理想:
記憶を無くした星奈ひかるには頼れないし、星空連合に助けを求めるしかない!
→連合と協力してノットレイダーは退けた! これからは協力して戦うから安泰だよ!
→でもオヨルンが地球人に正体バラしたのは事実だから100年間渡航禁止ね!
→戦役終結次第、ひかるとはお別れルン……。
現実:
ひかるの記憶が戻った!
→唐突な新技のサザンクロスショットで勝った! スーパー戦隊バズーカ!
→でも宇宙開発特別捜査局にオヨルンの正体がバレそう!
→通りすがりの映画監督に助けられて、皆で一緒に映画を撮れば有耶無耶にできるルン!!
「いや、なんでだよ」
さすがにナユタもコレは真顔になる案件だった。
いつもの胡散臭い笑顔が引き攣った
正直今回は勝ったかな、と思っていたのに。
現実は小説より奇なりとかいうレベルではない。特に現実の方の最後の行。
まるで意味が分からんぞ!
戦闘後に皆でロケットに集まってきたと思ったら、なんか変なオッサンがついてきていたのだ。薄い本展開かな?
で、さっきはゴメンルン、なんて謝ってきたララ達と一緒に状況を整理したところによると。
アメリカで有名な映画監督のアブラハム氏が訪れ、正体がバレそうになったララ達に助けてくれたようだ。
なんでもアブラハム監督も実は異星人で、星空連合の調査員をしているのだとか。
だが、宇宙開発特別捜査局の局長に対してアブラハム監督が言い訳をしている時に、ひかるが自分たちも役者だなんて適当なことを言ったせいで……。
「という訳で、君達には私の映画の役者として働いてもらうことになった!」
「あー、そうなんだー? みんなガンバッテネー」
「「「「他人事みたいな言い方!!?」」」」
そうは言われましても。
タイムトラベラーの御約束として、映像記録に残るのは如何なものだろうか。
あまり明確に映像記録に残ってしまうと、後になって面倒な事態を引き起こすかもしれない。
自分の育った時代へ戻る手段に見当もついていないナユタだが、一応その辺りは気を遣っているのである。
2017年に猛烈に流行ったあの映画と同じぐらいに歴史の修正力先生が仕事をしてくれるならば、問題ないのだが。
なんだったっけ、あの映画の名は。
「あたし、この中ならダントツでナユタが役者向きだと思うんだ」
「協力してくれないルン……?」
「あんまり顔を売りたくないんだ。察しておくれよ、マジで……」
えれなは、前に見せた小学生の奇麗な笑顔を想像しているのだろうが。
演技力の問題ではないのである。
まさか時間警察の類が来るとは思わないが、タイムトラベラーだと疑われるだけでも色々と面倒だ。
「ララみたいに宇宙の法に違反してる訳じゃないけど、家族絡みの面倒くさい因縁が色々あってさ……。アタシの所在がバレると拙いんだよねー」
家族といってもナユタの親はこの時代には生まれてすらいないが。
一応100パーセントの嘘という訳でもない誤魔化しだった。
「おおよその事情は察しました。春日部さんには裏方に回ってもらいましょう、皆さん?」
まどかが、ナユタへと助け船を出してくれた。
相変わらず、気が利く子である。
たぶん、ナユタのことを戸籍を偽造した亡命外国人だと思っているのだろうが。
「むしろ、ナユタちゃんの生い立ちの謎に迫れば、キラやばーなドキュメンタリーが1本撮れそうな気がする……!」
「詳しく聞こうじゃないか! 映画監督の血が騒ぐぞ!!」
「監督ー? そんなことより、ドーナツいかがですかー?」
「食べるルン!」
おめーじゃねーよオヨルン!!
なお、結局ドーナツはみんなで食べた。
ひかララの距離がいつも以上に近い気がしたナユタさんだったが、ちょっと心が折れ始めていたので気が付かなかったことにしたのだった……。
――さよならなんて、絶対イヤだよ! 私は、ララと……ララと、ずっと一緒に居たい!!
――ひかる! 私も……ずっと、一緒に居たいルン!!
……映画は、無事にクランクアップを迎えた。
『あくいのオトモダチ』
第10話:確かに、それは妙ですね
そんなこんなで。
6月も中盤にさしかかろうとしていた。
その間、ノットレイダーから牡牛座のペンを奪い返したり、蠍座のペンを強奪したりした模様。
あと、映画を撮り終わった後に、ララが観星中に通ってみたいと言い出して、ひと悶着あったりして。
さすがに観星中学校で起こったアレコレに関しては、部外者のナユタは関与できなかったが、果たしてどうなったのか。
良くも悪くも、ララは大分刺激を受けた様子だが。
どうも、コミュニティの一員として認められたことが嬉しく思えたようである。
まぁ、地球のアレコレは置いておくとして。
またもや、宇宙を駆ける冒険の再開である。
今回、スターカラーペンダントの輝きによって導かれた先の惑星の名は……ゼニー星。
星空連合に所属しておらず、金だけがモノを言う無法地帯なのだとか。
そして、ペンダントが一同を導いた先は……なんと、オークション会場であった。
面倒なことになってきた。
どうも、12星座のペンが競売にかけられる予定らしいのだ。
まず身元がしっかりしていないと門前払いであるし、入場できたとしても現地通貨の手持ちが乏しいからペンの落札は難しい。
「ぐえぇ……入れてもらえなかったよぉ……」
勇者ひかるは、倒れた!
まぁ、門番によって侵入を食い止められただけだが。
なんでも、『ブルーキャット』とかいう宇宙快盗が現れるというウワサが流れて、警備が厳重になっているらしい。
「なーに、視点を変えれば世界が変わる! こう考えるんだ。競り落とす必要なんてない、と」
「オヨ……??」
「まさか、あたしたちに『プリキュアの腕力で奪い取ってこい』とか言わないよね……?」
オヨルンは安定の困惑スタイルである。
えれなも、かなり嫌な予感を嗅ぎ取っているようだ。
まどかは……口元に指をあてつつ、ナユタの真意を推察しようと頭脳を回転させている様子であった。
「……なるほど。わたくし達が競り落とさなかった場合にどうなるか、考えてみたら分かりました」
「二人だけで納得してないで教えてよぉ、まどかさん!」
未来図が描けていない星奈ひかる達のために、まどかとナユタは説明を始めた。
プリキュア達がオークション会場をスルーした場合、どうなるか?
落札者が12星座のペンを持って帰ることになるだろう。
そうすると、後からペンの反応を探知したノットレイダーが落札者を襲ってペンを強奪する。
一度ノットレイダーの手にペンが渡ってしまえば、その後にプリキュア達は堂々とペンを再強奪できるという訳である。
実際に獅子座や蠍座のペンはノットレイダーからの強奪に成功しているわけで。
必ずしもノットレイダーとの戦いに勝てるわけではないが、ここはオークションをスルーした方が、下手にオークションで参加者から恨みを買うよりも楽なのだ。
「それって、落札者が私設兵力でノットレイダーを撃退しつづけたら、あたしたちも永遠にペンを手に入れられないよね……?」
「そんな強大な戦力を持ってるヤツが居るならさー? そいつに宇宙を守ってもらっちゃえば、プリキュアが戦う必要も無くなってバンバンザイだぞー?」
それって番組的にどうなんだよ……なんてメタなツッコミが出来る人間は、この場には居ないのだ。
まぁ、金持ちばかりが集まるオークションならば落札者も相応の警備を雇っているだろうし、ノットレイダーに一方的に蹂躙されることも無いだろう。
その後は、ある程度ノットレイダーの襲撃回数が増えた頃に、星空連合の名前を使って疫病神ペンを引き取りに行けば、幾分か交渉も楽になる見込みである。
ついでに、それなりに有名な資産家がペンのせいでノットレイダーに襲撃されたとなれば、有益なウワサも生まれるかもしれない。
12星座のペンが疫病神だと知れ渡れば、プリキュアの今後のペン集めが楽になること請け合いだ。
考えれば考えるほど、競売に参加するメリットが無いどころか、スルーのメリットが圧倒的に大きい。
「ってことは、もしかして……帰る前に余裕があるから、観光していけるってこと? キラやばーっ!」
「ひかるは、本当に仕方ないルン……」
やれやれ、なんてジェスチャーを見せて溜息を吐いているララ。
でも蚤の市の方をチラチラ見ているのは……お前、ひかると一緒に回る気満々じゃねーかオイ。
そういうとこだぞオヨルン!
なお、蚤の市というのはフリーマーケットと呼んだほうがピンとくる人も多いかもしれない。
路上販売の低価格市場といえば大体のイメージは共有できるハズである。
現地通貨の持ち合わせがあったプルンスに日本円の両替をしてもらいつつ。
地球人とサマーン星人の5人組は蚤の市を冷やかして回ることとなった。
ナユタとしては、異星のジャンク屋に興味があったのだが、翻訳機ペンダントが無いナユタは単独行動が出来ない。
一応プリキュアのうちから誰かに同行してもらえば良いのだが、さすがに興味も関心も無いであろうジャンク屋を連れ回すのは悪い気がした。
なお、今日ナユタと手を繋いでいるのは、えれなおねーちゃん(はーと)である。
こういう時に同行者として便利なプルンスは……近場で推しアイドルの突発ライブがあるらしく、そちらへ向かった模様。ドルオタだったのか、お前。
『それじゃあ本日最後にして最高の品! たまたま見つけた異星人から当オークションが買いたたいた「プリンセスの力」!
12本集めればどんな願いも叶うというホットな話題の一品で御座います!』
ふと路肩のモニター中継に目をやると。
ちょうど、12星座のペンが競売にかけられているところだった。
やはり、オークションの出品物だったようだ。
どんな願いも叶うなんて話は初耳なので、後でプルンスに確認すべき案件だろう。
『1000万キラン!』
『1200!』
『1500!』
さっきプルンスに両替してもらった時に聞いた話だと、1円≒1キランだったはず。
やはり、正面からオークションに参加しても勝算は無いというナユタの読みは当たっていたようだ。
一応落札者の顔と名前を覚えておこう、とナユタは意識をモニター中継へと向けていた。
なお、ひかララはお揃いの小物なんかを物色して楽しそうにしている模様。デートかな??
「春日部さん……また何か、気付いたことがあります?」
「まどかちゃんって、とりあえずアタシにカマをかければ、面白コラムが聞けると思ってる節あるよね?? まー、小ネタならあるけどさ」
「あるんだ……?」
オークション中継から注意を外さずに。
ナユタは、まどかとえれなへと小ネタの解説を始めた。
先程のオークション司会者の話には、少しばかり奇妙な点があるのだ。
なお、ナユタと手を繋いだままの天宮えれなは、何とも言えぬ顔をしながら怪しい話に巻き込まれた。強く生きろ。
まどかちゃんとえれなちゃんが仲間に入る前の話なんだけどさ、なんて前置きをしながら。
ナユタは、長話を始めた。
「そもそもララ達は、12星座のプリンセスの力がペンの形をしているって知らなかったんだ。もちろん、スターパレスに代々務めていたプルンスもね」
「え、そうなの? あたしはその辺りの情報って、てっきりプルンスが持ってたんだと思ってた……」
そうなのである。
原作3話を見直してみれば分かるが、その情報は12星座のプリンセスに代々仕えている一族のプルンスですら知らなかったのだ。
すると、先程の司会者の話の中から、不自然な点が浮き彫りになってくる。
「確かに、それは妙ですね。オークションの胴元は、どうしてあのペンがプリンセスの力だと確信したのでしょうか?」
「プリンセススターカラーペンに関して、ノットレイダーが妙な噂を拡散しているってこと?」
「えれなちゃんの推理で、ニアピンかなー。もっと言っちゃうと、たぶんペンを競売に流したのがノットレイダーなんだと思うよ」
オークションでペンを売り払って、それを力尽くで回収するという方法で資金調達を行っているのだろう。
この方向で考えると、オークションの胴元がノットレイダーとグルである疑いもあるが……一応、その辺りはグレーと見ておくべきか。
ともかく、ペンが競売にかけられているという事実を、ノットレイダー側も把握していると思った方が良さそうだ。
であるからして、落札者は襲撃される。(確信)
(もっとも、それは「競売の胴元」がペンを値打ち物だと判断した理由にはなるけど、「競売参加者」がペンを値打ち物だと信じる理由にはならないんだよねー)
「あっ、ララ! こっちのアクセサリー可愛いよ! 星形とハート型で、スターとミルキーみたい!」
「ルン♡」
真面目な顔をして聞き入っている香久矢まどかと天宮えれなへと、全く悟られずに。
ナユタは、いつもの胡散臭い笑顔をキープしつつ、心の中だけで考察を進めた。
そもそも、あの手の値打ち物において重要なのは文脈と真贋だ。
考古学的に価値があったり物質的に希少だったりといった様々な文脈が品物の価値を高め、かつ偽物ではダメということなのだが。
あのオークションにかけられているペンは、文脈も真贋も怪しい代物なのに、誰もが価値を疑っていないように思われた。
(ケンネル星の時の「聖なる骨」の一件もそうだったけど、なんかキナ臭い物を感じるなー……)
なんというか。
イマジネーションの根本に働きかけるような形で、12星座のペンは知的生命体へと何かを主張しているような……?
ケンネル星の時も、さすがにプリンセススターカラーペンという正式名称までは知られていなかったが、神格をもった物品としてカラーペンが扱われている節があった。
なお、モニターを見る限りだと、今回カラーペンを落札したのはドラムスという竜人のようだ。
一応後で接触して、ペンが狙われている旨と連絡先を教えておくべきだろう。
資産家のドラゴン家の子息らしいが、どうやって接触したら良いものか。
「見て見て、面白いの買ってきちゃった! 宇宙タコ焼きだって! 店主から切り離した足をそのまま調理してた! キラやばーっ☆」
「オヨォっ!? まだニョロニョロ動いてるルン! すごい生命力ルン!」
「えれな? 『いいねぇ!』って言わないんですか?」
「それ言ったら、あたしが最初に試食させられるんでしょ??」
もっと言うと、そもそもノットレイダーが12星座のペンの存在を知っていたのも不可解である。
プリキュアが12星座のペンを集めているのを見てからノットレイダー側も捜索を始めたのかと思いきや、そんなことは無い。
ナユタ自身もひかるから聞き出した話だが、プリキュア達が1本目の星座ペンを見つける前から、ノットレイダーはペンを探すための探知機を持っていたのである。
こうしてみると、ひかララの喧嘩ばかりが印象に残りやすい原作3話は設定や伏線整理の面からも無茶苦茶重要なエピソードだったりするのだ。
そんな重要な原作3話を悪意でぶち壊そうとしたオリ主が居るらしい。なんて悪い奴なんだ……。
(って、真面目に考察とかしてる場合じゃないわ! これ黙ってたら最初に食わされる役が回って来ちゃうヤツじゃん!)
ひかるが持っている紙パックの上では、12個セットの宇宙タコ焼きから飛び出したタコ足が元気にニョロニョロと踊っていた。
ほかほかと白い煙をあげている宇宙タコ焼きは、ソースの匂いも相まって食欲を誘う……誘うか?
え、これ食うの? マジで? ぶっちゃけありえない!
いや、落ち着け。
この程度の困難で、天宮えれなの太陽のような笑顔は崩せないはず……!
俺達のえれなパイセンを信じろ……!
「えへへー! さいしょに『宇宙タコ焼きチャレンジ』する、えれなおねーちゃんのカッコイイところ見たいなー!」
「あたし!? やっぱり、あたしなの!? あと小学生の奇麗な笑顔やめて!?」
「気持ち悪いぐらい完璧だし、普段のナユタちゃんを知らなかったら本気で騙されそう……」
「オヨオエッ……」
「わたくしは、その笑顔も素敵だと思いますけれど……」
その後。
天宮えれながガチ泣きしそうになったので、結局全員で「いっせーの!」なんて言いながら同時に食べた。
味は普通だったが、皆で仲良く口の中を火傷した模様。
……なんてオークションのモニターから目を離した隙に。
オークション会場に突如現れた宇宙快盗ブルーキャットが、ペンを強奪して逃げ出していた。
会場は阿鼻叫喚である。
誰がどう見ても放送事故だ。
しかも、ノットレイダー幹部のアイワーンが会場に出張ってきているようだった。
一つ目少女のアイワーンは、競売参加者を素体として青いドラゴンのようなノットリガーを作成し、力尽くでブルーキャットからペンを奪おうとしている様子だ。
首魁ダークネストの力を分け与えられているアイワーンは、作成するノットリガーも以前より強くなっているようだった。
一方、モニターの中の女快盗は、競売会場の屋上から周囲を見回して何かを探しているようだ。
「二人とも、オークションが終わるタイミングを見計らっていてバッティングしちゃったみたいだねー」
やっぱり、オークションには参加しなくて正解だったよね……。
福本漫画的なギャンブルで資金調達に成功したとしても、競売の結果をひっくり返されては堪らない。
まどかとナユタで悪知恵を総動員すれば、いくらでもギャンブルで荒稼ぎは出来そうではあるが。
遠くで、轟音とともにオークション会場が崩落するのが見えた。
すぐさま会場跡地へと向かおうとした一同だったが、すぐさま異変に気付いた。
屋根伝いに飛び移って、こちらへ向かっている人影があるのだ。
宇宙快盗ブルーキャットが一目散にナユタ達のもとへと近寄ってきている。
そして、アイワーンとノットリガーも女快盗を追って飛んできていた。
「こういう荒事はプリキュアに任せるわ! あとはヨロシク!」
「えっ? どうして私達のことを……?」
とっさに聞き返したのは星奈ひかるだけだったが、これは流石にチームの全員が変だと思った。
女快盗は、なぜプリキュアの素顔を知っているのか。
まぁそれはそれとして、ドラゴンのようなノットリガーが迫っているので変身しなければいけない訳で。
「「「「スターカラーペンダント! カラーチャージ!」」」」
それぞれがプリキュアへと変身を遂げた4人は、ドラゴンのノットリガーと戦い始めた。
暴風や火炎放射といった中距離攻撃が充実しているドラゴンを相手に、プリキュア達は攻めあぐねているようだった。
戦闘中にすることが無いナユタは、物陰に隠れつつ女快盗へと話しかけていた。
グラサンにシルクハット装備という分かりやすい快盗装備に、ナユタさんもホッコリである。
「もしもーし? サングラスが最高にイカしてる、そこの宇宙快盗さーん?」
「む、このサングラスの良さが分かるとは、貴女なかなか見込みがあるわね」
胡散臭い営業スマイルを崩さずに、飄々とブルーキャットとの交渉フェイズに入った。
言葉が通じないケースも有り得たが、宇宙快盗ブルーキャットはノットレイダーと同じく翻訳機を持っている様子だ。
戦力的に無害だと思われているせいか、宇宙快盗の方も警戒心は薄そうである。
挨拶もそこそこに、ナユタは本題へと話を傾けた。
「見ての通り、12星座のペンってノットレイダーを招く疫病神だし、それが知れ渡ったら金銭的価値なんてゼロ以下になるのは時間の問題っしょー? それでもペンを持っていきたい理由ってある?」
ナユタは暗に言った。
12星座のペンは宇宙快盗が狙うような値打ち物ではない、と。
「ペンを12本集めれば、どんな願いでも叶うのよ。これ以上のお宝なんて無いわ」
「ふむ……。それが本当かどうかはともかく。ペンを持ち続けるだけでも、貴女の身は常にノットレイダーから狙われるよー? 一時的にでもプリキュアチームに預けて、後からまとめて盗みに来るっていう選択肢は?」
自分は戦わないくせに何言ってんだ、とツッコミを入れる人間は居なかった。
実際に戦うのがプリキュア達であることを踏まえれば、無責任にも程がある発言なのだが。
「そう言ってネコババする気ニャン?」
「まー、それが現実的なんだけどさ。ただ、あんまり汚い手を使うとあの子たちに嫌われちゃうからね。真っすぐ過ぎて眩しいぐらいじゃん、あの子たちってさ」
ちらりと二人が視線を向けた先では。
4人のプリキュアが、縦横無尽に走り回ってドラゴンのノットリガーと戦っていた。
ブルーキャットが泥棒だと知りつつ、ひかる達は救援要請に応えて命を張っているのだ。
胡散臭い笑顔と、表情の読めないサングラスを向かい合わせて、二人はほんの数秒だけ睨めっこを続けた。
「……良い事を教えてあげるわ。特定の波長の電磁波を発生させれば、ペンの探知を妨害することが出来るわよ」
「ありゃ? そんなのアタシに教えちゃっていいの?」
宇宙快盗ブルーキャットは、ペンを持っていてもノットレイダーから身を隠す手段があるということだろう。
だが、ナユタはブルーキャットの真意が読めなかった。
情報は武器だ。
ナユタにそんな情報を渡してしまえば、ナユタが対抗措置をとることだってあるだろうし、何故教えたし。
「さっき、プリキュアのところにペンを集めて後から盗みに来れば良いって言っていたけど。その発想が出来る人なら、逆も思いついているでしょう?」
逆ということは。
ブルーキャットのペン集めを放任して、最後にプリキュアを嗾けて宇宙快盗のアジトを強襲すれば良いのだ。
ペン探知機として高性能なスターカラーペンダントがあるのだから、不可能か可能かで言えば可能なのである。
「あー、あー、それは気付かなかったなー?」
肩をすくめて、参ったと言わんばかりに……ナユタは思ってもいないことを口にした。
ぶっちゃけ、ブルーキャットから敵意を持たれるよりも表面上だけは友好的に利用してやろう、なんてゲス思考をしているだけなのだが。
特に泥棒なんていう職業についている人間は、いざという時に公権力に頼るのが難しいため、利用するだけ利用してボロ雑巾のように使い捨てても問題ないのだ。
もちろん、不要な恨みを買うつもりも無いので、なるべく互いに得をする関係のまま終わるのが理想ではあるが。
そんなナユタの様子に、ブルーキャットは溜息を交えつつコメントを継ぎ足した。
「貴女が本当に心配しているのは、私の身の安全……でしょ。結局貴女も、あの御人好したちの同類ってことニャン」
「ははっ、アタシは救世主なんてガラじゃーないんだけどね。アイツらの御人好しが、うつったかもなー?」
その発想がナチュラルに出てくる辺り、宇宙快盗も割と善人思考なのでは?
口に出さず、ナユタは密かにそんなことを思っていたりして。
「「「「四つの輝きを今、一つに! プリキュア・サザンクロスショット!!」」」」
……どうやら、戦闘が終わったようだ。
アイワーンから12星座のペンを奪うことは出来なかったようだが、ノットリガーの素体になっていたドラムス氏の救出には成功した模様。
ナユタの方は、ブルーキャットからペンを騙し取るのは、今回は無理そうだ。
プリンセススターカラーペンを持ったまま、女快盗は逃走を始めてしまって。
軽い身のこなしで走り去る宇宙快盗の後ろ姿を、ナユタは黙って見送ったのであった……。
・今回のNG大賞
ナユタ「ペンを競り落とすためにギャンブルで資金調達だ! メイン盾のキュアミルキーをロシアンルーレットに派遣しよう!」
まどか「そういうインチキは流石にわたくしも感心しませんよ?」
えれな「原作でドーナツを1個10億キランで売り捌いたまどかも大概だったよ??」