あくいのオトモダチ   作:カードは慎重に選ぶ男

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第4話:大変言いにくいことなんだけどね

ひかるやまどかと一緒に山道を下りながら、ナユタは今後の行動計画について頭の中で考えを整理していた。

現在の時刻は15時。

まだ日もそれなりに高く、5月の日差しは身体に優しい。

 

 

(そういえば、キュアソレイユ……天宮えれなって、どのタイミングで加入するんだろー?)

 

後の総理大臣である香久矢まどかや、宇宙飛行士の星奈ひかるに関しては、ナユタもある程度知識は持っているのだが。

天宮えれなに関しては、全く歴史知識があてにならない存在だった。

そもそも教科書に名前が掲載されるような有名人では無いのだ。

一応、ナユタが生きていた時代にて観星中学校の卒業生に会う機会はあったので、天宮えれなという人物がのちのキュアソレイユとなることは確定していると思いたいところだが、今のところ加入イベントらしきものは無かったように思える。

 

ナユタの与り知らぬところなのだが、実のところとして天宮えれなの加入は、かなり運に頼るところが大きいのだ。

原作の3話&4話の流れをざっくりまとめてみると……。

 

 

フラグ①:偶然ひかララが天宮家の前でケンカを始めたところ、店に居た天宮えれなが仲裁に来てくれる。

フラグ②:後日ララが学校を見学に行き、先日知り合った天宮えれなに目を付けて、バイタルとメンタルに大いに関心を持つ。

フラグ③:ひかララが放課後に天宮家に遊びに行き、えれなの弟妹たちの遊び相手として妖精フワを貸し出してやる選択をする。

 

お気づきだろうか。

既に1番目のフラグが折れてしまって、その後のイベントが全て消滅したのだ。

というか、その1番目のフラグ発生が運頼みにも程があるため、狙っても出来るものではない。

 

流行りのRTA走者なら、迷わず再走を選択する案件である。

残念ながら春日部ナユタは、ゲーム実況者で言うならば「公式HPを読んで登場キャラの概要ぐらいは知っているけれど実質初見プレイ」と同程度か、それより少しマシ程度のプレイヤーなのだ。

おまけにコンティニューなどという便利な要素は影も形もない。

ガバガバプレイになるのも当然だった。

フラグの管理など、出来るはずもない。

それどころか、事故気味に半世紀以上前に来てしまったうえに、元の時代に帰る方法すら無い残念タイムトラベラーなのだ。

 

 

(この間、天宮えれなちゃんの生家に下見に行った感じだと、何の変哲もない花屋って感じだったけどなー)

 

香久矢まどかに関しては、父親から宇宙人絡みの情報が回ってくるうえに、本人も好奇心が旺盛なので黙っていてもララ達の元へ辿り着くのだが……。

天宮えれなに関しては、特に異星人にも宇宙にも縁が無いため、偶然フラグが立った時しかチャンスが無いという訳だ。

 

 

「ナユタちゃん、何か悪巧みしてない……?」

「アタシだって、偶には悪巧み以外のことも考えるんだぞ? ちょっと思ったんだけど、プリキュアって最終的に何人ぐらいまで増やせるんだろー?」

 

そもそも、ひかる達はプリキュアの必要人数に関して、どう思っているのだろう。

後の歴史を知る人間からすれば、プリキュアチームは地球で4人組としてスタートし、後から追加で1人増えるのだと分かっている。

しかし、この時代の人間がプリキュアの必要数を具体的に認識していたら、それはそれで不自然なのである。

宇宙を救う9人の救世主とかみたいに、初めから人数指定があるのならば、話は別だけれども。

 

 

「あまり増やし過ぎるのも、考え物ですね。ララさんの秘密の保持が難しくなっていきますから……」

「私も、香久矢先輩に賛成! プリキュアは今の4人で十分じゃないかな!」

 

ナユタは営業スマイルを維持しつつ、密かに頭を痛めていた。

ひかるもまどかも、プリキュアの人数を増やすのにノリ気ではないらしい。

 

……と、そこまで考えてから、ナユタは気付いた。

ひかるの台詞の中に、聞き逃しちゃいけない言葉があったような気がするのだが?

 

 

「今の、4人……?」

「私と、ララと、ナユタちゃんと、香久矢先輩。4人でしょ?」

 

ナユタは、ひかるの台詞を聞いて頭痛が酷くなった気がした。

それでも顔色には出さずに、飄々と言葉を返した。

 

 

「まどかちゃんは置いておくとして。アタシまでプリキュアに覚醒すると思われてる?」

「「え??」」

 

何言ってんのコイツ、みたいな視線が二人分返ってきた。

え? なにそれ?

ナユタとしては、自分が特に変なことを言ったという認識は毛頭ないのだが……?

 

 

「あれ? ナユタちゃんってプリキュアにならないの?」

「わたくしも、春日部さんは遅かれ早かれプリキュアになるものだと思っていました……」

 

ナユタとて、念のために試せることは試したのだ。

フワを抱きしめながら「キミを守りたいんだ。アタシをプリキュアにしてくれないか?」などと囁いてみたことはあるが、全く何も起こらならなかった。

妖精フワはノットレイダーを倒す鍵となる存在であるため、フワを守りたいというのはナユタ自身の本心でもあるハズなのだが……。

何も考えていないように見えるフワは……純真だからこそ、ナユタの悪どい一面を本能的に察しているのかもしれない。

 

 

「一応、思いつく範囲で試せることは試したけど、上手くいかなかったよ。とりあえず今は保留かなー」

 

ここで、ナユタは少しばかり慎重に言葉を選んだ。

もし「ダメだった」とか「ムリだった」とか「諦めた」とか、その手の言葉を使ったらどうなるか。

高確率で、ひかる達はナユタをフォローして、プリキュアへ変身するルートを模索しようとするだろう。

それは面倒くさいし、変身できたからといって宇宙を救えるかどうかは別問題だ。

そもそも天宮えれなという適任者を知っているナユタからすれば、キュアソレイユを差し置いてナユタ自身が変身するのは、むしろ不安要素でしかない。

 

 

「アタシの笑顔が胡散臭いせいかもねー? 誰か、笑顔が素敵な人は居ないかなー?」

 

なんて しぜんな わだいの ゆうどう なんだ !

なお、ナユタの冗談めかした一言を聞いて……さっと、ひかるが目を逸らした。

オイそこは否定するかフォローしろよ、とナユタは口に出さずに心の中だけでツッコミを入れた。

面倒くさい女である。

 

 

「心当たりは……あるには、ありますね」

「あ、私も多分同じ人を想像してる! それって、『観星中の太陽』って呼ばれてる、天宮先輩のことですよね?」

 

ひかるとまどかの説明によると。

笑顔が太陽のように素敵だと評判の、観星中学の3年生が居るのだと。

というか、まどかのクラスメイトらしい。

 

 

「ですが」

 

ところがどっこい。

まだ太陽も出ている時間帯なのだし、これから天宮えれなの様子見に行くのだろう、と思っていたナユタは出鼻を挫かれる羽目になる。

香久矢まどかが、難色を示したのだ。

確かに天宮さんは生徒の間で人気も高いですし身体能力も高く人望も厚いですが、と前置きしたうえで。

まどかは、少しだけ瞑目して考えつつ、言葉を続けた。

 

 

「それでも。一度も御話をしたことがない天宮さんよりも、わたくしは……春日部さんと、プリキュアをやりたいです」

 

ファッ!?

もはやナユタは、営業スマイルをキープ出来ているのが奇跡的だと思えるレベルで動揺していた。

どうしてそうなった。

 

(まどかちゃんからの予想外の高評価を受けてるのか? でも、まどかちゃんを騙してプリキュアチームに引き込んだのがバレてるアタシが、そこまで好かれてるっていうのは有り得ない気がするんだけどなー??)

 

少なくとも信用はされていないだろう、とナユタは確信していた。

にもかかわらず、プリキュアチームに必要だと判断されているということは?

たぶん、詐術と機械弄りの腕を買われて、替えの効かない人材だと評価されているのだろう。

……それって、別にプリキュアに変身できなくても、仲間として同行すれば問題無いよね?

 

 

「ナユタちゃんは、どう思ってるの?」

「変身できるなら戦うのもアリだけど、ひかるちゃん達と一緒に他の星に行くだけでも楽しそうだし。どうしても変身したいかと言われると、そうでもないかなー」

 

これは一応ナユタの本心である。

地球がネビュラガスで覆われる未来を阻止するという第一目標はあるが、それはそれとして、ひかる達への人物評価は常にストップ高なのだ。

これから宇宙を救う救世主であるという情報まで踏まえれば、猶更であった。

 

 

「う、うーん……」

 

ひかるは、考え込んでしまった。

こういうとき、ひかるなら考えなしに即決しそうなのに。

なかなかに珍しい光景である。

 

 

「星奈さんも、物事を考え込むことなんてあるんですね……」

「ヘイヘーイ! オネーさん達に早くゲロっちゃいなYO! レッツ・ミルキーウェイだルーン!」

「香久矢先輩、私をそんな目で見てたの!? あと、ミルキーウェイを汚い意味で使うのやめようよ!?」

 

ツインテを逆立てながらの、ひかるの猛ツッコミである。

だが、どちらかというと星奈ひかるの本領はマイペースでグイグイ進んで周りを振り回すところな訳で。

やはり、驚くリアクション専門の常識人ポジションが一人は欲しいところである。

どこかに、驚き要員の常識人ポジな逸材って居ないかなぁ。笑顔が素敵な人だとポイントが高いんだけどなぁ。(ステマ感)

ナユタとまどかからの心に刺さる言葉を受けつつ……ひかるは言い難そうに胸中を語った。

 

 

「なんていうか、こういうのって、仲間内のノリが決まっちゃうと後から入りにくくなる空気が出来上がる気がするんだ。だから誘うなら早めが良いかな、とは思うんだけど……」

「ボッチ貴族のひかるちゃんに言われると、なんだか胸が痛くなるなー……」

 

まぁ、ひかるの言い分ももっともだ。

戦隊やプリキュアの追加戦士役の人は、大体気を遣うものなのだ。

既に何か月も仲間をやってきた間柄に入ろうとするときには、独特のノリが出来上がっていたりするものなので。

収録の合間の休憩時間に声優一同でチキンラーメンを啜っている謎のプリキュアチームに遭遇したら、そりゃぁ誰だって困惑する。

興奮しすぎて収録後に走り始めるヤベー奴を目撃したら、「このプリキュアチーム大丈夫かな……?」って思うよね……。

 

ひかるも、どちらかというと人数を増やすのには消極的なスタンスのはずなのだが。

学校で友達無しのボッチ貴族として暮らしてきた経験から、天宮えれなを誘うなら早い方が良いという視点も持っているようだ。

 

 

「……もしかして、わたくしが天宮さんの加入に難色を示したから、気を遣わせてしまいましたか?」

「えっ、そんな、ええっと……。正直、それ思ってました……」

 

ひかるちゃんって遠慮とか出来たんだね、なんてナユタは密かに感嘆していた。

暴走特急のように見えて、自分以外のことは見えているタイプなのかもしれない。

暴走特急といえば勝利のイマジネーション。そういえばライトもひかるも同じ意味だ。スタプリは烈車戦隊だった……??(歪んだイマジネーション)

 

 

「わたくしも、どちらかと言えば春日部さんが良かったという程度ですから、断固反対という訳でもありませんよ?」

 

3人とも、何とも煮え切らないスタンスであった。

ということは?

ここは、声が大きい奴の主張が通るのでは?

一瞬だけデビルスマイルを漏らしたナユタは、すぐさまいつもの営業スマイルへと切り替えた。

 

 

「じゃぁさー、今度一緒にソンリッサに寄ってみない? 足を使うのは営業の基本だよー?」

「そんりっさ?」

「話の流れから察するに、天宮さんの御住いでしょうか?」

 

なんで天宮先輩の家なんて知ってるの、という趣旨の質問が星奈ひかるから聞こえてきた。

まぁ下見に行ったことがあるからなのだが。

実は、花屋の客として行ったわけではないのだ。

 

 

「春日部電機としての仕事で行ったことがあってね。店主のカルロスさんとは面識があるよ」

「え? 春日部電機……??」

「春日部さんが社長を務める電機修理屋ですね。学校の設備も時々見てもらっていますよ」

 

社長といっても、従業員総勢1名の超零細企業である。

一応商売をするときの体裁として会社名を付けているだけだ。

天文台の機器類のメンテナンスの対価に家賃は免除してもらっているナユタだが、それとは別に生活費は必要なので……。

 

 

「えええっ!? ナユタちゃんって社長だったの!? ホントは小学生かと思ってたのに!?」

「人を身長だけで判断したらイカンぜよー?」

 

そんな何でもない会話をしているうちに。

山を下り終えた3人は、観星町の市街地へと無事に帰りついたのだった。

さすがに翌朝に宇宙の旅に出るのに、今日の夕方に新しい仲間をスカウトしたりはしないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あくいのオトモダチ』

第4話:大変言いにくいことなんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆でロケットを修理した、翌朝。

プリキュアチームの面々を乗せて、ロケットは無事に宇宙へと飛び立ったのであった。

発射時の重力負荷や、その後の無重力体験など、一通りのお約束イベントをこなしつつ。

星奈ひかるは、今までにないほどにハイテンションをキープしていた。

宇宙や星座が大好きな星奈ひかるにとって、ロケットでの宇宙旅行なんて、まさに夢のような体験であった。

 

 

「フーっ、ワーっ!」

 

ここで妖精フワの本領発揮である。

ワームホールを生成する能力を持った妖精フワがいるからこそ、プリキュアは12星座のペンを探せるのだ。

宇宙空間に生成されたワームホールを潜り抜けて、ロケットは遥か宇宙の彼方へと辿り着いた。

スターカラーペンダントの輝きから大まかな方角を推定しながら。

星奈ひかる御一行は、無事に新たな惑星へと第一歩を踏み出したのであった。

 

到着した惑星には、辺り一面に生物の骨が転がっている殺風景な光景が広がっていた。

そして、この惑星の住人達は……体長30センチほどの犬のような姿をしていた。

ひかる達が出会った赤色・黄色・緑色の犬のような生物は原住民で、惑星の名前はケンネル星というらしい。

名前は、ドギーとネギーとマギーだそうだ。紛らわしくて覚えづらい。

 

 

「私、星奈ひかる! 地球から来たよ!」

「地球? 誰か知ってるか?」

「まぁどうせ大した星じゃないわよ」

「頭にしか毛が無いオマエらを見れば一目瞭然だ!」

 

どうやら、この星では毛が多いことが優れた人物と見なされる要件らしい。

なんだか原住民たちから風当たりが少し強いなぁ、なんて頭の隅で思いつつ、それでも星奈ひかるはハイテンションだった。

最初は少し行き違いがあっても……知らないものに触れるのが楽しいという気持ちが優っていた。

 

 

「悔しかったら挨拶ぐらいしてみな! この星のやりかたでな!」

「やってみる!」

 

逆立ちしながら吠えるという奇妙な現地の挨拶の再現を目指して奮闘しながら。

楽しみながら、ひかるは……ふと、ララとナユタの様子が気になった。

翻訳機であるペンダントはプリキュアの標準装備だが、変身者でないナユタはペンダントを持っていない。

事前の検証結果として、ペンダント保持者と手を繋いでいれば翻訳機能が適用されると判明していたため、この星に来てからララとナユタはずっと手を繋いだままなのだ。

 

 

「なるほどなるほど。非常に興味深い文化だねー」

「ナユタも、ひかるの次ぐらいに楽しそうルン……」

 

ナユタは、現地人の一人に世間話でもするように話題を振っているようだった。

ララは、ケンネル星人たちのマウンティング気質な様子に若干苦手意識を持っているように思える。

それなのに、ララの横顔は……ナユタの次の言葉に、どこか期待しているように見えた。

ひかるは、何だか胸の奥がモヤモヤした。

 

 

「そうだ! この毛の量とツヤこそ、俺達の誇りだ!」

「ふむ……。この惑星の環境では、毛の多さが生存に有利に働くと見受けるよ。体毛の少ないアタシたちが、この星で注意した方が良い点を、是非ご教授願えるかなー?」

 

ケンネル星人の挨拶を再現するための、逆立ちをしながら。

ひかるは、何となく思った。

ケンネル星人たちの言動の端々から情報を抽出して役立てようとする春日部ナユタのような人を、なんと評すれば良いのだろう。

……想像力が豊かな人、と呼ぶのではないか。

 

 

「教えてやろう! この星では骨の雨が降るんだ! 毛が薄い奴は当たり所が悪いと、大怪我をすることもあるぞ!」

「アッ、骨雲が大きくなってるワ! もうすぐ一雨来そうよ!」

「それは困りましたね。雨宿りできる場所へ案内していただけないでしょうか?」

「降ってきたルン!?」

 

「えっ、ちょっ!? イタタタっ!? 骨の雨、結構痛いっ!? 置いていかないでぇっ!!?」

 

ケンネル星人たちから入手した驚愕の情報から数十秒後。

3センチから20センチ程度の骨が、大量に空から降り始めた!

会話を切り上げて猛ダッシュを始めた他全員に、ひかるは置いていかれるハメになったのであった……。

 

打ち身やら擦過傷やらでボロボロになっている星奈ひかるは、香久矢まどかに手当をしてもらいながら。

視界の端に映る、ナユタとララのコンビから目が離せずにいた。

けらけらと笑いながらケンネル星人たちから根掘り葉掘り情報を引き出しているナユタの姿は、平常運転で。

そんなナユタと片手を繋いで振り回されているララの足取りには……どこか、安心感のようなものが垣間見えて。

何だか、ひかるは自分の胸の奥に、良くない何かが渦巻くのを感じていた。

 

 

「ここは俺達の神殿だ! 見てみろ、あそこでご先祖様の像の頭の上に光っているのが『聖なる骨』さ!」

 

どうも、この神殿でまつられている先祖像の頭部には元々別の装飾品が取り付けられていたそうだ。

だが元の装飾品が壊れてしまい、そこに丁度空から落ちてきた光り輝く骨が、ぴったりとハマったらしい。

原住民たちは、それを『聖なる骨』と呼び、祀っているのだとか。

 

(あれって、プリンセスの力が籠ったカラーペンですよね)

(困ったことになったルン……)

 

まどかとララが、小声で呟き合っていた。

ひかるから見ても、先祖像の頭部に刺さっている『聖なる骨』は12星座のカラーペンに見える。

ノットレイダーから宇宙を救うためには、12星座のペンを集める必要があるのだが……。

ケンネル星人たちが大切にしているものを無理矢理奪うのは良くない。ひかるもそう思った。

 

 

「ふむ……。ドギー君。大変言いにくい事なんだけどね。アレは、ノットレイダーという迷惑な連中を引き寄せる、厄ネタなんだ」

(オヨ……?)

(ナユタちゃん……??)

(なるほど、そういうことですか)

 

プリキュア3人娘は、声に出さずに、それぞれナユタの意図をはかろうとした。

ララとひかるは、ナユタの意図がつかめず、困惑の眼差しをナユタへと向けた。

まどかは……得心顔で、ナユタへと信頼を向けていた。

 

 

「のっとれいだー? なんだそれ?」

「何故か12星座のペンを集めるために様々な惑星に武力侵攻を仕掛けている、危険な存在さ」

「わたくしたちは、ノットレイダーによる犠牲を少しでも減らすために、彼らを誘き寄せてしまうカラーペンを回収しているという訳です」

 

ナユタの言葉をフォローする形で、まどかも口を突っ込み始めた。

ひかるは、思った。

ナユタちゃんと香久矢先輩がタッグで相手を説得し始めるとか、つよすぎる……と。

なおオヨルンはまだ話の流れが見えていない模様。

 

 

「アナタたち、ちょっと怪しいけど、実はアナタたちがノットレイダーなんじゃないのかしら?」

「これは失礼したね。アタシは正規職員じゃないけど、こっちのララは星空連合の正規職員だよ。ちょっと身分証を見せてあげて、ララ」

「オヨ? わ、分かったルン!」

 

ナユタに言われるがままに。

ララは、右手に装備した手袋一体型端末から星空連合の身分証明情報を取り出して、ケンネル星人たちに見せた。

疑ってかかっていたケンネル星人たちだったが、さすがに星空連合の名前と証明を出されては、信じる他ないようだ。

 

3人のケンネル星人たちは、顔を見合わせて相談を始めた。

ひかるは、冷静に思った。

ナユタちゃんの発言に嘘はないけど、まるで星空連合が12星座のペンを集めているみたいなミスリードをわざと誘っているよね……と。

なんだか、胸の奥がチクチクした。

 

 

「念のために言っておくけれど、ドギー君たちがどうしてもカラーペンが大切だということであれば、アタシたちはペンの回収は保留にするつもりだよ」

「オヨっ!?」

「えっ、ナユタちゃん!?」

 

ちょっと待て。

確かに、ケンネル星人の信条を無視してペンを持っていくのは不味いが。

ペンを回収しないで帰ったら、ケンネル星がどうなるかは火を見るより明らかだ。

というか、ノットレイダーから宇宙を救うためには、どの道12星座のペンは全て集めなければならないのでは?

 

 

「よろしいんですか?」

「ドギー君たちケンネル星人が、ノットレイダーに母星を滅ぼされることを承知のうえで『聖なる骨』を手放さないという凄絶な決断をするというのなら、それを尊重すべきだと思う」

 

「そう言われると……」

「星を滅ぼされてまで大事にしたいかと言われると……」

「そうよね……」

 

3人のケンネル星人たちは、頷き合って意見をまとめたようだった。

長老に相談に行ってくると言って姿を消した3人組は、すぐに戻ってきた。

やはり長老も3人組と同意見のようで、母星を滅ぼされてまで『聖なる骨』を持ち続ける気は無いとのこと。

 

天秤座のスターカラーペンを無事に入手して。

帰り道で遭遇したノットレイダーたちを拳で撃退したりしながら。

ひかる達は、無事にロケットへと戻り、ケンネル星を後にしたのであった。

 

 

 

誰も不幸にならず。

誰の笑顔も奪わず。

ケンネル星での冒険は、最高最善のハッピーエンドを迎えたハズだ。

一緒にロケットに乗って帰り道を共にする皆も、特に大きな怪我を負うことも無かったし、12星座のペンも手に入った。

それなのに……ひかるは、どこかに引っかかるものを感じたままだった。

 

 

 

「……ひかる? なんだか元気ないルン?」

「え? ううん。ちょっと、はしゃぎすぎて体力使い果たしちゃったかも? 部屋で休んでるね」

 

足を速めてしまったら何かを感づかれると思って、普段通りの脚運びを心掛けながら。

ひかるは……ロケットの中の個室へと、逃げるように転がり込んだ。

 

個室の窓から見える星空は、少しだけ星奈ひかるへと安らぎを与えてくれた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・今回のNG大賞

キラやば星人「ナユタちゃんが電機修理で生計を立ててるって話だったけど、ララはどうやって地球のお金をゲットしてるの?」
オヨルン星人「ロケット内で無尽蔵に精製できるコスモグミを闇ルートで市場に流しているルン」

全国のスーパーで売られていたコスモグミはオヨルン星人の生活資金源だった……??
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