あくいのオトモダチ   作:カードは慎重に選ぶ男

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ヒープリの新作放映が再開して本当に嬉しいルン



第18話:ごめん、ユニ

地球へと無事に帰り着いた面々は、思い思いに深呼吸をしたり肩を伸ばしたりしていた。

なんとなく、乗り物から降りたときにやりたくなる仕草である。

 

ピコリンピコリン

 

そして、このタイミングで星奈ひかるのペンダントが反応を見せた。

残る星座ペンは魚座だけだ。

ひかる達は、互いに頷きあった。

ペンダントの反応を見るに、おそらくロケットが泊めてあるのと同じ山林の中に魚座のペンがある。

 

そんなことが、あるだろうか?

今まで近くにあったのに、偶々ペンダントが反応しなかったか?

決して確率がゼロとは言えないが、誰かが地球へとペンを持ち込んだと考えた方がしっくりくる。

 

誘われている。

誰しもが、そう理解した。

十中八九、ノットレイダーの誰かがプリキュアの到着を待っているだろう。

ナユタとアイワーンが探知妨害用のペンケースを作ったせいで、ノットレイダーはプリキュアに能動的に攻撃を仕掛けるのが難しいという事情があるからに違いない。

 

 

「「「「「スターカラーペンダント! カラーチャージ!」」」」」

 

それぞれ変身したプリキュアたちは、ペンダントが示す方角へと走った。

なお、ナユタとプルンスはロケットに戻った。

機動力的に考えてプリキュアと一緒に行動するのが難しいうえに、生身のナユタは足手まといになるという自己判断からである。

 

 

 

 

「来たか、プリキュア!」

 

山中の広場でプリキュアを待ち構えていたのは……体長2メートルを超える巨漢だった。

肌は青く、顔は地球で言うところのブルドッグに似ているタイプの異星人だ。

万が一にも相手が話し合いに来た可能性もあるので、奇襲は考えずにキュアスター達は堂々と姿を見せた。

 

 

「あいつは、ガルオウガよ! ダークネストに次ぐ、ノットレイダーのNo2ニャン!」

 

どうやらキュアコスモの知っている顔らしい。

バケニャーンとしてノットレイダーに潜入していた時代に知り合ったに違いない。

ラスボス一歩手前の相手という事らしいが、それってかなりマズイ状況なのでは……?

 

 

「器を渡せ」

「フワは渡さない!」

 

キュアスターの啖呵を聞きつつ、プリキュア一同は思った。

その守りたいという思いも、イマジネーションを操作された結果なのかもしれない、と。

 

 

「ふんっ!」

「オヨォっ!?」「きゃあっ!?」

 

音を置き去りにして踏み込んできたガルオウガの拳によって、ミルキーがブッ飛ばされた。

流れるような蹴り技で、セレーネも弾き飛ばされる。

二人は受け身も取れずに、山中の木々へと叩きつけられた。

 

ソレイユは足に炎を纏いつつ、蹴り技の連撃でガルオウガへと仕掛けた。

ガルオウガは、危なげなくそれらの攻撃をガードし、いなしていく。

後退しながら隙を見計らっているガルオウガは余裕そうに見えたが……何かに躓いて、バランスを崩してしまう。

 

……地面スレスレに出現したキュアスターの小さな星型障壁によって、ガルオウガは躓いてしまったのだ。

 

 

「天秤座・ソレイユシュートっ!!」

 

超至近距離から、灼熱の火球がガルオウガへと蹴りつけられた。

周囲の木々を揺らしながら、爆音が鳴り響いた。

黒煙と爆発から大ジャンプで飛び出してきたソレイユは、無事のようだ。

 

 

「やったね、ソレイユ!」

「良いねぇ! ナイス連携!」

「ほう? 地球で言うところの『やったか!』という文化か」

 

連携が決まってハイタッチを交わしていたスターとソレイユは……すぐ傍から聞こえた声に、背筋を凍らせた。

多少焦げた匂いがするものの、ほとんどダメージを負っていない様子のガルオウガが、目と鼻の先に立っていたのだ。

ガルオウガの振るった拳によって、ソレイユも吹き飛ばされてしまった。

 

なんとかバックステップでダメージを軽減したキュアスターであったが、ガルオウガの追撃が迫っていた。

ガルオウガの振るった腕をギリギリのところで掴んだキュアスターは……その怪力で、無理やりガルオウガを上空へと投げ飛ばした。

一瞬ののちに、キュアスターの輪郭が歪み、その正体が現れる。

ガルオウガを空中へと投げ飛ばしたのは……スターではなく、擬態能力で正体を偽っていたキュアコスモだ。

 

ならば本物のキュアスターはどこに居るのか、と空中のガルオウガは疑問に思った。

視線を回して周囲の様子をうかがうと……ダメージを負った3人とキュアスターが、合流しているのが見えた。

 

 

「「「「四つの輝きを今、一つに! プリキュア・サザンクロスショット!!」」」」

 

プリキュア4人分の力を集結させた光線が、ガルオウガに襲い掛かった。

今までのノットリガーを倒してきた、文字通りのプリキュア達の切り札だ。

力の奔流に、ガルオウガが飲み込まれていく。

 

 

「出し惜しみは無しよ! レインボーパフューム!」

 

誰よりもガルオウガの恐ろしさを知っているコスモは、躊躇なく隠し玉を用いた。

迷いなく取り出した『灰色のペン』を、コスモは専用武器のパフュームへと差し込んだ。

香水瓶の中に灰色のエネルギーが蓄積され、いつもの星座ペン以上の力が内部で暴れまわっているようだった。

 

 

「行くニャン! ネビュラ・レインボースプラッシュ!!」

 

サザンクロスショットに飲み込まれているガルオウガに対して、容赦の欠片もないダメ押しの灰色光線が放たれた。

先ほどの近距離ソレイユシュート以上の大爆発が、山林全体を震わせた。

爆炎でガルオウガの姿を見失ってしまったが、さすがに今の攻撃で無傷ということは無いはずだ。

 

 

「コスモ……? そのペン、使って大丈夫なの……?」

「ナユタが、そのペンをまた作ったルン……??」

 

油断なく周囲に目を配りながら、スター達がコスモへと声をかけた。

キュアスターとしては、灰色のペンは危険物という印象が強いのだろう。

灰色のペンは一時的なドーピング用具として身体にエネルギーを取り込むだけでも、負担は重い。

他の面々も、かねがね同じ印象を持っているようだ。

 

 

「レインボーパフュームは、カラーペンの力を一度身体の中に取り込む過程が無いのよ。だから使っても平気ニャン」

 

言われてみれば、スター達も納得したようだが。

キュアスターたち4人は、12星座のペンの力を使う際には、一度身体の中にエネルギーを貯めてから技を放っている。

しかしキュアコスモのパフュームを使う場合、エネルギーの経路が香水瓶の中だけで完結しているため、体内をペンの力が通らないのだ。

ニチアサ的に言うならば、仮面ライダーWがプリズムビッカーを用いることでツインマキシマム以上の力を使えるのと同じ理屈である。

 

 

「効かぬな! 自分を捨てる覚悟もない者の技などッ!」

 

突如としてキュアコスモの背後に現れたガルオウガが、拳を振るった。

水切りに用いられる石のように、殴り飛ばされたコスモは背中で何度もバウンドした。

ガルオウガは身体中に大小様々な傷を負っているようだったが、それでも経戦は可能な様子だった。

 

 

「それは……違うよ!」

 

キュアスターは、反論とともに障壁を展開した。

ミルキーが一緒に障壁を張り、ガルオウガの拳を受け止めた。

ガルオウガの両サイドから、ソレイユとセレーネが強襲した。

 

 

「確かに捨て身になったら、凄い力が出せるかもしれない。けど! それは私を大好きで居てくれる人を悲しませる力だよ! そんなの私、イヤだ!!」

「戯言を! 戦士が自分の命を優先した結果、我らの星のように滅びるのだ! 圧倒的な力の前になぁッ!!」

 

ガルオウガはソレイユの蹴りをそのまま掴み、セレーネへ投げつけた。

空中で激突させられてしまったソレイユとセレーネは、地に転がされた。

スターは、必死で問いかけた。

ガルオウガが生き残ってしまったことが、悪いはずがない、と。

 

 

「星が滅んだ貴方の気持ちを、分かったなんて言えないよ。でも、守りたい人達が居たんでしょ!? その人達だって、同じぐらい貴方のことを大切に思っていたんじゃないの!?」

「守り切れなければ、同じことだ! 失われた命にも、守り切れない力にも、意味も価値も無い! 守るなどと軽々しく口にするなッ!!」

 

ガルオウガの容赦のない拳が、スターとミルキーの張った障壁を砕いた。

そのまま、後退する暇もなくガルオウガの腕力が二人を薙ぎ払った。

追撃にて振るわれる一打一打が、果てしなく重い。

途轍もない身体能力と防御力を誇るガルオウガを前に、プリキュア達の闘志は折れていなかったが……身体が、ついてこない。

 

膝をついてしまったスターへと、ガルオウガがとどめを刺そうとした。

……その瞬間に。

 

 

『いっけええっ!!』

「なんだと!?」

 

風を切る音と、スピーカー越しの春日部ナユタの声が、誰しもの耳に届いた。

同時に、ララ達のロケットが……横殴りに、ガルオウガへと体当たりを食らわせていた。

10メートル近いロケットの巨体から繰り出された体当たりは、ガルオウガを大きく仰け反らせるに十分な威力を持っていた。

……それでも、決定打には至らない。

 

 

「ふんッ!!」

『嘘っしょ!?』

『デタラメでプルンス!?』

 

地面を轍のように踵で抉りながらも、ガルオウガはロケットの体当たりを受け切った。

そして、全身全霊の力でロケットを投げ飛ばした。

ロケットは轟音を立てながら、地面に横倒しにされた。

 

 

 

「今のは……中々の一撃だった。だが、これで万策尽きたようだな」

 

肩で息をしながら、ガルオウガはそれでも倒れなかった。

驚異的なタフネスである。

 

 

『まだまだ! こっちには、このダークペンがある!』

『うわあああああっ!? なんて物を作ってるでプルンス!?』

 

ダークペンといえば。

アイワーンが発明した、強化ノットリガーを作るための触媒だ。

しかし、イマジネーションを暴走させて生み出されるノットリガーは、制御が効かず無秩序に暴れまわるだけの存在だったはず。

間違っても、何かを守るためには使えないし、味方にも被害を出す迷惑な怪人である。

プルンスの悲鳴は迫真だった。

 

 

『視点を変えれば世界が変わる! 3人寄れば文殊の知恵! ノットリガーだってマトモに操縦できる!』

『ここにはプルンスとナユタの2人しか居ないでプルンス! 良いからそのペンを離すでプルンス!』

 

スピーカー越しに言い争う声を聞きながら。

キュアスターには、春日部ナユタのイマジネーションが理解できた。

かつてカッパード達が3人でノットリガーを形成したときは、確かに理性を保って操縦できていたのだ。

そして、今のナユタが期待する、3人目とは……。

 

 

「ロケットのAIさん! お願い、ナユタちゃんに力を貸してあげて!」

「オヨォ!? 3人目ってAIルン!?」

 

プリキュア達は、スター以外の全員が多かれ少なかれ驚いていた。

ロケットのAIを、イマジネーションを持った存在と見做してノットリガーの素材にすることなど、果たして可能なのか?

 

 

『成功率を算出できません。危険です。製造目的から想定されていない使用方法です』

『AIちゃんが何と言おうと、誰も犠牲にしない選択肢はコレだけだ! だから、どうせなら出来るって信じろ! さー、実験を始めるぞ!!』

『ヤケクソでプルンスぅっ! 成功する成功する成功する成功するっ!!』

 

ナユタが何かを叩く音が、横転しているロケットの外にまで聞こえてきた。

多分、机かコンソール辺りの何かをブン殴ったのだろう。

こうなったら、もう止められない。

 

 

『ノットリガー!!』

 

瞬く間に、ロケットがシルエットを変えていった。

胴体はいつものピンクのロケットのままだが、メカメカしい手足が生えた。

よく観察すると、関節の可動部の中には水色の触手のような筋が見える。

総合すると、ロケットに手足が生えただけだ!!

 

 

『完成! えーっと……ノットリニティ!』

『制御、安定。暴走の危険、20%以下です』

『外見にナユタの成分が全然無い気がするでプルンス……』

 

巨大ノットリニティが、鉄の巨拳をふるってガルオウガへと襲い掛かった。

その重量と巨体から繰り出される拳は、ガルオウガの拳と正面から激突し……拮抗した。

ダメージが蓄積しているガルオウガは、巨拳の連撃を受け切れず、途中でジャンプして空中へと回避を選択した。

かつてプリキュア4人を完全に圧倒していた3人制ノットリガーの腕力を思い出し、スターたちは納得していた。

 

ノットリニティは、ガルオウガに対して互角以上に戦えていた。

ガルオウガも大分消耗しているのを踏まえての戦況だが、スター達にとっては頼もしい事この上ない。

 

鉄の脚が軋みをあげながら、ガルオウガへと蹴りを繰り出した。

受け切れないと判断したガルオウガは……瞬間移動により、ノットリニティの背後へと回り込んだ。

今まで爆炎に姿を晦ました後にプリキュア達の背後に現れていたのは、瞬間移動能力によるものだったのだ。

ガルオウガは、仕返しとばかりにノットリニティの背中を蹴りつけた。

 

 

『捕まえたでプルンスゥ!』

「ぬおおっ!!?」

『今だぞ、みんな!』

 

そんなガルオウガの脚へと……ノットリニティの関節から伸びた水色の触手が幾重にも纏わりついた。

突然の触手攻めを前に、ガルオウガは気持ち悪さに声をあげてしまっていた。

 

 

「「「「サザンクロスショット!!」」」」

「ネビュラ・レインボースプラッシュ!!」

「ぐおおおおおっ!!!?」

 

本日二度目の十字砲火がガルオウガへと直撃した。

スターたち4人の力を結集したサザンクロスショットと、灰色のペンで威力を底上げしたレインボースプラッシュの合わせ技だ。

巻き添えを食らったノットリニティは、スラスターを吹かして離脱しようとしたが、そのまま浄化されて元のロケットに戻ってしまった。

バチバチと機体から悲鳴のように電子音が漏れ出しているのを聞く限り、内部ダメージ的にも限界だったのかもしれない。

 

 

 

「ま、まだだ……ッ!」

 

地面に形成された盛大なクレーターの中心で。

ボロボロになって、それでもガルオウガは立ち上がった。

だが……ガルオウガの左手に輝く腕輪が、甲高い音を立てながらヒビ割れた。

ガルオウガの顔が、驚愕に染まった。

 

一瞬の好機を嗅ぎつけたキュアスターは、迷わずに踏み込んだ。

ガルオウガも、カウンターの拳を繰り出そうとした。

両者の命運を分けたのは……思い切りの良さ、だろうか。

 

 

「スターパンチっ!!」

「がはぁっ!」

 

キュアスターの左拳は、反撃より一瞬だけ先にガルオウガの顔面へと突き刺さった。

ガルオウガの握った手の中から、光り輝くものが零れ落ちた。

プリキュアたちを誘き寄せるために持っていたであろう、魚座のカラーペンだ!

 

地に背中を付けてしまったガルオウガは、瞬く間にワームホールを作り出し、その向こう側へと消えていった。

静寂が、山林へと戻ってきた。

 

 

……勝った。

 

そう理解できるまでに、数秒の時間を要した。

誰しもが、疲労感から座り込み、しばらく動けなかった。

 

ようやく回復して立ち上がった星奈ひかるが、地面に落ちていた魚座のカラーペンを拾い上げた。

12本のペンを集めるというミッションが、ようやく終わりを迎えたのだ。

ガルオウガとの闘いは、正直ダメかと思った場面もあったが、何とかなって本当に良かった。

 

ここで諸手をあげて喜べれば、どんなに良かっただろうか。

スタープリンセス達の怪しい点を知ってしまっている星奈ひかるたちは、素直には喜べなかった。

何とも言えない表情で。

星奈ひかるは、手の中の魚座カラーペンに目を落とした……。

 

 

「……行こう、スターパレスへ」

「魚座フワー! 星の輝き、戻るフワー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あくいのオトモダチ』

第18話:ごめん、ユニ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで、やってきましたスターパレス。

とうとう、12星座のカラーペンを集め終わり、ダークネストに対抗するための準備が進むはずだが……。

ナユタが見回した限りだと、ひかる達もプルンスも顔に緊張が表れていた。

本当にスタープリンセス達は信用できるのか、という不安が胸中に渦巻いているのだろう。

 

 

「フワに食事を」

「いただきますフワー!」

 

プリンセス達の指示に従って、ひかるがフワへと食料を与えてやった。

トゥインクルブックと星座ペンを併用すると、フワ用の食糧を生み出せるのである。

すると……フワの姿が、みるみる変わっていった。

三頭身のペガサスの縫い包みのような姿へと、フワは進化したのだ。

今までの過程から察するに、12星座のペンを回収した状況でフワに一定量のものを食べさせるのが、進化の条件だったのだろう。

 

 

「フワは、まだ成長の途中です。フワをさらに成長させなければ、星の輝きも戻らず、宇宙は滅ぼされてしまうでしょう」

 

ナユタは、横目でユニの様子を確認した。

ユニは、他のメンバー以上に不安を抱いているようだった。

惑星レインボーの復興のために、まだ集めるものがあると言われているのだから、当然だろう。

 

 

「スタープリンセスのみんな。……プリンセスの力を見たことが無い人でも本物だと分かるのって、なんでなの?」

 

ひかるが、言葉を選びつつも直接的に質問を投げかけた。

嫌な予感はしているのだろうが、スタープリンセス達に聞かなければならないことだ。

ゼニー星でもサマーンでも、言われてみれば不自然だと思われる場面は多かった。

 

 

「それは、この宇宙の生命に私達のイマジネーションを分け与えた名残です」

 

スタープリンセス達は、語った。

かつて、イマジネーションを持つ存在はプリンセス達だけだったのだ。

だがこの宇宙に生命を創る際に、12星座のプリンセス達は自身のイマジネーションを分け与えた。

その影響で、どの星にも12星座の伝承があるのだという。

 

もっと悪辣な展開を想定していたナユタとしては、意外と良心的だったな、なんて思っていたりして。

どうも、プリンセス達が悪意で知的生命体を操っているのではなく、知的生命体を設計したときに意図せずにそうなってしまったという経緯のようだ。

もちろん、プリンセス達の言葉を信じるならば、という前提は付くが。

 

 

「プリンセススターカラーペンを初めて見たときに、それが大切なものだって分からない人は居るの?」

「知的生命体であれば、必ず私達のイマジネーションを引き継いでいます」

「個人差はありますが、何となく重要な物である、という程度には思うはずです」

「例外的に、ダークネストによって想像力を歪められてしまった者達に関しては、この限りではありません」

 

ひかるの質問に対してプリンセス達は淡々と答えた。

例外はあるものの、創造者であるプリンセス達の影響力はかなり強いようだ。

 

 

「あたしたちがフワを守りたいって思ったのも……?」

「力の器であるフワにも、何となく重要な物である、という程度のイマジネーションへの影響力はあります」

 

……それにしても、プリンセス達は予想外に正直に答えてくれる。

語り口からは、特に悪意があって情報を隠蔽していた訳では無さそうだ、という印象を受けるのだ。

単に伝える必要があるかどうかを基準に情報を選んでいただけで、聞かれたなら特に包み隠さずに情報を出してくれる方針のようだ。

確かに、初対面の人間から宇宙の成り立ちが云々なんてところから話をされても困惑するだけなので、プリンセス達の方針は割と妥当に思える。

ナユタが覚悟していたよりも、はるかにプリンセス達は誠実なのかもしれない。

 

 

「惑星レインボーの皆を元に戻すまでのロードマップを提示してほしいニャン」

「今後、5つのトゥインクルイマジネーションを見つけて、フワと12星座のカラーペンと併せてこの祭壇に揃えてください」

「その状態で儀式を行えば、ダークネストを倒すための力が生成できます」

「儀式の際に発生する余剰エネルギーで惑星レインボーの人々も元に戻せます」

 

マジで聞いたら何でも答えてくれるなぁ、この人たち……。

これは、ナユタ側でプリンセス達を疑い過ぎてしまった気配が濃厚である。

もっと早い段階で質問攻めにしても、プリンセス達はちゃんと答えてくれた気がする……。

ユニの様子を確認してみれば、少しだけ安心した様子であった。

 

 

「わたくしたちが探すべき、トゥインクルイマジネーションというのは、どのような物なのでしょうか?」

「強いイマジネーションのことです」

「プリキュアへと変身できる皆様が、自身の心の中に見つける可能性が最も高いでしょう」

「儀式のことだけを想定するなら、強いイマジネーションであれば、プリキュアの皆様のものである必要はありません」

「しかし、プリキュアとしての戦力向上にもつながるので、出来る限りプリキュアが見つけることが好ましいです」

 

アレを見つけろ、ソレを探せ、なんて御使いイベントが続くと不安になってくるものだが。

ゴールまでの道筋が提示されれば、一安心である。

やはり、先の見えないマラソンは走者の精神を削るのだ。

 

 

「ダークネストを止めた後でも、サマーンと地球を往復するための長距離ワープの力は借りられるルン?」

「……これは、できれば言うまいと思っていましたが。儀式を行う際にフワは消滅します。それは出来ません」

 

出来れば言いたくなかった、というのはプリンセス達の本音なのだろう。

それでも、聞かれたからには誠心誠意をもって答えるべきだ、という倫理観が勝ったようだ。

なんだかんだで誠実な人たちである。

言っている内容にはエグい匂いが混ざり始めたが。

 

ララは、プリンセス達から告げられた酷な真実に対して、何も言い返せなかった。

ぎゅっと掌を握りしめているララは、何を言ったらいいのか分からないのだろう。

そんなララの拳を、優しく包み込んでくれる手があった。

 

 

「正直に教えてくれて、ありがとう。でも、私は仲間を犠牲にするなんて……イヤだ。だから、儀式は出来ないよ」

 

ごめん、ユニ。

そう、星奈ひかるは続けた。

灰色のペンの騒動で、思い知らされたのだろう。

捨て身で戦うということが、残された者に与える爪痕を。

 

これはユニが辛いやつだ、とナユタは即座に理解できた。

プリンセス達も星奈ひかるも、悪いとは言い難い存在なのだ。

強いて言えばダークネストが悪いのだが、ダークネストを恨んでも惑星レインボーが元に戻るわけでもないし。

誰も悪くないのに救いが無いというのは、かなりキツいパターンだとナユタは思った。

 

 

「…………仕方ないニャン。アイワーンに相談して、みんなを元に戻す方法が無いか研究してもらうわ。ナユタも、手伝ってくれる?」

「手伝うよ。さすがにコレは、ね」

「本当に、ごめん……」

 

ユニは、肩を落としている様子だった。

だいぶ葛藤もあったのだろう。

話が違う、なんてキレ散らかしても全然おかしくない立場なのだが、文句を飲み込んだ模様。

さすがにフワを生贄に捧げる儀式を行え、とは思っていても言えないだろうし。

 

 

「……分かりました」

「ここまで頑張ってくれたプリキュアの皆様を信じましょう」

「ですが、もしダークネストに勝てないようであれば、その時は覚悟を決めて儀式に参加してください」

「念のために補足しておきます。トゥインクルイマジネーションの生み出すエネルギーを儀式で消費しても、プリキュアの皆様の健康や精神には影響はありません」

「儀式後にフワが消滅した際には、儀式で生み出されたエネルギーの一部を流用して、地球人の皆さんのための帰り道は確保するつもりです」

 

プリンセス側も、生贄を使って儀式を行うのは良くないという認識はあるのだろう。

フワを消滅させたくない人間の気持ちが理解できるからこそ、今までフワの末路をプリキュアに黙っていたのだろうし。

宇宙を救うために必要だから儀式をするつもりで居たのだろうが、それ以外の方法でダークネストを止められるならば、その方が良いとは思ってくれているらしい。

そのうえで、もし手段が見つからなかったら覚悟を決めて欲しい、と念を押してきているのだ。

 

ナユタは察した。

おそらく正史の星奈ひかる達は、儀式を回避できなかったのだろう。

そのせいで空白の15年間が生じてしまったと見て良いはずだ。

 

 

「おっと、アタシからも質問良いかなー? 13人目のプリンセスが居るって話だったけど、スターパレスの宮殿って12個しかないよね? 何故なんでしょーか?」

「……蛇使い座のプリンセスは、この宇宙の生命にイマジネーションを分け与えることに反対していました。私達とは喧嘩別れの形になってしまったので、帰ってくる見込みは無いと判断して改築しました」

 

なるほど。

その説明自体にはおかしいところは無い。

単品だと決定的に破綻している点はないのだ。

ただ、今までの話を踏まえると、少し不自然かなというだけで。

 

 

「どこの星にも12星座の伝承があるのは、12星座のプリンセスが想像力を分け与えたからだとして。でもそれだと、蛇使い座の伝承もあるのって、ちょっと変な気がしないかなー? 13人目は想像力を分け与えていないんだよね?」

「……私達も、分かりません。疑問に思ったことがありませんでした。回答を示せず、申し訳ありません」

 

プリンセス達は、素直に謝った。

ナユタは、解釈を決めかねた。

プリンセス達に都合の悪いことを黙秘しているのか、本当に知らないのか、どっちだ?

何となく、プリンセス達は自身に都合の悪いことでも言ってくれるような雰囲気があるものの、だからと言って全部を包み隠さずに教えてくれるという保証は無い。

むしろ、部分的に真実を告げるのは詐欺師の常套手段である。

ナユタもよくやる。(ゲス並感)

 

 

「仮説の範囲で、原因として考えられるケースってあったり?」

「蛇使い座のスタープリンセスが、私達の知らないところでイマジネーションを分け与えていたのでしょうか……? 彼女がそれを良しとするのならば、そもそも意見の対立など起こらなかったとは思いますけれど……」

 

これ以上話しても、この件に関して情報は無さそうである。

ナユタは礼を述べつつ、話題を打ち切った。

何をどこまで信じて良いのかという情報の精査が割と面倒だ。

 

 

 

 

何はともあれ。

プリキュア達の当面の目標は、ノットレイダーへの対処だ。

特にガルオウガがまた襲ってきたら困るので、戦力増強に役立つというトゥインクルイマジネーションの発見は急務と言える。

 

各々が胸中を重くしたり軽くしたりしながら。

スターパレスでの答え合わせは、幕を下ろしたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・今回のNG大賞

ナユタ「成功率なんて目安だ! 1%の閃きを99%のガッツで補う者こそが発明王だと、かのエジソンも言っている!」
プルンス「絶対に嘘でプルンス!!」
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