素直じゃない私と、笑わせることが得意な幼なじみの物語。

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暖かい夕日の元に帰るまで

 

 

「公園、行こうか」

 

 私は、隠し事が出来ない顔らしい。いつも幼なじみの翔が「なんとなく」と言って気づいてくれる。この時もそうだった。

 

 夕暮れ時の高校からの帰り道。私たち二人は通学路をそれて近くの公園に向かった。

 私が何かに思い止まったら、決まって公園のブランコに腰かけ話をする。

 

 

「……それで、どうしたんだ?」

 

 隣の影法師は上下に大きく動くのに、私はゆらゆらと横に揺れるだけ。

 

「喧嘩しちゃって。お母さんと」

 

「珍しいな」

 

「うん。お母さんがあんなに怒るの、初めて見た」

 

 苦笑いを浮かべながら、私は靴のつま先で地面に絵を描いてみる。土は午前の雨でぬかるんでいた。

 

 翔が立ちこぎしながら先を促した。

 

「ちょっと、帰りにくいの。私も酷いこと言っちゃたから……」

 

「でも、帰らないと仲直りできないだろ」

 

 もっともな話だ。そうなんだけど……と私は口ごもった。

 

 喧嘩の原因は、やりたいことを駄目の一点張りで止められたことにある。翔はなんで喧嘩になったか深く追究してこなかったから、言わないけど。

 翔にはきっと見破られてるんだろうな。ただ私が素直になれないだけだって。

 

 

 影法師が丸く縮まった。時計の針に置いてきぼりの私と違い、鬼ごっこではしゃぎまわっている子供達は空の色の変化にも気づいてないようだ。

 

 ぼんやり見つめていたら、

 

「俺達もよく、5時過ぎても遊んでたな」

 

「うん」

 

「それで、おばさんがいつも迎えに来てくれた。最初は怖い顔して来るけど、最後は笑って話を聞いてくれるから、俺はおばさんが好きだよ」

 

 翔は懐かしそうに子供達を見つめていた。

 

 この公園は、初めて遊んだ時と何も変わっていない。一度全部の遊具にペンキを塗り直していたけど、使う色は同じだった。だから、子供達がまるで昔の自分達に重なって見えた。

 

「もしかしたら、おばさん迎えに来たりして」

 

「まさか。もうそんな年じゃないよ」

 

 何が可笑しいのか、翔は大口で笑いだし、さらに大きくブランコが揺れた。

 

「……私も、お母さん好きだよ。早く仲直りしたいけど、少し、納得がいかないところもあるんだよね」

 

 そう。納得がいかない。ネットに関わることだから心配してくれているんだろうけど、話を聞いてくれないことに私も苛立ち「馬鹿」だの「大嫌い」だのさんざん言った挙句部屋に閉じこもってしまった。

 

 朝になってすっかり冷えた頭に残るのは後悔と恥ずかしさ。お母さんは朝早くに仕事で家を出るから顔も見てないし。ただ気まずい。

 

 

「……話ぐらい、聞いてくれてもよくない?」

 

 ぼそっと口を尖らせて呟くと、翔の呆れた声がすぐ飛んでくる。

 

「それが納得いかないなら、なおさら早く帰って話聞いてもらわねーといけないんじゃないの?」

 

「そうなんだけど―――!」

 

 むしゃくしゃする。なんで私こうなんだろう。ここまで素直じゃないとただの面倒くさい人だよ。翔だって引くよ。

 

 カラスが電線に2匹。羽をばたつかせて、鳴いたと思えばそのまま夕日に向かって飛んでいく。

 

「カラスと一緒に帰りましょう!」子供達は、はたりと気づいて歌を歌いながら公園を後にしていった。今は、私と翔の二人きりだ。

 

 

 私がため息をつくと、それを吹き消すような大きな声がした。

 

 

「―――じゃあ、素直に謝れるようになるまで遊んじゃおうぜ!」

 

 

 パッとブランコから高く飛びあがった翔は地面に着地すると私の前に立った。

 

「え、それこそそんな年じゃないでしょ」

 

 何を言っているのだ、という目を向けても、ひるまず翔はニカッと笑っている。

 

 

「何する?さっきの子供達みたいに鬼ごっこするか?」

 

「ねえ、翔。私達高校生……」

 

「関係ない!」自信満々に言い切ったカケルは親指を自分の胸に指して、

 

「俺の名前は翔だぞ。時を『カケル』少年がお前を子供心に連れてってやる」

 

 

 なんだか、目の前に星が瞬いているようだった。コイツは昔から私を笑かすのが得意みたいだ。

 

「もう。上手いこと言っちゃって」

 

 二人一緒になって笑っていると、笑いすぎて涙が出てきた。大事なことだから、翔にも言っておく。

 

「笑いすぎただけだから。勘違いしないでね」

 

「はいはい」軽く流した翔は私の手を引っ張った。

 

 私達は公園を駆けて行く。

 

 

 

 

 お母さん。暖かい夕日の元に帰るまで、ちょっと時間を使いそう。

 

『ごめんね』を言うために、自分の気持ちを全部公園の噴水にでも流して空に散らすよ。

 

 そして、今度は認めてもらうからね。

 

 

 あと、夜遅くなっても大丈夫。翔が責任をもって家に送ってくれるから。

 

 だから、制服に泥をつけて帰ってきても、驚かないでね。

 

 

 

 

 

 





 読んでくれてありがとうございます!

 いくつになっても子供心は忘れたくないものですね。

 連載中の「中野家」ですが、6話は今執筆中でして…。少し遅れています。すみません。

 なので、ためてあるお話をこうしてお届けさせてもらいました。

 中野家の方も必ず皆さんにお届けするので、待っててくれると嬉しいです。よろしくお願いします。

 ではまた。            猫葉

 ツイッターもよろしくです。
 https://twitter.com/Sakurneko39
 

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