【悲報】クラスごと異世界に拉致られた件について【マジやば】 作:火影みみみ
Qウリエルさん安すぎない?
A安いですね。まあ界王拳が20程度だったので今更ですが。
>>五歳児がスレ見れてんのワロタ
わかる。今思うとなんで?と自分でも思う。
>>追い詰められてるオタさんは輝いてる
超わかる。だから時折追い詰めたくなるのですよね
Q耐性系スキルあったっけ?
Aバリアのことですね。D2にしか出てきませんが、状態異常を無効化する結界を張れます。
耐性系?と聞くと確かに疑問。変えるかどうかも謎
彼女たちがオスカー・オルクスの隠れ家に足を踏み入れてから凡そ二週間ほど経った日のことだった。
今日も今日とて謎の不審者が作り上げたその見た目とは裏腹に美味しい朝ごはんを食べていた時のことだった。
「もうそろそろ私はお暇するとしようかな」
「……ああ、そういえば一人で旅をしてるんだっけか?」
もうすっかりこの不審者に馴染んでいたハジメは予想外の言葉に一瞬唖然としたが、よくよく考えなくても彼女は(ハジメ視点ではあるが)元は赤の他人なのである。
格好はともかく、意外と言動は真っ当なものが多く、そして長く接しているうちに彼女が義理堅く信用の置ける人物であることはハジメやユエも理解できていた。
そして彼女と出会えたのも彼女が一人で旅をしていたからであり、いつまでも彼らと一緒にいるわけではないのだ。
「そゆこと。オスカーさんが言ってた他の大迷宮も回ってみたいし、いつまでもお邪魔するのはユエさんにも悪いしな」
「……やだ。新婚だなんて、そんな」
「いや、言ってないからな」
ルビーの言葉を拡大解釈するユエ、そして彼女に突っ込みを入れるハジメ。
残念なことにこの空間には突っ込み役がハジメしかいないのであった。
「てなわけで私はここを出たら即次の迷宮に挑むつもりだけど君たちはどうするんだ?」
「……そうだな。まだまだ必要な装備を作らなきゃならんし、あと一ヶ月程度はここにいることになりそうだ」
「一ヶ月。なるほどね。それくらいあれば1つくらいは迷宮を攻略できそうだな」
「随分と余裕だな」とハジメは呆れ半分に呟く。
実際この不審者の実力は彼と比較して遜色ないものではあるし、彼もそれは認めていた。
「とりあえず適当な迷宮から攻略する予定だな。まあ、決める方法はカードだけど」
そう言うと懐から六つの迷宮が書かれたカードを取り出す。
なおその内二つは所在不明のため、”迷宮その1””迷宮その2”などと仮名が書かれている。
「まじで適当だなおい」
「いいじゃないか。何事も楽しんだ者勝ちだよ」
といいつつ、実は実際にこのカードで決める予定はない。
今は実況していないので後々に掲示板の住民は知ることとなるが、この迷宮を出た後に一日休憩を挟んで今後攻略する迷宮を安価するつもりであったのだ。
「とは言ってもあと一週間は準備に当てるつもりだし、今日明日出て行くことはないから安心したまえ」
「はん。こっちはようやく変な格好の奇人が視界から消えうせて清々するけどな」
「……私は、少しさびしい」
「ユエさん!?」
自身の知らないところで懐柔されつつあったユエに戸惑うハジメ。
まあユエにとってはこの空間にいる唯一の同性で、同じ女として(格好についてはともかく)男には打ち明けられない細々とした悩みを時折相談できる唯一の女性なのだからこれはある意味自然な展開と言えた。
また、彼女がハジメに対して異性として好意をもっていなかったことも大きいだろう。もし仮に……ほんとうにこの奇人がハジメに恋をしていれば展開は変わったのかもしれないが、そうはならなかったのだから考えるだけ無駄の話ではあるが。
こうして彼らの日常は騒がしく過ぎてい行く。
時が過ぎるのは早く、そうこうしているうちに期限の一週間が過ぎていた。
「じゃあ、私はこれでお暇させてもらうよ」
ほとんど手ぶらのような形で、彼女は解放者のアジトの出入り口に立っていた。
服装は彼らと最初に会った時と全く同じ、仮面にマントという奇抜な格好である。
対してハジメたちの格好は出会った時とは大きく変わっていた。
まず欠損した左腕を補う為、オスカーが作成していた義手にハジメのアレンジを加えて作成した物を装着、次に黒を基調としたスーツにハジメなりのアレンジを加えた服装、さらには黒いバイザーを掛けていた。
このバイザー、実は瞳の部分に神結晶が使用されており、ハジメの生成魔法により様々な機能が付与されていて、魔石の位置などを特定するのに役立つが、ここでの明言は避けておこう。
なお、これの姿は掲示板の住人にはしられてはいない。
これら装備が完成した時「まるで闇堕ちした厨二キャラみたいだ……」といって半日ハジメが引きこもったことが原因である。流石の彼女も、元よりクラスメイトの顔を晒すようなことはしていないが、これは哀れと思い彼らに報告はしていないのである。
と言うよりも、実はこの拠点に足を踏みこんで以降、映像配信はしていない。
する必要がない、日常生活を配信しても意味がないと思い、最近は掲示板で安価するか近況報告する程度に留まっていたことも大きいだろう。
……なお、彼らとの別れの瞬間も実況して欲しいという者もいたが、彼らには今のハジメの格好を茶化さない、笑わない、見ていない住人に口外しないということを条件に後にその映像を掲示板に載せることとなってはいる。
ライブ配信にしなかったのは、彼らの格好に反応して思わぬ書き込みをしかねないという配慮もあったのかもしれない。
「……ん、元気で」
「と言うか良いのか? あっちの魔法陣を使えば楽に地上にでれるだろうに」
ハジメは親指で彼の背中、もといアジトの中を指差す。
「いいんだよ。こういうのは帰るまでがダンジョン攻略って感じがするだろ」
「遠足かよ。まあそこまで言うなら止めやしないが…………まあ、なんだ。あんたには随分世話になったからな」
ハジメがそう言うと、彼が隠し持っていたある物を乱暴に彼女へと投げ渡した。
クルクルと回転し、それは彼女の両腕の中に収まる。
「え……これ、は?」
それは彼女にとって非常に見覚えのある物であった。
動揺を抑え、何事もない風を装う。
「ああ。あんたが鎌使いでルビーローズって名前だからかな。どうしても脳内で似たような……いや、名前と戦闘スタイルが似たキャラが思い浮かんでな。思い切って造ってみたはいいが、俺もユエも使いこなせねえから。餞別代りにくれてやるよ、その“クレセント・ローズ”を」
そう、それは彼女が月衣の中に収納しているルビー・ローズ専用装備、クレセント・ローズと全く同じ外見をした武装だった。
解析鑑定をかけると、神結晶が内蔵されていることと刃はこの世界で一番硬度のあるアザンチウム鉱石でできているなどアレンジが加えられていることがわかる。
試しに魔力を流してみると、収納形態だったそれは瞬く間に大鎌形態へと変形を遂げていた。
「おお、流石だな。その武装は魔力を通すことで収納形態や大鎌形態へ変形させることができる。……一応射撃形態も再現してあるが、弾薬の補充が十分に出来ない上に慣れない武器渡されてもしょうがないと思って形だけになってはいるが、魔力を込めてトリガーを引くことで“天歩”と“縮地”が発動するようになってる。あとは、ある程度魔力を保管できるようにしてあるから、魔法が使えない環境でも数回なら最上級魔法を使えるはずだ」
「これはこれは……本当に貰っても良いのか?」
「ああ……というかクレセント・ローズをそれだけ使いこなせるのはトータスでもお前だけだろうよ」
そう言いつつ、大鎌形態でトリガーを引いて“縮地”を発動させ、自在に移動し、更には教えていないはずの刃の角度変更すら使いこなして回転する彼女に呆れながらに呟く。
「欲を言えば薔薇が舞うエフェクトとかも付与したかったが、それは上手くいかなかったんで断念した。というかお前ならできるだろ」
「こんな風にか?」
大鎌を振るいつつ、それにあわせるように何処からか薔薇の花びらを撒き散らす。
まさにリアルルビーと言った有様だったが当のハジメは「これで仮面と男口調じゃなければなあ」と深いため息をついていた。
「うん(当然だけど)しっくりくるな。……ああそうだ。ここから帰る途中に勇者たちと遭遇するかもしれないが、何か言伝とかあるか?」
使い慣れた大鎌とほとんど同じ感触のそれを振り回していると、唐突に某Kさんのことを思い出した彼女はそれとなく彼に尋ねる。
「アン? ……いやないな。親しい奴なんていなかったし」
「え? マジで??」
「おう。マジだが?」
少し考え、あっけらかんにそう告げるハジメ。
「(白崎さーん!? あなた印象に残ってないってまじっすかーーー!!?) いや、でも一人もいなかったの? 例えば自分を気にかけてくれた大人とか女子とか、年頃の子ならそういうのの一つや二つあるって聞いたぞ。……ウチの爺さんに」
焦りのあまり口調が崩れるが、最後のほうにようやく持ち直す。
一応はこちらに来るまでにハジメと白崎香織やその周囲のやり取りを観察してはいたのだが、意識されてはいないと思ってはいてもまさかこの数ヶ月間で忘れ去られるほどだと思っていなかったのだ。
「ん~。あ、もしも愛子先生あたりなら……いや、先生は迷宮攻略には参加してないだろうし無駄か。あとは……」
どきどきと、自分のことではないのに心臓が高鳴る。
(もしこれで彼女の名前が出てこなければ、今後自分はどんな顔で彼女に接すればいいのかな? 「あなたの思い人と、女作ってあなたのこと忘れましたよ」とでも告げればいいの? 悪魔かな?? て言うか超気まずいんだけど。お願いだから思い出してあげて!)
「あー、そうだな。勇者一行ならあいつらがいるだろ。八重樫と白崎。二人に忠告でもしておこうか」
「(よし!! 雫よりも名前が後に出たのが気になるけどよし!! ぶっちゃけ結構手遅れ気味だけど、まだワンチャンありそう! 日本の一般常識に当てはめたらまずいことになりそうだけど)んん。なんて伝えたらいい?」
心の中でガッツポーズをしつつ、平静を装って尋ねる。
「そうだな。神のこととか神代魔法は伏せるとして、勇者の側にいるはずの八重樫と白崎って女に“故意に俺を落とした奴がいる。狙いは恐らく白崎だ”とでも伝えといてくれ」
「……ああ、なるほどね。それは重要だ」
今まで彼女の心のうちを占めていた焦りや不安が消え去り、剣士としての思考が彼女を塗りつぶす。
そもそも、彼はベヒモスとの戦いの最中彼へと狙いを定めて放たれた魔法によってこの真の大迷宮へと落とされることとなったのだ。
今まで考えてはいなかったが、その原因は何か? その答えはたった今彼が告げた人物にあった。
白崎香織だ。
近くから見てもあまり親しそうではなかった。というか白崎が一方的にハジメへと絡んでいるように見えたが、他の人から見てはどうだった?
前に愛子先生と一緒にその光景を目撃したことがあったが、その時彼女は何を言ってた?
「あの二人は仲がいいですね」と言っていなかったか?
そう思えば彼が落とされた理由も見当がつく。
嫉妬だ。
白崎と親しい間柄と勘違いされた彼はただの嫉妬によって殺されかけたのだ。
そして、そんな理由で殺人に走りそうな人物に彼女は心当たりがあった。
(檜山かその仲間の内の誰か、と言うか檜山の可能性が高いな。一度帰ったら心を読んで確かめるか。…………確かめてどうしよう? 斬り殺してもいいけど、それはどちらかと言えば彼に資格があるだろうし、私がでしゃばるべきじゃないか)
一度本気で斬り殺そうかと思ったが、落ちついて考えると被害者本人が罰を下すべきなのではという思考に至り、渋々諦めることにした。
「確かに伝えよう。じゃあなハジメ君、ユエさん。また近いうちにどこかで」
「ああ、またな」
「ん。元気で」
そうして二人に背を向け、彼女は一人迷宮へと足を踏み入れた。
ここまで出ようやく第一章終了
次回から、ちょっとはさんで本格的に迷宮攻略に挑みます
たぶん、ここよりかはさくさく進むはず。