操舵室から作業を進めつつ甲板を眺める。本来なら砲塔で物々しいはずの甲板にはアクアが描き出した魔法陣で埋め尽くされなかなかに怪しい空気を漂わせていた。囚人は妖精さんが改造した兵士用の部屋・・・ドアを外して代わりに鉄格子をつけたものだ。トイレは申しわけないが大きい甕と蓋を置いておいたのでそこでしてもらうことになる。くれぐれも汚さないようにしてもらいたい。
「武蔵―!搬入終わったでちー!途中で囚人のおじちゃんたちにいろいろ声を掛けられて大変だったでち」
ゴーヤが元気に片手をあげながら操舵室にはいってきた。・・・ほう?囚人の分際で私のかわいいゴーヤに手を出そうというのか・・・?いい度胸ではないか、今ここで海の藻屑にしてくれよう。
「ああ、ご苦労様だ。声を掛けられたといったがなんと言われたのだ?」
「えっと・・・「お嬢ちゃん小さいのにえらいね。すまんなぁわしらのようなののためにこんなことさせちまって」とか「チビ、ありがとなあ。お前さんみたいなのが見送ってくれるなんて罪を犯した身で十分すぎるぜ。俺らみたいなのになるんじゃねえぞ」とか・・・あとあと「はぁ・・はぁ・・・お嬢ちゃん今何色のぱんつ穿いてるの?・・・うっ!」とかでち?最後のはなんだか気持ち悪かったのでち。わたしのぱんつの色なんて聞いて如何する気だったんでちかね~」
どうやら囚人にドヘンタイが混ざっていたらしい。ゴーヤが純粋無垢で助かった・・・!!
「ほうほう・・・最後のやつは今すぐにぶちのめしてこよう」
「だめでち!?囚人に対する暴力は有事以外は禁止事項でち!!」
「くっ法律め・・・まぁ仕方あるまい。終わったんならお前は自由だ。ちょうどめぐみんたちも空いてるようだし観光でも手伝ってやったらどうだ?」
「そうしようと思ったら作業途中のアクアが泣きわめいたのでお預けになったのでち~」
「小学生かあいつは・・・」
そのさまが容易に想像できてしまうのが余計にたちが悪い。実際甲板を見るとダクネスやめぐみん、カズマたちが暇そうにしている。その中でアクアを見ると・・・あーあー顔を涙でぐちゃぐちゃにしてまあ・・・それでも作業をやめないあたりそこらへんは真面目なのかただただ寂しいのが嫌なのか・・・。途中で投げ出さないのはあいつのいいところだな。
「しかたあるまい・・・私の作業ももう終わりだし、あとは妖精さんに任せておけばいいだろう。アクアの作業が終わるまで待ってやったほうがいいだろう。実際あいつの負担は大きいからな」
「それもそうでちー。あ、そーそー!リップが会いたいって言ってたでち。また私たちの拠点にきてほしいでちー」
「そういえばしばらく会ってなかったな・・・彼女は私よりもこの世界は長いはずなのになんで私の会社にいるんだか・・・」
「あの腕じゃしょーがないでちー」
そう言ってゴーヤは甲板のほうへ出ていってしまった。自分でも思うが私の会社の従業員は私に依存しすぎではないか?
唐突だが私の会社、日乃本鎮守府には転生者しかいない。元は私が海運業をするために開いた個人事業だったが・・・いかんせん
私の会社にはこの世界にとってはみ出し物になってしまった転生者が非常に多い。自分から売り込んできたものはまた別だがアニメキャラに転生した結果、強すぎる力を持て余したり形が人間からかけ離れてしまったり、ゴーヤのように年齢的に幼く一人で生きていけない転生者の受け皿のようなものになってしまったのだ。
当然だが直接的な戦闘力に限って言えば私なんか一捻りにできるやつらのほうが多くていつ寝首をかかれるか戦々恐々としていたこともあったが・・・一応みんな私を社長として立ててくれているので結局空中分解せずに今に至るというわけだ。まあ私の会社も結構な信頼を得ているので・・・仕事をする→基本的に成功するので信頼を得られる→金が集まる→会社が大きくなる→仕事が集まる→仕事をするという上昇ループでたくさんの仕事が集まる。
そうすると転生者という特典もちのおかげで高い名声を得た私の会社にはさらに転生者が集まるのだ。もちろん根本は食えないやつらのためなので既に自分で食っていけてるやつは面接ではじき、退職も自由という風になっているが・・・やめるやつはぶっちゃけいない。しかもアクアたちには申し訳ないことだが全員が魔王討伐に興味がないので戦力を持て余していたりもする。
ちなみに最低限の月給+歩合制になっている。有給とかも一応あるにはあるが・・・まあ関係あるまい。つまり何を言いたいかだがだな・・・転生者共の管理がクソめんどくさいという話だ。カズマみたいな感じで皆生活してくれればいいのだが、私に依存気味の子たちもいるし・・・普段は妖精さんを通じて連絡を取って仕事を振っているが・・・いざ仕事を頼もうとしたとき私に会いたい~などと泣き言をいうやつもいる始末。しかもそういうのに限って一人で戦争が起こせるとかそんなのばっかりなのだ。
もちろんみなもと日本人だからある程度の社会的常識はわきまえている。今までで事故という事故は本社爆破以外は起こってないからな。そしてリップ・・・パッションリップかぁ・・・彼女は控えめで引っ込み思案の可愛い娘なのだが・・・その両手のせいで迫害されていた。日本的な良識と持つ力の大きさを理解していた彼女は反撃することなく人里離れた場所でサバイバル生活を営んでおり、私にあった時は久しぶりに人間とまともに話せたと泣きながら喜んでいたのだ・・・そんなの甘やかすしかないじゃないか!・・・多分私のこの性格がいかんのだろうな。転生前からのこの性根は
そんなことを考えてると結構時間がたっていたらしくアクアの「おわったああああああ!!!」という喜びの声と橙色に色づいた水面がもう夕方に差し掛かったことを教えてくれた。暇すぎて寝ていたらしいカズマが起き上がり、そのカズマにもたれかかっていたゴーヤが倒れて頭をぶつけているのが見える。
カズマは慌ててゴーヤに謝っているようだが・・・アクアのぶすくれた顔に気付いて構ってやれ。頑張ったんだから褒めてやるべきだぞ。さて、私も甲板のほうに降りるとするか。
甲板に降りているとカズマとアクア、ゴーヤにめぐみんとダクネスがわいわい話していた。ふふふ、楽しそうで何よりだ。
「さー!一仕事終わったし、今日は飲むわよー!」
「あほかアクア!明日は朝から仕事なんだぞ!お前5時起きなんかしたことねえだろ!普通に飯食ってねるぞ!」
「そんなあああああ!!!」
「いつも通りですね」
「だな」
「アクアたちは見てて飽きないのでち!明日からのお仕事が楽しそうでち!」
「お前らー終わったのならメシ食いにいくぞ!おごってやろう!」
「いつも悪いな武蔵さん」
「さっすが武蔵!ごちになるわ!」
そう言って私たちは食事をするためにこの町のギルドに向かっていった。看守の方々には妖精さんが食事を提供するためにいま調理を進めているところだ。囚人はここに来る前に食事をしたのでなし。妖精さんの料理はおいしいから口に合うことを祈るばかりだ。
「いらっしゃいませー!お好きな席をどうぞ―!本日のおすすめはクレイジークラブの煮込みでーす!」
ギルドの酒場についた。アクアがアルコールを物欲しげに見ているが流石にわきまえたようで普通のメニューを頼むようだ。私たちもそれに習って様々な料理を大皿で頼む。パタパタと伝票を持ったウェイトレスが厨房に駆け込んでいったのを見て私はアクアに尋ねる。
「甲板にかいた魔法陣、随分と大掛かりな様子だったがどういうものなんだ?」
「え?ああ、まず船がおっきいっていうのもあるから魔法陣一つじゃ足りなかったの。で、魔を払う術式、アンデッド除けの術式、アンデッドを弾く術式、おまけの浄化の術式を4つ刻んで真ん中に安定の魔法陣をいれて一つの結界として運用してるのよ。ふふーん、すごいでしょ!?私が本気を出したらこうなんだから!」
「と言ってるけど実際どうなんだ?俺にゃ落書きしてるようにしか見えなかったけどな」
「ひどい!」
「まあ魔法に関してはミジンコレベルのカズマですが「おい」実際アクアの術式はすごいです。紅魔族の観点から見ても一部の隙も無い素晴らしい術式でした。あとはアレに魔力を込めればきちんと仕事をしてくれるでしょう」
「ほう、流石だなアクア。アークプリーストの面目躍如といったところか?」
「女神なんですけど!?」
はっはっはと笑いながら歓談しているとウェイトレスが台車に乗せて大量の料理を運んできた。今回はゴーヤもいるので1.5倍増しになっている。艦娘は燃費が悪いのだ、私の会社にも何人か同類がいるがその全員が最低でも大人3人前は平らげる。空母なんかはそれはもうすごい。私も人のことは言えないがな。
食器を手に取って食事を始める。やはりブラストの魚介料理は旨い、ものが新鮮だからだろうか?アクセルの肉料理もいいがブラストも最高だ。思わず顔がほころぶ。
「ゴーヤちゃんもそうだけど武蔵さんっていつも思ってたけどうまそうに食うよな。料理人からしたら作り甲斐がありそうな感じするわ」
「む?実際旨いからな。旨いものは旨いのだ、作ってくれた人間に感謝するには残さず美味しくいただいてやらねばな」
「武蔵さんは不味くても旨いっていうでち。ほんとに身内に甘々なのでち、マックスコーヒーなのでち!」
「いただいた料理をまずいというのは失礼だろう。あと私はそんなに甘くない。きちんと厳しいぞ」
「嘘つけでちこのグラブジャムン戦艦!この前エリちゃんの料理大破しながら笑顔で食べてたでち!笑顔で倒れてエリちゃん号泣してたでち!」
「それは彼女が特典のせいで料理下手になってしまったからだろう。彼女自身のせいではない」
「普通なら料理禁止令だすところでち!武蔵が倒れたら会社の機能が全部麻痺するでち!」
「うむ、あの時は大変だった。彼女の練習に付き合うときは休みの日にしようと決めたよ」
「そういう問題じゃないのでちー!」
「なんか武蔵さんの会社・・・というか武蔵さんって大変なんだな。つーか武蔵さんがやってること以外は何してる会社なんだ?」
「ギルドみたいな感じらしいな。クリスに聞いたのだがギルドは焦げ付いた高難易度の依頼やきな臭い依頼は武蔵の会社に回すことが多いそうだ」
「「「へー」」」
そんなこんなで食事を済ませ
「そういえば前に乗らせてもらった時と随分中身が違うけどどうなってるんだ?」
「ああ、それはだな?間取り自体は全く変わってないが、調度品やドアの撤去と鉄格子の追加を妖精さんたちが頑張ったのだ。どこかで褒めてやってくれ。私だけでは可哀そうだ」
「妖精さんなんでもできるな・・・わかった!俺も世話になってるしその程度なら喜んでやらせてもらうぜ!」
妖精さんは人に構ってもらうのが大好きだ。不思議存在だが褒めれば喜ぶし、頭を撫でればにへらと幸せそうに笑う。結構働かせてる自覚はあるがそれでも私から離れないのはうぬぼれでなければうまく関係を築けていると考えてもよいのだろうか?
「それでは、明日の朝4時半にラッパが鳴るからそれで起きておいてくれ。起きたら操舵室に来るように、いいな?」
「わかった!それじゃおやすみなさい、武蔵さん」
「武蔵また明日ね!」
「ムサシ、おやすみなさい」
「先に失礼する」
「おやすみなさいでち!」
「ああ、おやすみ」
カズマたちを見送って私も簡単に身を清めて床についた。
翌朝、景気のいい起床ラッパの音で起き、身支度を済ませて操舵室に入ってみると既にクルーヴ殿がいた。これは目覚まし前に起きてここに来たのか。待たせてしまったようで申しわけないな。
「おはようございます。今日から2日間よろしくお願いいたします」
「クルーヴ殿、待たせてしまって申し訳ない。もう少しで彼らも来るからまだ少し待っていただきたい」
「いや、自分が早くきすぎただけのことです。おきになさらずに」
「感謝する」
それから5分ほどするとゴーヤとカズマたちがまとめてきた。アクアはまだ半分眠っているみたいだがまあ問題ないだろう。
「よし!全員揃ったな!これよりアルカンシアまでの航海を開始する!各員へ通達、機関を始動!武蔵、出撃するぞ!」
基本的に出る転生者は日乃本鎮守府の社員を中心に出そうと思います。また、艦これ系転生者だけに限らず作者が好きな作品からということにさせてもらいます。
名前だけ出すということもあると思いますのでそこらへんもご了承ください。
・・・まじで話が進まねえ!