この大戦艦に祝福を!   作:カフェイン中毒

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 ・・・話が進まねえ!


第16話

 特に何も起こらずにブラストについた。私やゴーヤはよくこの町を利用するから特に物珍しいものはないが、2回目のカズマや初めてくるアクア、めぐみん、ダクネスは興味深々のようだ。早速カカナッツを買ったりして満喫している。

 

 「んー!これがカカナッツなのね!美味しいじゃない!」

 

 「乾いて茶色になったものしか見たことありませんでしたが・・・採れたてだと緑色なんですね」

 

 「さすが貿易特化都市・・・!興味深いものがたくさんあるな」

 

 「おーいお前ら、一応仕事なんだから離れるんじゃねえぞ」

 

 「にぎやかなのはいいことでちー」

 

 「トラブルがなけりゃな、俺もはしゃぎたいよ・・・」

 

 「ほらほら、お前たち!今から依頼相手のほうに挨拶に行くぞ!今回は民間相手じゃないからって適当やったら私が許さないからな!」

 

 完全に観光気分になる前にアクアたちを先導してギルドまで行く。今回は罪人輸送という都合上私たちが来るまで別の冒険者が見張り等についているため出来るだけ早めに合流しておかないと心証が悪くなってしまう。アクアたちはぶつくさいいながらもおとなしくついてきた。

 

 ギルドに入ると既にこの国の看守の制服を着た男が待っていた。彼は私が入ってきたのをちらりと確認し、私担当の受付嬢から耳打ちをされるときびきびした様子でこちらに歩いてきた。年のころは30代ほどだろうか?鍛え上げられた肉体と気真面目そうな顔をしている。

 

 「お疲れ様です。日乃本鎮守府代表の武蔵様でいらっしゃいますね?自分は今回の護送任務の取り纏めをしておりますクルーヴと申します。今回はお受けいただき感謝します」

 

 「丁寧に感謝する。日乃本鎮守府の武蔵だ。今回のものは私たちの会社の不手際、本来ならこちらが金を払ってやらねばならないことを報酬付きにしていただいてるのだ。どちらかと言えば私たちが頭を下げたい」

 

 「いえいえ、魔王軍幹部の討伐・・・素晴らしい戦果です。上も理解しているからこそ、またあなた方に依頼を申し込んだのですよ。それにこの季節のアルカンシアまでの道のりは険しいなんてレベルじゃありません、あなた方の実力があればこその依頼です」

 

 「そう言っていただけるとこちらとしても嬉しい。すまないがこちらとしても万全を期すため同行者をつけさせていただく。まずこちら、要人護衛、護送担当の伊58だ」

 

 私に紹介されたゴーヤがピシッと海軍式の敬礼を決めて自己紹介する。これも慣れたものだな、よく成長している。3か月前のガチガチに緊張して噛み噛みだったころとはもう似ても似つかないであろう。

 

 「伊58でち!要人護衛、護送を基本的に担当してるでち。今回の任務では主に海中の索敵・・・敵感知と場合によっては掃討もする予定でち。よろしくお願いします!」

 

 「そしてこちらが今回雇った冒険者のパーティーだ。魔王軍幹部の討伐にも一役買うどころかとどめを刺したのが彼らだ。特にアンデッド系のモンスターに対しては強いアドバンテージを持っている。代表はそこの彼、カズマだ」

 

 私に促されたカズマは若干戸惑った様子で前に出た。そういえばもともと引きこもりだったか?結構遠慮なくコミュニケーションをとっていたから忘れがちだが・・・大丈夫か?

 

 「カズマっす。そこの水色のがアクア、魔女っ娘がめぐみん、鎧着てるのがダクネスです。武蔵さんには日ごろから世話になっていて、その縁で今回の依頼を受けましたが精いっぱいやらせてもらうんでよろしくお願いします」

 

 カズマが紹介するたびにメンバーが会釈をしていき、最後でカズマが頭を下げた。なんだ、いらない心配だったか。まあ主にアクアがやらかすせいで謝罪行脚してるから挨拶の一つや二つできるようになってしかるべきなのかもしれない。

 

 クルーヴ殿はこちらの世界の敬礼を答礼として返し、快活な笑顔を浮かべながら話し出した。 

 

 「心強いですね「アクセルの不沈艦」、それにその本人が信頼してる冒険者と仕事の一部を任されてる社員が護送をしてくれるとは。では、今回護送する看守30名と囚人300名のリストがこちらになります。それと必要物資のリストもこちらに。それと監視の引継ぎをお願いしたいのですが・・・」

 

 「感謝します。アクア、めぐみん、ダクネスは囚人のところに行ってくれ。妖精さん!彼女らについていって監視の引継ぎを頼む。ゴーヤとカズマはここに残って役割を煮詰めるぞ。行動開始!」

 

 「外に出れば部下が待っているはずです。彼についていってください」

 

 「リョーカイ!」

 

 「わかったわ!さ、案内頼むわね」

 

 「アクアダー!」

 

 「ええそうよ、アクア様よ!あがめなさい!」

 

 「ハハー!」

 

 なんてやり取りをしながらアクアたちは去っていった。アクアはなぜか妖精さんに大人気だ。性格が比較的近いからか?それとも妖精さんと同じような不思議存在でシンパシーを感じているからだろうか?まあ見てるだけならいい眺めだし別に気にしても仕方ないか。

 

 「えーと、クルーヴさんでいいですか?俺アルカンシアっていわれてもよくわからなくて・・・具体的にどんな人が行く場所なんですかね?」

 

 「む、カズマ様は外の国から入ってきたのですか?アルカンシアは基本的には死刑囚や終身刑を受けた人間が刑の果てに行きつく場所で、盗賊団やカルト教団の教祖などの重犯罪の主犯格が主に収監されています。アルカンシアは行くにも出るにも難しい場所にありますから、万が一脱走して逃げられても逃げる途中で果てる、というわけです」

 

 「こわい話でち。どうせ囚人もひげ面のおじちゃんたちばっかりに決まってるのでち」

 

 「そりゃ決めつけすぎだろ・・・女の人もいるかもしれねえだろ?」

 

 「ああ、今回の護送は男だけですよ。男女一緒に運ぶと面倒なことになることがたまにありますからね」

 

 「ああ・・・さいですか・・・」

 

 何を想像してのか知らないが苦虫を噛み潰したような顔をしたカズマとよくわかってないゴーヤをほっておいて仕事の話をすることにしよう。私は海図を取り出してテーブルに広げてあらかじめ書いておいた航路に沿って説明を始める。

 

 「今回このような航路でアルカンシアまで行くことになる。道中のアンデッド系モンスターはアクアに結界をはってもらって対処、もし超えてくるようなことがあればアクアが直接浄化という形を取りたい、大丈夫か?」

 

 「あいつの結界なら相当のことがない限り大丈夫だと思う。余計な気を利かせたりしなけりゃだけどな。それ以外はどうするんだ?」

 

 「海上では私が、海中ではゴーヤが主に警戒を行うが・・・ゴーヤは基本的に武蔵(わたし)の中にいてもらう。何時間に一回か潜ってもらってソナーによる探索を行い、場合によっては先制雷撃等で処分してもらうことになるな。いいな?ゴーヤ」

 

 「ずっと潜ってなくていいでち?そのくらいだったら全然問題ないでちよ?」

 

 「そもそも武蔵(わたし)を物理的に如何こうできるモンスターがいれば私にもわかる。いるとわかってから潜ってもらってもはっきり言って問題ないわけだが、念のためにというやつだ」

 

 「まああんま役には立てねえだろうけど一応俺も敵感知スキルはあるから、もし船の中でなんかありゃわかるよ。ずっと海の中で一人っていうのも寂しいじゃないか」

 

 まあそんな私情でミスがあっても困るからゴーヤには結構動いてもらうつもりではあるが・・・片道二日かかる道のりをずっと海の中にいさせるというのも酷な話だ。多少は船の上にいても罰は当たるまい。武蔵(わたし)の巨体に対して積極的に攻撃を仕掛けようというモンスターはあまりいないだろうからな。

 

 「と、こんな感じで考えてるが・・・クルーヴ殿からは何かあるか?」

 

 「いえ、そこまで考えられてるなら自分が口を出せるものはありません。むしろ私たちが何か手伝うべきだとは考えてたのですが・・・」

 

 「航行に関してはこちらですべて賄えるから問題ない・・・が護送中に囚人の管理だけはすまないがそちらでやっていただきたい。必要に応じて妖精さんを貸し出すつもりではあるが・・・脱走でもない限り私たちが手伝える余裕はおそらくないだろう。ぎりぎりめぐみんやダクネス、場合によってはカズマを送るが・・・人に対してはあまり役に立たないと考えてもらって構わない」

 

 「それ関しては本業ですのでお任せいただいても構いません。むしろ食事等も提供していただくのにそれしかしないのはと思っていたところです」

 

 申し訳なさそうにクルーヴ殿が言う。気にするような話ではないというのに、調理室は一部屋しかないのだから(士官室はまた別だが)まとめて作ったほうが効率がいいのは当然だ。囚人たちには国で決まったメニューがあるのだからそれを出しておけばいいし、普段の運行に比べたら客を気にしないでいい分こちらのほうが楽なのかもしれないな。

 

 「それならば自分から言うことはありません。では、よろしくお願いします」

 

 「ええ、それでは私たちは一足先に波止場に行って船を準備しておきます。囚人の収監はすぐにはじめても?」

 

 「ええ、大丈夫です。すでに波止場のほうに準備は進めてありますから・・・神器の船に乗れるなんて貴重な体験ですね」

 

 「それが収監されていては世話ないがな・・・では、後程」

 

 

 と、いうわけで波止場まで移動した。すでにアクアたちや護送する囚人たちの檻が準備されている。というかむさいな。なんかこう、伸ばしっぱなしのひげや擦り切れた囚人服をきた囚人たちのせいで絵面が最悪だ。しかも反省してるのかは知らないが私が現れたとたん舌なめずりをしだす輩までいる始末だ。そこ、ゴーヤを見つめながらよだれを垂らすな。・・・サメのえさにしてくれようか。

 

 「あー!やっときた!船どこよー!どこにもないんですけど!」

 

 「まあそう慌てるな」

 

 そう言いつつ艤装を展開して海に降りる。波止場から飛び降りた瞬間めぐみんが「あぶないです!」なんて言っていたが私が海面に直立しているのを見て「えええ!?」なんて言っていたが。そういえばベルディアの時これをやったのを見てないんだったな。

 

 「ほら、いくぞ。抜錨だ!」

 

 私がそう言ったとたん私の下から武蔵(わたし)が海をかき分けてせり出してきた。見るのは2回目のカズマはともかく、初見の3人や囚人や看守たちの絶叫が響いてきた。ふふふ、どうだ。すごいであろう?カズマ一人に見せたときも気持ちよかったが人数が増えるとなんだかもっと楽しいな!

 

 「よし!各部のチェックを開始しろ!」

 

 「エンジンチェック!」

 

 「カキカンセイチェック!」

 

 「ハツデンキチェック!」

 

 「モンダイナシデアリマス!」

 

 武蔵(わたし)の回転砲塔がきしみを上げて動き、機関がうなりを上げる。まるで一つの生き物のように滑らかに動くさまを目にしたアクアたちはもはや言葉も出ないようだった。ふっふっふ、別にやる必要はないけどな、演出だ演出。同行者には安心感を、囚人たちには逃げられないぞというメッセージを伝えるためだ。

 

 「よし、順次運び入れていけ!今日中にすべて入れて明日の出航に間に合うようにするぞ!」

 

 「いつ見てもおっきーでち。たくさん物が入って羨ましいのでち。ゴーヤは積める量がすくないのでち」

 

 「そう不貞腐れるな。お前にはお前しかできないことがあるのだからな」

 

 「これが、ムサシの神器・・・すごいです!・・・爆裂魔法撃ってもいいですか?」

 

 「ダメだ。その程度では壊れんが仕事に支障が出ても困るからな、ほら仕事に行け。看守の人たちを手伝いに行ってくれ。ゴーヤは物資のチェック、カズマは囚人たちの監視、アクアは結界をはっておいてくれ。甲板にでっかいのをはってくれればいい。ほら動いた動いた」

 

 「リストはこれでちね?いってくるのでち」

 

 「おわっ!なんだ妖精さんか・・・なんだか久しぶりだな。元気してたか?」

 

 「カズマ!ヒサシブリデスネー!」

 

 「わかったわ!アンデッド滅するべし、気合を入れてやるわよー!でも結構大きいからちょっと時間かかるわよ?」

 

 「問題ない。出向は明日だからしっかり丁寧にやってくれ」

 

 「任せなさい!」

 

 ゴーヤは慣れた様子で物資のほうに妖精さんを伴っていってしまった。カズマも囚人たちのほうへ行き、途中で金剛風の妖精さんを頭にのっけながら足に鎖と鉄球、腕に手錠をかけた囚人たちの連行を手伝いだした。強い立場にいると調子に乗りやすいカズマらしく、すでにトンカチを手でトントンしながら脅しもかけている。口がうまいカズマのことだ、おびえる囚人を見てるとどっちが悪いのかわからないな。

 

 アクアは鼻歌を歌いながら妖精さんから受け取ったチョークで幾何学模様がいくつも合わさった複雑な魔法陣を甲板に描き出した。私はああいうのに疎いから任せるしかないが、まあ問題ないだろう。

 

 

 「お待たせしました・・・これが神器の船ですか・・・話には聞いていましたがいやはやすごいものですね。看守たちはすでに準備を終えておりますから乗り込み次第いつ出航しても構いません」

 

 「いや、このまま出ると順調に進めばアルカンシア周辺の海域につくのはアンデッドが活気づく夜になる。時間を調整して問題ない時間帯に到着できるようにしよう。あなた方が寝泊まりする部屋へ案内しておこう、彼女についていってくれ」

 

 妖精さんをクルーヴ殿に渡して、私は一人操舵室に進み作業の指示を伝声管を使って妖精さんにしていく。出発は明朝の5時、それまでに作業が間に合ってくれるといいのだが・・・




 武蔵さんの会社の名前を考えたのですが、結局うまくまとめられなかったんで「日本出身ということを残したい」のと「艦これ要素がほしい」+「海上要素」で日乃本鎮守府としました。

 自分のネーミングセンスのなさに涙が出てきそうです。
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