この時のプリキュア民は、ヒーリングアニマルの3人組がズブズブの三角関係になっていくなんて思いもしなかったルン……
「来客とは、珍しいわね」
ユニが寝床に使っている大木へと、訪ねてくる珍客が居た。
クラゲ型異星人の、プルンスだ。
多脚の一つに紙箱をぶらさげており、おそらくプルンスタードーナツを手土産に持ってきたと思われる。
11月の夜風は身体に堪えるはずだが、着衣の文化が無さそうなプルンスは寒さは平気なのだろうか。
とりあえず、二人でドーナツを食べつつ。
また腕を上げたわね、なんて密かに思いながら、ユニはプルンスの言葉を待った。
……無言のまま、二人はドーナツを食べ終えてしまった。
いや、何か喋れよ。
「……何か、話があって来たんじゃないニャン?」
何か言いたいことがあって、わざわざ山中のユニを探し当てたのでは?
住所不定のユニを探すのには、それなりに手間暇をかけているはずだ。
なのに、なぜプルンスは黙っているというのか。
「プリンセス達との話し合いの時から、ずっと心配だったでプルンス。でも……どんな言葉をかけていいか、結局分からなかったでプルンス」
「何よそれ……」
プルンスの正直な言葉に、ユニは若干の呆れを見せながら返した。
確かにユニは、惑星レインボーが復興できないと知って、気落ちしている自覚はあった。
もちろん、ユニの落胆が仲間たちに気づかれているというのも、理解していた。
ただ、仲間たちはユニの内面へと踏み込んでは来なかった。
あの時に決断の口火を切った星奈ひかるは謝ってきたし、ユニも謝罪を受け入れはしたけれども。
「考えれば考えるほど、ユニや惑星レインボーのためにプルンスが出来ることが、何もないって分かって……本当に、かけられる言葉が無かったでプルンス」
考えてみれば、プルンスがユニに謝るのも筋違いだ。
プルンスも儀式に生贄が必要だなんて知らなかったのだし、プルンスが謝罪してもユニが困るだけだろう。
そこまで分かっているから、プルンスも安易に謝罪の言葉を口にしないに違いない。
自分が楽になるためだけの「ごめん」がユニを困らせるだけだと、理解しているというわけだ。
「ああ……それでドーナツで実弾攻撃に来た訳ね。ごちそう様ニャン」
まぁまぁニャン、なんて普段のユニなら言うところなのだが。
プルンスの真剣な語り口を前に、ユニも少しばかり気を遣ってしまっていた。
でもまぁ、確かにプルンスの言い分ももっともだ。
アイワーンやナユタのように特殊技能を持っている者ならば、惑星レインボーの石像の研究ができる。
しかし、プルンスが惑星レインボーの石像たちのために出来ることなど何もない。
「一応言っておくけれど、アイワーンやナユタと比べちゃダメよ。12星座のペンを改造できる程の超天才科学者なんて、宇宙中を探しても他に居るとは思えないわ」
ユニは宇宙快盗やアイドル営業として宇宙の各地を回りながら見分を広めたものだが、見てきた中でもアイワーン達のセンスは図抜けている。
まず、大抵の人間はプリンセスの力を改造するなんて発想自体に至らない。
……と、そこまで考えてからユニは気付いた。
もしかして、プリンセスの力を改造する発想に至らないように、イマジネーション操作の影響が働いているのでは……?
「ひょっとして……アイワーンがペンを改造する発想を持てたのって、ダークネストの影響を受けていたからかしら?」
「……ありそうだと思ってしまったでプルンス。でもナユタもペンの改造を思いついていたのを踏まえたら、たぶん関係ないでプルンス」
それもそうか、とユニは納得した。
まぁ、あんまりプリンセス達を疑い過ぎるのも良くないよね……。
一度は目の前に餌をぶら下げられただけあって、ユニとしてはあまり心証の良い相手ではないが、決して邪悪な存在では無い。
というか、スターパレスに代々仕える一族のプルンスが居る前で、堂々とプリンセス達を疑うのも宜しくない。
「何も出来ることが無いのは、私だって同じよ」
ユニは、我ながら湿っぽい声が出たものだと思った。
神妙な顔をして聞いているプルンスへと、ユニは続きを語った。
少し前までは、宇宙快盗として飛び回って、12星座のペンを集めていて。
それが、惑星レインボーの復興のためになると信じていた。
だが、今のユニには故郷の石像たちにしてやれる事は何もない。
アイワーン達に頑張ってもらうとしても、特にユニに出来ることは何もないのだ。
「惑星レインボーから流出した貴金属の回収は、やめたでプルンス?」
「それは、盗む必要は無くなったのよね。和解した後にドラムスに聞いたんだけど、盗品と分かっていて買った人には、正当な所有権を持つ人間が交渉すれば基本的に返して貰えるらしいわ」
どうも、ひかる達が住む国にも似たような法があるらしいが。
盗品を盗品だと知りながら買った人間に対して、本来の所有者が返還請求をした場合、原則的に返却義務が発生するそうだ。
ゼニー星は星空連合には所属していないが、慣習的に星空連合の法体系を元に動く人が多いらしい。
なので、確実にとは言えないが、惑星レインボーを復活させた後でオリーフィオが直接交渉すれば基本的に盗品は返して貰えるとのこと。
「だから、当面の目標はトゥインクルイマジネーションを見つけることなんだけど……今ひとつ、捗らないのよね」
「アイワーンを疑っているからじゃなさそうでプルンスなぁ……」
やっぱり分かるものなんだな、なんてユニは思った。
ユニが不安に思っている内容を、プルンスは的確に理解できているようだった。
他のメンバーにも、悟られてしまっているのだろうか。
「アイワーン達の頭脳はホンモノだと思うけど、やっぱり不安にはなるわよ。故郷の星一つなんていう重いものがかかっているのに……応援しようにも、当の私にできることが何一つ無いんだもの」
いっそアイワーンがもっと嫌な奴だったら恨んで楽になったかもしれないわね、なんてユニは力なく笑った。
自分で言っていて、思った。
アイワーンへの恨みは既に半分も残っていないな、と。
地球にきてから、ロケットの面々や寮爺と一緒に平和に暮らすアイワーンは……本当に丸くなったように見えた。
環境は人を変える、というヤツだろう。
もはやユニは、アイワーンへと恨み言を聞かせることなんて無さそうだ。
と、ここまで考えてからユニは気付いた。
12星座のプリンセス達から真実を聞いて、プルンスだって不安を抱えているのではないか?
代々仕えてきたスターパレスの主たちの言葉を聞いて、プルンスは一体どう思ったのか。
なんとなく、ユニは聞いてみたいと思った。
だが、その前にプルンスが口を開いた。
「今できることが無いなら、もっと先の……未来のことを考えるでプルンス。惑星レインボーが復興したら、やりたいことは無いでプルンス?」
……
そんなこと、考えたこともなかった。
今まで、失ったものを取り戻すことばかり考えてきたからだ。
すぐに我に返ったが。
もしかして間抜け面を晒してしまったかな、なんて思いながら、いつものすまし顔を作って。
ユニは改めて考えてみた。
惑星レインボーが復興したあとも、ユニの人生は続くのだ。
復興後の未来に、ユニは一体何をするのか。何をしたいのか。
ブルーキャットとして宇宙快盗をやる選択肢は無い。
バケニャーンも、潜入する場所が無いので御役御免だ。
キュアコスモにしても、ノットレイダーとの戦いが終われば変身する機会は減る。
ただのレインボー星人のユニとして、レインボー鉱石の細工品でも作りながらのんびり暮らすか?
――プルンスは、苦しい時も辛い時も、マオたんの歌に元気をもらったでプルンス!
宇宙アイドルのマオを必要としてくれている相手の顔が、頭に浮かんだ。
「……宇宙アイドル業を再開するのも、良いかもしれないわね」
「本当でプルンス!? ライブには絶対に行くでプルンス!!」
喜んでくれているプルンスの姿を目の当たりにして。
ユニは、何だか心が軽くなったように思えた。
過去への決着をつけることばかり考えてきた視界が、明るくなった気がした。
これも……視点が変われば世界が変わる、というヤツなのだろうか。
「未来の話をするのも……たまには悪くないニャン」
ユニの身体から、暖かな光が溢れ出した。
おそらく、ひかる達の言っていたトゥインクルイマジネーションの発現に伴う発光現象だろう。
最初は金色だった光が、徐々に青く変わり、やがて身体の中へと消えていった。
「おめでとうでプルンス!」
「……ありがとニャン」
プルンスは、ユニの覚醒へと賛辞を述べているのだろう。
一方のユニは……返礼に含んだ意味は、それだけでは無かった。
ユニにとって、トゥインクルイマジネーションは副産物だ。
本当にユニが嬉しいと思ったのは……。
「まぁ、ひかる達の星では『来年の事を言えば鬼が笑う』なんて言うらしいでプルンスが」
「ニャン!?」
思わず、周囲を見回してしまったユニであった……。
鬼と言われて、まず連想したのが……ノットレイダーのNo2であったガルオウガという巨漢の姿だったのだ。
もっとも、辺りにそれらしい影は無かったが。
まさか、そんなに都合よくガルオウガさんが現れるなんて事は無かったようだ。
「ガルオウガ、本当に地球に来ていたりしないわよね……?」
プルンスの最後の余計な一言のせいで、ビクビクしながら野宿する羽目になったユニであった……。
『あくいのオトモダチ』
第21話:どんな、気持ちですか
「そういえばさ。ひかるが個人面談みたいな形でナユタに相談したって言ってたけど。まどかは同じように相談に行かないの?」
学校帰りに、ララのロケットへと続く坂道の途中で。
香久矢まどかと一緒に歩いている天宮えれなが、何でもないように質問をかけてきた。
まぁあたしもトゥインクルイマジネーションはまだなんだけどね、なんて言いながら、いつもの明るい笑顔で聞いてきたのだ。
その内容は……正直に言って、まどか自身も候補として考えていた案だった。
だがしかし、実行したくない理由がある作戦でもあった。
「春日部さんに相談したくない理由を言う分には問題は無いのですが、聞いたら……えれなも、春日部さんに相談しにくくなりますよ?」
それでも本当に聞きたいですか、と香久矢まどかは一応確認をいれた。
ますます気になっちゃった、なんて天宮えれなは返した。
元々、えれなもナユタへと相談する気はあまり無かったのだろうか。
もしくは、まどかの話を聞いても聞かなくても、どのみちナユタを頼るつもりなのか。
「おそらく、わたくし達がひかると同じように相談を持ち掛ければ、春日部さんは真摯に応じてくれると思います。ですが……それはおそらく、春日部さん自身にとっては、不本意なことだと思うんです」
えれながプリキュアになる前の話ですが、と前置きしつつ。
まどかは、ロケットの修理の際にララが手伝いを拒んだ時のことを話し始めた。
5月の夜空に囲まれながら大人のミルクコーヒーを啜っていたナユタとララの姿を、頭の中に思い起こして。
――宇宙のためだったら、自分の意地を捨てなきゃいけないか?
あの時のナユタの言葉が、隠れて聞いていた香久矢まどかの耳に残っていた。
宇宙を救うためとはいえ、ララの意地を曲げさせることを良しとしなかった春日部ナユタならば。
まどかが相談すれば全力で応えてくれるとは思うものの……おそらくナユタ自身は、宇宙を救うために香久矢まどかの心持ちを変えさせることに、あまり乗り気ではないだろう。
――ドギー君たちケンネル星人が、ノットレイダーに母星を滅ぼされることを承知のうえで『聖なる骨』を手放さないという凄絶な決断をするというのなら、それを尊重すべきだと思う
ケンネル星の時だって、そうだった。
ナユタはケンネル星人の意思をできるだけ尊重する言い方をしていた。
若干脅迫めいていたものの、相手に強制はしなかったし、あくまでケンネル星人に判断させる方針を崩さなかった。
まぁ、意地同士が本当に対立したら戦って片方を折るしかない、とも言っていたことはあるが……それは本当に最終手段なのだろう。
「なんだか……矛盾してるよね。他の人には『やりたくない事はするな』って言うのに、ナユタ自身は嫌でも真面目に相談に乗ってくれるなんてさ」
えれなは、苦笑いを見せつつ率直な感想を口に出した。
その口ぶりには、特に矛盾を非難するような意図は感じられなかった。
春日部ナユタが矛盾を飲み込んでいるのが誰のためなのか、理解しているのだろう。
「わたくしも、そう思います。そんな春日部さんだからこそ、あの人が不本意に思うことをさせたくないんです」
「あんなに世渡り上手そうな性格してるのに、妙なところで不器用っていうか……律儀だよね」
なんでも見通しているかのように軽薄に笑う割に、根本的な部分で真面目というか。
あの胡散臭い笑顔も、人を丸め込むのに特化したような話術も、どこか仮面的だ。
根は善良なんだろうな、と思わせる何かが言葉や行動の端々に感じられるのである。
「やっぱり、トゥインクルイマジネーションは自力で見つけなきゃダメかぁ。強いイマジネーションって、本当に何なんだろうね……」
「そんな想像力が、わたくしの中にあるのでしょうか……」
えれなと同じ疑問を、先日まどかも漏らしたことがあった。
ひかるが、未知への興味を自身の本質だと理解したように。
また、ララが自己への自信を持つことで覚醒したように。
香久矢まどかや天宮えれなにも、そんな目覚めのタイミングがあるのだろうか。
「小さい頃から、わたくしは父の教えに従って生きてきました」
弓道、ピアノ、護身術、その他諸々。
生徒会長になったのだって、父親の指示があってこその話だった。
ひかるに手を引かれて一緒に買い食いに行くまでは、まどかは観星町の商店街に足を踏み入れたことすら無かった。
「自分で選んだと思ったプリキュアも、プリンセス達の想像力操作の影響によるものでした」
ララ達に誘われて、プリキュアになれた時は嬉しかった。
フワを守りたいと思ったし、父親への秘密を持ったことも何だか楽しいと思えた。
だが……妖精フワは、そういう印象を知的生命体へ与えるように設定された生物だった。
「本当は、わたくしは……何一つ、自分の想像力で描いてこなかったのかもしれません」
なお、正史では「フワを守りたい」と思ったのは自分自身で決めたことだ、と自覚したのを切っ掛けに香久矢まどかはトゥインクルイマジネーションを発現しているのだが……。
それが可能だったのは、プリンセス達によるイマジネーション操作を、正史の香久矢まどかが知らなかったからである。
誰かさんのせいで歴史がかなり狂ってしまっている今回の世界では、プリキュアの面々が想像力操作を知ってしまっているために、「フワを守りたい」という思いが覚醒の切っ掛けに成りえないのだ。
そう考えると、正史でプリンセス達が情報を絞っていたのは、合理性を突き詰めた故の判断だったと言えるのかもしれない。
プリンセス達はRTA走者だった……?(実況者並感)
「あたしも、今回ばっかりは行き詰まってるよ。参っちゃうよね……」
弱気な天宮えれなを、意外に思いつつ。
まどかは、山道を歩いた。
もう少しで、ララのロケットが見えてくるはずだ。
だが、しかし。
「ようやく見つけたぞ、プリキュア!!」
「「スターカラーペンダント! カラーチャージ!」」
……山道に、ガルオウガが現れた!
ペンの探知が出来ない都合上、おそらく山の中を闇雲に歩き回って捜索していたのだろう……。
二人は迷わず変身して、ガルオウガを迎え撃った。
分かり切っていたことだが、ガルオウガは強かった。
セレーネとしては、戦いの場を少しずつララのロケットへ近づけることで、増援を期待する方針であったのだが……。
瞬間移動を駆使して襲い来るガルオウガは、機動力においてプリキュアの遥か上をいく存在であるため、戦場の移動など許してくれるはずもなかった。
しかも例によって2メートルを超える巨体から拳を繰り出してくる。
分かりやすく言うと、ワープできるゴリラである。弱いわけがない。
はっきり言って、殺されないようにするだけでも精一杯だった。
何とか光の矢を放って牽制してみるものの、瞬間移動を使うまでも無く腕力で矢が消し飛ばされてしまった。
たびたび近接戦闘を仕掛けているソレイユも、相当辛そうである。
ガルオウガを狙うと見せかけて、セレーネは光の矢を空へと放とうとした。
敵を倒すためではなく、味方を呼び寄せるための一矢だ。
だが、そんなセレーネの考えを見通したように、ガルオウガが横殴りの一撃でセレーネの行動を妨害した。
セレーネは轟音と共に殴り飛ばされて、山中の木々へと叩きつけられた。
ダウンしたセレーネの隙をカバーするために、ソレイユが果敢にガルオウガへと襲い掛かった。
「自らの保身にばかり走っている貴様らが、ダークネスト様にすべてを捧げて力を得た私に敵う道理など無い!」
かつて自身の星を守るために闘ってきたガルオウガは、力及ばずに星を守れなかった……と聞いたことがある。
そして今は、ダークネストに力を貰った代償として、ダークネストのために働いている。
星を守る戦士だったはずのガルオウガが、他の星を征服するために拳をふるうことに、何も思うところが無いはずがない。
文字通り自分の意思を殺す代わりに、ガルオウガは力を得たのだ。
香久矢まどか自身よりも辛そうだ、と思った。
父親の指示に従って生きてきて、自分の意思が何なのか分からない香久矢まどか。
自分の意思にそぐわないことをしてでも、力を手に入れようとしたガルオウガ。
その両者を、セレーネは比べてしまっていた。
「……どんな、気持ちですか。自身の心を犠牲に力を貰って、その先に貴方は……どんな幸せを掴み取りましたか」
膝をつきながら。
セレーネの心から、問いが零れ落ちた。
何をしたいのか分かっていても、その心を自ら折るのは……とても、辛いことなのではないか。
対して、ガルオウガは……ほんの少しだけ、苛立ちを見せながら答えた。
「愚問だな。その先など無い。心など要らぬと、ダークネスト様も仰っていた!」
――まどかちゃんは、どう思った? 異星人やスペースオペラな事情を聞いて、楽しかったり、ワクワクしたりしなかった?
忘れられない声が聞こえた気がした。
ガルオウガが殺意を込めて振るった拳を……セレーネは、両手で受け止めた。
踵で地面を削って。
セレーネは、重すぎる一撃を受け切った。
「ガルオウガ……。わたくしと貴方は、似ているところがあると思っていました」
でも、全然違った。
父親の言う通りに生きてきた香久矢まどかは。
ダークネストの言う通りに動き続けるだけのガルオウガと、決定的に違う点があった。
「けれども! わたくしが大好きになった人は……わたくしの心を、大切にしてくれました! 貴方やダークネストとは、全然違います!!」
――わたくしは、春日部さんが仲間に誘ってくれて、嬉しく思いました。そんな貴女を、大切に思っています。
そうだ。
何も自分で選んでこなかったなんて、大嘘だ。
とっくに、香久矢まどかは選んでいた。
――わたくしは……春日部さんと、プリキュアをやりたいです。
惑星レインボーの惨状を見るだけで参ってしまう程に心の弱さを抱えているくせに、強がって不敵に笑う姿が脳裏に浮かんだ。
まどかの想像もできないような重石を背負ってしまっている、あの小さな背中を。
支えてやりたいと思ってしまったのは、確かに香久矢まどかの想像力で選んだ未来だった。
一緒にプリキュアをやるという希望は叶わなかったけれども。
大切だと思った気持ちに、嘘など無い!
「その光は、まさか……!?」
ガルオウガの顔が、驚愕に染まった。
いつの間にか、セレーネの身体からは光が溢れ出していた。
ひかる達に聞いた、トゥインクルイマジネーションの情報と一致する現象だ。
不思議と、セレーネは力の使い方が分かった。
初めて変身したときと同じ感覚だ。
これも12星座のプリンセス達の仕込みかもしれない、なんて思いつつ……もはやセレーネに迷いは無かった。
「でりゃぁっ!!」
「ぐおおっ!?」
驚いてしまっていたガルオウガに対して、ソレイユが意地を見せた。
ハイキックで、ガルオウガの側頭部へとクリーンヒットをかましたのである。
さすがのガルオウガといえど、頭部への強打をモロに食らっては、ノーダメージでは居られない。
「プリキュア・セレーネアローっ!!」
一瞬の隙を逃さずに。
セレーネは、一点を狙い撃った。
ガルオウガの左手首に備わっている腕輪を、目にもとまらぬ速さで打ち砕いたのだ。
先日交戦したときに、ダークネストから受け取った力を貯めておく機能が腕輪にあることは把握していたため、弱点だと目していたのである。
腕輪を砕かれて悔しそうな顔をしているガルオウガは……もはや、継戦は困難だろう。
「自分の心を殺している、なんていうのは……本当はこんなことはしたくない、と言っているのと同じです」
セレーネは……ガルオウガの怒りの本質が見えた気がした。
ガルオウガが、本心では侵略行為なんて望んでいないのだとすれば。
――効かぬな! 自分を捨てる覚悟もない者の技などッ!
――失われた命にも、守り切れない力にも、意味も価値も無い! 守るなどと軽々しく口にするなッ!!
ガルオウガは侵略者でありながら、「今」を守る者へ期待しているのだ。
母星を守り切れなかった自身へと怒りを、プリキュア達の不甲斐なさへの怒りに変えている。
矛盾している、とセレーネは思った。
それでも、どちらもガルオウガの顔なのだと納得できた。
もっとも……それは、セレーネのイマジネーションで描いた推測でしかない。
だから、セレーネは聞きたいと思った。
ガルオウガ自身の、口から。
「力は、どこまでいっても手段です。ガルオウガ……わたくし達の不甲斐なさへの、貴方の怒りの源は何ですか?」
「私は……!」
……言い淀んだガルオウガの、言葉の先を待たずに。
突如として出現したワームホールが、ガルオウガを足元から飲み込んだ。
ダークネストの意思、だろうか。
静寂の戻った星空湖の湖畔で。
二人のプリキュアは……しばしの間、立ち尽くしたのだった。
・今回のNG大賞
スターパレスRTA同好会
「プリキュア達にイマジネーション操作の情報を与えると香久矢まどかの覚醒イベントで詰むので、情報は与えないチャートが最安定です」
「……ファッ!? なんかバグキャラが湧いてきてチャートが崩壊したんですけど!?」
「この宇宙を一度リセットして再走すべきだと我は思うぞ!」