そんなこんなで。
星奈ひかる御一行をのせて、ロケットは一路サマーンへと飛んだ。
さすがに元ノットレイダーのアイワーンを連れて行くわけにはいかないが、その他はフルメンバーである。
プリキュア5名に加えて、プルンス、フワ、ナユタの3名による編成だ。
往路だけでも2日以上かかるとなれば、ロケットの中でするべきことと言えば?
「念のために、サマーンでの予定を『おさらい』してもらって良いかな。あたし、ちょっと最近の話についていけてなくて……」
申し訳なさそうに、えれなが頼みごとを口にしていた。
決して頭が弱いわけではないのだが、SF系の予備知識がほとんど無いので、事態に対する理解が遅れているのだろう。
ナユタは寒色チームと無言で頷きあって、作戦会議を開始した。
「今回の長期旅行イベントの発端から振り返った方がよさそうだねー? サマーン星からのビデオメールから始まったのかな」
「再生するルン」
ララが、双子の兄であるロロからのメッセージをモニターへと映した。
なんでも、ロロが12星座のペンを見つけたことで、星空連合から表彰されるらしい。
表彰式の日時と場所の情報が、一緒に入っていた。
家族であるララにも出席して欲しいそうだ。
「……あれ? そのペンって、どうやって譲ってもらうの? あたし達がプリキュアだって明かすしか選択肢が無いよね……?」
「宇宙快盗の出番ニャン?」
「盗むのはダメでプルンス!」
確かに、えれなの気付いた通りである。
今までの星座ペン所持者は、基本的に個人だったのだ。
だからこそ、個人間の話し合いでペンを譲ってもらえたし、プリキュアも星座ペンを集めることが出来た。
しかし、星空連合が所有する星座ペンとなれば話は違ってくる。
「プリキュアとして話し合いに臨む必要はありますけれど、正体を明かす必要はありませんよ」
まどかの言葉の意味を、えれなは一瞬だけ理解しかねた。
だが、少しだけ考えてすぐに噛み砕けた。
「そっか。最初から変身した状態で会えば良いんだね。……それだと、ナユタは?」
地球人であるのがバレると、交渉の際の弱点になりかねない。
逆に言えば、常に変身後の状態で行動すれば問題ない。
そう考えると、変身できないナユタは……ロケットの中で待機か?
「オッヨヨー! ナユタさんの正体を明かす時が来たなー! 悪の科学者、春日部ナユタとは仮の姿! その正体は、サマーン星人だったのだルーン!」
ナユタは、いつものサクランボのような双玉のついた髪留めを引っ張った。
30センチほどにまで達した髪留め紐は、外見上はサマーン星人の触覚のようも見える。雑ゥ!
「オっ、オヨォっ!!? そうだったルン!? 全然気づかなかったルン!」
「ええっ? ララ、マジで言ってる……??」
「明らかに後付け装備ニャン……」
「絶対に嘘でプルンス……」
「色々突っ込みたい気持ちは分かりますけれど、本家のサマーン星人であるララが騙されているのなら、大丈夫ではないでしょうか……?」
そんなコントは置いておくとして。
本題に話を戻さなければ。
「交渉と表彰式の順序はどちらが先でも大丈夫だとは思いますけれど……不測の事態に備えて、早めに交渉を済ませたいですね」
兵は神速を尊ぶというヤツか。
確かに、表彰式の最中にノットレイダーが現れたりすると面倒だ。
そんなピンポイントなタイミングで現れるなんて、そうそう起こらない気もするが……。
今までも割と不都合主義的なタイミングでノットレイダーに襲撃されたことがあるので、まったく無いとも言い切れないのが恐ろしいところである。
先に交渉を終えておけば、万が一にもノットレイダーに負けて変身解除なんて事態になった場合でも問題ない。
となると、当日の予定は?
サマーン着
→変身後の状態で星空連合の担当者に会って交渉し、異星人に正体をバラしても良い特権を勝ち取る
→可能であれば12星座のペンも表彰式後に譲ってもらえないか確認してみる
→ロロの表彰式に出席する
こんな感じだろうか。
時間が余ったら、観光するもよし、ララの家族と話すもよし。
方針がまとまり、ようやく真面目な話が終わったタイミングで。
「みんな! パジャマパーティーしよう!」
ひかるが、謎の提案を持ち出してきていたりして。
しかも、VHSと再生機器を持ち込むという良くわからない拘りを見せている!
結局、みんなで3色プラグをロケットのモニターに繋ぎつつ、レトロなホラー映画を見る羽目になったのだった……。
『あくいのオトモダチ』
第16話:そう言っていただいて、本当に嬉しいです
「「「「スターカラーペンダント! カラーチャージ!」」」」
惑星サマーンにつく前に、ララ以外の4人は変身を終えて。
一行は無事にサマーン星へと到着したのであった。
ララが変身しないのは……現地でララの本人確認が出来ないと、色々と面倒だからだ。
なお、ナユタさんは似非サマーン人ファッションである。
髪留め紐を長く伸ばして、ララの予備の服を借りてサマーン星人に成り切った。
ロケットのポートへ降りると、巨大な建造物が目に入った。
東京ドームより床面積が広そうで、100階ぐらいありそうな建造物が複数見えた。
しかし、全体としてみると緑地が多く、なんだかアンバランスな印象を受ける。
「ひかる達の星と違って、なるべく居住区はひとまとめにしてあるルン。ライフライン設備の観点から、その方が効率的ルン」
ということらしい。
オヨルン、お前ライフラインとかそんな言葉知ってたんだな……。
物珍しさを隠しきれずに周囲を見回しているプリキュア達とは対照的に。
ナユタは、表面上は落ち着き払っていた。
サマーン星人に変装している身なので、お上りさん丸出しだと不自然だからだ。
内心では、機械技術が発達した星に対する興味と関心はかなり沸き立っているのだが。
ふと見ると、ホバーボードに乗ってララ達に近づいてくる人影が見えた。
50代ぐらいの、くたびれた雰囲気の男性だった。
どうやら、ララの上司のククという人物らしい。
「調査員ララ! 報告もせずに、今まで何をしていたるん! それに、その人達は?」
(んー?)
ナユタは、ククの言葉の端から違和感を抽出していた。
ちょっとした不自然さではあるものの、一応覚えておいた方が良いだろうと思った。
「この人達は、宇宙の平和を守るプリキュアたちルン! 調査中に見つけて、一緒に来てもらったルン!」
「プリキュア……? 本物るん?」
上司ククの訝し気な視線を受けて、ララは怯んだ。
そういえば、どうやって本物のプリキュアだと信じてもらえば良いのだろう。
ララは見るからに挙動不審といった様子である。
ナユタは、こっそりセレーネへと耳打ちした。
耳打ちを受けたセレーネは、毅然とした態度でククへと歩み寄った。
「わたくし達は、プリキュアをやっている者です。このペンを見て、信じていただけないでしょうか?」
「こっ、これはっ! プリンセスの力るん!? しかも、3本も!!?」
紫のペンケースを開けて、ククへと見せたのは……セレーネの持つ、3本の星座ペンで。
星座ペンを見せられたククは、驚きの声をあげていたが、納得してくれたようだ。
プリンセスの力を1つ見つけたロロが表彰されるレベルだというのに、まさか3本も持っているとは思わなかったのだろう。
なお、このチーム全体では既に10本のペンを集めていたりするのだが、そこまで言ってしまうとロロが不憫になるので、聞かれるまでは言わない方針である。
「ルン。プリキュアたちが、宇宙星空連合の担当者との面会を要求しているルン。だから表彰式の前に会わせて欲しいルン」
「分かったるん。そういうことであれば、こちらから連絡しておくるん!」
……キュアスターが、真面目な会話をしている面々をよそに、ナユタと調査員ククへ交互に視線を向けていたりして。
なんというか「ここにサマーン星人のコスプレをした不審者がいますよ!!」と言いたげな表情である。
とりあえずナユタは、スターの脇腹に肘鉄をブチ込んでおいた。
かくして、プリキュア達は宇宙星空連合の担当者のところまで案内された。
通された先に居た星空連合の担当者は……立派な顎鬚が印象的な、小柄な壮年の男性だった。
「おお、プルンス殿! ご無事であったか!」
「トッパー代表! お久しぶりでプルンス!」
なんだか、プルンスと面識がある様子だ。
まさかドルオタ仲間じゃないだろうな……??
宇宙星空連合の代表者の名前は、トッパーというらしい。
触覚が無いので、サマーン星人では無さそうだ。
「みんな、安心するでプルンス! スターパレスの事情に理解があるトッパー代表が来ているなら、ペンは後で必ず譲ってもらえるでプルンス!」
「この星の研究所で解析する予定なので、すぐにとは言わないでアルが……必ずや、プリンセスの力はスターパレスへ返すのでアル」
どうやらプルンスは、トッパー代表が自ら表彰式に来ているとは思わなかったらしい。
予想外な幸運が巻き起こって、奇跡的な再会をする羽目になったそうだ。
プリキュア達にとってもラッキーなことに、交渉してペンを貰う必要が全く無くなってしまった。
「それと、報告を聞いたでアルが、そちらの方々が……?」
「プリキュアの皆さんでプルンス」
さりげなく空中を飛び回っているドローンのレンズがプリキュア一行に向いているようだったので、ナユタは口を挟むべきか一瞬迷ったが。
交渉の際の映像記録が残ってもプリキュア側に不都合なことにはならないだろう、と判断してスルーした。
プリキュア達の一通りの自己紹介を済ませて。
ようやく、交渉タイムである。
こういうのは、後ろめたい事は全くないと言わんばかりの態度で臨むべきだ。
背筋をきりっと伸ばして、キュアセレーネは堂々とトッパーとの交渉に挑んだ。
「実はトッパー代表に相談したいことがありまして。
わたくし達プリキュアは星々を巡ってペンを集めてきましたけれども、異星人に正体を明かせないことでペンの回収に際して不利益が生じる状況が少なからずありました。
つきましては、プリキュアとその支援者が異星人に正体を明かしてしまった際の、免罪特権を頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」
「宜しいでアル。該当案件における免罪特権を認めるでアル」(即答)
えっ?
えっ……?
「やったー! キラやばーっ!」
話があまりにストレートに進み過ぎて、逆にセレーネは動揺した。
思わず、ナユタの方へと視線を送ってしまっていた。
ちゃんと前見て!
指先だけで、ナユタはセレーネの視線をトッパーの方へと戻させた。あっちむいてホイ!
「あっさり免罪特権を認めたのが、不思議でアルか?」
「え、ええ……。上に立つ者の常として、御自身の組織の利益をまず考えるものだと思っていましたので……。本当に対価の要求はされないのですか?」
ナユタは、思った。
香久矢家は名門であるし、その御嬢様である香久矢まどかは、それ相応の教育を受けてきているハズである。
だからこそ、交渉事に際して対価を求められるだろう、という認識はあったに違いない。
「確かに、プリキュアが宇宙星空連合に加入してくれていれば、ノットレイダーとの戦いで命を落とさずに済んだ同胞も居たであろう、というのは正直なところでアル」
「……」
やっぱり戦死者は出ているのか。
まぁ、ノットレイダーは実際に手強い。
特に知的生命体を使ってノットリガーを作るのが悪質で、味方や民間人と戦うのは色々とキツいうえに、倒すにしても素体に重傷を負わせることになるのが最悪なのだとか。
プリキュアの浄化技の偉大性を実感する展開である……。
「しかし、ゼニー星をはじめとして、プリキュアがプリンセスの力を集める過程で宇宙の人々を救ってきたことも事実でアル」
どうやら、星空連合の方でも情報を収集していたらしい。
特にゼニー星の戦いは市街地の真っ只中だったために、目撃者も多かったのだとか。
「宇宙星空連合には、宇宙の平和を守る責任があるでアル。余計な条件をプリキュアに押し付けて、その足を引っ張るのは、責任ある大人のするべきことでは無いのでアル」
それはそれとして、プリキュアには宇宙星空連合に加入して欲しいそうだが。
強制するつもりは無く、プリキュア側が迷惑がるようならば素直にあきらめる方針だそうだ。
プリキュア側は、加入はしないという判断を返した。
申し訳なさそうな表情を見せたセレーネは交渉事に向いている、とナユタは思った。
結果的にこちらからの要求ばかり飲ませてしまっているので、相手が気にするなと言っても、一応申し訳なさそうな態度は見せておいた方が吉なのである。
トッパー代表は残念そうだったが、強制するつもりが無いというのは本当のようだった。
「お願いを聞いていただいた恩返しと言っては、なんですけれども。
実はわたくし達の持つペンケースには、探知を妨害する力があります。
今後トッパーさん達がノットレイダーに襲撃されることを想定したときに、戦力的な不安があるようでしたら、ペンケースを一つ貸し出しましょうか?」
「なんと、そのような物があるでアルか! ペンはこの星の研究所で解析する予定だったでアルが……探知を妨害できるなら有難いでアル! 研究所には私から話しておくでアル!」
研究所の方には、トッパー代表から話を通しておくそうだ。
流石に惑星サマーンの研究機関が絡む案件は、独断では決められないのだろう。
ここまでで、ようやく交渉事はおしまいである。
無罪が決まったララは、胸をなでおろして息を吐いていた。
これで地球人に正体がバレた罪は許されたのだから、気持ちは分かる。
「やったね、ララ!」
「ルン! みんな、ありがとうルン!」
さらっとララに抱き着いて喜びを露わにしているキュアスター。
そんな二人を微笑ましそうに見守っている、ソレイユとコスモ。
ふと、ナユタはセレーネと目が合った。
何か、ナユタにコメントして欲しいのだろうか。
ひょっとすると、こういった交渉事は本来ナユタの担当だという認識があって、セレーネがしっかり出来ていたか評して欲しいとか?
今回はプリキュアであるセレーネに任せるのが妥当だとナユタは思っていたが、セレーネ側は不安に感じていたのかもしれない。
「お疲れさまー、セレーネ! パーフェクトな交渉役だったよー!」
「春日部さんには、まだ及びません。けれど……そう言っていただいて、本当に嬉しいです」
何というべきか。
嬉しい、というセレーネの言葉は嘘偽りの全くない、本心からの言葉なのだろう。
セレーネの笑顔を見たナユタは、素直に綺麗だと思った。
ナユタ自身が胡散臭い笑顔を多用しているものだから、なおさらに。
(えれな? もしかして、まどかとナユタって、そういう関係ニャン?)
(あはは……どうなんだろう。まどかからの矢印はありそうだけど、ナユタの方があんまり読めないんだよね)
コスモとソレイユが、何やら内緒話をしているようだ。
ナユタからは内容は聞き取れなかったが……まぁ、それはそれとして。
そろそろロロの表彰式が始まる時間だ。
そんなこんなで、トッパー代表からロロへと勲章が授与され、無事に表彰式は終了したのであった。
キュアスター達は、流れでララの実家へと足を運んだ。
ララの父、トト。
ララの母、カカ。
ララの兄、ロロ。
東映アニメーションの代表的な宇宙人を連想させる名前の家族であった。
「何も報告が来なくて心配していたら、まさかプリキュアを発見しているとは思わなかったるん!」
「ララがお世話になっているるん」
(んー?)
トトとカカが、それぞれプリキュア一行に言及しはじめた。
カカの言い回しが少し気になったナユタであったが、そういやサマーン星に敬語は無いんだっけ、なんて思いなおした。
それよりも、気になることがある。
まぁ疑問を挟むタイミングは選ぶが。
「ララ、凄いるん! 見直したるん!」
「オ、オヨ……? そ、そうルン……?」
褒められ慣れていない人間の反応だ、とナユタは思った。
双子の兄からの賛辞を受けて、ララは喜ぶより先に困惑している様子だ。
幼少期に自己肯定感が育たなかった人間は、褒められても喜ぶより先に、反応に困ってしまうことがある。
周囲からの好意に疎い、いわゆる「鈍感系主人公」が育ちやすい環境だと言える。
何となしにナユタがプリキュア達の方を見ると、物凄く嬉しそうなキュアスターの横顔が目に入った。
なんというか、「どうだ! うちのララは凄いだろう!」と顔に書いてあった。
コイツ、血を分けた家族よりも家族ヅラをしている……!
チャンスを嗅ぎ取ったらしいキュアスターは、地球でのララの活躍を、ララの家族へとアピールし始めた。
地球では、異星人の存在がバレてはいけない関係上、AIに頼ることはできない。
そんな過酷な状況下で、自分の身一つで出来ることを増やしていったララの頑張りを、ララの両親へと伝えていった。
そんなスターの言葉を……くすぐったそうな顔をしながらも、ララは一度も止めなかった。
ララが二桁の計算ができるようになったと聞けば、両親はとても驚き、喜んでくれた。
体育の時間に400メートルをララが走ったと伝えたら、両親はゴリラを見るような目をしていた。
ホバーボードに常に乗って移動しているサマーン星人は多分400メートルを走れないだろうな、とナユタは思った。なおナユタも無理である。よわい。(確信)
と、ここでナユタは自分自身の疑問を晴らすべく、ロロへと声をかけた。
言語問題に関しては、ユニがノットレイダーに潜入していた時に使っていた翻訳機を貰って解決しているので、今のナユタは単独で異星人と話せる。
「オッヨヨー! おにーさん、プリンセスの力を見つけるなんて、凄いルーン♡」
「と、当然るん! 僕は最高ランクの調査員るん!」
「そのナユタのキャラ付け、継続するの? なんだか、気味悪いニャン」
「あのさ……。それって同族嫌悪じゃないかな? マオ的な意味で」
突っ込まれてから気づいたが、プリキュアが正体をバラしても無罪だと決まったのだから、サマーン星人風のロープレは必要ない。
ぶっちゃけ、サマーン星人の触覚っぽく伸ばしてある髪留めも、いつものサクランボ形態に戻して良いのだ。
まぁでも、突っ込まれると面倒だからこのまま惰性で通してしまおう……。
ナユタは、猫なで声で似非サマーン星人ロールを続けた。
見るからにヨイショされているものの、ロロもまんざらでは無い様子だ。
「妹のララはプリキュアを見つけて、おにーさんはプリンセスの力を見つけるなんて、何だか運命的で素敵ルーン♡」
「双子の繋がりというヤツるん? オカルトなんて……ま、まあ、たまには悪くないるん」
ロロの片腕へと、ナユタは抱き着いた。
なお小学生体型なので、あてるオッパイなどというものは存在しない。
こういうのは、気持ちと雰囲気の問題である。
まぁロロも14歳なので、同年代の女子(??)に密着されるだけでも、鼻の下を伸ばすには十分だったようだが。
「…………」
(えれな! まどかがイライラしてるニャン! 早くなんとかするニャン!)
(あたし!? あたしなの!? ユニまで、あたしに無茶ぶりするの!?)
ナユタの背後では、小声の寸劇が繰り広げられていたりして。
涼しげな微笑をキープしつつ無言のプレッシャーを放っているキュアセレーネは、控えめに言って恐怖の権化である。
セレーネの足元から漏れ出た冷気によって、カーペットの中に霜柱が生え、近くの窓に結露が発生しはじめた。
コスモとソレイユは、抱き合って震えあがった。
楽しそうに談笑しているキュアスターたちと、温度差がありすぎる……!
「おにーさん、どうやってあのペンを手に入れたルーン?」
「キョカイ星の原住民が祭壇に祀っていたものを、大量の食糧を対価に交渉して譲ってもらったるん」
なるほど、とナユタは思った。
これはケンネル星と同じパターンだ。
というか、大量の食糧って……ひょっとしなくてもコスモグミか?
確かに栄養も味も文句なしであるし、宇宙船の設備で安く大量に作れるので、使い方としては非常に効率的だ。
ロロが優秀だというのも、あながち身内贔屓では無い模様。
「すごいルーン、さすがランク1ルーン! でもでも、どうしてそのペンがプリンセスの力だって分かったルーン?」
「それは……改めて考えてみると、不思議るん。でも、何だか重要そうなものだっていう直感を信じたるん!」
顔を赤らめて、少しばかり鼻の下を伸ばしながらも、ロロは真面目に答えた。
ナユタは、ロロの言葉に嘘は無いような気がした。
ロロの言葉を借りて言えば、直感を信じるというヤツである。
「オッヨヨー? なんだか不思議な話ルーン。サマーンの皆も、何となくあのペンが大切だって思ったルーン?」
「僕も後から知ったけれど、元々プリンセスの力はペンの形をしているっていう噂が流れていたらしいるん。だから、僕が持ち帰ったペンもプリンセスの力だって皆思ったるん」
ここまでの情報は……ナユタとしては、大収穫だったりする。
サマーンに来てから、ずっと奇妙だと思っていたが、その裏付けとなる証言がロロの口から聞けたのだ。
思わず笑顔が漏れてしまっていた。
「興味深い話が聞けて、楽しかったルーン。縁があったら、またオハナシするルーン♡」
「い、いつでも、大歓迎るん!」
ロロの頬に軽く触れる程度のキスをサービスしてやりつつ。
ほくほく顔で、ナユタはプリキュア達のもとへと戻ってきた。
なんだか急に気温が低くなったなぁ、なんて首を傾げつつ。
なぜだか額に汗をにじませているソレイユとコスモが、小声で話しかけてきた。
ナユタも、とりあえず小声で応じた。
「ええっと、ナユタ? ロロみたいな人がタイプなの? 特に最後、凄く良い笑顔だったけど……?」
「アリか無しかで言ったらアリだけどねー。まー、サマーン星に何度も来ないだろうし、会うのはこれっきりっしょ。最後のはサービスってやつー?」
「……そういうの、良くないニャン。宇宙アイドルの元同業者で、ファンに刺された子をマジで知ってるわよ」
うーむ。
ナユタとしては、おませな少年をからかったぐらいのつもりだったのだ。
というか、もっと言うとアイドルモードのマオを若干意識してみた。
しかし、どうも仲間たちからは不評である。
春日部ナユタの外見が小学生だから、少年少女のガチ恋っぽい雰囲気でも出ていたか……?
星座ペン関連の情報が機密扱いとなっていた場合を想定して、なるべくロロの口を軽くさせようとナユタなりに考えたルートだったのだが……。
なんやかんやで。
ペンを狙ってサマーン星に現れたノットレイダーを拳で撃退するなんてイベントを挟みつつ。
プリキュア一行は、無事に蟹座のペンをゲットしたのであった。
残るペンは、魚座ただ一つ!
・今回のNG大賞
純真な14歳「魅力的な女性だったるん……!」
恐怖の化身「わたくしが、耳よりな情報を教えてさしあげます。春日部さんの年齢は……29歳ですよ」
\モウオシマイダー!!/