「依頼?武蔵さんが俺たちに?えーと・・・武蔵さん、変なものでも食べた?」
「お前にそんな心配されるとそこはかとなく悔しいな。私はいたって正気だ。そのうえでお前らに依頼を出したいと思っている」
私の唐突な申し出にカズマは目をぱちくりさせて明後日の方向へ心配してる。カズマ、私は別に拾い食いをしたわけではない、だからその可哀そうなものを見る目を今すぐやめるんだ。
「いや、でもさ・・・現状俺らが武蔵さんの役に立てることってなくない?」
「ちなみに報酬は行き帰り6日間で500万だ」
「すぐ準備させていただきますっ!」
「現金な奴め。では明日の10時に依頼内容について説明するからアクアたちを連れて私の家に来い。まあよっぽどのことがなければプチ旅行みたいなものですむだろう」
「あいつらがついてくるとそのうち遭難でもするんじゃないかなと」
多分それはないだろう。多分だけど。依頼を承認したカズマがアクアらに説明に行くため宿屋につったかたーと駆けていくのを見送って、私も自分の家に帰るのだった。
翌朝、いつも通り起床ラッパ(今回はホラー風だった。妖精さんは芸が細かい)で起き、適当に朝餉を食べて妖精さんと一緒に資料を作る。何でもアルカンシアまでの海域は割と複雑らしくて、しかも魔物の山と来た。私も資料なしで解説できる気がしない。
「お邪魔するわよー!なんでもあたしたちに依頼があるそうじゃない!」
「おいアクア!勝手に入るんじゃねえ!せめてノックをだな・・・」
「いいじゃない。私は女神なのよ?これくらい許されてしかるべきなの!」
「アクアの妄言はさておいて、お邪魔します」
「妄言ってなによーーー!!!」
「やかましいぞアクア。武蔵、邪魔をする」
ワイワイぞろぞろと、開けておいた扉から勝手知ったる我が家といった感じでアクアたちが入ってきた。うむ、朝から大変元気なようで喜ばしい。だがノックはしろ、今お前らの中で一番常識的なのはクズマさんことカズマだぞ?
「おお、おはよう。元気そうで何よりだ。カズマ、突っ込むだけ無駄だ。こういうのは受け入れるのが肝要なのだぞ」
「なんで武蔵さんは諦めてるんだよ・・・」
「どうせ言っても聞かないからな。ある程度は好きにさせておけばいい」
「あ!これ高級シュワシュワじゃない!もらうわねー!」
そう、こうして人の冷蔵庫を勝手に漁って気に入ったものを勝手に開けて飲み食いし始める欠食児童どもに航路の安全を任せると思うと涙が止まらないが、一番効果的なのが彼女たちである以上私は涙を呑んで依頼について説明する所存である。だが飲み食いした分はあとで個人宛に請求させてもらう。そのシュワシュワにベーコン・・・・私の晩酌用だったのに・・・
なぜかプルプル震える私の拳をそっと抑え、なぜか私の部屋で飲み始めたアクアに対し、自然と出てしまったげんこつが彼女を撃沈したのを確認した私は、深い深いため息をついて本題を切りだす。
「さて、依頼の本題だが」
「さも当然のように撃沈したアクアは置いておいて、どうして私たちに依頼を?」
「うむ、それはだな。監獄島アルカンシアは知っているな?」
「ちょっとー!なんで私は放置なの「うるさい」きゃいん!?」
「アルカンシア?どこだそこ」
「カズマは知らないのか?この国の凶悪犯罪者が収監されている島だ。文字通り監獄しかないから監獄島アルカンシアというわけだな」
「ダクネスの言う通りです。なんでも、周りの海には凶悪なモンスター、季節によってはアンデッド系モンスターすら出るとか」
「地図で言うとこのあたりだな。今ダクネスとめぐみんが説明した通り、基本死刑か終身刑の犯罪者が収監される流刑地だ。ベルディア討伐前にそこに囚人、看守、物資の輸送依頼を受けたんだが・・・」
「それって、私に怒った時に言ってた欠航した便というやつですか?」
めぐみんが気まずそうに私に尋ねてくる。まあ、おおむねその通りなんだがそんな傷ついた子犬みたいな顔をするな、罪悪感がわいてくる。
「まあ、そんなところだ。で、問題なのがこの監獄島アルカンシア周辺の海域とそれに行くための航路だな。これらは通称
「なんでそうなったんだ」
「大体私たちの同類のせいだ。探してみれば私たちの同輩がこの世界に残した爪後は大きいのだ。私も見つけるたびにどうしてこうなったと思っている」
本当に日本人はこの世界で好き勝手しすぎではないだろうか。海図を買った時著者にゴール・D・ロジャーとあったときは私の目がどうかしたのかと5度見くらいしたものだ。別に彼自身は海賊ではなかったしひとつなぎの大秘宝もなかったから日本人だとわかったが。
ちなみに本題から外れるが二次元キャラになって転生した人は意外と多いらしく、私にも何人か知り合いがいる。というかこの世界、強いやつは大概日本人か特典の神器を使っているかなので割と世間が狭い。王都の騎士団にも二人知り合いがいるが、その知人曰く「多分日本人一人いたら3人くらい別の日本人とつながっている」とのことだ。いくら何でも移住計画進みすぎであろう。と、元凶のたんこぶこしらえた水色の女神を見ながら話題を元に戻す。
「で、さっきめぐみんが説明した通りこのバミューダトライアングル周辺では季節によってアンデッド系モンスターがでる。ただのモンスターならどうとでもなるが物理攻撃が意味をなさないアンデッド系モンスターの中のゴーストやレイス、これらの対処を頼みたい」
「それはアクアだけではだめなのでしょうか?」
「これを一人にしたらきちんと働くかどうかわからんだろう」
「「「あーーー」」」
「何で納得してるの?!ねえ!?」
普段の自分の行いと私の部屋に来てからの行いを省みてから言うといい。転生当初からあったはずの女神への敬意はもう遠く彼方にあると言ってもいいだろう。別に働かないわけではないだろうがカズマの苦労の7割はアクアが原因である。そして現状の借金もベルディアのせいとは言えアクアに原因がないとも言えない。なのにこの女神は積極的に働くのを嫌がるうえ贅沢はしたいと来たものだ。カズマが尻をひっぱたき、物理的に連れまわして働かせてるのが現状なのである。それはこの納得も頷けてしまう。
「とまあこんな具合で、アクアにはアンデッド系モンスターの対処、そのほかの面々は一緒に乗り込む看守たちと囚人の面倒を見てもらう。何か質問は?」
「カズマから聞きましたが、報酬が500万エリスというのは本当でしょうか?相場と比べても随分高いようですが・・・」
「ああ、それはだな。実は割と適正なのだ。今回の私に来た依頼は国から降りたものだが、報酬が減額されても7000万エリスだ。結構な額だが死ぬ確率が高いと判断される海域に自ら行くのだぞ?まあ普通に高くなるのはわかるだろう。場合によっちゃ船ごと沈むなんてこともざらだ。実際アルカンシアに赴任する看守は任期を務めあげて生きて帰れれば、もう一生働かなくていいくらいの金額が転がり込む、それを運ぶ私たちへの報酬も自然と高くなる、というわけだ」
「危険手当みたいなもんか」
「そういうことだ。そしてダクネス、なんだか紅潮してるところ悪いが直接モンスターと戦うことはないので期待はしないように」
紅くなった頬に両手を当て、興奮したようにいやんいやんと身をよじっているダクネスに注意をするが、こいつが興奮に任せて甲板にでて主砲が使えなくなるのが今のところ一番心配だ。そしたらめぐみんに爆裂してもらって引きずりおろすのが一番楽だろうな。
「そんなのはわかっている!わかっている・・が・・・屈強な囚人たちに組み敷かれて・・・うぇへへへへ」
「カズマ、こいつらとよくパーティー組んでいられるな」
「察してくれて大変うれしいよ武蔵さん」
「まあそれはいい。カズマ、いつも通りうまくまとめてくれ」
「まとめられたら今頃借金返済し終わってるんだよなあ・・・」
「訂正、
「努力するわ・・・」
「政治家並みに期待できない返答だが、まあ仕方あるまい」
めぐみんは爆裂散歩を再開したらしいが、平原に打ち込むだけで建物とかがないところをわざわざ探して打ち込んでると聞くあたりめぐみんも自分の欲望を制御できるようになったみたいだが、
「他に質問はないか?」
「出発はいつなのだ?」
「明後日だ。明日のうちにアクセルを出て、カズマはわかると思うがブラストから出発し、アルカンシアに直で向かう。船は私のものを使う。お前たちがよければそのまま一緒にブラストに向かうがどうする?」
「俺はいいけど、お前らは?」
「私は構わないわ!」
「私も構わないが」
「私も大丈夫です。それよりもムサシ、ずっと気になっていたのですが、その胸元のリングは・・・?」
めぐみんが気になっているらしいのは、普段はつけていないカズマからもらったリングネックレスだ。冒険者として活動するときはつけていないからな。依頼をしないときはつけているのだが、いかんせんローブだから見えない。部屋着でいる今だからこそ見えているこれが気になったのだろう。
「あーめぐみん、これはだな・・・」
「ああ、これはカズマからもらったものだ。なかなか良いセンスをしてるからな、愛用している」
「「「えーー!!」」」
「ちょっとちょっとカズマ!私にするならともかくなんでパーティーメンバーじゃない武蔵にプレゼントしてるのよ!しかもこんな高そうなもの!」
「そうですカズマ!もしかして旅行に行ったときですか!?そうなんですね!?羨ましいです私にもください!」
「なんだ、よかったではないか武蔵。カズマも隅に置けないな」
「そうじゃないです!ムサシって左薬指に指輪してるじゃないですか!恋人とかいるのですよね!?」
「む?」「へ?」
ああ、ケッコンカッコカリの指輪はいつも見えてるからそういう解釈になるのか。カズマには説明してあったから誤解なく渡してきたが・・・むふふ、めぐみんは案外耳年増なのだな。
「別に俺が武蔵さんにプレゼント渡したっていいだろ。いつも世話になってるんだから」
あ、カズマが悪い顔してる。私を巻き込んでめぐみんをからかう気だな?しかたがない、付き合ってやろう。
「そうだぞめぐみん。私たちの関係なら(日本人同士)別にそういうことをしても不思議ではあるまい、なあカズマ?」
「そーそー。俺と武蔵さんは仲がいいんだ。(同郷だから)いろんなことも分かり合える関係なんだぞ」
「なっ・・・えっ・・・あ・・・・?」
めぐみんが真っ赤な顔になってるのを気にせずやけになって飲み続けるアクアとトリップしてるダクネスをほっておいてめぐみんをからかい続ける。いやーうまいこと勘違いしてて見てて面白いなあ!
「えっでも・・・カズマとムサシはよく一緒にいるし、仲もいいし、いつの間に!?・・・でもカズマは指輪をしてないしそんな素振りもあっムサシからもらったトンカチ・・・・えっえっ?」
にやにやとカズマと二人してめぐみんを観察してると顔をさらに赤くしてぐるぐると混乱しだしてしまったのでカズマと顔を合わせて吹き出し、大笑いしてネタバラシする。
「ぶっははははははは!!!めぐみん、騙されすぎだよ!武蔵さんに恋人はいないし俺とそんな関係じゃない!」
「くっくくくく・・・・!!そうだ。この指輪は私の神器の核みたいなものだ。カズマとは別にそういう関係ではない。まあこのネックレスはカズマからというのは事実だが」
「いつも世話になってる礼以上の意味はねーよ。というかお前に相談したじゃねえか。普段使いするもんで邪魔にならないもんねえかって」
「あれはてっきり冗談だとばかり・・・!それよりからかいましたね二人とも―!私を弄んだ報いを受けてもらおうじゃないか!」
「変な風に勘違いしてるのが悪いんだぜー?耳年増のめぐみんさん?」
「カズマーーーー!!!」
カズマとめぐみんがじゃれあってるのを見ながらアクアのシュワシュワを奪って一気飲みする。アクアが「私のシュワシュワ―!!!」と言って泣き叫んでいるがこれは私のしゅわしゅわだ。お前への報酬から天引きしておいてやるからな。
くすくす笑いながら二人のじゃれあいを眺めていると、トリップから返ってきたダクネスが話しかけてきた。
「なあ武蔵、実際のところカズマとはどうなんだ?」
「なんだダクネス、お前もそういうのが気になるのか?ドMなのに」
「くぅ・・・・そ、それとこれとは別問題だろう!・・・で、どうなんだ?」
「ふふふ、私とカズマの関係は、そうだな・・・親友・・・か?私がそう思っているだけだがな。この先どうなるかはわからん」
「随分と曖昧なんだな」
「人間関係とはそんなものさ。もしかしたらあのじゃれあってる二人が好き同士になることだってあるかもしれない。変わりやすいものなんだよ」
脇をくすぐりあって笑いながら取っ組み合う二人を見ながら、私はダクネスにそう返すのであった。
別作品のキャラを転生者として出してもイイかしら?武蔵さんしかそういうのがいないって案外違和感ない?
次回、出航編になります
追記
もし他転生者を出すとしてもその章限りのゲストとか1話限りとかそんな感じになるのでこのすば本編に関わることはありません。オリジナルの話の中でカズマ一行と旅する中、その場所に住んでる人々みたいな感じになります