伝説の転生者の物語   作:ゆっぴー

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第九話 偉大なる航路で将校はぶっちぎりの戦力を

海軍を離れたゼファーにやられたイープは気がつけば海軍本部の医務室にいた。

 

「……知らない天井だ」

 

「お前さん漸く目を醒ましたかい」

 

「おはよー、クザン中将」

 

隣のクザンを見るや否や三回転宙返りを決めてビシッと敬礼を決めるイープ。ただしその口調はだらけきっている。

 

「……お前さんが元気そうなら別に問題無いか…おい、イープ。センゴク大将がお呼びだ、元気そうだし今のうちに行っとくか?」

 

「うん、いいよ」

 

アポなしで大将に会える一等兵がすごいのかアポなしで大将に会える海軍が緩いのか。

 

 

 

「……っていうことだね」

 

「……そうか」

 

イープの事の経緯の説明を聞いて返事をするセンゴク大将。だがイープの話を聞いたのは彼だけでなく上級将校全員だ。何せ元とはいえ海軍大将が謀反を起こしたのだ。元であるためそこまで大々的な事件としては扱われてはいないが海軍本部からしてみると海軍史上希に見る大事件だ。海軍本部がこれだけ事を構えても何ら不思議はない。

 

「ご苦労だったイープ"少尉"」

 

イープはこの事件でゼファーを取り逃がしたとはいえ二週間も足止めすることに成功したという功績で一等兵から一気に海軍本部将校の少尉にまで昇格したのだ。ただ先程の理由は建前で本当の理由は、イープが保護されたときゼファーの"正義のコート"がイープに掛けられており、イープがゼファーの海軍を想う最後の意思だと汲み取った上層部はイープをそのコートを身に付けることが許される海軍将校にすることに決定したのだ。

 

「はーい」

 

一応上司であるセンゴク大将に口に棒つきの飴をくわえながら気のない返事をイープは返した。

 

イープが普通の飴から棒つきのに変えたのは昆布を何時もくわえていたゼファーを真似たものだった。イープにも憧れという感情はあるのだ。

 

 

 

「うん、それで直ぐに出港するんだね」

 

広い大将の間から出たイープとクザンはそのまま港に直行し、そしてそのまま船に乗り出港した。

 

「言ってなかったか?お前さん、俺の部隊所属になったから」

 

「言ってないよね!?だって僕、今まで寝てたからね!!」

 

ヤケクソ気味に叫ぶイープだが叫んだからといってマリンフォードに帰れる訳じゃない。まあ、帰れる訳じゃないからこうしてヤケクソ気味に叫んでいるのだが。

 

 

 

「三時の方向に海賊船発見!距離は約6kmほど!」

 

「えー、メンドクサイ…足はどう?」

 

海賊船発見の報告に言ってはいけないことをクザンは言ってたような気もするが一応仕事をする。

 

「すごく速いです!ぐんぐん離されていきます」

 

イープはそんな会話には興味ないとばかりに舐め終わった棒を海に捨て、新しい飴をくわえる。

 

「ふーん…諦めるか」

 

「諦めるの!?」

 

しかしクザンのやる気のない発言に思わず突っ込む。

 

「だってよお、この距離じゃどうしょうもないじゃない」

 

「えー、じゃあ僕があれを沈めとくよ」

 

イープの荒唐無稽な発言に失笑を漏らす海兵とクザン。取り合えず彼らは後でシメる事を決めてイープは船の壁の上に立ってそして帝を構える。

 

体は半身。帝を右手に持ち、それを掲げて、左手で切っ先を摘まむ。そして左手を引いて集中してから解き放つ。

 

「『一刀両断』」

 

無音。クザンの同僚のサカズキの『大噴火』やボルサリーノのレーザービーム、クザンの恩師のガープの『拳骨流星群』の様な音の派手さは無いが、イープの『一刀両断』は見た目の派手さで言えばそれらに引けは決して取らなかった。海を斬ったイープの『一刀両断』は意図も簡単に海賊船を斬った。いや最早あれば斬撃が海賊船を通過したと表した方が正しいだろう。それほど圧倒的で、理不尽な斬撃だった。

 

ちなみに海賊船の回収や海賊の逮捕に船を寄らせた際、イープはクザンと先程イープを笑った海兵を投げ飛ばして一足先に回収に参加してもらったのは当然だろう。

 

 

 

 

「今晩はー」

 

その日の夜、イープは船長室に呼び出されていた。

 

「今日の一撃、中々だったぞ」

 

「まあね、で、本題は?」

 

クザンの挨拶をイープは軽く流すとバリバリと飴を噛み砕いてまた飴をくわえる。

 

「今日の話しはその正義のコートの話だ」

 

「ふうん」

 

眠たい話だったら直ぐに帰ろうかと思ってたイープだがクザンが思ったより真剣な様子なので一先ずイープも真剣な表情を作る。

 

「全員って訳じゃないが、そのコートを着てる海軍将校は大体海軍の絶対的正義の他にそれぞれが信じる正義を持ってるんだ、ちなみにオレは"だらけきった正義"な」

 

「うん、取り合えずその正義は早急に直すべきだね」

 

「そんで互いに色々な正義を掲げてりゃ色々なゴタゴタがあるワケよ。下手すりゃ海兵同士が殺しあいになることもな」

 

原作でサカズキが自らの"徹底的な正義"の名の元にコビーを殺そうとしたことが良い例だろう。

 

「お前さんみたいな子供に聞くのはおかしいのかもしれねぇ。でも先生の意思を、コートを継いだイープ、お前さんはどんな正義を持ってるんだ?」

 

そう言ったクザンの目は何時になく真剣だ。やはりクザンの恩師はガープだと言えど、クザンにとってゼファーは尊敬する海兵なのだ。

 

「うーん、僕の正義は『自分勝手な正義』かな?」

 

「『自分勝手な正義』?そりゃ、ボルサリーノの『どっちつかずの正義』みたいなモンかい?」

 

少し考えたイープの答えに疑問の声を上げるクザン。

 

「いや、僕のはそんな現役の中将ほど芯の通ったものじゃないかな。僕がやりたい時にやりたい所でやりたい事をやりたい様にする。そんな自分勝手で我が儘な正義が僕の『自分勝手な正義』かな」

 

「……成る程な。そこまで芯の通った正義ならゼファー先生のコートも相応しいな」

 

イープはこの正義を我が儘で自分勝手と称したが、クザンは逆に何時何処でも自分は必ず正義であるという自信に満ち溢れた正義のように感じた。

 

 

 

昨日クザン中将から自分の『正義』について聞かれ 、海軍少尉としての自覚を認識した" 剣帝"スコウェルト・イープ。その後クザン中将から、

 

「これならお前にも船を任せられるわ」

 

とか言われてイープは誉められたかと思った。しかし現実は、

 

「どこいったんですか、クザン中将ー!」

 

「まだ近くにいるはずだ、探せー!」

 

「六時の方角には見当たりません!」

 

「三時も同じく!」

 

「十二時も同じく!」

 

「九時も同じく!」

 

「くそっ、本部に連絡しろ!指示を仰げ!」

 

「了解!」ドタバタドタバタ

 

クザン中将が脱走したのである。つまりあれは「これで安心して逃げられる」っていう意味だったのだ。本当にそれで良いのか、海軍本部中将。因みにさっきの台詞はイープ→イープの上司→海兵→海兵→ 海兵→海兵→イープの上司→海兵の順である。

 

「本部に連絡したところ、『何時も通り引き続き航海を続けろ 』とのことです!」

 

「本部がそう言うなら仕方がない!これからは中将抜きで航海を続ける!」

 

「いいの!?」

 

そして本当にそれで良いのか、海軍。仮にも有事の際には大将に何時でもなれるようにし ておくべき階級の中将であるクザンが脱走したのだ普通は大問題である。そして海軍の人事も問題が大有りだろう。 そんなときどき脱走するような人が中将になっていて良いのだろうか。いや、原作ではかなり仕事態度に難があるあのガープ中将でも大将に再三誘われるくらいだったのだ、実力さえあれば、と言ってしまったら少し語弊があるが、明らかに管理職に向いていないような生活態度でも実力が伴っていればいい組織なのだ 、海軍というのは。そしてイープもその組織の一員である以上は言われたら従う。

 

それにイープからすれば、

 

「クザン中将の分も僕が潰せるしね…」

 

寧ろやり放題、殺りたい放題の好機である。後日談だが部下によると、この時イープはかなり不気味に笑っていたらしい。

 

 

 

そしてそれから二週間が経った。 しかし全く帰ってくる兆しすら見えない。本当に海軍将校の在り方に疑問を抱かざるを得ない。いや、しかしもうここまでくると清々しさすら感じる。勿論だからといって、真似は決してしてはいない大人の見本だが。因みにイープは今この船の中でかなり頼られた存在になっている。何故かと言うと、

 

「おっ、十一時の方角、3000m先に海賊船はっけー ん!狙撃『大槍』!!」

 

耳を塞ぎたくなる程の大きな爆発音が鳴り響き、こうして世界から悪がまた一つ減った。

 

「回収宜しくね~」

 

このような感じでここ二週間のsearch(超高性能の見聞色の覇気)&destroy(文字通り"破壊"瓦礫すら残さない)で海賊船を大体二十隻以上沈めてきたからである。これはイープが楽しめてなおかつ海兵さんたちが安全に海賊を捕らえられるといった完璧な一石二鳥である。

 

しかしイープも自分の力がここまで通用というか、通用し過ぎるとは思ってはおらず驚きを隠せない様子だ。

 

そして一カ月が経った。もはや当然かのごとくクザン中将が帰ってくる兆しが全く無いが、船員の皆はもう全く気にしていない様子だ。過去に何度もあったのだろう。慣れというのは恐ろしいものだ。 しかし中将をスルーする部下もいかがなものかとは思うが。

 

「ねえ、クザン中将が帰ってきて無いけど探さないの?」

 

「ああ、中将は二週間で見つからなかったら絶対に見つからないからな。」

 

とイープの問いに中佐が答える。この中佐の回答からもクザン中将の日頃の勤務態度の悪さがうかがい知れるだろう。とイープは今まで何度も確認したことを再確認する。

 

とここで海賊船を察知。

 

「五時の方角に海賊船はっけーん!」

 

しかし何時も通り『一刀両断』や『大槍』ばかりで海賊船を沈めるのにもそろそろ飽きてきた頃である。だから今日は何時もと違う潰し方をしようとイープは決める。今回は"帝"を体に巻き付けるように構え、

 

「『地平切り』」

 

ヒュッと軽く風が切れるような音が無言の海軍の軍艦内に響く。更に追い打ちをかけるかのように、またさっきの構えをして同じ様に"帝"を振るう。すると静かに船がずれていって見事に三等分されて沈没する。

 

「今日も回収宜しくね~」

 

さらに三カ月後、クザン中将が戻ってこないという職務怠慢のペナルティを部隊全体で負わされて未だ航海をしているトップ不在のクザン中将の軍艦。理不尽きわまりない思いをしているのはイープだけではないだろう。しかし、あと二ヵ月でマリンフォードに帰還する許可が降り、やっとシャボンディーパークに行く目処が立ちそうなのである。これを聞いたとき、イープはそれはもう年相応の子供の様にはしゃぎ回っていた。当然クザン中将は 帰ってくる気配すら無い。あの人はその内ふらっと帰ってくるだろう、 というのがこの船の皆の認識である。

 

ところでこの船のイープ以外の皆の階級が全員一つ上がったのだ。そう、イープ以外の。何でもこの部隊はもう軽く三桁くらいの海賊を壊滅させているらしく、その功績が認められたようなのである。しかしその100%はイープが潰した海賊なのである。何が何でも四才児のイープを余り高い位に海軍上層部は就けたくないようだ。しかし待って欲しい。勤務態度があり得ないけど大人のクザンは中将であるのに対して、理想的な勤務態度のイープは少尉なのはおかしいだろう。しかも実力もイープの方が断然上である。イープの勤務態度は本当に良い。 書類仕事とかも愚痴を溢さずちゃんとこなすし、抜け出さないし、ここ近海の平和にかなり貢献していると断言出来るし。海軍上層部は本当に何が気に入らないのだろうか。とイープが悩みに悩んだ結果で行き着いた答えが、

 

「コートなの!?コートの着方が気に入らないのかな! ?」

 

これだった。間違っているのは明らかである。そして周囲からは違う、とかそんな訳無い、とか聞こえるがイープは気にしない。そのまま解決策を考える。

 

「はーいちゅーもーく!じゃあ皆に質問だよー!」

 

とイープの掛け声で看板に出ている皆が一斉にこっちを向く。

 

「僕が今着ている正義のコート、これ前を閉めた方が良いかな、それとも全開の方が良いかな?」

 

と質問してみる。

 

「やはり他の将校と同じ様に全開の方が良いのではないでしょうか」

 

と一人が言うと、

 

「いやっ、ここは全部閉めた方が子供らしくて良い のではないでしょうか!」

 

と他も発言する。

 

そのうちかなりの大激論になったが、

 

「うーん、全開が七で全閉めが三かー、よし、じゃあ 全開で決定!パチパチー!」

 

と面倒臭くなったイープが強制終了する。更にその後、『では正義のコートの下には何を着るか 』についてまた大激論になったが、結局黒地の白いドクロに真っ赤な×印をつけた物に決定した。因みに下に着るものはイープが自分の案を押し通して決めた。流石に真っ赤な×印が入った奇抜なTシャツは無かったので自分で書いて作ることにした。勿論黒地に白いドクロの入ったTシャツを買って、それを自分で赤い×印を付けることだけをする。綿花からとかそんな無謀な自給自足はしない。素人が書いた絵柄だがイープ本人が結構気に入ってたりするので問題無しだろう。

 

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