この大戦艦に祝福を!   作:カフェイン中毒

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 作者は戦闘描写があまり得意ではないので、ベルディア戦があっさり風味で終わってしまいましたが、お許しください。でも書いてて楽しかった!


第12話

 凍り付き、気絶した御剣を介抱しに行く御剣のパーティーメンバーとすれ違うように、トンカチを拾い上げたカズマがこちらにふらつきながら戻ってくる。魔力不足だ。初心者魔法とはいえあれだけ魔法を連発したうえ、トンカチも使ったのだ。仕方ないと言えるだろう。

 

 「・・・どーだお前ら!勝ってやったぞ!」

 

 わっとカズマに駆け寄るアクア、めぐみん、ダクネス。わたしもカズマに歩み寄り、思ったよりも怪我が少ないことを確認する。よくやった、カズマ。

 

 

 「何よカズマ!あんたやればできるんじゃない!」

 

 「そうですよ!自分より格上の相手に対して、完勝じゃないですか!」

 

 「うむ!正直胸がすいた思いだ。ところで提案なのだがカズマ、そのトンカチで私をどうか一発・・・・「しねえから」・・・そうか」

 

 「はっはっは!もっとほめたたえろ貴様ら!・・・まあ、武蔵さんへの悪口がなかったら適当にかわしてただろうけど「カズマ」・・・武蔵さん」

 

 「危ない真似をして!と叱りたいのは山々だが、私のために怒ってくれてうれしかったのも事実。・・・ありがとうカズマ。・・・強くなったな!」

 

 「おうっ!」

 

 傷だらけの顔でニカッと笑うカズマはこの世界で見た何よりも輝いて見えた。

 

 

 翌日、アクアのヒールですっかり治療を終え、元気いっぱいのカズマとともに食事をとっていると、またも御剣が襲撃してきた。重そうな頭陀袋を担いだ御剣は昨日と違いつき物が落ちたような顔をしている。というか近づいてくるまで御剣だとわからなかった。なんだこいつ別人じゃないか。

 

 「ああ、ここにいたのか。すまない、少しいいだろうか?」

 

 「なんだよ。正直こっちはもうお前の顔見たくないんだけど?」

 

 「それは・・・すまなかった。昨日は頭に血が上りすぎてどうかしてたんだ。正面から君に負けて自分がどれだけ失礼を働いてたか気づいたよ。それとこれ、檻の代金と迷惑料を上乗せしたものだ。受け取ってほしい」

 

 「お、おう・・・ほんとにお前昨日の御剣か?」

 

 「そうだけど?ああ、決闘の最後、武蔵さんに謝れと言っていたね?昨日負けた後に町の人から話を聞いたよ。挑発するためとはいえ面と向かって彼女の悪口を言ったことを許してほしい」

 

 「なんだ貴様、昨日も最初からその態度でいれば無用な騒ぎを起こさなかっただろうに・・・」

 

 「あなたが武蔵さんですね?昨日はごめんなさい。彼を挑発するためとはいえとんでもないことを口走りました。許していただけないとは思いますが、どうか謝罪を受け取ってください」

 

 あまりにも殊勝な態度をとる御剣に対して、私は怒る気すらなくしてしまった。もともと私は長く怒りをため込むのが苦手で、謝りさえしてくれれば許すようにしていた。怒っていても楽しくないからな。私はため息をつき

 

 「もういい、檻の代金も迷惑料も含めて受け取った。今後は相手の話をきちんと聞いて自分の中で捻じ曲げないようにしろ。私から言うのはそれだけだ」

 

 「・・・ありがとうございます。では、僕はこれで。僕がいてもご飯がまずくなっちゃうだろうしね」

 

 そう言って御剣は待たしていたらしい昨日のパーティーメンバーと一緒にギルドから出ていった。パーティーメンバーも御剣を傷つけたことを恨んでる様子はなく、手を振り一礼して出ていった。

 

 私とカズマは目を見合わせ、そろってこう言った。

 

 

 「「なんなんだ?あいつ」」

 

 よくわからん奴だ、御剣響夜。

 

 

 

 それから幾日かたった日、アクセルの町中に緊急放送が響いた。

 

 「伝令!伝令!戦える冒険者の皆さんは正面門へ!さらにサトウカズマさんのパーティーは急いで正面門へ!」

 

 急いで正門前へ向かう。私がついたころにはすでに武器を持ち待機する冒険者の面々の前には、大量のゾンビとゾンビナイト、さらにさまざまな死霊系モンスターを引き連れたベルディアがいた。

 

 「なぜ城に来ないのだ!この人でなし共がああああああ!!!」

 

 ・・・・あっ・・・そうか、こいつはダクネスの呪いが解けたことは知らないんだった。てことはこいつには私たちが仲間を見殺しにしたうえでのうのうと暮らしてるように見えるのか。

 

 「城に来ないもなにも、もう爆裂魔法は打ち込んでないだろ?なにをそんなに怒ってるんだ」

 

 「確かに、そこの紅魔族の娘は来ていない・・・が!代わりに誰か知らんが毎日毎日城の壁に聖水をぶっかけて帰るバカがいるのだ!しかもこれが無駄に強力で城全体が聖の力に包まれ無駄に生活しづらい!なんだ!?新手の嫌がらせを思いつきすぎだろう!?いい加減にしろ!」

 

 ふむ、聖水・・・無駄に強力、そしてこの状況でこんなことをしそうなやつといえば・・・・

 

 「わ、わわ、私じゃないわよ!?」

 

 はーいアクアだったー・・・勘弁していただきたい。私がめぐみんにしたことがすべて無駄になった瞬間である。・・・思考を切り替えろ、「何人の犠牲」でやつを討伐できる?

 

 「てめえこのクソ女神!何のために武蔵さんがめぐみんを叱ったと思ってるんだ!?どうやって責任を取る気だよ!」

 

 「わあああーっ!ごめんなさいごめんなさい!だってあのアンデッドにクエストを受けられない腹いせがしたかったんだもの!私はあいつのせいで毎日店長に怒られてるのよ!?」

 

 アクア、それはお前が悪い。じりじりと包囲を詰めていく冒険者たちに対して、ベルディアは気にせず怒りをぶちまけた。

 

 「我が怒っているのはそれだけが理由ではない!貴様らは仲間を助けようという気概すらないのか!?我の呪いを身を挺してかばったあの騎士の鏡のようなクルセイダーをみすて・・・る・・・など・・・?」

 

 「・・・・なんか、申し訳ない」

 

 「えええええええええええええええええ!?」

 

 元気に謝るダクネスに対して素っ頓狂な声を上げるベルディア。気持ちはわかるがカリスマと言えるものがなくなっていてなんだかなあ。

 

 「ぷーくすくす!なに!?私が呪いを解いたことがそんなに驚きかしら!?もしかして解かれたとも知らずに城でずっと待ってたの!?でも、ここであったが100年目!アンデッド滅するべし!くらえ!ターンアンデッド!」

 

 「ふん!魔王様から頂いたこの鎧、貴様ごときの浄化魔法なぞたやすく無効化するぬわあああああーーーっ!?」

 

 アクアが放った白い光を浴びたベルディアは、鎧の関節から黒い煙をだして悲鳴を上げた。さすが女神、無駄に性能が高い。

 

 「ねえカズマ!おかしいわ!?効いてないのよ!?」

 

 「いや、バリバリ効いてると思うんだけど?」

 

 「ぐ、ぐぬ・・・ええいもう堪忍袋の緒が切れたぞ!お前ら!この町の人間を根絶やしにするのだ―――!!」

 

 合図が下されたアンデッド系のモンスターが一斉に町を襲い始める・・・と思いきやその大部分はなぜかアクアに向かって突進し始めた。いや、これならば!

 

 「アクア!そのまま囮になれ!カズマ、アクアを誘導してやってくれ。他の冒険者はアクアからそれたアンデッドの排除を!」

 

 「ちょっとまって!?」

 

 「わかった!」

 

 「「「「おうっ!」」」」

 

 アクアだけ不満たらたらのようだがまあうまいことやってくれ。私は背の艤装以外を身にまとい、ベルディアの前へ立つ。

 

 

 

 「自分だけ高みの見物か?騎士にしてはいい趣味をしてるではないか」

 

 「ぬかせ、戦の指揮も騎士の仕事よ。我の前に立つ意味・・・分かっておろうな」

 

 「私の拳で情けない声を上げ、逃げていった魔王軍のくず鉄が言うではないか。鎧がなければ何も出来ぬ怨霊が、一端の口を利くものではない」

 

 「吐いた唾は吞めぬぞ、娘」

 

 「もう賽は投げられた。貴様は逃がさん!!」

 

 そのまま飛び込み、拳を振るう。ベルディアが迎撃のため大剣をを振るい、私の拳とぶつけるが、剣と拳は甲高い音を立て拮抗している。余波が草原の草を揺らし衝撃波が空をかける。やはり魔王軍幹部、片手で振るった剣で私と拮抗してくるとは。

 

 「ぐ、ぬ・・・!貴様思ったがなんという力をしておる!ほんとに人間か!?」

 

 あ、違ったこれかっこつけてやせ我慢してるだけだ。プルプルと震える剣を力を込めてもう一度押してやると大半の力を受け流してなお押され、ベルディアはたたらを踏んだ。

 

 そのまま背の艤装を顕現、さらに腰の艤装を動かしベルディアに向かって

 

 「主砲、副砲照準よし!撃て!」

 

 「ウテー!」

 

 すさまじい音を立て、ベルディアに向かう私の砲弾を4つ切り捨てたベルディアだが、副砲の砲弾をまともに受け、吹き飛んでいった。

 

 「妖精さん・・・いまアレ、砲弾斬らなかったか?」

 

 「キッタ!キッタ!」

 

 「えぇー・・・・この世界の騎士って怖いんだな」

 

 しかも周りのことを考え、火薬をあえて少な目に作った砲弾とはいえ切り捨てるのは至難の業だ。起き上がり、こちらに向かってくるベルディアの鎧は着弾の跡はあれど多少へこんだだけだ。

 

 「やるではないか!この町にここまでできる人間がいるとはな!このベルディア!全力を出そう!」

 

 「ふむ、そちらも流石は幹部と言っておこう。私も、本気を出さねばなるまい」

 

 機関に火を入れる。今までは私の素で戦ってきたが艤装を完全に起動することで艦娘としての力をフルに使う。人としてではなく船として、戦艦として力の規格があがる。踏みしめる足が地面にひびを入れ、拳には前以上の力を。向かってくる私に対して頭を投げたベルディアが両手で剣を持ち近づいてくる。

 

 私も拳を突き出し、殴りかかる。同じようにぶつかった拳は拮抗せず、完全に流される。流され無防備になった私の首にベルディアの剣が迫るが、腕を差し込んで止める。私の鋼以上の硬度を誇る体を切りつけることが出来ず、甲高い音を立て私の体をひっかいた剣が抜ける。

 

 と同時に、私の後ろで爆裂魔法がとどろいた。ちらりと確認すると囮になったアクアにモンスターを集中し撃破したようだ。めぐみんを安全な位置に置いたカズマが近づいてくる。まずい!

 

 「よせカズマ!来るな!」

 

 「もう遅い!」

 

 私より速さで勝るベルディアがカズマに瞬時に近づき、剣を振るう。思わず目をつぶるが、ガキンと音を立てた音に現実に引き戻され、目を開けると・・・御剣が、ベルディアの剣を防いでいた。

 

 「すまない!町の中に入ったアンデッドを掃除してたら遅くなった!魔王軍幹部ベルディア!ここからは僕も相手だ!」

 

 魔剣グラムを振るい、ベルディアに斬りかかる御剣の剣をよけたベルディアが瞬時に私たちと距離をとる。彼らに合流しどうするかを相談する。

 

 

 

 「御剣、助かったぞ。カズマ、ひやひやさせるんじゃない」

 

 「いや、僕も遅くなって悪かった。しかしあの幹部、僕のグラムで斬れなかった。隙がないね」

 

 「ごめん武蔵さん。すまん御剣、助かった。さっきアンデッドと戦ってて気づいたんだけど、あいつら水を異様に嫌がるんだ。だから今、アクアが準備してる」

 

 「アンデッドは流水を嫌がるってやつかな?そうすると僕の仕事は時間稼ぎかな。任せて」

 

 「援護しよう、そのまま突っ込め。カズマは私が合図したらアクアにやるよう伝えてくれ」

 

 「わかった!」

 

 「じゃ、いくよ!」

 

 ベルディアに突っ込む御剣、私はベルディアに向かって砲撃を繰り返し、奴をその場に縫い付ける。御剣とヤツが斬りあいを始めた。やはり剣技はやつに分があるようだ。私は御剣の体に当たらないように砲撃をベルディアに当てにかかる。針の穴を通すような作業だが、私と妖精さんにかかれば余裕だ。

 

 先ほど投げたやつの頭を体がキャッチ、もう一度投げようとするので御剣が妨害しにかかる、いまだ!

 

 

 「カズマ、やれ!」

 

 「アクアーーーーーーーッ!」

 

 「セイクリッド・クリエイトウォーター!!」

 

 カズマの合図で魔力を開放したアクアから凄まじい水が・・・というか半ば洪水ではないか!下がってきた御剣とカズマをひっつかんで、門やその周辺を破壊し、こちらに迫る濁流に飛び乗り艦娘としてのスキル「水上航行」を発動させて水の流れに乗る。

 

 「やりすぎだ馬鹿者――――――っ!」

 

 「さすがアクア様・・・・」

 

 「御剣、お前ぶれないな・・・」

 

 やがて水が引き、巻き込まれた冒険者が死屍累々と積み重なる中、膝をつき、剣で体を支え立ち上がろうとするベルディアに対して私、御剣、カズマ、アクアが近づく。

 

 

 「ぐぬぅ・・・このベルディア、たとえ今敗北しようとも・・・ただでは終わらぬ!」

 

 立ち上がり、剣を掲げたベルディアに対し、私と御剣が瞬時に対応する。

 

 「往生際が悪い!負けを認めるんだ!」

 

 御剣がやつの両手を斬り飛ばし

 

 「すまんが貴様にくれてやるものはこの町にはない!」

 

 私の拳がやつの胴鎧に大穴をあける。膝をつき、頭を落とした奴は、まだ抵抗しようともがいていた。鎧は半壊し、部下は全滅した魔王軍幹部はそれでも誇り高く己の使命を果たさんと動く。

 

 「まだ、まだ終わらぬ!何も残せぬままでは示しがつかぬ!」

 

 「あんた、俺たちにとっちゃ敵だったけど、魔王軍にとっちゃ重宝されてたのかもな。でも、俺たちだって死にたくねえんだ。だから、せめて安らかに逝ってくれ。アクア、頼む」

 

 「アクシズ教においてアンデッドは滅すべき存在だけど、死後の幸福くらいは保証してあげるわ。むこうに行ったら白い髪の女神がいるから、あんたの希望くらい聞いてくれるかもね・・・セイクリッド・ターンアンデッド!」

 

 アクアが放った魔法によって、アクセルの町を騒がせた魔王軍の騎士は、その鎧すら残さずに浄化された。

 

 

 奇跡的にも、魔王軍襲来という厄災を負傷者はいれど死者0人というほとんど無傷でしのぐことに成功した。・・・何か忘れているような気がするが、今はこの幸運をかみしめよう。

 

 

 

 

 

 

 




 前の話で御剣君を悪く書いたので、今回は彼のいいひと部分をピックアップ。カズマが賭けの報酬を「武蔵さんに謝る」ことに使ったのでグラムは売り飛ばされず、参戦できたというわけですね。

 次からはほのぼのギャグ、オリジナル回も混ぜれたらいいなあ。
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