態を覚悟するイープ。

 

「あの子…一週間前から遭難してるの♪」

 

「えっ…じゃー、探しに行かないとー!」

 

バッと立ち上がるイープを止めるカネル。

 

「ううん、行っても無駄になる♪あの子生粋のバカで方向音痴なの♪」

 

それを証明するようにカネルは新聞の記事を取り出す。

 

『"三毛猫"スチルドパッド、東の海の○×王国王家を皆殺し!下手人"三毛猫"に懸賞金五千万ベリーが掛けられる!』

 

その二日後の新聞では、

 

『南の海にてまたも"三毛猫"が×○王国を滅ぼす!"三毛猫"は懸賞金が一億ベリーに引き上げ!!』

 

 

その翌日の新聞、

 

『北の海で今度も"三毛猫"の襲撃!△○王朝が途絶える!!』

 

その翌日の新聞の記事、

 

『西の海にて"三毛猫"が□×王国の城を全壊する!"三毛猫"の懸賞金は二億ベリーに!!』

 

そして今日の新聞、

 

『偉大なる航路に進出した"三毛猫"またも国家を亡ぼす!下手人を二億五千万ベリーの賞金首に!!』

 

「……あの子何四天王ー!?」

 

「……あの子、バカなの♪」

 

度重なる国落としは認めよう、何か理由があったに違いない。しかし、何故ここまでフラフラしているのだろうか。四つの海では羅針盤すら使えるベリーイージー仕様の筈なのに、解せぬ。いや、それは百歩、千歩、一万歩譲って方向音痴だからだとしよう。だとしてもこの移動速度は異常すぎる。全力前進したとしてもこの速さは出ないのでは無いだろうか、解せぬ。馬鹿と天才は紙一重というが彼女は馬鹿なのであろう。

 

因みにスチルドパッドの国落としの理由はその国が奴隷公認だったからである。元奴隷の彼女としてはこれは許せないのであった。

 

そのままスチルドパッドは探さず、旅してればいずれ会えるだろうというスタンスでいくことに決定し、宴が終わってから解散してイープは寝室で寝ることになった、カネルと一緒に。既成事実、既成事実煩かったので沈めておいたのは完全に余談である。

 

彼女も馬鹿なのである。

 

 

余談だがその頃のスチルドパッドは、瓦礫の山の上で自前の三味線を弾いていた。その瓦礫とは彼女が倒壊させた王城だった物である。

 

「このまま真っ直ぐ行けばネルの所にゃん!(=^ェ^=)」

 

そして偉大なる航路の前半をさ迷っていた。彼女の行く先は彼女を除いて誰も分からない。ただし彼女の予測は必ず外れる。帰巣能力が無いことに定評のあるネコの能力者のスチルドパッドらしいといえば彼女らしい。

 

 

 

所戻って女ヶ島、さらにその王の個室のベッドの上。そこでハンコックは寝付けずにいた。原因は今日我が国に侵入してきた男で、恩人のイープの事である。

 

彼の顔がハンコックの頭から離れず寝付けない。

 

この日、ハンコックはイープに惚れた。

 

一つは彼の強さ、王下七武海である自分すら全く気にかけない程の圧倒的実力。それに加え彼女以上のヤマトを従えるカリスマもある。

 

そして何よりイープの目である。何にも媚びないその瞳、それにハンコックは惚れたのだ。自分の魅力に屈せずその姿が。そして偽りの、恐怖からくる自分の虚勢とは違い、本物の風格、態度にハンコックは打ち抜かれたのだ。

 

チョロい。

 

そんな乙女の悶絶なんか気にせずに夜はふける。

 

 

 

「何処までもアナタに着いて行きます」

 

「いやー、そー言われても困るんだけどー」

 

朝イチでボケをかましてくるハンコックは華麗にスルー。

 

「なん…じゃと……?まさか皇帝が"恋の病"に!?」

 

その光景に戦慄するのはこの国の先先先代皇帝グロリオーサ。自身もそれにかかったから分かる、あれは恋の病だと。

 

「あとーそろそろー、僕はー旅に出よーかなー」

 

そしてハンコックからは"正義のコート"を返してもらった。ならばもう長居する理由はない。

 

「私も行くー♪」

 

「別にいーよー」

 

「なっ、カネルも行くなら私も行くのじゃ!!」

 

「えっ、良いの…?」

 

カネルは良い、ちゃんと五年前に言った通り王下七武海クラスの実力を身に付けた。だが現王下七武海で九蛇の王のハンコックは連れていっても良いのだろうか、国とかが大丈夫でない気がする。

 

「いや、だめニョ!」

 

自身がこの国を出ていった後に国が相当荒れた事は戻ってきてから知った。故に現皇帝にそんな事はさせられない。

 

「うーんじゃー、時々戻ってくるからさー」

 

カネルの第二の故郷なのだ、戻ってきても良いだろう。これがハンコックの恋い焦がれ死にを防ぎ、自身の旅を止めない最大の妥協である。

 

人に好かれるというのも中々難しい。




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