伝説の転生者の物語   作:ゆっぴー

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第八話 バカンスで巨腕は憤怒の粉砕を

ドフラミンゴがゼファーを襲撃して一週間がたった頃。目が覚めたゼファーは自分の切り落とされた右腕が何やら巨大なメカになっていることに気がついた。しかし気がついてもあまりのことに脳が処理できてない。ポンポンと二度ほど左手でその巨大な右腕を叩き、そして深呼吸してから、

 

「なんじゃコリャ!!!」

 

海軍の実験室にゼファーの絶叫が響き渡った。

 

「あれ、気に入りませんでしたか?」

 

「気に入るか、こんなもの!!腕返せ!!」

 

「はい、それは"スマッシャー"という武器で…」

 

「聞いてねえ!?」

 

自分の最高傑作の説明を早くしたいからとゼファーが何を言っても知らん顔で嬉々とした顔で説明を続ける海軍の科学者。

 

「……はぁ、聞いてませんでしたね?もう一回だけしか言いませんよ?それは"スマッシャー"という武器で…」

 

声色は呆れ果てているものの顔は生き生きしているからやはり自分の最高傑作の特徴を何度でも言いたいのだろう。その証拠に結局この科学者は十回も同じ説明をした。気がつけば五時間近く無駄に縛られていたゼファーには同情を禁じ得ない。

 

この"スマッシャー"という武器は"対能力者超特化型"の武器である。その理由は簡単、この"スマッシャー"は悪魔の実の能力者の|能力≪チカラ≫と|力≪チカラ≫を奪う"海楼石"で出来ているからだ。しかもどこぞの"白猟"の先端に申し訳程度に仕込んであるようなちゃちなもんじゃなく、敵を掴み取る掌は当然のごとく、それだけでなく内部のネジ一本まで全て海楼石100%使用である。さらに能力者を掴み取ってから腕を振ると機械が連動して手から爆発が発生する『スマッシュバスター』など色々なからくりがありこの"スマッシャー"は間違いなく現在の科学の粋を結集した地上最強の装備と言える。RPGゲーム出てにいれる伝説の聖剣すら目じゃないほどだ。

 

 

「くそっ、こんな武器いい迷惑でしかねェ」

 

「利き腕がそんなんになっちゃったらお箸とか持てないよね」

 

慣れないスマッシャーをこぼすゼファーにアハハと軽いノリで返答するイープ。物怖じしない子供ポジションのイープにしかできない上官を嘗めた口のききかただ。

 

ほぼ全滅した部隊の隊長で海軍大将のゼファーが大怪我負ったと聞いた本人を除く海軍上層部はゼファーに安静にし怪我を早急に治すことと、ゼファーの右腕にくっついているばかでかい武器、スマッシャーに慣れろという指令という建て前で彼に三週間の長期休暇を与えたのだった。腕と大切な部下を失い落ち込んでいたゼファーを憂いた生き残りの部下三人は勝手にそれを承諾しゼファーを説得して今は|偉大なる航路(グランドライン)のとある春島に来ていたのだった。

 

そこではバカンスだから当然訓練、教導の禁止、航海は基本的になくて仕事を忘れる。といったルールをイープが勝手に決め、ゼファー隊の残党四人でのんびり二週間ほど過ごしていた。

 

しかしそれもとある日の新聞、ニュース・クーの一面で一気に変わる。

 

 

 

「どういうことだ、世界政府!!?」

 

「どっ、どうしたんですか、ゼファー先生!?」

 

その記事を見たゼファーは激昂し、その怒号を聞いたアインが恩師の元に駆け寄る。

 

「どうしたのかな、こんな朝早くに?」

 

「どうしたで御座るか!?」

 

今一眠そうで覇気のないイープに朝から元気なビンズ。これが海兵のあるべき姿だ。見習え、イープ。

 

ビンズが愉快な忍者姿じゃないとか朝からウザい程元気とかそんなことはどうでもいい。

 

「今朝の新聞の一面だ。見てみろ」

 

『新王下七武海誕生!!

 

世界政府は昨日"天夜叉"ドンキホーテ・ドフラミンゴの王下七武海入りを発表。当人は新世界にあるドレスローザの国王務めており当国も同時に世界政府に認定される模様。海賊が国王を努める国を世界政府が認めるのはこれが初めて…………』

 

バサリ、机に放り投げられた新聞の記事を読んで驚く二人。イープの関心はもう記事にはなく、先日のドフラミンゴとの戦いを思い出してふやけていた。

 

「こんなことって……」

 

「……これでは仲間達が浮かばれないで御座る」

 

しかしイープを除く三人はこんなこと納得出来る筈がない。海兵であるが故に同僚、上官、友人そして恋人はいつ死んでも可笑しくないということは当然分かってはいる。だが当然それに納得出来る筈がないし、そしてその仇が自分達世界政府によって保護されるだなんて認めたくない。

 

ただイープだけは、皆弱かったね、程度にしか感じておらずもう誰一人の顔も覚えていないが。

 

 

 

それからのゼファーの行動は早かった。そして単純だった。皆に少ない荷物を纏めさせ、港に来るように伝え自身は直ぐに港に向かい船が出港出来るよう準備した。

 

準備が終った頃足音よりも大きな音で飴玉をカラコロと転がす音を聞き、ゼファーはやっと来たかと振り返って言った。

 

「俺は今ここで海軍を辞める!アイン、ビンズ、イープ!お前らはどうする?」

 

「はいっ!私は先生に着いていきます、どこまでも」

 

「拙者もゼファー先生に忠誠を誓った身、何処までも御供します!」

 

「で、イープ、お前はどうする?」

 

アインとビンズは即答したがイープはまだ悩んでいる様子だった。

 

「僕はいいや」

 

「イープ!」

 

たしなめるアインを無視して、フワワァと欠伸し、バリバリと飴玉を噛み砕いてから新しい物を舐めながらイープは返した。

 

イープだって少しは考えた。一応は尊敬する先生に着いていき犯罪者となるか、今まで通り海兵として過ごすかを。そしてイープは断った。それは犯罪者の方が不自由だと思ったからだ。

 

ゼファーの目的は当然復讐だ。だから緻密で正確な計画を長い年月をかけて実現しなくてはならない。そこにイープが自由気ままに振る舞う余地は当然ない。逆に海軍の目的は平和であり正義だ。その二者は曖昧で大雑把であるが故に一見厳しい規律があるように見える組織であっても、自由度が大きい。例えば海賊ならばどんな人権を無視した扱いも許されるし、派手に虐殺しても内々に処理される。

 

つまり悪人になることと善人になることを比べると、矛盾しているかのように聞こえるかもしれないが、善人の方が自由勝手気ままに振る舞うことが許されるだろうとイープが判断したが故の返答だったのだ。

 

「じゃあお前はどうする?」

 

「どうして欲しいのかな?」

 

先程と同じで違う質問。

 

「止めとけ、俺はお前を殺したくない」

 

これがイープのに対する最終警告。短い期間とはいえゼファーには人を見る目があるからイープがどんな人間か分かってるつもりだ。そして今から何をしようとしてるのかも。しかしイープはその警告に対して耳を貸さなかった。

 

「僕は死んでもいいや」

 

これが宣戦布告であると同時に戦闘開始の合図だ。

 

「『剃』」

 

「上か!」

 

宣戦布告したその瞬間にイープが跳びその斬撃をゼファーはスマッシャーで弾く。

 

「威力が上がってるな…俺の言ったことをちゃんと覚えてるみたいだな『速さは力より大事

な要因だが」

 

「『速さだけじゃどうにもなら無いやつも

いる』だよね。正にゼファーせんせえがそれだね」

 

「いや、俺以上にそんなやつも世の中ゴロゴロいるぜ」

 

二人にとってはまだまだウォーミングアップ、どちらも先を急がないで先ず戦いのリズムを組み立てる。

 

「アイン!ビンズ!お前たちは先に船に乗ってろ!」

 

「ですが先生!私も…」

 

「今のお前らじゃ邪魔なだけだ!」

 

アインの申し出をゼファーは即座に切り捨てる。残念ながら弱すぎる今の二人ではゼファーの横に立つことは出来ないのだ。それほどまでにゼファーとイープの二人はアインとビンズの二人の遥か上をいっている。

 

「安心しろ。海軍本部から大将が来る前にカタは着ける」

 

「大体二週間かな?……意外と時間が無いね」

 

イープは思わず息を吐く。普通は元海軍大将を相手にするとなれば援軍が来るまで時間稼ぎに徹するのが常識だ。だがイープは違う。『こんな美味しいメインディッシュをハイエナにたかられるなんて、なんて勿体無いことだろうかねぇ!!』そう傲慢に考えるのがイープなのだ。我が辞書に敗北の文字は存在しない、とイープは言っている訳ではないがそれでもイープは自分の勝利を疑った事はない。例え師匠のラヴィサメに殺されかけるその直前ですらだ。

 

「『スマッシュバスター』!!」

 

「狙撃『大槍』!!」

 

イープが距離を取った瞬間にゼファーに搭載されたスマッシャーが火を吹いた。しかしイープだってみすみす焼かれるつもりはない。相手が覇気の達人ならなおさらだ。イープは回転のかかった突きで炎を巧く受け流す。

 

「そろそろギアを上げようかな」

 

眠気で濁っていた目を今度はらんらんと輝かせたイープは帝の切っ先をゼファーに向けながら言った。

 

 

それからあっという間に二週間がたってしまった。観光地だった春島はもうその面影を残さず焼かれ、抉られ、潰され、切り刻まれてしまっていた。

 

「はあはあ…流石は元海軍大将だね」

 

「お前も一年生海兵とは思えねェな…」

 

互いに同じ位疲労困憊、満身創痍で戦局も外から見ればほぼ互角なのに、当事者二人から見ると決着はもう着いていた。

 

それはゼファーの勝ちだ。

 

「(底が見えないね)」

 

ゼファーは99.99%で迎え撃っているかもしない。だがイープは100%全力全開だ。同じ0.01%の差であっても99.99%と99.98%の差と99.99%と100%差には大きな違いがある。それは後者は一方が手を抜いていてもう一方が全力であるということだ。つまり自分は相手とは一枚上手であると示していることになる。逆にここでもう一方も100%を出してしまうとそれは互いが全力でやり合う死闘になってしまう。これでは格下相手に実力の差を見せ付ける闘いから態々格下相手にある意味でレベルを合わせることになるのだ。

 

確かに手を抜いていてやられてしまったら元も子もないと思うだろう。だが手を抜いて負けるやつは三流。見境なく全力を出すやつは二流。一流は能ある鷹は爪を隠すかの如く本当のピンチにならなければ全力を出さないのだ。例えそれで負傷したとしてもだ。

 

さらにイープが敗北を見たのはもう一つ理由があった。それは覚悟の差だ。イープは『死んでもいいから強い奴と戦ってそいつを帝で切り殺したい』と思いながら戦ってる一方、ゼファーは『自分が背負っている物を守るために死んでもこいつを殺す』と思いながら戦っているのだ。背負うものがないイープと背負うものがあるゼファー、どちらの覚悟が強いかなんて明白だ。

 

格と覚悟、この二つで劣るイープは自分の事を強者と感じた師匠を殺したあの日以来初めて勝ち方の分からない男に出会った。

 

「やっと捕まえたぞ」

 

疲労と絶望で動きがイープをゼファーのスマッシャーが捕まえる。

 

「『スマッシュブァァアアスタァァアア』!!!」

 

ガチン!とスマッシャーの起動音が鳴り、能力者であるが故に身動きが出来なかったイープはそのまま炎に包まれた。

 

 

 

 

「ゼファー先生、イープはどうなさるのですか?」

 

海軍の船が向かってきているという情報が入ってきてすぐにゼファーが船に戻ってきたことで安心した二人は元部下の身を案じた。

 

「もうじき海軍が来る。あいつは死ぬときは死ぬべき時に死ぬ、そういう奴だ。それはいまじゃねェ」

 

ゼファーは自分の最高の部下のことは分かっているつもりだ。




小ネタ等の解説

全力を出せば底が見える…別に"トリコ"にあった話をパクった訳じゃない。これを書いたのはその前。
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