帰りのロケットの中で。
再びパジャマパーティを開催しつつ。
「ララ。家族にキュアミルキーのことを言わなくて、本当に良かったの?」
「……ルン。確かに、プリキュアになったって言えばサマーンの皆に認めてもらえるって、思ってたルン」
星奈ひかるが聞いてきたのは、ララの心持ちだった。
故郷のサマーンで劣等感と孤独を膨らませていたララの過去を、ひかるは知っている。
だからこそ、キュアミルキーの正体を家族には明かすと思っていたのだろう。
実際、ララはそれを迷っていた時期もあった。
それでも結局、ララはプリキュアとしての情報を一切家族に話さなかった。
あの後、高度なホログラムを用いた娯楽施設で遊び倒したり、変わり種のコスモグミをお腹一杯に試食したりして。
特にシリアスな話題もなく、一同は惑星サマーンを満喫したのだった。
途中、ひかるとララだけで別行動をとってマザーAIへと会いに行くなんてイベントもあったが。
地球以外から見られる星座についてマザーAIへと質問を始めた星奈ひかるは、どこまでもブレない人間だ……とララは思った。
「でも、ひかるが一杯おしゃべりしてくれて、私の家族も喜んで聞いてくれたルン。だから、十分ルン」
ララは、実家での出来事を思い出しながら嬉しく思った。
地球で奮闘していたララの様子を、ララの実家で喋りまくったキュアスターの姿は……一生忘れられないだろう。
一つ一つは小さな出来事でも、並のサマーン星人には出来ないことを積み上げてきたのだ、と今更ながらララは思い知ったのだ。
ララの家族も感心しながら聞いてくれたし、ララは惑星サマーンでの13年間のモヤモヤが消えていくのを感じた。
もはや、落ちこぼれのララなんて、どこにも居なかった。
「そっか。それなら良かった。やっぱり私、ララのこと大好きだよ」
――ちゃんと自分の目でサマーンを見て、感じて、理解して。そのうえで、もう一度ララのことが大好きだって言ってみせるよ。
「ありがとうルン、ひかる……」
ララは、心の中が温かくなるのを感じた。
この頃、ひかると居る時には大体そうなのだが。
これも幸せの一種には違いないのだが、なんというか独特な感覚だ。
ドーナツを食べたときと似ているようで、ちょっと違うような、不思議な幸せだった。
「それに。昔は、ロロは器用で何でも出来て、私とは全然違って完璧な人だって思ってたルン。でも……」
ララは、ナユタに揶揄われている時のロロの様子を思い出して、何だか笑みを零してしまっていた。
ナユタに抱き着かれて、真っ赤になっていたロロの顔には、威厳も何もあったものではなくて。
結局、ララの劣等感から生み出した虚像でロロを覆っていたのだ、とララは気付いた。
確かにロロは優れた人間ではあるが、弱点だってあるし、人並みに女性の前では緊張したりもするのだ。
そう思い始めてから、ロロに対する苦手意識も、だいぶ薄れたように思った。
「ロロにあんな弱点があったなんて思わなかったルン! ナユタも、もっとロロを揶揄っても良かっ……オヨォッ!?」
ぞくり、と。
突如として、悪寒を感じた。
思わずララは、身震いして言葉を中断してしまっていた。
油が切れたロボットのような、ぎこちない動きで……ララは首を回した。
何故だか、香久矢まどかと目が合った。
いつも通りの涼しげな微笑を顔に張り付けているはずの香久矢まどかを見て、ララは触覚をギザギザに歪めて震え上がった。
何とも説明し難いのだが、本能的な恐怖とでも呼ぶべきか。
一万年後に地球の永久凍土から発掘される双子のサマーン星人の全身標本の図が、イマジネーションとして頭の中に浮かんだ。
遠い昔にサマーン星人が進化の過程で失ってしまった野性の生存本能が揺り起こされ、触覚の先のセンサーが見たことも無いような色に明滅していた。
まどかは、静かに微笑みかけてきた。
ララは、無言で何度も頷いた。
えれなとユニが、抱き合って震えていた。
ひかるも、どさくさでララへと抱き着いた。
「お待たせでプルンス! 料理班の作戦会議が終わったでプルンス!」
……と、このタイミングでプルンスとナユタが談話室に戻ってきた!
そういえば少し前から姿が見えなかったっけ、と談話室の一同は今更思った。
まどかの度し難いプレッシャーが氷解したのを感じて、ララは九死に一生を得た思いだった。
「さーて、よってなされ、見てなされー! ……って、みんなどうしたの? 怪談リレーでもしてた?」
「わー! わーっ!! たのしみだなー! キラやば、キラやばーっ!!!」(大汗)
そんなプリキュア5人娘の力関係を知ってか知らずか。
プルンスはフライパンを用意し、バターを加熱し始めた。
溶けたバターの匂いが、談話室へと広がっていく。
食べ盛りの中学生らが、空きっ腹にバターの弾ける匂いを嗅がされれば、もはや暴力的ですらある。
匂いの籠りやすい閉鎖空間ならば、なおさらだ。
「プルンス君のドーナツ生地を調整&流用してみたよー!」
「もちもちパンケーキでプルンス!」
腹の蟲を鳴かせたのは、ひかるだった。
やっぱりプルンス達の料理は凄いルン、なんてララが呟いた。
絶対に太るヤツなのに、とえれなが頭を抱えた。
魅力的です……そう、まどかが頬に手を当てながら言った。
まぁまぁニャン、などと嘯いているユニは、バターの弾ける音に合わせて猫耳が揺れていた。
フライパンの上で小気味よい音を立てながら、直径10センチ程度の小さなパンケーキが次々に焼き上げられていく。
シンプルだが絶対にハズさない、ド定番メニューである。
というより、単純だからこそプルンスの腕前がはっきり見えるとも言える。
プリキュア5人娘は、もはやフライパンから目を離せない様子であった。
「プルンス君、トッピングのホイップクリームは準備できたよー! 捻らずシンプルに白と黒の二種類にしといた!」
「ありがとうでプルンス! こっちも第一陣は食べ始めて大丈夫でプルンス!」
大皿へと小さなパンケーキが山盛りにされ、各人に小皿とナイフが配られた。
二色のクリームはボウルに入ったまま円卓の真ん中へと置かれた。
トッピングはお好みで、ということだろう。
誰からともなしに、いただきますを言い放った。
「もちもちしてる! キラやばーっ!」
「ドーナツと同じ材料でも、別物ルン! 凄いルン!」
「良いねぇ! 何枚でもイケちゃいそう!」
「愛情を感じます! 素敵です!」
「熱っ!? でも美味しいニャン!」
焼きたてホヤホヤで白い煙を放っているパンケーキを、プリキュア5人娘は見る間に平らげていった。
良い食べっぷりでプルンス、なんて感想を聞きながら。
今回も頑張ってくれたプリキュア一同のための晩餐会は、大好評のままに進行したのであった……。
『あくいのオトモダチ』
第17話:そんなのって、ないルン
(さーて、ここらがターニングポイントかな)
楽しかったサマーン旅行の帰路にて。
ロケット内の個室で、春日部ナユタは考え込んでいた。
もはや、ひかララの仲を裂く作戦は破綻したと見て良いだろう。
惑星サマーンでのイベントを終えて、より一層ラブラブしているあの二人を止めるのは無理だと悟った。
であるからして、セカンドプランを採択せねばなるまい。
ナユタの最終目標は、地球がネビュラガスに覆われた死の星となる未来を回避することだ。
現状から考えて……その目標を達成するためには、どうすれば良い?
2035年に宇宙飛行士の星奈ひかるが乗った地球産ロケットと、羽衣ララが乗ったサマーン産ロケットが、衛星軌道上で鉢合わせるのを阻止すれば良いだろう。
そのイベントさえ消せば、サマーンと地球の正式な外交も始まらないので、急激な技術流入も無くなるはずだ。
では、再会イベントを潰すためには何が必要か?
(そもそも2020年から2035年までの間、羽衣ララが地球に来られなかったのって、なんでなんだろ?)
春日部ナユタは、原作知識持ちのトリッパーではなく、予期せぬ理由によって未来からやってきたタイムトラベラーなのだ。
正史に関する知識はもともと穴だらけだった。
推測に推測を重ねていくしかない。
もし空白の15年間の間に星奈ひかるとララが小マメに連絡を取り合っていたら、衆人環視の下で鉢合わせるなんていうミスはしないだろう。
おそらく、二人は本当に15年ぶりに再会したはずだ。
ところが、その空白の15年間が発生する理由が、今のところ思い当たらない。
ララが渡航謹慎100年の刑を受けたケースでも、星奈ひかる側から会いに行くことは可能なので、大して問題にならない。
となれば……2020年に、ワープ航法が使えなくなる何かがあったのだ。
……ワープを司っている妖精フワが、戦死したか?
ありそうな話だし、星空連合の方で技術革新が起こって地球に来られるようになったのが15年後だと考えれば、ありえなくはない。
だがその場合、2020年に星奈ひかると羽衣ララがそれぞれ地球とサマーンに分断されているのが奇妙だ。
地球でフワが死んだ場合、ララはサマーンに帰れない。
逆に星空界でフワが死ぬ場合、今度は星奈ひかる達が地球に帰ってこられないはずなのに。
(絶対的に、パズルのピースが足りてないなー)
不確定要素も不安要素も多い。
果たして、2035年のミスを防ぐ方法として現実的な作戦とは……?
(視点を変えれば世界が変わる。……空白の15年間の方を無くしてしまえば、2035年の再会イベントなんて発生しない!)
今までの行動方針は優先順位を下げて、再会イベントの阻止を目指そう。
もしワープ航法が失われるのが不可避なら、星奈ひかるがサマーンに住むか、羽衣ララが地球に住むか、どちらかを促すのもアリだ。
その場合、ララはサマーンにあまり良い思い出が無さそうなので、二人で地球に住んでもらうのが良さそうだ。
となれば、不確定要素は少しでも解消しておくべきだ。
具体的に言うと、スタープリンセス絡みの怪しい疑惑である。
スタープリンセスたちを問い詰めて新情報が出たら、ナユタの計画も軌道修正を要する可能性はあるだろうし。
そのための下準備として……異星人組に、前もって覚悟を決めてもらわなければ。
ユニが離反する危険性が気になるところだが、土壇場で裏切られるよりは確定情報を増やした方が良いとナユタは判断した。
ナユタは、ユニを連れてララの部屋を訪れた。
大事な話って何ニャン、なんて不審がっているユニを宥めつつ、ナユタはララの部屋へと踏み込んだ。
ベッドや椅子に腰かけつつ、3人はそれぞれ楽な姿勢をとった。
「まずララに確認したいんだけどさー。ララって、プリキュア関連の事情は仕事仲間や家族にも全く報告してなかったの?」
「していないルン。地球人に正体が知られたのがバレると大変だったからルン。報告をサボっていた訳では、決して無いルン」
――調査員ララ! 報告もせずに、今まで何をしていたるん! それに、その人達は?
――何も報告が来なくて心配していたら、まさかプリキュアを発見しているとは思わなかったるん!
これは、サマーン星人達の反応から9割方そうだろうと思っていたが、念のために確認してみた。
上司のククも父親のトトも、ララがプリキュアをやっているなどとは夢にも思っていなかっただろう。
……だとすれば、決定的に不自然な点が浮かび上がってくる。
「じゃあさ。サマーンの人たちは、あのペンがプリンセスの力だって、どうして分かったんだろうね?」
「……オヨ?」
「……言われてみると、不思議ね。それで、色仕掛けまで使ってロロから情報を引き出してみたってワケ?」
ララは、状況の不自然さは理解しているようだが、解答が全く想像できていない様子だ。
ユニは腕を組みながら、不安そうに猫耳を揺らした。
話が早くて助かる。
――何だか重要そうなものだっていう直感を信じたるん!
――僕も後から知ったけれど、元々プリンセスの力はペンの形をしているっていう噂が流れていたらしいるん。だから、僕が持ち帰ったペンもプリンセスの力だって皆思ったるん。
ロロから聞いた話を、そのままナユタは伝えた。
さらに、ナユタはこの話の不自然さの解説を始めた。
ロロ一人だけがペンを重要そうだと思ったのならば、まぁそういうこともあるかもしれない。
しかし、たかだか噂話程度の根拠でサマーン星をあげた表彰式まで開かれるのは、傍から見ていて不自然ではないだろうか?
「そうかしら? サマーン星のマザーAIが解析すれば、あのペンがプリンセスの力だって分かってもおかしくは……。あ、でも、ララが本星への報告をサボっていたなら、変ニャン」
「確かに、比較する対象のデータが全くない状況だと、いくらマザーAIでもあのペンがプリンセスの力だと判断するのは無理ルン。あと私はサボっていないルン」
スターパレスに代々仕えるプルンスですら、プリンセスの力がペンの形をしていることを知らなかったのだ。
ララ達が星座ペンの存在を知ることが出来たのは、ひかるのスターカラーペンダントをララのロケットのAIが解析したからなわけで。
ララがサマーン星への報告をしていないとなると、マザーAIの判断で星座ペンの存在を突き止めたと考えるのも無理がある。
そうなると……サマーン星人や星空連合の人々が、ことごとく「なんとなくプリンセスの力だと思った」としか説明できない。
さすがに、これはキナ臭い。
ついでに、ナユタはケンネル星やゼニー星などの例も引き合いに出した。
ケンネル星では、原住民が神格を持つオブジェクトとして星座ペンを祀っていた。
ゼニー星のオークションでは、誰しもが星座ペンの真偽を疑いすらしなかった。
このSSでは1行で済ませてしまったが、アイススノー星で出会ったユキオも星座ペンを重要なアイテムとして認識していた節がある。
一つ一つは、小さな違和感と呼んで忘れるレベルかもしれない。
しかし、小さな違和感がいくつも重なれば、星座のように全体像が見えてくる。
「12星座のペンには、私たちのイマジネーションに直接働きかける何かがある……ということニャン?」
「……なんだか、洗脳みたいルン」
恐ろしい話だ。
だが実際、そう考え始めてしまうと、そうとしか思えないのだ。
スタープリンセス達は、明らかに何かを隠している。
「12星座のペンには、っていうよりも、12星座そのものが知的生命体のイマジネーションに紐づけられているんだと思うよ。だってさ……地球以外の星でも黄道12星座の概念ってあるんでしょ?」
「「……!」」
中高生の地学レベルの話だが。
そもそも、地球から見て描いた星図というのは、恒星同士の実際の距離を無視しているのだ。
であるからして、地球以外の星に行けば、星図は地球のものと同じにはならない。
にもかかわらず、12星座のカラーペンという物に対して、異星人のララもユニも疑問を抱かなかなかった。
その観点から考えれば、そもそも生物としての設計段階でララ達のイマジネーションにも操作が加えられているとしか思えない。
ララは、見るからに顔を青くしていた。
ユニは顔色こそ平静を装っているが、イカ耳状態になっていて心境が一目瞭然だった。
「じゃあ、それなら……! ひかるが、まだ見たことが無いフワの絵を描いて、フワを引き寄せたのも……!?」
「多分、プリンセスの力とセットで扱われるフワにも、何らかの仕込みはあるんだろうね。そして、イマジネーション操作の影響が他の個体よりも顕著に出たのが『星奈ひかる』という事だと思うよ」
星奈ひかるゥ!!(中略)
星を見ることが大好きだと言っている星奈ひかるは……知的生命体の中でも特にイマジネーション操作の影響を色濃く受けた存在なのかもしれない。
だからこそ、最初のプリキュアとして覚醒できた。
加えて、十中八九……フワにも知的生命体のイマジネーションに働きかける何かがあるのだろう。
この時系列のナユタ達はまだ知らないことだが、実は後日の原作でもそれらしい描写はあったりする。
フワを提示して宇宙マフィアのボスだと紹介したら、相手方の構成員が信じてしまったなんて話も出てくるのだ。
「そんな、むちゃくちゃルン……! 私たちがフワを守りたいって思ったのも、プリキュアの姿を思い描いたのも、ぜんぶ操られた結果だったルン……? 私たちのイマジネーションは、みんな作り物ルン……!?」
「ララ!? しっかりするニャン!」
ララは、胃を抑えているようだった。
吐き気を催している様子だが、おそらく胃の中身は全て消化済みなのだろう。
ユニに背中をさすってもらって、何とか正気を保っているといった様子だ。
一方のユニも、すまし顔をキープできずに、動揺と緊張を顔に出してしまっていた。
「洗脳されていない人間なんていない……とまで極論を持ち出す気はないけど、その点に関しては、割り切るしか無いと思うよ」
ナユタも、一緒にララの背中をさすってやって。
ユニと一緒にララを抱き起して、ベッドに寝かせてみた。
ララは、一応意識ははっきりしているようだが、力なく為されるままに寝かされた。
「で、ここからだ。これらの不安要素を総合して考えた場合に、スタープリンセス達の言っていることを、どこまで信じられると思う?」
ナユタの提示した疑問を聞いたユニは、一瞬だけ考え込むような素振りを見せた。
……そして、次の瞬間には表情が消えうせた。
気付かない方が幸せなことに、気づいてしまった人間の顔だった。
「まさか……プリンセスの力を全部集めても、惑星レインボーの皆は元に戻らないニャン……!?」
「それに関しては、個人的には五分五分だと思ってるけど……覚悟は、しておいた方が良いだろうね」
正直に言ってナユタは、こればかりはどちらに転ぶか読めなかった。
全ての知的生命体のイマジネーションに干渉するなどという常軌を逸した力を持つ存在ならば、その程度の願いをかなえる力はあっても不思議ではない。
ただし、プリンセス側に約束を守る理由があれば、という前提は付くが。
「ララも、覚悟しておいてほしい。プリンセス達がどのぐらい真っ黒なのか分からないけれど、戦役後にフワの力が借りられなくなるかもしれない、というぐらいは想定しておいた方が良いよ」
フワの力が借りられなくなる。
その意味を、混乱しているララは必死に噛み砕いた。
長距離ワープの手段が無くなったら、サマーンと地球を往復する手段が無くなる。
……ひかるに、会えなくなる。
「そんなのって、ないルン。あんまりルン……! せっかく、無罪を勝ち取ったばっかりなのに、これからなのに……!!」
ララは仰向けに寝かされたまま、目元を腕で隠した。
割れそうな声を絞り出しているララの心境を、ナユタもユニも察していた。
あんなに仲睦まじいララとひかるの様子を見せられれば、ララの受けたショックぐらいは分かる。
「これが、ララとユニだけに話をした理由だよ。まぁ覚悟してほしいって言った件に関してはプリンセス達の胸三寸に頼るところが大きいし、最悪の事態にはならない可能性だって十分にあるから、ヤケになりなさるなよ」
一応、次にスタープリンセスと会うタイミングで答え合わせをした方が良いだろう。
長期旅行中はフワの体力の問題もあるので、あまりスターパレスへのワープを使わせるのも宜しくない。
ララもユニも生きた心地がしないという顔をしているので、早めに疑惑を解消したいところではあるが。
「あとまぁ、ララに関してはさ。最悪、地球に永住しちゃうのだってアリだし。一応選択肢の一つとして覚えといてよ」
「……ルン」
選択肢の一つどころか、これがナユタの本命だが。
さらっと、ララのために思いついた案であるかのように恩着せがましく言うのがポイントである。
清々しいまでにゲスの所業だった。
「今の話……私とララだけに話したって言っていたわよね。地球の皆やプルンスには、言わないのかしら?」
「そこは、アタシも少し悩んでるんだよね。今の話って、ぶっちゃけると『味方に対する陰口』な側面はあるからさ。あんまり無暗に言いふらすのも良くないと思うんだよねー……」
味方の陰口を延々と聞かされれば、発言者に対する心象は悪くなる一方だ。
だからこそ、ナユタもプリンセス達の不審な点に対しては、発言に消極的だったという面はある。
今のタイミングでユニとララに話したのは、二人に最悪の事態への覚悟を決めるための時間を作ってやるためでもある。
ロロから引き出した情報によってナユタ側でも一定の確信を得たから、という理由もあるが。
特に反応が読めないのが、星奈ひかるとプルンスの二人だ。
ひかるはイマジネーション操作の影響が色濃く出ているし、プルンスはスターパレスに代々仕える一族の者だ。
スタープリンセスに対して無根拠な信仰心を発揮する程度ならまだ良いが、世界の真実に気付いてしまった者を始末するための『トロイの木馬』的なプログラムが仕込まれていたら手に負えない。
さすがにそんなエグい機能が友人達に仕込まれているとは思いたくないが、今までのプリンセス達の影響力から考えると、可能か不可能かで言えば可能だと思えてしまうのである。
というか、ララとユニにもその手のプログラムが仕込まれている場合を想定して、ナユタは念のために自室に遺書を用意してきてあったりする。
幸いにして、ララとユニはショックを受ける以上の反応を見せていないが。
「まどかにだけでも、話してあげなさい。貴女から信頼されてないって思ったら、あの子たぶん傷つくわよ」
「うーん? なんで、まどかちゃんピンポイント? えれなちゃん達だって、隠し事には嫌な思いはすると思うけどー?」
マジかよコイツ、みたいな視線がユニから返ってきた。
どういうことだ?
星奈ひかるや天宮えれなは明るくて能天気だから隠し事なんて気にしないとか、そういう話?
ナユタは、白い目で見てくるユニの真意を察しかねた。
だが、ここでナユタはアドリブ的に新アイデアを閃いた。
万が一『トロイの木馬』があった場合でも、それを回避する手段があるじゃないか、と。
「まどかちゃんに話すなら、一緒にえれなちゃんにも話すかなー。……ユニちゃんには、プルンス君とひかるちゃんの方をお願いして良いかな? 特にプルンス君にはユニちゃんから言うのが一番効くと思うんだよね」
元から身体能力に優れるレインボー星人ならば、そう簡単に殺られはしないだろう。
ここは、ユニを人身御供……もとい、パイオニアとして派遣しようではないか。
適材適所というヤツだ。
仮にプルンスとひかるが理性を失って暴れだしたとしても、ユニならば生還率は高そうである。
「面倒くさいニャン……。まぁでも、私に義理立てしてくれたことだし、今回は聞いてあげるわよ」
「悪いね、任せるよ」
ユニは、ナユタが疑惑を教えてくれたことを一応恩に感じているらしい。
惑星レインボーの人々が元に戻らない未来が待っているのならば、ユニが一緒にプリキュアとして戦う理由も半減する。
にもかかわらずユニを信じて今回の疑惑を教えてくれたことを、ユニは有難がっているようだった。
まさか、もっとエグい展開を見越したうえで地雷処理係な扱いを受けているなんて、夢にも思っていない様子である。
「死ぬなよ、ユニちゃん」
「なんで急に私に死亡フラグを立てたニャン??」
あきれ顔で突っ込みを入れてくるユニに、ひらひらと手をふりつつ。
ナユタは、ララの部屋を後にしたのであった。
天宮えれなと香久矢まどかへ、同じ説明をしてこなければ。
なお、ユニは何事も無く説明を終えて無事に帰ってきた。
さすがに『トロイの木馬』はナユタの考えすぎだった模様。
それぞれの心に暗雲を残しつつ。
ロケットは、一路地球へと飛んだ……。
・今回のNG大賞
ナユタ「大切な話があるんだ」
まどか「心して伺いましょう」
えれな(この二人の作戦会議とか胃が痛くなるんだけど……!)
強く生きろ……。