Z46を見て一目惚れで、セリフを聞いてからはケッコン前提で育成・好感度上げもやって、「どんな名前にしようかな」って考えて。
いざケッコンして名前を付けてあげる時に、もうフィーゼって名前が自分の中で定着してて、最終的にその名前に決めました。
その時の喜びの気持ちそのままに書いたのがこの作品でした。

pixivで色々作品を書きましたが、私の中では一番思い入れの強い作品です。
なので、気に入ってもらえると幸いです。

※pixivに投稿した作品の加筆・修正版になっています。

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私の名前

 私には名前が無い。Z46――フィーゼと呼ばれるが、あくまで仮の名前でしかない。

 

 

 名前とは、この世界に存在した証。

 故に、生まれた時には既に存在する意味の無かった私には、名前など無い。

 

 それを悔しいと思ったことは無かった。正確には、悔しいという感情が分からなかった。 

 人は、体験しないと分からないことが多い。体験するから、分かることが多い。

 私は、物事を体験する事すらできなかった。

 だから、悔しいという感情を知る機会がなかった。

 

 あの時までは。

 

 KAN-SENとして建造され、私を出迎えてくれたのは一人の男だった。

 ――ようこそ、我が学園へ。君の名前は?

 不思議と、心が安らぐ声、心が温かくなる笑顔。

 彼を一目見て、私は心の何かが満たされるのを感じた。

 私は、名乗れる名前が無いこと、Z46――フィーゼという仮の名前を持つことを伝えた。

 その時、不意に胸が苦しくなる感覚に襲われた。

 ――大丈夫か?

 彼は心配そうに私に声をかけ、私は胸が苦しくなったことを伝えた。

 彼は慌てて医務室へと私を連れていった。

 

 検査の結果、体に異常は無かった。

 彼はホッと息を吐いた。しかし、ふと何かを考え込んでから、しばらく寝ているよう私に言った。

 言われた通りベッドに横になると、彼は医務室を出ていった。そしてしばらくすると、誰かが医務室に入ってきて、私のところにやってきた。

 ――よぉ、顔を合わせるのは初めてだが、俺はお前の姉貴分になるZ1、レーベ様だ。

 私と同じZの名前を持つ者、レーベ。これが、私達姉妹の初めての対面だった。

 姉妹での方が気が楽だろうという先ほどの彼の配慮だったらしい。

 

 この部隊のこと、他の姉妹のこと、仲間達のこと、そして先ほどの彼のこと。

 少しでも早くこの場所に慣れることができるように、彼女は色々なことを私に教えてくれた。

 私も彼女の言葉に耳を傾け、時には彼女に聞き返すこともあった。彼女は嫌な顔一つせずに様々なことを私に教えてくれた。

 姉妹だから、というのもあるかもしれないが、この面倒見の良さは彼女の生来のものなのだろう。

 そんな彼女――レーベに私は次第に安心感を覚えていった。

 

 彼女と私はどこか似ていた。

 当然だ。私は彼女と近い存在として生まれるはずだったのだから。

 しかし、彼女は私と違って感情豊かで、人間らしく、そして輝いて見えた。

 その輝きは何か。私は直感的に感じた。

 

 ――名前だ。

 

 彼女には名前がある。存在する意義がある。証がある。だから、私と似た存在でありながら、私と違って輝いている。ああ、存在の輝きとはこうも眩しいものなのか。

 そして……彼女は先ほどの彼から名前を呼んでもらえる。

 不意に、あの時と同じ胸の苦しみを感じた。

 ――大丈夫か?

 彼女は、先ほどの彼と同じように私を心配した。

 私は、また胸の苦しみがあったことをそのまま伝えた。

 ――何か、悔しいことでもあったのか?

 悔しい?悔しいとはなんだ?

 ――何だ、と言われてもな……ただ、今のお前、何だか悔しそうだった。

 悔しい?この胸の苦しみが悔しさということなのか?

 私は、彼女に伝えた。

 彼女に名前があること、私に名前が無いこと。

 そして、彼に伝えられる名前が無いことを考えた時、胸が苦しくなると。

 彼女は少し困ったような顔をして、少し待っていろとだけ言って医務室を出ていった。

 そして、すぐに先ほどの彼が入ってきた。

 不思議と、彼の姿を見ると安心できた。心が温かくなるのを感じた。

 ――レーベに言われてやって来たんだが……話を聞かせてくれないだろうか。

 彼が彼女の名前を呼ぶのを聞いて、また胸が苦しくなった。

 私は、彼女に話したことをもう一度語った。彼は何も言わず、じっとそれを聞いていた。

 そして、私が語り終えると、彼は優しい笑みを浮かべながら私の頭を撫でた。

 ――フィーゼ。

 彼は私の仮の名前を呼ぶ。

 それは私の本当の名前ではない、と私は言った。

 同時に、胸の苦しさが増した。

 ――仮だとしても、その名前は君が今ここにいる確かな証だ。

 私はハッとなり、彼の顔を見た。

 変わらぬ笑顔。優しい瞳。その瞳には、私が映っている。私が確かに存在している。

 

 フィーゼという名の、私が。

 

 ――今、君を撫でているだろう?それは、君がこの世界にいるからだ。

 ――今、君と話しているだろう?それは、君がこの世界で存在している証明でもある。

 ――そして、仮だとしても君にはフィーゼという名前がある。

 ――この世界にフィーゼという君は確かに存在している。

 

 ――だからフィーゼ……君は今、ここにいる。

 

 胸の苦しさが消えた。同時に、心が何かで満たされた。

 そして私は気付いた。

 

 そうか、私は彼に名前を呼んでもらいたかったのだ。暖かくて優しい、彼の声で。

 彼に私の存在を認めてほしかったのだ。

 彼女の輝きだけじゃない。彼女は、彼から名前を呼んでもらえる。

 私にはその名前が無いと思い込んでいた。だから、胸が苦しくなった。

 

 そうか、それが悔しさなのか。

 

 

 私がここに来て半年が経った。

 私は様々なことを体験し、色々なことが分かってきた。分かったつもりだった。

 それでも、この世界は私の予想を超えてくる結果を突き付けてくることがある。

 私は、それをいつしか楽しむようになってきた。

 そして、今は仲間達と海で戦っている。

 勝利する時もあれば、負ける時もある。

 勝利した時は嬉しいと、負けた時は悔しいと自覚できるぐらいには、私は感情を覚えた。

 悔しさで胸が苦しくなるのは今でも変わらない。

 おそらく、これは私が私である限り、永遠に変わらないのだろう。

 しかし、帰投してから彼に名前を呼んでもらうと、その苦しみはすぐに消えた。

 

 初めて彼と出会い、私という存在が意味を持ったあの日、私は彼に一つのお願いをした。

 フィーゼを私の本当の名前にしてほしい、と。

 確かに、その名は仮の名前だった。何の意味も持たぬ名だった。

 しかし、彼はその名前に意味を持たせてくれた。私に存在を与えてくれた。

 フィーゼ……その名前は、私にとって特別な意味を持つようになってしまった。

 だから、フィーゼという名前を仮の名前にしたくない。

 彼は微笑みながら、そのお願いを聞き入れてくれた。

 

 今日も、私は海へと出る。

 彼はいつものようにそれを見送ってくれる。

 ――いってらっしゃい、フィーゼ。

 愛する人が名前を呼んでくれる。

 未知なる存在と、新たなる出会い……それと巡り合うため。

 そして、愛する人に名前を呼んでもらうため。

 

「さぁ、いざ行かん!」

 

 

 私には名前がある。Z46――フィーゼという、本当の名前が。

 




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