この大戦艦に祝福を!   作:カフェイン中毒

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サブタイトル

 怪獣が襲ってきたと思ったら大怪獣が出てきてやべーことになった。


第19話

 ダイダラボッチ・・・日本では妖怪として伝わっているが・・・伝承では国造りの神としての側面もあるとされ、各地で大きな足跡、土を運んで山を作ったという話が伝わっている。そして・・・アクアが言ったように人間の無意識で形作られるなら・・・もののけ姫のダイダラボッチが一番有名だろう。

 

 あの巨神は獣神であるシシ神の夜の姿であるが・・・細かい設定なんて覚えてる奴なんかいないだろう。巨神としての姿のインパクトと劇中での能力、触れたものを例外なく即死に追い込むさまの描写は有名だ。つまり・・・中途半端に再現されてると考えたほうがいいだろう。まさかこの世界でかの有名な映画のせいでとばっちりを食うなんて思わなかったがな。

 

 「触れれば即死、かといって砲撃が効くか?横に逃げるぞ!舵を切れ!」

 

 「もう一回言ってやるよ!馬鹿だ!この世界は大馬鹿野郎だ!」

 

 「うっさい!もとはと言えば転生者(あんたたち)のせいでしょ!早く逃げないと捕まるわよ!」

 

 「武蔵(わたし)に速力を期待するな!通達、第一種戦闘配置、繰り返す。第一種戦闘配置!艦のすべての火器の使用を許可する!主砲装填急げ!」

 

 カズマが世界に対する恨みを盛大にぶちまけるのをよそに妖精さんに命じて撤退戦の準備を始める。といってもアレを殺すかどうにかしない限り永遠に追ってくるだろう。こちらにはビーコン代わりのアクアの結界がある。例え逃げられてもアルカンシアまでこいつを引っ張っていったらだめだ。

 

 「うちの魔術部隊を引っ張ってくるべきだったな・・・後の祭りだが」

 

 「周辺の被害が出ると困るからって連れてくるの嫌がってるのは武蔵でち」

 

 「返す言葉もない。ゴーヤ、万が一に備えて準備しておけ。いいな?」

 

 「いやでち!みんなで逃げるんでち!」

 

 「いいから、お前にしかできないことだ。カズマたちはここから出るなよ!あとはゴーヤの指示に従え。では、行ってくる」

 

 それだけ言い残して艦橋から甲板に出る。ゴーヤが悔しそうに唇を噛んでいるので、クシャっと頭を撫でてやる。この子は聡い子だ。きっと私が何をするか、自分がどうすればいいか分かっているのだろう・・・つらい役目を押し付けてしまうかもしれないな。

 

 

 舳先に立ち、こちらに狙いを定めて海をかき分けて進んでくるダイダラボッチを見据える。さて、効いてくれるといいのだが・・・

 

 「主砲全門斉射!続けて副砲も砲撃開始!」

 

 武蔵(わたし)の主砲が爆炎とともに巨大な砲弾を吐き出す。着弾した砲弾の破壊力はダイダラボッチの上半身を食いつぶし、その体を消し飛ばした・・・物理的な攻撃ならこうなるだろうが・・・当然、再生するだろうな。劇中でも似たようなシーンがあった。生と死を司る神であったシシ神、頭を失っても当たり前のように動いていた。この程度で終わるはずがない。

 

 

 こちらに歩む速度を落とすことなく迫る上半身を失ったダイダラボッチの下半身から透明の肉が盛り上がりながら上半身を形作っていく。・・・はあ。自慢の主砲であるのにこうも無意味だとため息しか出ないな。手招きで近くにいる妖精さんを呼び寄せ。耳打ちする。

 

 「ゴーヤに退艦準備をするように伝えろ。このまま停止、武蔵(わたし)の影に入って伊58に看守とともに待避、囚人たちは・・・すまんが時間がない。このままだ。5分でやれ」

 

 「・・・リョウカイ!」

 

 「錨を下ろせ!7分間主砲の斉射を停止!副砲で対処しろ!退艦急げ!接触まであと7km!」

 

 「武蔵!」

 

 艦橋からこちらに降りてきたゴーヤが後ろから声をかけてきた。私は振り返ることなく言葉を紡ぐ。顔を見れば覚悟が鈍る。

 

 「ゴーヤ、あと5分主砲を止めておく。その隙に海中へ逃げてアルカンシアまで行って本社のほうへ救援を呼べ。十中八九私に関しては間に合わんがお前らが本土へ帰ることはできるようになる。会社に関しては副社長がうまくやるだろう・・・私の個人的なものに関しては遺書含め金庫に入っている。鍵については副社長が知ってるから聞け。いいな?・・・私はここで、こいつを食い止める」

 

 「いやでち!どうしてもっていうなら・・・ゴーヤも残るでち!」

 

 「馬鹿を言うな!!!」

 

 怒鳴ってしまった。でもだめだ、この子が逃げるカギだ。なら私ができることは・・・この子が安全に潜航できるように囮になること。甲板に結界がある以上、たとえ艤装にしまっても結界の効果切れまでは消えない。・・・つまりどうあがこうと私は逃げられないのだ。

 

 「武蔵さん!囮として残るって・・・・!?」

 

 「カズマ、仕方がないことだ。結界がある以上私は逃げられない。ならば逃げられる奴のために動かねばならん。そう心配することではない。砲撃自体は当たる、耐えること自体は不可能ではないからな。根競べをするだけだ」

 

 「そうは言ったってよ・・・!」

 

 「いいからいけ!時間を無駄にするな!ゴーヤ!あと4分だ!ここでまとめて心中したくなければさっさと動け!妖精さん!」

 

 「カズマ、ハヤクイクネー!キット、ダイジョウブデス!」

 

 「おわっ!?ちょっ!?妖精さん!?待ってくれ!話はまだ・・・」

 

 妖精さんが集まってカズマとゴーヤを抱え上げて艦の後方まで下がっていく。副砲で再生しつつある上半身を攻撃して風穴を開けながら押し返そうともがき続ける。ゴーヤが諦めたのか艤装を展開して武蔵(わたし)の横に伊58が浮上する。

 

 反応した妖精さんたちによって看守たちとこちらに走り寄ろうとしてたダクネス、めぐみん、顔を歪ませ泣きじゃくるアクア、妖精さんに阻まれてなおこちらに戻ってこようと手を伸ばすカズマが叩き込まれ、最後に目じりに涙を浮かべたゴーヤが一度こっちを振りかえり、敬礼をしてから艦内に入り、伊58が潜航を開始する。

 

 

 

 「よく決意した。こちらは任せておけ・・・さあ総員、総力戦だぞ!全員こんな場所で死ぬつもりはあるまい!暁の水平線に、勝利を刻みに行くぞ!」

 

 「アノデカブツガナンボノモンジャイ!」

 

 「サイセイデキナクナルマデケシトバスンジャ!」

 

 「イクゾー!!」

 

 止めていた主砲を動かし、再生しつつある上半身に向けてもう一度斉射する。また上半身が吹き飛び少しだけ再生のために足が止まったダイダラボッチの隙をついて機関をフル稼働させて最大船側で急発進する。ひどい揺れが起きるが囚人たちには申し訳ないが耐えてもらうしかあるまい。

 

 彼我の距離が5kmを切った。5度、砲撃を命中させたが再生速度は変わらず、むしろなれたのか上がってるように見える。武蔵(わたし)の最大速よりも若干あのデカブツのほうが足が速い。

 

 「つるべ撃ちだ。斉射から主砲の発車時間をずらす。最初は壱番、20秒後弐番、そこから壱番装填完了後参番。副砲は隙を埋めるように撃て。やつが諦めるまで耐えるぞ!」

 

 轟音と肉が焼け爆ぜる音が晴天の海の上に響いた。

 

 

 

 

 「っちぃ・・・ここまでか・・・!」

 

 弾薬が切れた。あれから約2時間、ダイダラボッチは諦めることなく私を追いかけ続け、幾度消し飛ばされようと執拗に私を追随してきた。最大速で船速を固定したために機関はもうボロボロだ。もう副砲の弾も残ってない・・・それにもう、手を伸ばせば届く距離にヤツがいる・・・!

 

 

 船尾を掴まれた。ギギギ・・という金属がひしゃげる音が響き、武蔵(わたし)の体が変形していく。同時に流動体になったやつが中に侵入してきた・・・!艤装と私の体はリンクしている。引きちぎれるような痛みと不快感が私を襲う。囚人もやつの不定形の体に触れた先から命を奪われている・・・!

 

 「くそっ!そう簡単に好き勝手させると思うな・・・!!!」

 

 船首側についていた主砲を装備から外し、即座に無事な妖精さんに解体させ資材に変える。その資材を砲弾に変えすぐに装填しやつの顔面に向かって撃ってやった。やつは顔面が消し飛び思わぬ反撃で混乱したのかたたらを踏んで怒っている様子だった。効いてもいない癖に芸達者なことだ・・・!

 

 「ふん、窮鼠猫を噛む・・ではないが多少は溜飲が降りたな・・・すまん、カズマ、ゴーヤ・・・後を頼む・・・!」

 

 

 ゴギン!と何かを折るような音が響いた瞬間激痛とともに私の両太ももの骨が折れた。立っていられなくなり無様に尻もちをついてしまう・・・スクリューと舵を引きちぎられたか・・・!やつの触手が船尾を越え、艦橋を越えて舳先近くの私に迫る!思わずぎゅっと目をつぶり押しつぶされるのに身を任せる。

 

 

 

 

 「見つけた・・・!さっきからドンドン、ガンガンうるさいですー・・・えっ!?社長さん!?ちょっと放しなさい!・・・ぷろてあー、ぱーんち!!!」

 

 

 絶体絶命の最中、私が覚悟を決めたのをあざ笑うかのように聞き覚えのある少女の声が響いた。思わず目を開けて声のした方を見てみると、包帯を全身に巻いた藤色の髪の巨大な少女がダイダラボッチを殴り飛ばしたところだった。触手が引きちぎれ、浸食を受けていた武蔵(わたし)の中からやつの肉だったものがあふれて海に落ちていく。・・・どうしてお前がここにいるんだ?

 

 

 「キングプロテア!なんでお前がこの海域にいる!?」

 

 彼女はキングプロテア、Fateシリーズのとある作品に出てくるキャラクターに転生した彼女は、最低でも30mの身長をほこり、最大サイズにいたっては測定不能という作中最強格のキャラクターだった。もちろん私の会社内でも最大戦力の一つに数えられているが、本人は必要がない限り戦闘の意思はないとのことなので普段は依頼を受け、この世界にいくつかある個人所有の無人島を管理してもらっている。

 

 「社長さん、大丈夫ですか・・・?痛そうです。えっと、私は今日お休みなので・・・背を伸ばしても誰にも見られない場所がここだったんです。・・・それよりも、あの小さいのが、社長さんをいじめたんですよね・・・?」

 

 キングプロテアの大きな瞳からハイライトが消えうせた。渇愛のアルターエゴ、愛を求めることが根底にある彼女は仲がいい人物・・・この場合は私だが、が傷つけられるとひどく怒る。親愛、友愛、家族愛の区別がつかずただ「愛」を求める彼女がどんな形であれ「愛」を与えてくれる人物を傷つけた存在を、許すはずがない。

 

 「あー・・・まあ、そうなる。一応依頼の最中だったのだがな・・・襲われたんだ。一部の乗ってたやつらはゴーヤが逃がしているんだが・・・足止めのために私が残った」

 

 彼女の雰囲気が氷点下にまで下がった。別にその怒りを私に向かって発してるわけでもないの身震いしてしまう。いくつかの神の要素を混ぜ合わせて作られたハイ・サーヴァントの怒気が、周りの海面を波たたせこちらになおも追いすがろうとするダイダラボッチを縫い留めた。

 

 「・・・許さない。シリアルファンタズム起動、私の指は・・・世界を覆う」

 

 

 あ、終わった。絶対的捕食者から哀れ殲滅対象に切り替わったダイダラボッチが情けなく背中を見せて逃げようともがいている。

 

 

 世界が軋む音がしたような気がした。同時に武蔵(わたし)が慎重に持ち上げられる。いつの間にかやつの何百倍も巨大になったキングプロテアが、武蔵(わたし)をその手のひらでそっと傷つけないように持ち上げたのだ。そして彼女はさらにさらに大きくなっていく。

 

 「どこまでもどこまでも・・・プロテアの花は成長する・・・」

 

 無限に存在の規格を上げて成長し続けることが出来る彼女がダイダラボッチの能力で干渉できない領域まで自身の存在を大きくしていく。世界という枷を一時的に切り離し世界からの圧迫を無視し、小さく押し込められたその姿から本来の文字通り世界を覆うサイズまで戻っていく。

 

 「命の海に沈みなさい!巨影、生命の海より出ずる(アイラーヴァタ・キングサイズ)!!・・・あーん、ごくん♪」

 

 やつを指先でつまめるサイズまで巨大化したキングプロテアがまるでグミでも食べるかのようにダイダラボッチをつまんで、食べてしまった。ずずいっと私を緩やかに持ち上げ顔の前に持ってきてこちらを覗き込むキングプロテアには何の異常もなさそうだ。まるで私がおもちゃに思えるサイズだな

 

 「大丈夫ですか?痛いですか?・・・ごめんなさい、私には怪我を治すことは出来なくて・・・」

 

 「いや、ありがとうプロテア。おかげで命拾いしたんだ、それ以上は望まないさ。・・・休みの日なのにすまないな・・・」

 

 「そんなことありません!・・・お仕事、好きなので・・・。社長さん、動けますか?」

 

 心配そうにこちらを見つめているキングプロテアが小さくなっていく。彼女に嵌められた枷が働き始めたのだ。サイズが大きく縮み、武蔵(わたし)を両手で横抱きにするくらいのサイズまで縮んだプロテアに悪いと思いながらお願いをしてみる。

 

 「いや、舵をやられてな・・・動けそうにない。アルカンシアにゴーヤたちがもうすぐ着くころだろうから。すまないが運んでいってもらえないだろうか?」

 

 そう私がお願いすると、ぱぁっと花が咲くような笑顔を浮かべたキングプロテアは

 

 「はいっ!任せてください。どこにいたって私が運べば目的地まであっという間ですので!・・・キングプロテア、出撃します」

 

 ざぶ、ざぶとわたしを揺らさないように運び始めたキングプロテアに礼を言って、私は自分の被害状況を確認しようと思い立ち上がろうとしたら、両足が折れて動けないことに気付いた。・・・むぅ、助かったのに締まらないな・・・妖精さん、へるぷ!

 

 

 

 




 武蔵さんは最強じゃないです、上には上がいるんですよ的な話が書きたかった。

 え?なんでキングプロテア?好きだからです。(鋼の意思)ひけてないけど()

 武蔵さんが両足やっちゃったので暫く介護生活ですね(ゲス顔

興味がある話に投票してくれたら嬉しいなー

  • カズマ、日本転生者同窓会に行く
  • アクアと不死系転生者
  • めぐみんと魔砲少女
  • ダクネスと盾持ち英霊
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