ディーラ紛いのウィール   作:ムク文鳥

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襲撃

「ぎゃあああああ、助けてください~」

「うええぇぇぇぇん」

「ハ、ハイネさま~、何とかしてください~」

 ハイネが洗濯物を干そうと庭に向かった時、その庭の奥の方から自分を呼ぶ声がした。

 彼らの声の様子から大体何があったのかを悟ったハイネは、洗濯物を入れた籠を物干し台の近くに置くと、声のした方へと足を進める。

 ここはカシュカーンの町外れに建つ一軒の館。館そのものはさほど大きなものではなく、部屋数も多くて十といったところだろう。

 だが敷地そのものはかなり広く、庭の片隅には馬屋と思しき建物がある。馬のちょっとした運動なら充分にこなせるだけの広さがある。

 その庭を歩くことしばらく。そこにはハイネの想像通りの光景が展開されていた。

 よろよろと──彼らにしてみれば必死に──逃げ惑う三体のコボルト。

 そしてそのコボルトたちを追いかけるのは、狼と猪をかけあわせたような生物だった。

 ハイネは溜め息を一つ吐くと、コボルトたちを追い回す狼と猪の合の子のような獣、ボーアへと無警戒に近づいていく。

「はいはい、落ち着きなさいデミオ。この子たちはあなたに危害を加えようとした訳じゃないのよ?」

 ハイネがボーアへと声をかけると、それまでコボルトたちを追い回していたボーアが不意に首を巡らし、ハイネへと一直線に駆け寄って嬉しそうに鼻面を彼女へと擦り付ける。

 本来ボーアは気性の激しい獣なのだが、なぜかハイネの手にかかるとこのようにまるで子犬の様に従順になる。

 これはこのデミオと名付けられたボーアに限らず他の動物でも同様で、おそらくハイネが生まれつき動物たちに親しまれ易い何かを持ち合わせているのだろう。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「助かりましたぁ~」

「ど、どうしていつもボクたちを追いかけるの~?」

 ハイネがデミオの身体を撫ぜて落ち着かせていると、よたよたとコボルトたちも彼女の元へと集まって来た。尤も、デミオのことを警戒して、ちょっぴり及び腰になっているが。

「タロ、ジロ、サブロ。デミオに餌をあげるのは私がやるって言ってるでしょ? あなたたちがデミオに近づくと、いつも追いかけ回されるんだから」

 腰に手をあて、私怒っていますよ、と全身で表現するハイネ。だがその視線は優しくコボルトたちに注がれていた。

 このコボルトたちは、このウィールの館で下働きをしているコボルトたちである。

 その毛並みはよく整えられており、彼らが単なる下働きではなく、主人であるウィールやハイネたちに可愛がれているのがよく分かる。

 本来コボルトは蛮族の一種であり、立派な第二の剣の眷族である。しかし実力第一の蛮族社会において、非力なコボルトは常にそのヒエラルキーの最下層に位置づけられる。

 そんな境遇を嫌がって、彼らのように人族の領域に逃げ込んでくるコボルトは結構存在するようで、人族の街や村でもよく見かけることができる。

 また、コボルトたちは料理上手でも知られており、特に冒険者の店の厨房では包丁を揮う彼らの姿を見ることができるだろう。

 ちなみに、全体に濃灰色で両目の周りに白い斑があるのがタロ(♂)、全身真っ白なのがジロ(♀)、茶色で手足の先が白いのがサブロ(♂)である。

「うぅ~すいません~」

「でもわたしたち、少しでもハイネさまのお役に立ちたくて……」

「ボ、ボクは一度でいいからデミオに乗ってみたくて……それでハイネさまみたいにデミオと仲良くなれたら乗せてくれるかなって……」

 尻尾を丸めてしゅんとするコボルトたち。その姿に元より本気で怒っている訳ではないハイネは、ぽんぽんと三体のコボルトたちの頭を軽く叩いてやる。

「もういいわ。だから洗濯物を干すのを手伝ってね。それが終わったら食事の準備にかかりましょう。お昼過ぎにはウィールも帰って来るはずだから、何か美味しい物をお願いね」

 真紅の髪の少女の言葉に三体のコボルトたちは、主人に誉められた子犬のように尻尾を振って頷いた。

 

 

 

 庭から聞こえてくる賑やかな声に、机に向かっていた執務中だったサンドリーヌは手を休めて午前の柔らかな光の中で緩やかに微笑む。

 眩しい程に溢れた光。部屋を吹き抜ける爽やかな風。そして平穏な日々。

 これらはあの霧の街では、絶対に手に入らないもの。これらを手に入れるために自分は、いや、自分たちはあの蛮族の都を脱出したのだ。

 そんな彼女の様子に、傍らでお茶の準備をしていた真紅の髪の青年が声をかける。

「いかがなさいましたか、サンドリーヌ様?」

「はぁ……あなたといい、ハイネといい、いつまでわたくしを様付けで呼ぶつもりなのかしら? 今のわたくしは霧の街で“宵闇の公主”と呼ばれたサンドリーヌ・カペーではなくてよ?」

 かつての彼女は蛮族が支配する霧の街において、大きな影響力を持った支配者階級の一員であった。

 だがサンドリーヌはその全てを捨てた。支配者の一人としての権力も、広大な屋敷も、多くの奴隷も、莫大な財産も。

 そしてそれらの全てと引き換えにして手にいれたものは、傍らの真紅の髪の青年とその妹、共に霧の街を脱出してきた盟友、そして平穏な日々。もちろん彼女に一切の後悔はない。

「今のわたくしは“霧の街帰り”の英雄の使用人に過ぎない。そしてわたくしはあなたの……クリス・カペーの妻よ。夫が妻を様付けで呼ぶなんておかしいわ」

 霧の街から帰還後も冒険者として活動を続けているウィールは、何かと屋敷を留守にしがちである。その留守を彼に代わって預かっているのがサンドリーヌであった。

 尤も彼女の仕事は頭脳労働専門で、彼女の指示に従って実際に働いているのはクリスやハイネ、それにコボルトたちなのだが。

 また、彼女はウィールが冒険で得た報酬や財宝の管理も任されている。国家レベルで名声を得ているウィールが請け負う仕事の報酬や、冒険で得られる財宝は高額なものが極めて多い。サンドリーヌはその少なくない収入を各種の投資運用などで更に増やし、屋敷の維持費や彼女を始めとした家族や使用人たちの生活費を稼ぎ出しているのだ。

「そうですね……いや、そうだね、サンドリーヌ。」

 自分を見詰めてくすくすと笑うサンドリーヌを抱き寄せながら、クリスは改めてそう言い直した。

「君は僕が守る……どんなことがあっても、僕は君の味方だ。僕なんかじゃ頼りないかもしれないが、これでもウィールに剣を教えてもらっているんだ。そこらの駆け出し冒険者よりは腕は確かなつもりだよ」

 クリスという青年は、一見では美形ではあるものの、どこか頼りなさそうな印象のする青年である。だが、その頼りなさげな印象とは裏腹に、強い意志と傷付いたものを包み込んで癒す優しさを合わせ持つ人物でもあった。

 確かにサンドリーヌには卓越した魔術の才能がある。だがそれにばかり頼るわけにはいかないと考えたクリスは、霧の街から脱出して来てからすぐに、ウィールより剣の手解きを受けていて、今ではちょっとした使い手となっている。おそらくレッサー・オーガぐらいならば互角に闘えるだろう。

「ええ。期待していてよ、クリス。あなたはわたくしの騎士……わたくしだけの騎士なのだから」

 明るい午後の光の中、寄り添った二つの影は互いが互いを命を賭して守ろうと誓い、口付けを交わすのだった。

 

 

 

 部屋の扉をノックすると、中から苛立たしげな声で「入れ」と返事があった。

 その言葉に従って扉を開けると、カシュカーンの守備隊長であるハウル・バルクマンは、この部屋の主へと頭を下げた。

「ハウル・バルクマン、ダーレスブルグよりただいま戻りました、コバール執政官殿」

 ハウルの挨拶に、この部屋の主にして現カシュカーンの執政官であるジェイムズ・コバールは、目を通していた書類より顔を上げてハウルの方を見やる。

「ふん、いい御身分だな、バルクマン卿。いくら姫様に呼ばれたからといって、この様な時間に戻ってくるとは、守備隊長としての自覚があるのかね? 卿の不在の間に蛮族どもの襲撃があったらどうするつもりだ?」

 この様な時間とジェイムズは言うが、太陽が頂点に差し掛かるまではまだかなりの時間があり、これは単なるジェイムズの言いがかりに過ぎない。

「は、申し訳ございません。ですが、カシュカーン守備隊は常に鍛えてあります。自分が不在だとて、決して蛮族の侵攻を許したりは致しません」

 だがハウルは、ジェイムズの言いがかりにも真面目に返答を返す。その態度にジェイムズは、更に苛立たしそうに顔を顰める。

 誰かにカシュカーンで有名な人物はと聞けば、おそらく誰もがハウル・バルクマンの名前を上げるだろう。

 しかしハウルの身分は、単なる守備隊長に過ぎない。実際のカシュカーンの統治者は、ダーレスブルグ公国より任命された執政官ジェイムズ・コバールなのである。

 約二十年前、国の安全が確保されるに従って増えてきた人口を収めるため、本国のあるテラスティア大陸とカシュカーンのあるレーゼルドーン大陸の間を繋ぐ橋が開放された。それ以来、ダーレスブルグ公国は二つの派閥に別れたといっていいだろう。

 橋が開放され積極的に開拓に出ようとする「開放派」と、あくまで門を閉ざして蛮族に備えるべきという「保守派」がそれである。

 両派閥の意見の合致は未だにみられていないが、済し崩し的にレーゼルドーンの開拓は進んでいるのが今の状態である。

 これには橋が開かれたことによって多くの開拓者や冒険者が流れ込み、ダーレスブルグが活気づいたことと、未だレーゼルドーンに眠っている過去の膨大な遺産が目的であるという理由があった。

 実際に橋が開かれて「開放派」は勢いを得た。その「開放派」の勢いの尻馬に乗ろうとしたのがジェイムズである。しかし、その勢いはジェイムズをカシュカーンの執政官として北へ派遣することになる。

 これに驚いたのはジェイムズ本人で、彼としてはカシュカーンの執政官などになるつもりなどなく、単に勢いのある「開放派」に尻尾を振ることで己の利にしようとしたに過ぎないのだ。

 自分はこのような僻地で埋もれるような人間ではない。自分が生きて行くのは、もっと栄光華やかかりし公国の中心のはずである。

 ジェイムズは日々、そのようなことを考えながら執政官としての執務を果している。それ故か周囲に不満や愚痴を零すことも少なくなく、このことは他の役人や軍人、果ては町の住人にまで知れ渡っていて、ジェイムズの人気は極めて低い。

 そんなことが彼の知名度の低さにも繋がっているのだが、それがまたジェイムズには面白くなく愚痴を零すことになり、更に不人気となっていく。

 故に知名度も高くマグダレーナの信任も厚いハウルは、ジェイムズにとっては目の上の瘤以外の何物でもない。

 その思いがハウルに対する態度に出ているのだが、当のハウルは極めて真面目な性格なので、言いがかりにも素直に謝罪する。それがジェイムズに対しては逆効果であるとも知らずに。

 いつものように自分を無視するように執務に戻ったジェイムズに、ハウルは律義に再度頭を下げると部屋を後にしようと踵を返した。

 するとその背中に珍しくもジェイムズの方から声がかかる。

「ところで“霧の街帰り”はどうした? 一緒に帰ってきたのではないのか?」

「は、ウィールならば諸用があるとかで、ダーレスブルグにて別れました」

「諸用だと? 一体どのような用件なのだ? いつカシュカーンに戻って来ると?」

「そこまでは自分も存知かねます」

 ジェイムズはハウルの返事に忌々しそうに舌打ちをする。

 ウィールの立場は軍人でも貴族でもなく、単なる冒険者に過ぎない。身分でいえば一人の町の住人なのだ。

 だからジェイムズにはウィールに命令を与える権力はない。もちろん、カシュカーンの執政官として、そこの住人であるウィールに対しての権限はあるのだが、冒険者とは束縛されない自由の民である。あまりにも無理な権限を振り翳せば、ウィールはカシュカーンを捨てて他へと流れて行くだろう。

 それはカシュカーンの執政官として、何としても避けなければならない事態である。

 カシュカーンに“霧の街帰り”の英雄がいるという事実は、人族だけでなく蛮族にも影響を与えている。それが理解できないほどジェイムズも愚かではない。

「……全く、忌々しい。どいつもこいつも人を馬鹿にした行動ばかりしおって……っ!」

 ハウルが改めて頭を下げて部屋を辞した後、閉められた扉に向かってジェイムズは吐き捨てた。

 

 

 

 カシュカーンの中心部には執政官の館を始めとして、守備隊の隊舎や要人たちの館などが建ち並んでいる。ここはあらゆる意味でのカシュカーンの中心でもあるのだ。

 執政官であるジェイムズ・コバールの住居であり、日々彼が執務に追われる執政官の館の一角に、一本の剣が奉られるように安置されていた。

 形はごく普通の長剣。だがその剣に刃はなく、その刀身には魔動機文明語の文字がびっしりと彫り込まれている。

 それは『守りの剣』と呼ばれるもので、蛮族やアンデットといったその身に「穢れ」を持っている者を遠ざける力を帯び、これがあるからこそ、カシュカーンは蛮族の大規模な侵攻から護られていると言える。

 しかし『守りの剣』の力は無限ではなく、時間と共に衰えていく。カシュカーンの行政部はそれを防ぐため、冒険者たちからは『剣の欠け片』というものを入手している。この『剣の欠け片』を更に細かく砕き、一定の手順で『守りの剣』に振りかけることよって、『守りの剣』はその力を維持しているのである。

 『剣の欠け片』は主に蛮族や幻獣といった魔物の体内から発見される。どういう原理かは不明だが、『剣の欠け片』は魔物の身体を強靭にし、その精神力を底上げする効果を持っているようなのだ。

 これらの魔物を倒した冒険者はその体内から『剣の欠け片』を手に入れ、冒険者の店を通じて国や街に献上することが通例となっており、『剣の欠け片』を数多く献上した冒険者はそれだけ名が知れ渡ることになる。

 そのため『剣の欠け片』が金銭で取引きされるようなことはまず有り得ない。余程金に困った冒険者か、逆にどうしても名声が欲しい者が稀に金銭と引き換えにするぐらいだ。

 そんな『守りの剣』が安置された執政官の館の上空、雲一つない青空に小さな黒い影が舞っていた。

 それに最初に気付いたのは、館に用事のあった行政官の一人だった。天気の良い清々しい空を何気なく見上げた時、その影が視界の隅を横切ったのだ。

「ん? 鳥……鷹か?」

 比較的大きなその影を見て、行政官はそう考えた。だが、徐々に大きくなっていく影を見た時、己の考えが間違いであるとすぐに知り、あっという間に彼の心の中を恐怖が満たしていく。

 空を舞うその影には四肢が存在した。その翼は鳥のそれとは大きく形状が異なり、蝙蝠のような皮膜であった。

「な……何だあれは……」

 行政官はそう呟きながら思わず足を止めた。もし彼がここで足を止めずに執政官の館に駆け込んでいたら、彼の命は恐らく助かったであろう。例えそれが本の数分の延長でしかなかったとしても。

 空の影の頭とおぼしき場所に一文字の亀裂が入る。いや、それは亀裂ではなく孔だった。孔の奥にはちろちろと瞬くような輝き。その輝きが一際輝いた時、行政官の身体は一瞬で黒こげの炭の塊となって崩れさった。

 

 

 

「な……何事だっ!?」

 突如執政官の館を襲った激しい揺れに、ジェイムズは驚愕の表情を顔に張り着かせたまま立ち上がった。

 そしてしばらくした後、彼の部下の一人が執務室に駆け込んで来る。

「ジェ、ジェイムズ様! 敵襲ですっ!!」

「敵襲だとッ!?」

「はい! 敵はこの館の上空に突如現われ、屋根を突き破って館内に進入したようです」

「な……何だと……っ!? そ、そんな訳があるかっ!! 蛮族がここまで来れるはずがなかろうっ!! この館には『守りの剣』があるのだぞっ!?」

 ジェイムズはやり場のない苛立ちに、顔を真っ赤にして部下に怒鳴り散らす。

「そ……それが……どうやら敵は蛮族ではないようなのです」

「蛮族では……ない?」

「は、居合わせた者の報告によりますと、敵は魔神ではないかと……」

 部下のその言葉を耳にした時、ジェイムズの顔色は一瞬にして赤から青へと変化した。

 

 襲撃の報告は、守備隊兵舎の隊長室にいたハウルの元にも届けられた。

「それで魔神の種別は判明しているのか?」

 ハウルは急いで鎧を身に付けながら、報告に来た部下へと質問する。

「目撃者の証言から、ラグナカングでなないかと推測されます」

「ラグナカングだと……っ!!」

 魔神──デーモン──は、この世界ではない別の世界からやって来る魔物だと言われ、これまで多くの種類が目撃されている。

 そんな数ある魔神の中でもラグナカングは、竜に似た姿を持ち下位の魔神に分類される。だが下位魔神の中ではトップクラスの力を持ち、生半可な兵士や騎士では歯が立たない程の魔神である。

「しかも魔神は異界の獣(アザービースト)を召喚したようで、現在異界の獣は少なくとも五体が確認されており、カシュカーン中に分散して暴れております」

「兵たちには異界の獣の討伐に向かわせて、魔神には絶対に手を出すなと伝えろ。一般の兵ではラグナカング相手では死ねと命じているようなものだ」

「それでは、魔神はどう対処いたしますか?」

「ラグナカングの相手は俺がする」

 そう問われてハウルは即答する。カシュカーンでラグナカングと対等に戦えるのは、おそらく自分以外では一人しかいない。

 鎧を付け終え、剣を手にしたハウルは隊長室を後にしながら部下達に指示を与えていく。

「カシュカーン中の冒険者の店に伝令を走らせろ。異界の獣を一体倒すことに報奨金として一〇〇〇ガメル出すとな。それからこのことを一応姫様にも伝えてくれ。その途中であいつに会うようならば、その時はあいつにも伝えろ」

「御意」

 部下たちはそれぞれ与えられた指示の通りに行動を開始する。誰一人として「あいつ」が誰かなどとは尋ねない。ハウル・バルクマンが信頼と期待を込めてそう呼ぶ相手など一人しかいないのだから。

 指示を出し終えたハウルは、目的地へと真っ直ぐに向かう。

 このカシュカーンの周辺には、魔動機文明時代の遺跡が数多く存在しており、時折その遺跡から魔神が現われることもある。だが、今回のように執政官の館に直接襲撃を行うことはありえないだろう。

 尤も敵は魔神だけに、人族の基準でその考えを推測することなど不可能だが、この襲撃の目的だけはハウルには分かっていた。

「敵の目的はおそらく──いや、間違いなく『守りの剣』だろうな」

 誰に聞かせる訳でもなく、ハウルはそう一人呟く。

「ということは、魔神の背後には間違いなく蛮族が控えている。それも魔神を操るような大物が」

 カシュカーン守備隊長、ハウル・バルクマンは、普段から厳めしいその顔を更に堅いものにして、剣を抜き放ちながら『守りの剣』が安置してある部屋を目指した。

 

 

 

 テラスティア大陸とレーゼルドーン大陸の間を繋ぐ橋。

 ダーレスブルグからカシュカーンへ、又は逆にカシュカーンからダーレスブルグへと向かう人の姿がまばらに見られるその橋の上を、カシュカーン襲撃の知らせを届ける伝令兵が早馬を急がせる。

 人々が慌てて開けた道を急いでいた伝令兵は、橋の途中で一騎の騎馬を見付けた途端、急制動をかけて馬を止めた。

「ウィールさんっ!!」

 自分の前で急停止した馬上から声をかけられたウィールは、何事かと声の方へと振り向く。見ればその伝令兵はハウルの部下であり、これまで何度か言葉を交わしたことのある者だった。

 伝令兵は急制動のため落ち着かないでいる馬を諫めながら、カシュカーン襲撃の報をウィールへと知らせた。

「了解した。俺はこれよりカシュカーンへと向かう。君はハウルに言われた通り、このことをマグダレーナ姫に知らせてくれ」

 それだけ言い置くと、ウィールは自分の馬の腹に一蹴り入れて走り出す。

 ウィールが駆る軍馬は、ある筋から購入した抜きん出た名馬である。その身体は並の軍馬よりも強く大きく、その脚はまさに風のように大地を駆ける。

 突風の如く駆け出すウィールの後ろ姿を頼もしげに見詰めた伝令兵は、本来の役目を果たすために自分も馬をダーレスブルグへと急がせた。

 

 ハウルが執政官の館に辿り着いた時、館は既に半壊といった様子を呈していた。

 しかし魔神が飛び去ったのを目撃した者はなく、魔神が未だに館の中にいることを確信したハウルは、抜き身の剣をひっさげて館へと突入する。しかし、館へ入ってしばらくしたところでハウルは一人の男と遭遇した。

「コバール執政官殿?」

 崩れ落ちた瓦礫の目立つ廊下で、ジェイムズと思しき人物が倒れているのを発見したのだ。

 駆け寄って調べてみたところ、どうやら逃げ出す途中で崩れて来た瓦礫にぶつかったらしく額から流血している。しかし命に別状はなさそうなので、ハウルはジェイムズをその場に再び横たえた。

「申し訳ありません、執政官殿。今は『守りの剣』を敵に渡さないようにするのが肝腎、それ故に先を急ぎます。誰かに拾って貰えるよう祈っておきましょう」

 意識のないジェイムズにそう伝えると、ハウルは所持していたヒーリングポーションをジェイムズの額にぶちまけた。

 ポーションが傷にしみたのか、それとも単にポーションが冷たかったのか。ジェイムズは意識のないまま身体をぶるりと一度だけ震わせた。

 そんなジェイムズを後にして、ハウルは『守りの剣』が安置してある部屋を目指すして再び足を進めた。

 

 魔神──ラグナカングの苛立ちは最高潮に達していた。

 彼に与えられた使命は、この人族たちの巣の中心にある『守りの剣』と呼ばれる存在の破壊である。

 彼にその使命を与えたのは一人の蛮族。彼は本来の主人よりこの蛮族に従うように命じられていた。

 魔神は蛮族とは違って『守りの剣』の影響を受けない。『守りの剣』の破壊に魔神は打ってつけだとその蛮族は考えたのだろう。

 だがその蛮族は、『守りの剣』が巣の中心にある一際大きな建物の中にあることは知っていたが、建物の中のどこにあるのかまでは知らなかった。

 だからラグナカングは、あちこちの扉を手当たり次第に破壊しながらその中を確かめていった。時折部屋の中にいた人族を気まぐれに食べて、満たされた食欲でもってその苛立ちを和らげる。

 またこの建物は当然人族の大きさに合わせて造られているので、人族よりも遥かに大柄なラグナカングでは廊下を進むのも一苦労だった。壁や天上を削り、破壊しながらの探索は遅々として進まない。

 派手に建物を壊し過ぎては肝腎の『守りの剣』も瓦礫に埋もれてしまう。それでは『守りの剣』の破壊という使命は完遂とはいえない。それに瓦礫に埋もれてしまっては、掘り起こすのも面倒だ。そんなジレンマが彼の苛立ちを更に高めていた。

 苛立ちが満ちてきて、覗き込んだ部屋にいた人族を捕えて頭から齧る。口腔の中で拡がる脳漿と血の臭いが、彼のささくれ立った精神を僅かに潤す。

 そして更なる潤いを求めて、もう一口人族を齧る。今度は潰れた内臓の歯触りが心地好かった。

 幾分苛立ちが納まったのに満足した魔神は、『守りの剣』の捜索を再開する。だがその時、彼の背後から足早に誰かが近づいて来るを感じ取った。

 

 

 

 カシュカーンから一時間程離れたとある遺跡の一つ。

 その遺跡に存在する朽ちた建造物の一つ。その中で一人の初老の紳士が、手にした鏡を見詰めていた。

「ふむ……『守りの剣』の探索に、あの巨体は不向きか……当然といえば当然。これは私としたことがとんだうっかりだな」

 老紳士はくっくっくっと喉の奥で笑い声を上げる。その声に釣られるように、老紳士の周囲にひしめいている爛々とした幾つもの紅い眼もゆらゆらと揺れる。

「確かに強力な魔神を貸せとは言ったが……あの強欲張りめ、ラグナカングが魔力の探査に疎いのを知って上で、敢えてこの魔神を貸し与えたな?」

 紳士の言葉通り、ラグナカングは神聖魔法は使えても、魔力を探知する〈センスマジック〉が存在する真語魔法は使えない。もしラグナカングが〈センスマジック〉が使えたのならば、とっくに『守りの剣』の在処を探り出し剣を破壊していただろう。

「全く腹立たしい。しょせん奴はタビット、人族に徒なすのは不本意なのだろうな」

 手入れの行き届いた口髭を指で弄りながら、紳士は覗き込んでいた鏡から顔を上げる。

 この鏡はある人物より借り受けた魔法の品で、この鏡こそが魔神ラグナカングを操る鍵なのである。しかもこの鏡は魔神の視角とリンクしており、魔神が見たものを鏡に映し出すこともできるのだ。

「まあいい。魔神にはこのまま『守りの剣』の破壊を任せるとして、我々もそろそろ動き出すとしようか」

 紳士のその声に、周囲にひしめきあっていた気配が嬉しそうに声を上げる。

「さあ行くぞ同胞(はらから)たちよ! カシュカーンを攻め滅ぼし、第二の霧の街としようではないか!」

 紳士、“黒こげにする”シャバディーンの宣言と共に、彼の周囲で蠢いていた蛮族たちが咆哮を上げてその宣言に応える。

 そして蛮族たちは動き出す。その数は実に一〇〇〇体近く。対するカシュカーンの守備隊の総数は総勢四〇〇といったところ。しかも今カシュカーンは、魔神の襲撃により混乱している。これだけの数があれば、充分にカシュカーンは陥せるだろう。

 蛮族たち──いや、蛮族の軍隊は整然と隊列を組みながら、カシュカーンを目指して侵攻を始めた。

 

 

 

「見付けたぞ魔神っ!」

 最初は『守りの剣』のある部屋を目指していたハウルだったが、建物の破壊の痕跡から魔神が『守りの剣』がどこにあるのか知らないと見当を付けた。

 ならば、魔神が『守りの剣』が安置してある部屋に辿り着く前に追いついた方がいいだろう。水際で防ぐよりは余裕のある場所で相対した方がいいし、狭い建物の中なら自分の方が有利に動くことができる。

 そう思って魔神の破壊の跡を追いかけて来たハウルは、ついに魔神に追いついた。

 ハウルの声に魔神が振り向く。竜のように長い首は天井すれすれにあり、金色の二つの瞳が禍々しく輝きながらハウルを睥睨する。

 魔神の姿はまさに直立する竜といったところ。長い首と尻尾を合わせると、実に体長は五メートルにも及ぶだろう。

 そんな異形に恐れを抱くこともなく、ハウルは手にした大剣を肩に担ぐように構え直すと、鋭く魔神に向かって踏み込んだ。

 本来なら頭を狙いたいところだが、その頭が天井すれすれの位置にあるとあってはさすがに剣が届かない。ならばとハウルはその巨体を支える脚部へと狙いを向けた。

 吐き出す息と共に振り下ろされる大剣。それは狙い違うことなく魔神の太く強靭な脚に深々と食い込んだ。

 魔神は脚を襲った激痛に咆哮を上げる。本来ならば避けられたであろう今の一撃。しかし屋内という自分にとって不利な条件下では、思ったように身体を動かせない。

 魔神はお返しとばかりに口腔より炎を吐き出す。長い首がぼこりぼこりと蠢くと、かっと開かれた口より真っ赤な炎が溢れ出して“鋼鉄の騎士”を呑み込む。

 ハウルは大剣を楯のように自分の身体の前に掲げる。しかしその程度で魔神の炎を防げる訳もなく、炎はその灼熱の両腕で以ってハウルを抱擁する。

 だがハウルは炎を“鋼鉄の騎士”の異名通りの強靭な身体で絶え抜く。掲げた大剣がいくらか炎を軽減してくれたのも大きい。

 それでも全くの無傷という訳にはいかず、露出している顔には軽度ながらも数ヶ所の火傷を負い、髪の毛の先端は焼け焦げ嫌な臭いを周囲に放ち、鎧の表面も所々高熱で溶けていた。

 更に魔神はその長い尻尾をしならせ、先端にある毒針をハウルに突き立てようと試みる。その際無理に振るった尻尾は、建物の天井をがりがりとえぐり取っていった。

 しかし、尻尾が天井に引っかかった僅かな時間がハウルを救った。ほんの半呼吸ほどの尻尾の停滞が、ハウルに尻尾の一撃を躱す余裕を与えたのだ。

 後ろに飛びすさるハウル。それまで彼のいた空間を魔神の鋭い尻尾の先端が突き抜ける。そして魔神が尻尾を引き戻そうとした時、ハウルがその尻尾に対して第二撃を見舞う。

 魔神の尻尾を深々と切り裂くハウルの大剣。再び襲う激痛に魔神ははっきりと悟った。

 この狭い屋内では自分の巨躯はどうしたって不利であると。だから魔神は再び騎士に炎を浴びせかける。

 自分に向かって襲い来る炎の洗礼。ハウルは再び大剣を楯にしつつも、今度は大剣を支点にして身体を捻って炎を躱す。

 だが魔神はこの炎が、騎士に大したダメージを与えられないのは承知の上であった。

 魔神は人間の中に、時に自分たちをも凌駕する技量を持つ者がいることを知っていた。そして目の前の騎士が、そんな人間の一人であることも理解した。

 魔神の目的は、騎士を僅かでもいいから怯ませることにある。そして魔神の考えた通り、騎士は炎を避けるために体制を崩した。並の相手ならここで追い打ちをかけるところだが、この騎士に生半可な攻撃は却って反撃のチャンスを与えることになる。

 だから魔神はその巨大な翼をばさりと広げた。その場で数度翼を羽ばたかせると、ふわりと舞い上がりそのまま建物の天井に突っ込んでいく。

「な……っ!?」

 この行動はハウルにとっても予想外であった。だが数瞬後に、彼は魔神の本当の狙いに気付いて舌打ちをする。

「くっ、魔神め! 狭い屋内では自分に不利と悟って外に逃げたか!」

 そう。魔神の目的は、自分に不利な屋内で戦うよりも、その巨躯を活かせる広い場所、すなわち屋外で戦うことであった。

 そしてハウルは魔神のこの策に乗らざるを得ない。このまま魔神を放っておけば、カシュカーンにどれだけの被害が出るか分かったものではないからだ。それだけはカシュカーンの守備隊長として許せるものではない。

「小賢しい!」

 ハウルはそう掃き捨てると、魔神と戦うために建物の外を目指す。そこが自分にとって不利な戦場であることを百も承知の上で。

 

 

 

 屋敷の厨房で遅めの昼食の準備をしていたハイネは、町の方が騒がしくなっていることに気付いた。

「町で何かあったのかしら?」

 いつもなら町に何かあれば、すぐにハウルからの使者がこの館に来る。

 守備隊の隊舎からこの屋敷まで、馬を走らせればものの数分で辿り着くのに、未だに誰も使者が訪れないところをみると、町での騒ぎはさほど大したものでなないのかも知れない。

 もしくは、使者を出す暇もないほどの重大事か。

 何やら胸騒ぎを感じたハイネは、このことをサンドリーヌに知らせようと厨房を後にして彼女の部屋を目指す。おそらくそこには、ハイネの兄であるクリスもいるであろう。

 廊下を走り抜け、階段を駆け上がる。このような無作法なところをサンドリーヌに見つかったら、小言の一つや二つは覚悟しなければならないだろうが、今はそれどころではないと彼女の勘が告げている。

「サンドリーヌ様っ!!」

 勢いよく彼女の部屋の扉を開け放ったハイネは、窓際で町の方を眺めているサンドリーヌとクリスの姿が確認すると彼女のたちへと近づいた。

「やはり、町で何かあったのですか?」

「どうやらそのようね……ご覧なさい」

 サンドリーヌが指差す先には、小さな黒い影が舞っていた。これだけ離れた場所から見えるのだから、その小さな影は実際にはかなりの大きさであろうことがハイネにも分かった。

「あれは一体……?」

「おそらく魔神……あのシルエットからしてラグナカングではないかしら?」

「魔神っ!? ど、どうしてそんな魔物が町の中心で暴れているの?」

 驚愕の表情でサンドリーヌへと振り向いたハイネに、その義姉にあたる人物は冷静に言葉を続けた。

「忘れたかしら? あの霧の街には“魔神使い”と呼ばれた人物がいたことを」

 サンドリーヌの言葉に、ハイネはその“魔神使い”の名前を思い出した。

「“魔神使い”のザバール……」

 霧の街には“魔神使い”のザバールと呼ばれるタビットがいる。

 このタビットは人族でありながらも、霧の町の支配者たちから一目おかれた存在だった。

 その理由は二つ。

 ひとつは彼が霧の街一番の商人であること。

 霧の街では人族が食べる食物を生産することができない。常に霧に覆われたあの街では、陽の光が弱くて作物は育たないのだ。

 対して蛮族は人族を食う。人族こそが蛮族の家畜なのである。

 しかし食料がなければ人族は飢えて死に絶える。人族が死に絶えれば、今度は蛮族の食物がなくなってしまうことになる。

 それを避けるためザバールが、街の外と取引きを一手に請け負い食料を買い込んでいるのだ。そのため蛮族もザバールだけは街を自由に出入りすることを黙認している。

 そしてこのザバールと呼ばれるタビットは、何らかの理由で魔神たちを自由に使役できるらしい。

 強力な魔神に護られたザバールには、さすがの蛮族たちも迂闊には手が出せない。

 この二つの理由によってザバールは霧の街において、確固たる立場を築いていた。

「では、あの魔神はザバールが?」

「直接か間接かは分からないけど、あのタビットの商人が関わっているのは間違いないでしょうね」

 そしてサンドリーヌは自分の考え通りならば、襲撃があの魔神だけで終わらないと推測していた。

「クリス」

 サンドリーヌは傍らに立つ夫に呼びかける。

「おそらくすぐに蛮族の侵攻があるわ。急いで準備をして」

 頷いて部屋を飛び出す夫を見送ると、次に義妹へと向き直る。

「あなたは蛮族の侵攻があることをバルクマン卿に伝えて。デミオで駆ければ守備隊の隊舎までそんなに時間はかからなくてよ」

「はい!」

 部屋を飛び出す義妹を見届けると、サンドリーヌも自身の準備に取りかかる。

 おそらく蛮族たちは、カシュカーンを攻め落とすつもりで侵攻して来るだろう。

「……ここを攻め落させる訳にはいかない……ふふ、まさか“宵闇の公主”と呼ばれたこのわたくしが、人族の町のために戦うことになるとは思いもしなかったわ」

 自嘲気味に呟くサンドリーヌ。

 このカシュカーン以外の人族の領域で、彼女が暮らしていくのは難しい。そのことはサンドリーヌにはよく理解できている。

 カシュカーンならば“霧の街帰り”の英雄の盟友として、少しばかりの奇行は大目に見て貰えるだろう。ましてや自分たちが霧の街から脱出して来たとあっては。

 だが他の街や村では、このような暮らしはまず無理であろう。

 人族は自分たちの常識からはみ出した存在を嫌悪する。その嫌悪が行き過ぎれば、それは暴力という形となって襲いかかって来る。

 それに『守りの剣』のこともある。蘇生によって身体に「穢れ」を宿しているウィールや、生まれつき「穢れ」を持っている自分は、強力な『守りの剣』に守護されている街では暮らし難い。

 つまり彼女たちが安穏とした生活を送れるのは、ここカシュカーンだけということなのだ。

「ならばわたくしはこの平穏を守ってみせる……」

 サンドリーヌは改めて決意すると、机の引き出しから幾つかのものを取り出した。

 身を守る魔力を秘めたベルトや魔力を高める杖、革製の鎧に様々な魔力を秘めた道具たち。そして何より魔晶石と呼ばれるマナを秘めた幾つもの宝石。

 これらはウィールが冒険の中で手に入れた物で、彼には扱いづらい物をサンドリーヌが譲り受けたのだ。

 そして庭には、彼女のお気に入りの魔動機械であるアラクネ。防御力の高いあの魔動機械と彼女自身の魔力を合わせれば、下級の蛮族など相手ではないだろう。

「問題は雑魚ではない相手ね」

 この襲撃を指揮するのは、おそらく上位蛮族の一人だろう。

 霧の街に残された上位蛮族は、街の支配者である翠将ヤーハッカゼッシュを除けば、ケンタウロスインペイラーのコルデン、フェイスレスのパウネーラ、ヘルスキュラのオンディーヌにバジリスクのジャバディーンの四体のみ。

 だが翠将の軍師的な存在であるパウネーラと、翠将の居城である翡翠の塔の最深部を守るオンディーヌが動くことはまずあるまい。

「だとすれば、コルデンかジャバディーンのどちらかだけど……」

 直情型のコルデンならばこのようなまどろっこしい策などに頼らず、真正面から挑んでくるだろう。となれば考えられるのは一体のみ。

「おそらく敵はジャバディーン……バジリスクの“黒こげにする”ジャバディーンね」

 相手がバジリスクならば、警戒すべき能力は石化の視線とその血に含まれる猛毒。これらに対して有効な装備があれば、かなり有利に立ち向かえる筈だ。

「……毒に対して抵抗力を上げる『水晶の首飾り』があったわね」

 サンドリーヌは机の中から目的の装飾品を探し出し身に付けると、急いで部屋を後にして夫の元へと向かった。

 

 




 本日の更新分。

 この作中におけるサンドリーヌは、「有能な金庫番」として想定されています。
 彼女を「金庫番」として扱えるかどうかは、各GMによって判断が別れるところでしょう。
 もっとも、最近では彼女の「種族」をPCとして扱えるようになりましたが、「ミストキャッスル」をプレイしていた時にはそれは不可能でしたから。

 さて、今週中にあと一回ほど更新する予定。
 それ以後は不定期の更新となりそうです。よろしくお願いします。
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