この大戦艦に祝福を!   作:カフェイン中毒

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なんでアルカンシアから帰ってないのか、コレガワカラナイ


第21話

 ティーチ曰く、私がゴーヤ達を逃がすために囮として殿をかってでたことは逃げ延びたゴーヤによってすぐに本社のほうに伝わり、連絡を受けた副社長のそばにいたやつらによってなぜか迅速に拡散され会社中の知るところとなってしまったそうだ。

 

 で、上から下までどったんばったん大騒ぎの挙句、うちの中でも戦闘力に秀でたやつらが徒党を組んで私の救出と私をやったやつを消し飛ばそうとしたそうで・・・聞くだけでも怖気のするメンツが来ようとしてたようだ。その気になったら彼らで国くらい簡単につぶせそうだからたちが悪い。

 

 そして鼻息荒く出発しようとしていたのを副社長とその他で必死に止めていたのだがそこにゴーヤがもう一度連絡をし、私の無事を伝えることで何とか思いとどまってくれたらしい。よかった!やつらが来たら比喩なく天変地異が起きるだろうからな・・・胃が痛い・・・!

 

 「と、いうわけで大変だったんでごじゃるよ。出発しようとしたときも連れていけ連れていけと・・・副社長が物理的に止めてその隙に出てきたというわけでちい」

 

 「う、うむ・・・ティーチ・・・もしかして結構やばいかんじか?」

 

 「もしかしなくともやばいでごじゃるな。帰ったら覚悟しておくといいと思いまするぞ?」

 

 「・・・帰りたくなくなってきた」

 

 「帰らなかったら拙者がボコされるのでどうあっても連れて帰りますぞ。人気者のつらいところですなぁ?」

 

 「人気なんぞとろうとしたことないわァ!!」

 

 「ナチュラルに人をたらすのが悪いんでごじゃる!もー転生者が困ってれば「同郷のよしみだ」とか言って誰彼構わす甘やかして面倒をみるから人が集まって結果日乃本鎮守府(うち)の代表にされちゃうんでござるよ」

 

 打てば響く、言い方を変えればああ言えばこう言う。こいつと話すとだいたいがコントじみた掛け合いになってしまう。・・・割と楽しいのは事実だが、こいつの無駄に腹立つヲタクムーブは何とかならんのか?いや、それがエドワード・ティーチという英霊のパーソナリティなのだが・・・真面目にやると大海賊なのに、もったいない。

 

 本人に言わせれば「元ネタを踏襲してはおりますが個人的な意見としてギャップ受けを狙っていきたい所存ですぞ!」とのことだが・・・落差が激しすぎるわ!

 

 「ひ~げ~!!!なぁにさぼってるでちかー!!さぼって武蔵と話してるなんてだめでちー!仕事終わらせてからにするでちー!」

 

 「おっと拙者はこれにて失礼!とりあえず大将は覚悟決めておくでごじゃるよー!デュッフフフフフ!!」

 

 「ま~つ~で~ち~!!!」

 

 

 

 

 「・・・さぼってたのか、黒ひげ」

 

 いやに来るのが早いと思ったら波止場に着いてすぐどさくさに紛れて逃げたのか・・・ぷんすこ怒るゴーヤから無駄に英霊の身体能力を駆使しおちょくりつつ逃げるという器用な真似をしながら腕を振り回すゴーヤに追いかけられてティーチはどこかへ行ってしまった。

 

 「結局何の用だったんだ?雑談しに来ただけか?」

 

 「心配だったんじゃないの?武蔵さんのことがさ」

 

 「カズマ!?いつの間に・・・」

 

 いつの間にかベッドの近くに立っていたカズマが椅子に座りつつ私の独り言に返してきた。

 

 「あー、ゴーヤちゃんに頼まれてあのティーチって人捕まえるために潜伏使ってたんだよ。なんせあの人ここに着くなり「大将はどこでごじゃるかーー!?愛しの黒ひげが今向かいますぞーーー!!!」って言って逃げていったもんだからさ。結構慌ててたのはあの態度からでもわかったよ」

 

 「あー・・・それは迷惑をかけたな。あいつは真面目にやればすこぶる有能なんだがいかんせん普段の性格がなあ・・・」

 

 「なんとなくわかる気がするけど・・・俺あんなステレオタイプのオタクみたいなしゃべり方する人初めて見た」

 

 「まあ転生前からあんな感じだったらしいぞ。転生するときも「これなら違和感なしwww」みたいな感じでああなったらしい」

 

 「適当かよ・・・」

 

 「お前が言うな」

 

 「ぐっ・・・ごほん!それは置いといてだな・・・あと少しで出発するそうだから教えに来たんだ。武蔵さん足怪我して動けないだろ?なんか準備とかいるなら俺が代わりにやるからさ、頼ってくれよ」

 

 カズマが気を利かして準備を手伝いに来てくれたらしい。気持ちは嬉しいのだが、私は荷物を下ろしてないしなんなら武蔵(わたし)も出しっぱなしだ。帰り際にしまおうかとは思っているが今準備と言える準備はないのだ。身一つあればそのまま帰れる。

 

 「ん、ありがとうカズマ。せっかくの申し出だが今私は荷物という荷物は持ってないのだ。本来ならここにつき次第すぐ帰る予定だったからな。まあお前も積み込みとかで疲れたろうから少しくらい休憩しても怒られんだろう。ほら、暇な私の話し相手になってくれ」

 

 「・・・そんなんでいいのか?もっとこう、パシリみたいなことしてくれても・・・」

 

 「お前私を何だと思ってるのだ・・・償いならいらんぞ?私はお前らに見捨てられたとは思ってないし、むしろ無理やり逃げさせたのだぞ?自分のエゴを通すためにな。責められこそすれ謝られるいわれはない」

 

 図星だったのかカズマがグッと言葉に詰まった。情けない話だな・・・助けたいと思った相手に負い目を感じさせるなんて。なまじ生き残ったうえで怪我をしてるから余計にこじれてしまっているのだろう。

 

 「それでもさ・・・あんな化け物の前にあんたおいて逃げたくなかったよ。あんたに返したいもの全部返す前にいなくなられるんじゃないかって、怖くなった」

 

 「カズマ、お前は一つ思い違いをしている」

 

 「思い違い?」

 

 「まず私はお前に何か返してもらおうと思って助けたりしたりしてるわけではない、という話はブラストに一緒に行ったときにしたと思う。カズマ、さっきのお前の話だと自分の罪の意識を軽くしたいから私に何かできるかどうかということを聞いたのだろう?」

 

 だってカズマは知っているのだ。私がアルカンシアのこの部屋に入った時手ぶらで何も持ってきてないのを。私の周りには消耗してるとはいえ妖精さんがいて、トイレの補助やら体をふくことまでかいがいしく世話をしてくれていることを。

 

 ・・・カズマはきっと、焦ってるのだ。ベルディア戦においては、とどめを刺したのはアクアで冬将軍には殺されて・・・アクアのようにすごいステータスや人を生き返らせる回復魔法、めぐみんの一点突破の大火力、ダクネスの尋常じゃない堅さを持っておらず、器用貧乏な冒険者で飛びぬけた幸運以外は平々凡々、真面目に戦おうと思えば知略を巡らさなければ勝てない自分を比べるには十分な時間があった。

 

 極めつけには私のような特典を使いこなして強くなってるように見えるやつとずっと一緒にいれば周りに追いつこうと焦りもするだろう。そしてそれが今回の件で無力感となってカズマに襲い掛かっている。それを解消するために無意識に原因である私にすがろうとしてるのだろう。

 

 「それではだめだ。たしかに私がお前に頼れば、お前は楽になるだろう。けどそれではいつか大事な時に、またそういったものがあふれてくるぞ。ゆっくりでいい、といっただろう?お前に足りないのは心のゆとりだ。ずっと張りつめていればいつか切れる。適度に自分を許してやれ。それができるまでは、年上に頼っていればいいさ」

 

 この子はまだ16歳だ。日本なら義務教育を終えている年齢とはいえまだまだ未成年、社会経験なんて皆無だろう。それがいきなり冒険者だの、金を稼がないと生きていけないだの、仲間が原因の借金だのと本来なら経験しないはずのことを経験してきている。そのストレスは相当なものだろう。

 

 カズマはそういったものをため込み、隠している。そしてコイツはそれを隠すのがうまい。表に出してるように見えるが実際の不満はもっとあるだろう。上澄みだけ吐き出して「しょうがねえなあ!」と解決しているのだ。要は隠すのは異常にうまいくせに表に出すのが異常にへたくそなのだ。

 

 「カズマ、物理的な強さなどたかが知れてる。私が今回無様に死にかけたようにな?・・・・・「できることを見つけろ。それが始まりである」・・・これはうちの社訓の一つなのだがお前にも送らせてもらおう。お前にしかできないことがきっとある。まずそれを見つけるといいだろう。お前の強みは何だ?腕っぷしの強さか?高い幸運か?私は違うと思うがな」

 

 お前が自分を認めるその日まで、私はお前の味方だ。だから、少しずつ前へ進んでいこうな?カズマ。

 

 「ほへーいいこと言ってるじゃあありませぬか大将。黒ひげ感激ですぞ!」

 

 「ティーチ!盗み聞きとは趣味が悪いぞ!」

 

 「悪いとは海賊にとって誉め言葉でごじゃりますぞ!デュッフッフ・・・それはそうと小僧、ちっと話に付き合ってくれや」

 

 

 

 

 ティーチの雰囲気が一気に変わった。そこにいるのは大海賊、カリブ海の悪魔・・・黒ひげ、エドワード・ティーチ。その威圧に返事すらできないカズマがかろうじてこくりと頷く。

 

 「よっし、まあ知ってるとは思うが俺ぁエドワード・ティーチ、fateシリーズに出てくるキャラクターに転生したもんだ。この世界に来て3年になる」

 

 いきなり自己紹介を始めたティーチに私とカズマが疑問符を浮かべる。どうしたというのだろうか?

 

 「1年目は生きていくのがやっとだった。クエストこなして泥水すすって、強い力を得たはずなのに生きていくのに必死だったさ。2年目でやっと海に出て、海賊から略奪を始めた。多少生活に余裕が出てきたが、なぜか周りからは遠巻きにされてたぜ?3年目、今だな。大将に出会って日乃本鎮守府に入った。殴って蹴って、奪うことしか能のねえ俺にこの人は「じゃあお前が奪うことで礼を言われるようなことをやってみたらいい」っていったのさ」

 

 ああ、確かに言った。ティーチはうちの創設当初からいる古株の一人だ。こいつは地頭がよく、抜け目なくカリスマ性もある。私と出会った当時から強かったし、人にも慕われていた・・・それがヤツが必死になって生きるために奪った財産目当ての連中ばかりだったがな。

 

 「奪うことで礼を言われるなんて当時は馬鹿なこと言うなと一蹴したもんだ。だがな、1回だけってことで襲われてる船を守るついでに襲ってたやつらに略奪してたら・・・ありがとうって言われたんだよ」

 

 ああ、確かそんなことがあったんだったな。そしてこいつは持ってた財産を部下にばらまいて身軽になって、うちに入ったんだった。

 

 「俺は悪党だ。この世界に来て生きるために人を殺したときからもうそう決まってる。もうやっちまった数なんて覚えてねえ。けどな坊主、悪党なりにできることもあるんだぜ?

「黒ひげ」・・・この名前を聞いただけでこの国の海賊は震えあがる。海の悪魔が来たぞってな」

 

 ティーチが海に君臨することで商船の海賊被害は随分と減った。いうなれば核の抑止論だ。奪えばティーチがどこまでも追いかけて命までも根こそぎ奪われる。こいつの船が視界に入るだけでこいつ以外の海賊は尻尾を巻いて逃げ出すのだ。これは、私にはできないことだった。私だったら見た目で舐められる。こいつのように躊躇いなく人を殺せるわけでもなく、やらかした部下を冷徹に切り捨てられない私には恐怖による支配は不可能だった。

 

 「俺にしか、できないこと・・・・」

 

 「そういうことだ。焦る必要はねえ。とっかかりはどこにだってあるもんさ。いいか?お前は俺たちのように安易な「力」を欲することなく一緒にいてくれる「他人」を求めた。無意識だろうが意識してようが知らんが誰かのために強くなろうっていうやつはここが強いんだよ」

 

 そう言ってティーチはカズマの胸をドン、と叩いた。結構強かったようでカズマがせき込んでいるのを一笑いしたティーチは

 

 「俺はお前のことをよく知らん。だがな、大将から聞いてるよ「少しひねくれてるがひたむきなやつ」だってな。この人の人を見る目は甘々だが的を射ている。この人がここまで目をかけるのは初めてなんだぜ?もうちっと自信持てよ。ここにきて2か月もたたないペーペーが、曲がりなりにもうちの社長から仕事を頼まれてるんだぜ?こんなこと今までねーよ」

 

 確かにそうだ。私がカズマたちに今回の仕事を依頼したのは私情抜きに彼らの能力が必要だからだ。アクアの退魔能力、めぐみんの火力、ダクネスの防御力・・・そしてカズマの機転、発想力。もし囚人が逃げ出した際には無傷でとらえるために攻撃されても問題ないダクネスが必要だし、私の手が離せない時のためのめぐみん、アンデッド対策のアクア、そして器用に様々なことが出来、この凸凹パーティーをまとめ上げることが出来るカズマ。

 

 私のやれることが限られているからその穴を埋めるために彼らを起用したのだ。それだけは間違いではなかったと胸を張って言えるだろう。

 

 「焦るな小僧、人生ってのは短いようで意外と長いもんだ。せっかく拾った2回目の命、後悔しないように使わねえとな?幸いお前さんは俺と違って慕ってくれるパーティーがいるじゃねえか。一人で抱え込んでもいいことないぜ?なんせ俺がそうだったからな。考えて考えて・・・それでも大将に何かしてやりたい!ってんならその時にゃちゃんと受け取ってくれるだろうよ。なあ大将?」

 

 「当然だ。カズマ、お前の気持ちは嬉しい。だが一時の気の迷いでパシリにしてくれだの悲しいことを言わないでくれ。私はお前にそんな重荷を押し付けたいわけではないのだから」

 

 カズマは深くため息をついて、しばしうつむいた後顔を上げた。その顔は晴れ晴れとしている。いい顔じゃないか、さっきここに来た時の張り付けたような笑顔より万倍ましだぞ。

 

 「かっこわりぃ・・・ありがとう、二人とも。自分のやりたいことのためにできることを探してみるよ」

 

 「ああ、それでいい。お前の人生もあと何十年と残っているのだ、数年くらい足踏みしたって追いつけるさ「やっと見つけたでちよひげ~~~!!!!」」

 

 

 

 ティーチに撒かれたゴーヤが気炎を上げて部屋に突入してきた。ドアを壊れるほどに激しく開けた彼女は怒り心頭といった感じで黒ひげに対してずんずん近づいていく。

 

 「えっっちょっゴーヤたん怖いでつよ!?ほら、スマイルスマーイル・・・ぽひゃーーー!?」

 

 「やかましいでち!もう辛抱ならず、仏の顔をも三度まででち!ここで成敗してくれる~~!!」

 

 何をしたらゴーヤをここまで怒らせることが出来るのだこいつは・・・ティーチも悪いと思ってるのか特に抵抗せず大人しくゴーヤの制裁を受け入れている。うわぁ、痛そうだ。

 

 「あの人、普段からさっきの感じだったらいいんじゃないのか?すっげえかっこよかったのに・・・・」

 

 「それがあのひげのいいところの一つさ。お前も見習ってみたらどうだ?」

 

 「あの言動はキッツいなあ・・・」

 

 楽しそうにじゃれあうゴーヤとティーチのプロレスごっこが続き、痛そうなゴーヤのジャイアンパンチがティーチの顔面に命中、前が見えねェ状態になったティーチがわざとらしく倒れ伏し、ゴーヤが両手を上げて勝利宣言しているのを見ながら私は声を上げて笑うのだった・・・傷に響いてめっちゃ痛い。締らんなあほんとうに。

 




 もしもカズマが自分とその他を比べていたらというお話でした。黒ひげっぽさZEROでやべえって自分でも思ってます。

 次回か次々回には原作に戻りたい・・・・!!!!

興味がある話に投票してくれたら嬉しいなー

  • カズマ、日本転生者同窓会に行く
  • アクアと不死系転生者
  • めぐみんと魔砲少女
  • ダクネスと盾持ち英霊
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