「今更な話なんだけどさ。そもそもノットレイダーの本拠地なんて分からなくても、ダークネストに会う手段がある……って言ったら、皆どうする?」
クルー一同が集まった、ロケットの談話室で。
いつになく真面目な顔で、ナユタは腹の内に隠していた作戦を提示していた。
正直に言って、言うかどうか迷っていた案件だった。
なんかんだで星奈ひかる達ならばダークネストの凶行を阻止できるだろうというのは思っていたので、最終決戦に関して口を挟む予定は無かったのだ。
だが、一つの懸念がナユタを迷わせた。
正史の星奈ひかる達は、フワを生贄に捧げる儀式を行ってしまった可能性が高いのだ。
儀式を行ったということは、トゥインクルイマジネーションを5つ揃えただけではダークネストには勝てなかったわけで、つまり今の戦力でも勝てないケースは有り得る。
ナユタとしても、なるべく身内を犠牲にする儀式なんて実施したくないところだった。
そして……この時代の仲間達と共に生きていくと決めた春日部ナユタは、このネタは出し惜しむべきではないと判断を改めた。
目を丸くして驚いている仲間達は、おそらく手段の詳細を話して欲しいのだろう。
ナユタは、グーテン星で天宮えれなへと話した内容を、もう一度全員へと説明しなおした。
ノットレイダー側には、十中八九トゥインクルイマジネーションの現在地を把握する手段があるという件である。
「ということはさ……こっちがスターパレスにトゥインクルイマジネーションを揃えたら、その時点でノットレイダー側は現存戦力による総攻撃しか手が無いはずなんだよね」
「どういうことなの? 私たちは、儀式はしない方針だったはずニャン」
儀式を行えば、ダークネストを倒すための力が手に入るという話ではあったが、プリキュア達は既にそれを否定している。
生贄としてフワが消滅するという事実が明らかになってしまった時点で、ひかる達は儀式を拒否したはずだ。
断腸の思いで儀式を諦めたユニとしては、釈然としないものを感じるのは当然だろう。
「わたくし達に儀式をするつもりが無くても、それを向こうが知らなければ、ダークネストを誘い出すブラフとして使えるということですね」
「そっか。あたしたちが実際に儀式をするかどうかは、この場合は関係ないんだね」
実際ノットレイダー側は、プリキュアが儀式をしない方針を固めていることを知らないだろうし。
たとえ知っていても、信じる理由が無い。
なので、儀式の準備を整えてしまえば、ノットレイダー側に選択肢はないという訳だ。
「ってことは、今から私達でスターパレスに皆で行くの?」
「それでも良いんだけどさー。せっかくこっちでタイミングを選べるんだから、何かしらの準備を仕掛けていきたいなー?」
「星空連合に報告して、増援に来てもらいますか?」
ナユタも、星空連合に協力を依頼することは考えていた。
事実上の最終決戦になるだろうし、戦力を出し惜しむ意味もない。
総力戦ともなればノットレイダーの戦闘員だけでも凄まじい数になりそうなので、星空連合の力は借りたいところだ。
「ひかるが記憶喪失になった時に少し聞いた感じだと、星空連合に協力を求めると色々面倒なんじゃなかったっけ……?」
まぁあのトッパー代表なら、プリキュア側が見返りを提示できなくても、手を貸してくれそうな気はするが。
それでも、星空連合という組織そのものに借りを作るのは、後々に面倒を招き寄せることは有り得る。
星空連合からの戦死者や負傷者が増えれば増えるほど、救援を要請したプリキュアに対する心象は悪くなるだろうし。
トッパー代表が戦死したりすると、特に面倒に拍車がかかる。
その後釜までもがプリキュアに対して好意的な人物とは、限らないのだ。
「視点を変えれば世界が変わる。この間カッパードを捕獲したときに、ノットレイダーのパレス襲撃計画の日時を聞き出したことにしよう」(ゲス並感)
「良い案だと思うわ。それなら、借りを作るのは私達じゃなくてスタープリンセスになるニャン」
「春日部さんの、そういう悪知恵が次々に出てくるところ……凄いって思います」
「オヨ……。さらっと過去を捏造しているルン……。こうやって、嘘の歴史は作られていくルン……」
なお、カッパードのせいにする案の良いところは、ノットレイダーが実際に来なかった場合でもプリキュアの株が下がらない点だ。
カッパードを尋問して聞き出したという体で星空連合に情報を伝えれば、万が一ノットレイダーが現場に現れなかった場合でも「カッパードが出任せを言っていた」という結論に至るだけなので、プリキュア達の株も下がらずに済む。
ナユタとしては十中八九ノットレイダーを誘き寄せられると考えているが、一応この作戦の結果は確定ではないのだ。
「ナユタちゃん、あんまり味方を騙すのは良くないと思うけど……?」
「でもこの作戦を採用するなら、戦後にカッパードの罪に少しは酌量が付くかもよー? ひかるちゃん、カッパードのことは助けたいっしょー?」
「うっ……! そう言われると……?」
「ひかるの迷いに付け入るのに、ためらいが無さすぎて怖い」
一歩後ずさりながら、えれなが引き気味なツッコミを繰り出していたりして。
だが、レスバル星で話し合ったカッパードに少なからず情を持ってしまっている星奈ひかるは、その名前を出されると弱いようだった。
キラやば脳だなんて言われて腹が立ったのも本当だろうが、分かり合えるかもしれないと感じたのも本当なのだろう。
そんなこんなで。
ノットレイダーによるパレス襲撃計画は、次の日曜日の午前9時ということにされたのであった。
各所への事前連絡はララが担当する模様。
ダークネスト本人ですら知らないうちに襲撃計画の日時が決まってしまったのは、何かがおかしい気もするが……。
「みんなで新しい未来を創っていきたいんだ、って言ったっしょー?」
「さっきナユタが創ったのは、新しい未来じゃなくて、新しい過去だよ!!」
それもこれも、襲撃計画をプリキュアに話してしまったカッパードが悪いのである。(冤罪)
『あくいのオトモダチ』
第24話:お前たちも、闇に沈め!
そんなこんなで、当日に寝坊しそうになった星奈ひかるがギリギリまで現場に現れないというトラブルを挟みつつ。
プリキュア一同はフワープを駆使しつつ、ロケットに乗ってスターパレスを訪れたわけだが。
いつもの12人のスタープリンセスたちが、五芒星の影が入った瞳を輝かせてプリキュアを招き入れてくれた。
どういう訳だかスタープリンセスたちは、それぞれ喜びと驚きを見せている。
何故だか、いつもよりプリキュア御一行が歓迎されているような気が……?
「よくぞ来てくれました!」
「儀式を行う覚悟が決まったのですね!」
んん……?
もしや、これはスターパレスに連絡が行き届いていないのでは?
ナユタ達は連絡担当者のサマーン星人へと視線を集めた。
「~♪」
ララは、下手クソな口笛を吹いて誤魔化そうとしている!
下手というか、風を切る音しか出ていない!
オヨルンお前……スターパレスへの連絡を忘れたな??
一応ララを問い詰めて、宇宙星空連合へ連絡を入れたことだけは確認したナユタであった……。
できれば、スタープリンセス達とも情報共有をした方が良いには違いない。
だがまぁ、すぐにノットレイダーの大群が来てしまうわけで。
そんなに悠長に説明をしている余裕はなさそうだ。
「もしもーし。ちょっと事前に確認し忘れたんだけどさ。スターパレスって、ワープで侵入してくる敵への対抗策ってございますー?」
「ええ。スターパレスの周囲に結界を張っているので、フワ以外の力でワームホールを開くことはできません」
つまり、敵はスターパレスに直接乗り込んでくるのではなく、付近の宇宙空間に現れてから襲ってくるということだ。
直接ワープでスターパレスに乗り込まれるよりは、数段マシではある。
……敵の数にもよるが、最初からスターパレスを包囲するような陣形で来られると、地味にキツいかもしれない。
なお、結界は最低でも儀式を終えるまでは保つつもりでは居るらしい。
儀式をするのを凄く期待されているようだが、儀式のためにきた訳ではない旨を早めに納得させなければ……。
「オヨ? 本当にノットレイダーが来たルン!」
宇宙空間に囲まれたスターパレスなので、音が聞こえた訳では無いが。
パレスから見て一点の方向に、ワームホールが開いたのが見えた。
中からは、大量のUFOとノットレイダーの戦闘員たちが姿を現した。
「ノットレイ!」
「ノットレイ!」
「ノットレイ!」
「ノットレイ!」
数えるのも億劫になるような数の大群が、巨大な1つのワームホールから現れたのである。
一方向から来てくれて本当に良かった、とナユタは冷静に思った。
そして、ノットレイダーが現れたからには、こちらの味方も姿を隠しておく意味はない訳で。
『待っていたでアール! 大捕り物でアル!!』
宇宙星空連合の宇宙戦艦で結成された大艦隊が、付近の宙域へと短距離ワープにて駆けつけた。
もともと、星空連合のワープ技術でも即座に駆けつけられる範囲内に、大艦隊を待機させていたという訳だった。
さすがは全宇宙を統べる星空連合だけのことはあり、明らかにノットレイダーの軍勢とは桁が違うレベルの大軍隊だった。
ノットレイダーが来る時間と場所をあらかじめ知ったうえで総力戦の準備をしていたのだろうから、納得の一大戦力である。
宇宙の無法者たちを一斉に検挙するチャンスということで、可能な限りの戦力を結集させたのだろう。
「……あそこに見えるの、もしかしてジャイアント星人の宇宙船ニャン?」
「どこかにシャドウ星人も居るのかな……?」
よく見ると、遠くに見える星空連合の艦隊の中には見知った宇宙船が散見された。
スタードロップを違法売却しようとしていた前科を持つ宇宙ハンターの姿を、ユニが発見したのだ。
たしか、奴らは星空警察によって逮捕されたはずだが、おそらく今回は恩赦を対価に星空連合へ協力する形なのだろう。
トッパー代表の本気ぶりが垣間見える顔ぶれである。
星の数ほど居たはずのノットレイダーの軍勢が、瞬く間に捕獲されていく。
正面からぶつかれば、これだけの戦力差があるものかと感嘆させられた。
普段は、守る地域が広いので戦力を分散させている宇宙星空連合だが……その戦力を一点集中したらここまで強いのか。
それに加えて……どうも、ノットレイダー側の士気があまり高くない様子だった。
ひょっとすると、カッパードがレスバル星で抱いた疑念を仲間へ相談してしまったのかもしれない。
「私達も行った方が良いルン……?」
「わたくし達が行っても連携がとれませんし、現状うまくいっている訳ですから、もう少し様子を見ても良いと思います」
なんだか、戦力差がありすぎて、プリキュアの出る幕は無さそうである。
伝説の戦士とは、いったい……。
まぁそれを言い出したら、ミラクルライト抜きではプリキュアが手も足も出ないレベルの猛者が割と居る世界なので、今更かもしれないが。
「なんだか、圧倒的すぎて私達のほうが悪役になった気分かも……」
「そういうフラグやめなされよー? 敵さんが主人公っぽいムーブで状況を打破してきたりしたら笑えないぞー」
ひかるも、何とも言えない顔をしていた。
物事が順調に運びすぎると、逆に不安になる現象である。
不穏なフラグを立てる星奈ひかるに、ナユタは一応釘を刺しておいた。
『高エネルギー反応が接近中です』
「オヨ……?」
「あれは……まさか、ダークネストでしょうか?」
「ダークネストで間違いないニャン!」
……と、ここでロケットのAIからの通信が入った。
一同が周囲を見渡すと、結界の一点で激しい衝突が起こっている様子が見えた。
強大な力を持った何者かが、戦闘員達を尻目に単身でスターパレスへと突入しようとしている!
「「「「「スターカラーペンダント! カラーチャージ!!」」」」」
とっさに変身したプリキュア達の視線の先へと、轟音を立てながら何かが着地した。
隕石でも落ちたのかと思うような衝撃が、スターパレスを揺らした。
舞い上がった土埃の中から姿を見せたのは……片膝を立てた体勢で着地していた、蛇柄の鎧の戦士だった。
ノットレイダーのみんなの危機を打破するため、リーダーであるダークネストが単身で敵地最奥部まで乗り込んできたのだ。
主人公ムーブだ、とプリキュア達は内心思った。
さりげなくナユタはプリキュア達から距離をとって、プルンスと一緒にスタープリンセス達の方へと避難した。
プリンセスたちより一歩退いた位置に立ち、いざとなったらプリンセスたちを肉の盾とするのも厭わない構えである。
トゥインクルイマジネーションの力を解放して身体スペックを底上げしているプリキュア達が全力で戦ったら、巻き添え被害が無いとは言い切れないのが恐ろしいところだ。
「みんなの思い! 重ねるフワー!」
「「「「「プリキュア・スタートゥインクル・イマジネーション!!」」」」」
出会い頭に最大火力を叩きこむプリキュア達の戦意が高すぎる……。
蛇鎧の戦士へと、プリキュア達は容赦のない極太浄化光線を食らわせた。
やったか、なんて心の中で思ったナユタだったが、決して口には出さなかった。
ここでそれを言ったら戦犯ものである。
一方、浄化光線に飲み込まれたかに思われたダークネストは……なんと、身体の前で両腕を交差させながら、光線の中を突っ切る暴挙に出ていた。
蛇鎧が罅割れるのをモノともせずに、ダークネストは浄化光線を正面突破した。
鎧は完全に砕けてしまい、ダークネストの素顔が衆目に晒されていた。
闇夜を思わせる漆黒の長髪に、五芒星の影の入った瞳をギラつかせた女は……誰しもに、スタープリンセス達の姿を連想させた。
「マトリョーシカ戦法……だと……!?」
「驚くポイントが違うでプルンス!?」
驚愕して隙だらけのプリキュア達を、ダークネストは徒手空拳で叩き伏せた。
コスモをブン殴る時だけ妙に殺意が高かったような気がしたが、バケニャーンに裏切られたことを根に持っていたのだろうか……。
地面に転がされた5人のプリキュアを見下ろしながら。
蛇鎧を捨て去った女性……ダークネストは、片手でフワを掴み取った。
「どういう、ことなの……?」
「やはり聞かされていなかったか。我の正体が、へびつかい座のスタープリンセスだという事を」
キュアスターの疑問へと、ダークネストは律儀に答えてくれた。
五芒星の影が入った瞳を見れば、ダークネストとスタープリンセス達の関係を察することぐらいは出来る。
ダークネストは、フワを片手に掴みつつ、ワームホールを開こうとするが……失敗した模様。
一瞬だけ現れたワームホールは、瞬く間に消滅してしまった。
スタープリンセス達が張っているという結界の効力なのだろう。
一方、結界の外で戦っているノットレイダーの戦闘員たちは、明らかに士気が落ちていた。
ノットレイダーの首魁であるダークネストが、実は敵方の後ろ盾であるプリンセス達の同類であったと分かれば、不信感が高まるのも道理だ。
「フワを、離すルン!」
「都合の良いことを言っているが、フワを儀式で消すつもりのお前たちとて、我と同類だ!」
意地悪く笑いながら、ダークネストはプリキュア達を詰った。
善人面をするな、と。
だが……プリキュア達は、ダークネストの前に立ちはだかった。
「友達を犠牲にする儀式なんてしたら、あたしたちは一生、心から笑い合えない!」
「それが、わたくし達自身の意思で決めた答えです!」
「誰かの未来を犠牲にするなんて、まっぴらニャン!」
トゥインクルイマジネーションの輝きを纏い、プリキュア達はダークネストへと殴り掛かった。
ダークネストは、黒い球体のようなエネルギーを投げて、プリキュア達を牽制した。
しかし、プリキュア達は黒い球体を障壁で防いだり矢で撃ち落としたりして、ダークネストへと肉薄した。
ガルオウガのワープ能力はダークネストからの借り物だったはずなので、おそらくダークネストもワープを戦略に組み込んで戦うタイプなのだろうが……。
スターパレスの結界がガンメタにも程がある性能を発揮しているため、ダークネストはワープによる移動が出来ない。
5人のプリキュアによる袋叩きアタックを受けては、流石のダークネストも辛い様子であった。
「誰も犠牲にしない……それは大いに結構だ。だが、お前たちの宇宙が犠牲にしてきたものの行く末が……ノットレイダーだ!」
まぁ言っていること自体には一理ある話だ。
先日AIに税金をかける話をした時に、ナユタが言わなかったネタだった。
可能な限り手広く貧困者を救うなら、課税も給付も条件を細分化していく必要がある。
だが実際問題として条件を細分化すればするほど、制度は人間に扱えない代物になっていくし、どんなに制度を細分化しても救われない者は出てきてしまう。
率直に言ってトッパー代表は人格面で問題があるようには見えなかったが、それでも全宇宙を見れば救済されなかった人々は無数にいるのだろう。
そうした者達が集って出来上がったのが、ノットレイダーという訳だ。
「そうかもしれないルン。でも、アイワーンはユニと良くなれたルン! カッパードもテンジョウもガルオウガも、少しずつでもプリキュアのみんなと理解しあう方に進んでいるルン!!」
アイワーンは、惑星レインボーでキュアコスモに助けられてから、角が取れた。
カッパードも、レスバル星でキュアスターと大論争をして、少しだが心が和解の方向へと流れ始めた。
テンジョウだって、グーテン星では悲しそうにしながらもキュアソレイユへと笑顔を見せてくれようとした。
ガルオウガにしても、戦闘能力こそ高いが、その実として誰よりもプリキュアに期待していることをキュアセレーネによって看破された。
「お前たちがイマジネーションを持ったこと自体が間違いだ! そんな回り道をしなくとも、全てをリセットしてしまえば良い! 一切の矛盾の無い我の宇宙こそが、美しい!」
「私達は、キラやばな未来を創ってみせる! だから、宇宙を消させたりなんてしない!!」
5人がかりで殴り掛かるプリキュアたちの猛攻を、さすがのダークネストも捌ききれない様子だった。
基礎的なスペックならばダークネストの方が上なのだろうが、星座ペンを用いた技を混ぜ込んで攻めるプリキュア達を前に、ダークネストはやや劣勢の様子だ。
隙を見計らって……キュアコスモが灰色のペンを手に取った。
「行くニャン! ネビュラ・レインボースプラッシュ!!」
灰色の浄化光線を、紙一重で回避しつつ。
ダークネストはキュアコスモへと肉薄し、コスモの上半身と下半身を泣き別れにするような勢いで中段蹴りを放った。
とっさにレインボーパフュームを盾にしてガードしたコスモは……致命傷こそ負わなかったが、ダメージは重そうである。
すかさず、ソレイユが炎熱を纏った蹴り技をかまして、カバーに入った。
ソレイユに足止めされているダークネストへと、ミルキーとセレーネが中距離からの援護射撃をかました。
「魚座・スターパンチ!」
十字砲火を食らって足が止まったダークネストの胴に……キュアスターの、渾身の左拳が突き刺さった。
大きく後退したダークネストへと追撃をかける前に、一瞬だけスターは、地に倒れ伏しているコスモへと目をよこした。
すぐに5人技を繰り出すのは無理そうだ、と瞬時に判断しつつ。
「「「「四つの輝きを今、一つに! プリキュア・サザンクロスショット!!」」」」
スター達は、ダークネストへと追撃の光を放った。
スターパレス全体を揺るがすような轟音が、ダークネストを飲み込んだ。
初撃の5人技に比べれば威力は劣るが、それでもダークネストの力を大きく消耗させることは出来たようで。
膝をつくほどではないが、ダークネストも満身創痍といった様子であった。
「ううっ、酷い目にあったニャン……」
ダークネストと睨みあうスター達の中へと、復帰してきたコスモが合流した。
その片手には砕かれたレインボーパフュームの残骸が握られており、ダークネストの攻撃の威力を物語っていた。
パフュームは、ほぼ取っ手の部分しか残っていなかった。
一方、ダークネストは地面に散乱した残骸の中から、鈍い輝きを拾い上げていた。
灰色のペンである。
ネビュラペンを手に取ってみたダークネストは……何かが腑に落ちた顔をした。
「さきほど、『キラやば』な未来と言ったな。ならば、このペンに宿ったイマジネーションの残滓を見せてやろう。お前が創る未来をな」
底意地の悪さを思わせる笑いを零しながら。
ダークネストは、ネビュラペンを握る手に力を込めた。
ペンから瞬く間に漆黒のガスが溢れ出して、スターパレスを包んでいった。
「このガスは、歪んだイマジネーションを伝達するのに都合が良い」
不思議な、感覚だった。
プリキュア達は、確かに自身らがダークネストと睨み合いを続けているという認識を持っている。
それなのに、まったく別の風景を頭の中で同時に見ているのだ。
いわゆる、白昼夢と呼ばれる現象だった。
疑似的な夢の中で……地球とサマーンの代表が握手を交わしている写真を、歴史書の1ページに見た。
そして本の中には、様々な技術が地球へ流れ込んだ経緯が綴られていた。
部屋のカーテンの隙間から外を見ると、おそらく昼間なのに空は黒かった。
辛うじて太陽の大まかな位置は分かるが、青空などという概念は無い。
遠くで誰かが言い争う声が聞こえた。
道端で横になったまま動かない人影が、いくつも見えた。
散見される通行人は、ことごとくマスクを着用して、時折咳をしていた。
悪辣なネビュラガスによって身も心も蝕まれた人々は、もはや限界だった。
「なんですか、この光景は……!?」
「こんなの、嘘ルン! でたらめルン!!」
瞳を揺らしながら。
必死に、プリキュア達は否定の言葉を吐き出した。
こんなものが、地球の未来であってたまるか。
ダークネストによって捏造された、プリキュアたちに嫌がらせをするためだけのイマジネーションだろう、と。
「ならば、このイマジネーションの残滓の持ち主に聞いてみたらどうだ。『キラやば』な未来とやらを知る、お前たちの大切なオトモダチになぁ?」
プリキュア達の視線が、一点に集まった。
ナユタは、思わず一歩あとずさった。
嘘だと言ってよ、とプリキュア達の瞳が語っていた。
縋るような目だった。
春日部ナユタは、その場しのぎの嘘で切り抜けるのが最善だと頭では理解していた。
いつも通りの嘘をついて、軽薄な笑顔で騙し通せば良い、と分かっていた。
そうすれば、優勢なプリキュア達はこのままダークネストを打倒できる。
宇宙は救われて、ハッピーエンド待ったなしだ。
それなのに。
「………………」
ナユタは、何も言う事が出来なかった。
大好きだった祖母と過ごした記憶を、嘘にすることだけは……どうしても、出来なかった。
プリキュア達から、ナユタは目をそらしてしまっていた。
軽薄な笑顔をキープすることも忘れてしまった、春日部ナユタの反応を見て。
プリキュア達は……確信してしまった様子だった。
先程の、ネビュラガスに覆われた地球のイマジネーションが、真実であったということを。
「くっくっく。お前たちも、闇に沈め!」
ダークネストが頭上に、闇の力で塗られた巨大な球体を生み出した。
プリキュア達の身体から、トゥインクルイマジネーションの輝きが失われた。
・今回のNG大賞
フワが人質になってしまった!
マジキチ「フワを解放しろ、ダークネスト! さもないと……儀式のための大事なスターパレスを、爆破して宇宙の藻屑にするぞ!」
プリンセスたち「やめてください!!?」×12