あくいのオトモダチ   作:カードは慎重に選ぶ男

11 / 26
来週のキラメイジャー(エピソードZERO)でキュアスターの出演シーンがカットされずに放映されるに違いないルン
プルンスの足を10本賭けても良いルン




第11話:マオにそんな辛い過去があったなんて……

ゼニー星からの帰路にて。

ロケットを発進させた面々は、思い思いに他愛もない話を始めていた。

談話室の机を囲んでいた星奈ひかるは、ナユタへと軽い調子で声をかけてみた。

 

 

「ちょっと気になってたんだけど。ナユタちゃん、ロケットに帰ってくる時に、大きい瓶を持ってたよね? あれって何?」

「重そうだったルン」

 

たぶん、3リットルぐらい入りそうな瓶だった。

中身は黄色っぽい液体だったように、ひかるは思った。

まさか危険物だとは思いたくないが、何となくナユタへと聞いてみたのだ。

 

 

「あー、アレね。ゼニー星で試飲して美味しかったから買ってきた酒だよ。そーいや銘柄聞き忘れたな……。梅酒っぽかったから『宇宙梅酒』(仮)にしとこう」

「えっ……お酒? 冗談かと思ってたけど、ナユタって本当に何歳なの……?」

 

ナユタさんはオトモダチ全員と同い年なんだぜー、なんて定型な世迷い事を天宮えれなへと垂れ流しつつ。

自室へと足を向けたナユタは、えっちらおっちらと、重そうな瓶を抱えて談話室へと戻ってきた。

小学生の背丈で酒瓶を持ってくる図の違和感は、ひかるから見ても大丈夫かと言いたくなるほどのものだった。

 

 

「さーて! 飲んでみる人、この指とーまれ!」

「はいはい! 気になる! 飲んでないのに決めつけは無しだよね!」

「オヨ!? ……ひかるが飲むなら、私もルン!」

「良いねぇ! ……って、ならないでしょ!? いくらなんでも、それはダメだよ! あたしたち4人は中学生だよ!?」

 

ここで、えれなの猛ツッコミがロケットの談話室に響いた。

ダメな大人(?)が中学生に飲酒を促している……!

中学生組の中では年長の自身がハッキリ言わなければ、という思いもあったのだろう。

当然、中学生組は4人とも飲酒と縁がある生活などしていない。

 

その辺りは、子供向け番組が徐々に飲酒に対して厳しくなってきた歴史もあるので、仕方ない面もあるのだろう。

1990年代には、当代の戦隊の力の源である星座が酒に酔ったせいで戦隊メンバーが変身できなくなった、なんて話が地上波で放映されたものだが、令和の世から見たら中々にフリーダムな話である。

スタプリの世界観で例えるならば「スタープリンセス達が泥酔しているせいで星奈ひかる達がプリキュアに変身できない!」みたいなモノである。ひどい話だっぷ。

 

 

「まー落ち着きなって。18歳の日本人がメキシコに行って飲酒するのは問題無いでしょ、そこは日本じゃないからね。そして、アタシたちの現在地も日本ではないんだよ」

「う、うーん……?」

 

ナユタの弁に、えれなは少しばかり額に汗をにじませつつ、考え込んでしまっているようだった。

なお、具体例にメキシコを選んだのは、えれなの父親が陽気なメキシコ人だからだろう。

 

ひかるは、端から見ていて思った。

ナユタの詐欺師モードを相手にするには、天宮えれなは善良過ぎる……と。

あと、なんでメキシコの飲酒解禁年齢とか知ってんの?

 

 

「……まどか。今の話って、どう思う?」

「その理屈自体は筋が通っているとは思います。ただし、その理屈で言うと、日本国内で13歳のララに飲酒させたのは宜しくなかったのでは?」

 

自分だけでは手に余ると判断したえれなは、まどかへと意見を求めた。

まどかは極めて冷静に思考して、特にナユタを責めるようなニュアンスを含めずに質問を行った様子だ。

理屈が通っているかどうかを言及する以上の意図は無さそうであった。

 

3人の真面目っぽい会話を聞き流しながらドーナツを齧り、ひかるはふと思った。

話の中に出てきた「13歳のララ」って、何処かで似たフレーズを聞いた気がする……「14歳の母」かな?

 

 

「後の時代に、もっと宇宙人の存在が一般化したら話は別だけど。今の時代なら宇宙人は器物扱いになる可能性が高いから、グレーゾーンだけど多分セーフじゃないかなー?」

「それは……父の身内としては耳が痛い話ですね。宇宙開発特別捜査局は、宇宙人を器物扱いしている節がありますから……」

 

もし宇宙人が外国人と同じ扱いだったら、さすがに山狩りをして捜索なんてことはしないだろう。

宇宙開発特別捜査局としては、宇宙人は器物扱い……というか危険な猛獣扱いなのだ。

なお、一番の当事者であるはずのララは、話についていけずにコスモグミを噛んでいる! まぁララは可愛いから良っか。キラやば。

 

 

「という訳で、地球外なら飲酒しても問題ないって事さー! でも一応、親御さんには秘密だぞー?」

「よく分からないけれど、私は大人だから平気ルン!」

「何だか、上手く丸め込まれた気がする……?」

 

どこか釈然としないといった様子の天宮えれなだったが……。

香久矢まどかの意見を聞いた印象として、少なくとも違法性は無いと納得は出来たのだろう。

 

ちなみに全くの余談として真面目に違法性の話をするならば、秘密裏に出入国をするのも検疫的な意味で割とアウトだったりするのだが、それを言い始めると原作全否定になってしまうので、言わない御約束である。

スタプリの先輩方の15年間を見ても、大抵のプリキュアは異世界に勝手に行くし、異世界が無い世界観の場合は地球外に行くものだ。

基本的にプリキュアの歴史は違法出入国の歴史なのである。

兎にも角にも、プリキュアの世界にコロナみたいな危険な病気は無いと信じるラビ!

 

 

 

というか、えれなは気付いた。

まどかも、ちらちらと宇宙梅酒(仮)の方へと視線を送っている。

モロに興味津々ではありませんか……?

 

 

「何だか、意外かも。まどかって、もっと堅いイメージだったよ?」

「その……両親や先生方に秘密でイケナイ事をするのって、なんだかドキドキしません……?」

 

普段真面目な子が、ちょっと不良とかに憧れちゃうみたいなヤツか。

伏し目がちに胸の高さで指を組んでいる仕草は可愛いけど。

なんだか、高嶺の花扱いされている観星中学校生徒会長の、知られざる一面を見た気がした天宮えれなであった。

 

 

「というわけで。えれなちゃんとまどかちゃんも、大人の階段のぼってみるー?」

「わたくしも、御相伴にあずかりたいです」

「どうしよう……。あたしも、チャレンジしてみようかな」

 

同調圧力に負けた……訳では無いのだが。

少なくとも違法性は無さそうだし、頭ごなしに否定するのも気が引けた。

むしろ、決めつけは無しだと言い切った星奈ひかるの言い分も分かるように思ったのだ。

 

 

「まどかちゃんは『わたくしを綱渡りから救ってくれたのはアルコールだったんです』とか言い出しそうで嫌な予感がするけど……まぁ、物は試しだ! カンパーイ!」

「「「「乾杯!!」」」」

 

クルー一同は思い思いにマグカップを傾けた。

さすがに透明でお洒落なグラスなんて常備していないのだ。

いかにも中学生のホームパーティっぽい画である。マグカップの中身が酒類でなければ。

 

 

「おお? 私コレ好きかも! キラやばーっ!」

「梅干の匂いに似てる気がするルン。美味しいルン!」

「確かに、梅のジャムみたいな味だね。グイグイいけちゃいそう」

「背徳の味です! 素敵です!」

「好評で何よりだよー? 最初は加減とか分かんないだろうし、死なない程度に吐いて覚えなされよー?」

 

そんなこんなで、酒を入れ始めた訳だが。

まさか、あんなことになるなんて……。

 

香久矢まどか、まさかの大暴れである。

普段から習い事のオンパレードで忙殺されて、かなりストレスも溜まっていたのだろう。

しかも、宇宙関連の事情が父親にバレないか常に冷や冷やしているので、ひかララへのお説教が始まったり。

一方、何故か唐突にキュアミルキーの名乗り口上を始めたえれなは、マジでどうしてそうなったの?

酔った勢いで談話室の中を走り回り始めたサマーン星人を止めるために、宇宙人捕獲大作戦が始まるという謎の場面もあり。

ひかるに捕まえられたララが幸せそうな顔をしているのが、妙に一同の印象に残ったのだった……。オヨオエッ

 

総合すると……まぁ、地獄だったよね。

酔ったまどかさんには誰も勝てない……。

途中からオツマミを要求し始めたまどかのために、ナユタとプルンスは決死のタッグを組んで尽力した。

クラゲ型宇宙人のプルンスの触腕が沢山あって本当に助かると思ったナユタだった……。

 

死屍累々を体現したような姿で倒れ伏している4人を、それぞれの個室へと押し込んで。

ナユタとプルンスは、ようやく額の汗をぬぐったのであった。

 

 

 

 

「……どーかな? 少しは気分は紛れた?」

「気付いていたでプルンスか。というか、もしかして2人だけで話すために4人を潰したでプルンス?」

 

ナユタは、気付いていた。

プルンスがずっと、気落ちしていることに。

何となく気になっていたものの、無理に聞きだすのも良くないという微妙なラインだった。

個室を使わずに常に談話室に居るプルンスと二人きりになるのは難しいので、他4人を酒で潰した訳だ。

一応、プルンスをナユタの個室に連れ込む方針を考えていたが、ひかるから宇宙梅酒の話を振られたのでアドリブで利用したのである。

そっと、ナユタはプルンスへも例の宇宙梅酒を出してやった。

 

 

「まーね。飲み加減を知らないガキンチョ共なんて、恋に恋する乙女みたいなモンよ。ちょろいちょろい」

 

本当に何歳なんでプルンス、なんて呟きはともかく。

自分もマグカップを傾けながら、ナユタは思考を揺り戻した。

 

 

「言いづらかったら、別に無理に言わなくたっていいさ。酒の席だって、何でも白状しなきゃいけないなんて事は無いしー?」

 

今日のプルンスは、推しアイドルの突発ライブに参加してくると言ってナユタ達とは別行動をとっていたハズだ。

ナユタ達が蚤の市を冷やかしていた間、プルンスはその突発ライブに参加していたと思われる。

そして、戻ってきてナユタ達と合流した時には既に様子がおかしかった。

……押しアイドルが結婚&引退宣言のデスコンボでも決めたのか?

 

 

「実は……実は、プルンスは見てしまったでプルンス! 宇宙アイドルのマオたんは……宇宙快盗ブルーキャットだったでプルンス!!」

 

語るも涙、思い出すも涙。

そんな調子で、プルンスは涙ながらに語り始めた。

 

オークション会場内で突発ライブが始まると聞いて入場方法に困ったプルンスは、冷静に考えて思い出した。

スターパレスに代々仕える一族のプルンスは身元もしっかりしているのだから、ひかる達と一緒じゃなければ会場に入れるよね、と。

そしてライブを全力で楽しみつつ、その後はオークション会場内で星座ペンの落札者へと接触するべく、会場内を徘徊していたのだ。

そこで偶然にも、宇宙アイドルのマオたんが快盗ブルーキャットへと姿を変える瞬間を見てしまったのだとか。

 

面倒くせぇドルオタだ。

ナユタは口に出さずに思った。

でもまぁ、星座ペンを持ち逃げしたブルーキャットに繋がる情報ならば、無駄ではないハズだ。

むしろ、大手柄なのでは? コイツ無茶苦茶有能じゃねーか?

 

 

「そっか……。その場面を見て、プルンス君は一体どう思った?」

「……ショックだったでプルンス。あのマオたんが、まさか泥棒だったなんて……」

 

クリエイターの作品と素行は切り離して考えるべきだろ、という意見をナユタは呑み込んだ。ただし盗作は除くが。

潔白であってほしい、という気持ちは分からないでもない。

特にアイドルという職業はイメージを売る面があるので、潔白であってほしいのだろう。

 

 

「まぁ、盗みは良くないよね。人を殴るのと同じぐらいダメだよね」

「それって……プリキュアの皆のことを言っているでプルンスか?」

 

それは宇宙を守るために仕方ないことでプルンス、と続いた。

だが、ナユタの返答を待たずに、プルンスは自力で気付いたようだった。

ハッとした様子のプルンスに、ナユタは無言で続きを催促した。

 

 

「マオたんにも、他の手段じゃどうしようもない理由があるのかもしれないでプルンス……!」

「その可能性はあるけど、断言できる段階でも無さそうかな。さすがに情報が少なすぎて判断できないね」

 

ナユタとしても、判断に余る案件であった。

なんせ、宇宙快盗ブルーキャットと出会ったのは一回こっきりであるし。

それでも少ない会話の中から、ある程度の情報は抽出できているが。

 

 

「そもそもさ、宇宙アイドルのマオって天文学的な大ヒットを叩き出したんじゃなかったっけ? 金銭のためにリスクを背負って盗みを働くのは考えにくい人種じゃーない?」

「それは、確かにその通りでプルンス」

 

食うに困った人間が生活のために盗みを働くのならば、納得は出来る。自分が被害者にならなければ。

盗みを我慢して道徳のためにお前は飢えて死ね、と正面から言える人間は、逆に道徳から最も遠いところに居る人間だろう。

だがしかし、宇宙アイドルのマオは、そうした貧困とは無縁のボロ儲けをしている人間なわけで。

態々リスクを負ってまで宇宙快盗をやっているというのは、不自然な話ではあった。

 

 

――ペンを12本集めれば、どんな願いでも叶うのよ。これ以上のお宝なんて無いわ。

 

一応ナユタは、ブルーキャットが残した情報をプルンスへ伝え、真偽の確認を行った。

オークションの司会者も同じようなことを言っていたので、もしやという気持ちもナユタにはあったのだが。

残念ながら、スターパレスに代々伝えるプルンスも、そんな話は聞いたことが無いらしい。

12星座のペンとフワを揃えることでノットレイダーに対抗できるという話とは、矛盾しない噂ではあるが。

 

 

「プリンセスの力を集めることで、叶えたい願いがあるでプルンスか……? もっと知る必要がありそうでプルンス……」

「それはありそうな線だよね。でも案外、自分を捨てた元彼とヨリを戻したいとかだったりしてー?」

 

「ぎゃああっ!? なんて事を言うでプルンス! マオたんに彼氏なんて居るわけないでプルンス!!」

 

錯乱するプルンスを宥めつつ。

ナユタは、思った。

上手くブルーキャットを丸め込んで味方に出来ないかなー、なんて。

 

ワームホールを潜り抜けたロケットの進路には、ようやく地球が見えてきた。

そろそろ酔いつぶれている中学生たちを起こしてやらないと。

ロケットに自動操縦機能があって本当に良かったな、なんて思いながら、ナユタは鍋に熱を加えてホットミルクを作り始めたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あくいのオトモダチ』

第11話:マオにそんな辛い過去があったなんて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例の宇宙怪盗との遭遇から、少しだけ日々が流れて。

クルー一同でまどかの弓道大会の応援に行ったりなんかして。

またまたやって来ましたゼニー星!

 

 

「あたしたち、ついこの間来たばっかりだよね……」

「また来たかったんだー! キラやばーっ☆」

 

今回ペンダントの導きで辿り着いた先は……いかにも大富豪が住んでいると言わんばかりの大邸宅であった。

ペンダントが反応しているということは、屋敷の中にペンがあるはずだが……?

 

 

「宇宙快盗ブルーキャット、参上ニャン!」

 

唐突に女快盗が現れた!

木の上から名乗り口上をかました宇宙快盗は、不敵に笑った。

現れるタイミングが良すぎる。

何か……タネがあるのでは?

ひょっとして、ノットレイダーが使っていたカラーペン探知機を盗んで手元に置いているとか?

 

ブルーキャットの情報によると、この大邸宅はドラゴン家という金持ち一族の家らしい。

ドラゴン家というと、この間ペンを盗まれたドラムスが、この家の跡取り息子だった筈だ。

 

 

 

「あの人、あれだけ危険な目にあったのに、またペン買ったルン……?」

「とにかく、あたしたちで一度交渉をしてみよう。ペンを譲ってもらえないか……」

 

とりあえず、一同は解放されている外門を通り、中庭へと入った。

こういう屋敷ならば外壁に呼び鈴がありそうなものだが、ドラゴン家の屋敷は本宅に呼び鈴が付いているタイプなのかもしれない。

……なんて思っていたら、落とし穴トラップで全員地下深くに落下する羽目になった。

プルンスが空気を吸ってクッションになってくれたおかげで怪我人が出ずに済んだが、死人が出てもおかしくないトラップである。

まぁひかる達は変身すれば良いので、死ぬのはナユタ一人だが。

 

 

『招かれざる客、ブルーキャットめ! ここで会ったが百年目! 金にものを言わせて作ったトラップの錆になってもらうぞ!』

「厄介なことになったわね……」

 

落とし穴の底にこしらえられた、大部屋にて。

スピーカーから聞こえてきたのは、ドラゴン家の跡取り息子ドラムスの声だった。

オークション中継で聞いた声と一致したので、間違いないだろう。

 

 

「こうなったら、協力してこの屋敷を攻略するニャン!」

「わたくしたちに、盗みの協力をさせるつもりですか……?」

「まどかの気持ちも分かるけど、脱出のためだし、仕方ないかも……」

 

『おや? 一緒に居るのはプリキュアの諸君じゃないか? 先日は世話になったね。謝礼も渡せずに申し訳なかった』

 

うん?

なんだかプリキュア御一行への好感度が高いドラムスさんである。

というのも、正史ではオークションで香久矢まどかとドラムスが正面から対決したせいで、ドラムスから敵視されていたのだが。

今回はまどか達がオークションに参加せず、一方的にドラムスを助けたこともあって、ドラムスからプリキュアへの好感度が高いのである。

 

 

『ブルーキャットを始末したら、トラップを解除してプリキュアの諸君には安全に脱出してもらうから、しばらく待ってもらえるかな?』

「ニャンっ!?」

 

ドラムスの言葉を聞いて、プリキュアチームの面々が静かにブルーキャットから距離をあけた。

狙われているのはブルーキャットだけなのに、とばっちりを食っては堪らない。

流石のブルーキャットも、この展開には慌て始めた。

 

 

「ま、待って! 分かったわ! この屋敷の宝物庫に無事辿り着けたら、この屋敷にあるプリンセススターカラーペンは貴女達のもので良いわよ!」

 

ブルーキャットとしては、単独でこの屋敷を攻略するのは厳しいと考えているらしい。

ドラゴン家の宇宙一とも噂される財力ならば、えげつないトラップも揃えているだろうし。

だからこそ、ひかる達の前にわざわざ姿を現したのだろう。

快盗稼業の片棒を担がせるために、接触してきたに違いない。

だが、しかし。

 

 

『プリキュアの諸君、もしブルーキャットの捕縛を手伝ってくれるなら、プリンセススターカラーペンは君達への謝礼として渡そうじゃないか!』

「ニャァンっ!!?」

 

どうせブルーキャットを誘き寄せるために買っただけだからね、なんてボヤきながら。

ドラムスは、飽く迄ブルーキャットのみを標的にするスタンスを明確にした。

ブルーキャットは、サングラスごしにも分かるぐらいに大汗をかきながら、周囲を見回した。

他の全員が、ブルーキャットへと値踏みするような視線を向けている!

 

 

「うーん。宇宙快盗って正直、かっちょいいなって思ってたけど……。どうしよっか?」

「結論を焦るのはいけないニャン! 私に協力してくれたら、この間盗んだ射手座のペンも渡すわよ!」

『僕につくなら、今後のプリキュアのペン探しにも便宜を図ろうじゃないか! 金にものを言わせてね!』

「ルン。なんだかオークションみたいで、ちょっと楽しくなってきたルン」

 

ブルーキャットは旗色が悪いのを理解しているらしく、かなり動揺しているようだった。

ペン以外の金目の物をチップに勝負を始めることも不可能ではないが、それを始めたらドラゴン家の財力に敵うはずもない。

かといって、ペン以外でプリキュアを釣れるかと言えば、特に何も思いつかないというのが正直なところなのだろう。

 

 

「あたし、気付いちゃったんだけどさ……。射手座のペンって、ブルーキャットを捕まえた場合でも手に入るよね……?」

「ニャアアアアアンッ!!?」

 

えれなの、痛恨のツッコミ!

ブルーキャットは、頭を抱えて絶叫した!!

 

 

「……」(チラッ)

「キュアセレーネ! 無言で変身アイテムに手をかけるの、良くないニャン!!」

 

ひかる達へと目配せをした香久矢まどかを、必死に牽制しながら。

ブルーキャットは、冷や汗を滝のように流しながら、言葉に窮しているようだった。

逃げ場のない地下室で、プリキュアの腕力を4対1で振るわれては勝ち目など無いと理解しているのだろう。

 

 

「みんな、待って欲しいでプルンス!」

 

だがここで、プルンスが声をあげた。

ナユタは、一瞬だけプルンスと目が合ったように思った。

それでもナユタは、何も言わなかった。

 

 

「ブルーキャットが……マオたんが、快盗をやっている理由を、教えて欲しいでプルンス!」

「……っ!」

 

プルンスの言葉を聞いて、ナユタ以外の全員が困惑した。

ドラムスとプリキュア4人娘は、宇宙アイドルのマオが宇宙快盗だという情報が寝耳に水で。

当のブルーキャットは、まさか正体がバレていると思っていなかったようで、驚愕で尻尾をピンと張ってしまっていた。

 

 

『ブルーキャットの正体が、マオ……!? 嘘だ、僕を騙そうとしている……!!』

 

ドラムスさん、この中で一番動揺してんじゃねーか!

お前もドルオタだったんかい!

スピーカーごしの声からは、ガチで心を乱されているドラムスの心境が漏れ出していた。

というかこの調子だと、盗みなんて考えずにマオとして堂々と交渉すれば、ドラムスさんはペンを譲ってくれたのでは……?

 

 

「プルンスは、苦しい時も辛い時も、マオたんの歌に元気をもらったでプルンス! マオたんが悪人だなんて、信じたくないでプルンス!!」

 

大粒の涙を流しながらドラマをおっぱじめたプルンスに、プリキュア4人娘は感動するよりも温度差に困惑した。

私達は一体何を見せられているんだ、的な心境が表情に現れていた。

マオの正体を聞かされていなかったプリキュア4人娘にとってはそうだろうな、とナユタは思った。残当である。

ブルーキャットは、少しの間だけ葛藤していた様子だったが……この場を切り抜ける手段を思いつかなかったようで、重い口を開いた。

 

 

「……話せば、長くなるニャン」

「どんなに長くても、全部聞くでプルンス」

 

かつて、どんな姿にも化けられる猫獣人の一族が居た。

一族の者は他のあらゆる種族から恐れられ、何か犯罪が起こるたびに疑われた。

迫害された一族は宇宙を転々として、終の棲家として一つの無人惑星を選んだ。

この星は、のちに惑星レインボーと呼ばれることとなる。

 

幸いにして生活を安定させた一族は、子孫たちとともに密やかに暮らしていた。

惑星の全人口は約1800人にまで増えた。

一つの惑星の人口としては多いとは言えないが、平和な星だった。

この星で産出されたレインボー鉱石を加工した装飾品を使って、異星間の貿易もそれなりに栄えていた。

 

……悲劇は、唐突に訪れた。

星を訪れたノットレイダーの幹部アイワーンが、不思議な毒ガスを撒き散らして、住民たちを石に変えてしまったのだ。

運よく生き残ったブルーキャットは、奪われた故郷の特産品を盗んで回収しつつ、故郷の仲間たちを救うために12星座のペンを集めているのだとか。

 

ナユタは、話を聞きながら思った。

これは予想外に面倒くさいのが来たぞ、と。

というか、ドラムスさんにしてみたら「そんなの知った事か!」で終わる案件なのでは……?

 

 

『なんて健気なんだ……! マオにそんな辛い過去があったなんて……グスン』

 

めっちゃ心を揺さぶられていらっしゃる!?

ブルーキャットの発言を全面的に信じるのはまだ早いんじゃないか、と思ったナユタさんであった。

口から出まかせを言っている可能性だってあるのだから、もう少し情報を精査してから判断すべきでは……?

 

 

「そもそも、ペンを12本集めると願いが叶うってホントなの? ホントならキラやばーだけど……」

「スターパレスに行って確かめたいところですけれども……方法がありませんね」

 

今までプリキュアがスターパレスを訪れたタイミングは、星座ペンを新規入手した時である。

星座ペンを浄化して入手した戦闘終了時に、強制ワープでスターパレスに呼ばれてプリンセスたちと会話イベントを発生させていたのだ。

だが、今の段階でドラムスやブルーキャットからペンを強請るのは、クルー一同揃って気が引けた。

 

 

「成功するか分からないけど、スターパレスへ行く方法に一応心当たりはあるぞー?」

 

ところが。

ナユタさんのまさかの発言に、全員が度肝を抜かれた。

嘘だろお前。

そんな都合の良い発明とか作ってるの??

 

 

「皆が学校に行ってる間に、クマリン星を再訪問してね。ノットレイダーの落とし物を拾ったのさー!」

「それって……アイワーンの発明品ニャン!」

 

ナユタがバッグから取り出したのは……インク壺のような形の黒い塊だった。

アイワーンが星座ペンをダークペンに変える時に使っていた、いつものインク壺だ。

灰色のキュアスターが大暴れした時に、アイワーンが落としていたのである。

 

 

「オヨ……? それが、スターパレスに行く手段になるルン……?」

「まーまー、見てなされよー? あ、ひかるちゃん、牡牛座のペン貸して」

 

何かの駄菓子のCMで聞いたような歌を口ずさみながら。

ナユタは……ペンをインク壺へと差し込み、ダークペンを作成した。

どこかで牡牛座のスタープリンセスが苦しむ声が聞こえたような気がしたが……気のせいだろう、たぶん。

 

 

「ほい、浄化よろしくー」

「ナユタちゃん、こういうゲームのバグ技みたいなの、本当に好きだよね……」

 

「科学者の仕事は、この世界のバグを見つけることだぞ」

 

ひかるの手に渡った牡牛座のペンは、浄化されてピンク色へと戻った。

そうすると……。

 

 

「牡牛座フワー! 星の輝き、戻るフワー!!」

 

あら不思議!

12星座のペンを新規入手したのと同じ扱いになって、スターパレスへとワープ出来たではありませんか!

なんだかインチキ臭いものを見た気がする、なんて視線を方々から受けながら。

ナユタたちは無事にスターパレスへと踏み込んだのであった……。

 

 

「え? 僕も来て良かったの?」

 

 

あ、ドラムスさんも一緒にワープしちゃったのね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・今回のNG大賞

ドラムス「マオ! 僕のプロポーズを受けてくれるなら、ペンなんて全部渡すし、金にものを言わせて協力も惜しまないよ!」
ブルーキャット「故郷を取り戻せるなら……仕方ないニャン」
プルンス(灰になって崩れ落ちる)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。