「なんでよ~~~~~!!!!なんで私が船の掃除までしなきゃならないのよ~~~」
「そりゃおめーが船員全部消した上に帆を張るのを失敗してぐるぐる巻きになったからだろうが駄女神。見ろあのティーチさんの目を。よく女神やってたなって考えてる目だぞ、あれ」
「うわ~~~ん!オタクの海賊にまで!オタクにまで哀れまれた!女神なのに!あたし女神なのに!」
「まあまあアクア、私たちも手伝いますから落ち着いてやりましょう?」
「うむ、女神かどうかはともかく与えられた仕事はこなすべきだ。失敗続きならなおさら」
「うう~~~ありがとうーーー」
「どっちが年上だかわからんなあれは。あれが私たちをこの世界に送り込んだやつだと言っても誰も信じまい。なあティーチ?」
「う~ん見てる分には面白いでござるが実際被害にあうとなるほどこれはという感じですな。アキレウス氏どう?」
「あー・・・軍隊に一人はいるタイプだなありゃ。能力が高いけどやらかしのほうが多くて実際問題プラスマイナスで言えばマイナスに傾くやつ。さっきのアレ見てるとそんじょそこらのプリーストにゃ無理な芸当だ。なるほど姐さんが雇うわけだぜ」
「
ひどい言われようである。シカマルやアキレウス、操舵をしているティーチの近くに引っ張ってきた安楽椅子に腰かけながら話を聞いた私はその的を射てしまった発言にそう思いながらぶつくさ言いながらそれでも真面目にデッキブラシを使って甲板をこすり続けるアクアと律儀に付き合うカズマたちを話題にして会話をしている。
まずメインマストでは、手伝った妖精さんごと巻き込むように帆にぐるぐる巻きになり、かと思えば芋虫のように移動してそのまま海に落ちた。アキレウス大爆笑である、大英雄腹筋大激痛と日報に書いておこう。水の女神らしくゴーヤが助けに行って上がってきたと思えばワカメを髪にのせて余裕の涙目であった。
仕方なくアキレウスとシカマルが妖精さんと一緒にメインマストに帆をはり、アクアに船尾の帆を任せると、大砲に引っ掛け見事に転倒し大砲が一つ海に落ちて文字通り海の藻屑になってしまった。これにはオタクが本性と言われるティーチがいつものオタクムーヴを投げ捨て大激怒、滾々と海の上での物資の大切さから始まりアクアの注意力不足を説教しはじめ、さすがに見かねためぐみんとダクネスが合流し全員で仕事を始めた。
「で、武蔵さんよ。あんた最近本社に顔出してねーだろ。寂しがってるのが多いぜ?なのはとか、マシュとか、リップとかその他もろもろ。社員のメンタルケアもあんたの仕事だろ?みんな訓練漬けで気分転換したいんだとよ」
「む、それはすまん。しばらくはアクセルから動けんからな・・・自由時間や休みなら会いに来てもかまわないと伝えておいてくれ。ああ、空が飛べるやつらには空から来るなとは伝えておけよ」
「了解。で、ちょっと相談なんだけどよ・・・魔術部隊のやつらが研究用の資金が足りねーから予算よこせってうるせえんだけど」
「誰だ?」
「ダヴィンチとパラケルスス」
「ダヴィンチはよし、パラケルススは条件付きで許可。理由は?」
「ダヴィンチのほうはなのは達のデバイスをメンテするための機械を作りたいんだと。パラケルススのほうは、古城の無限魔力を抽出して人工マナタイト作るとか言ってたけど詳細がわからん」
「詳細を聞き出すまで予算追加はなしで。良かれと思ってまた本社を爆破されてはかなわん」
「了解、じゃ後のこまごましたのは予算会議のほうでやるか。いつがいい?」
「うーん・・・予定調整してそっちで決めてくれ。できれば私が復帰してからがいいがそれは任せる」
「おう、わかった。んで・・・何やってんだあんた?」
「見ての通り・・・・妖精さんのブラッシングをしている。手櫛で申し訳ないがな・・・暇でしょうがないのだ」
そう、現在私はわらわらと全身を妖精さんに覆われながらかわるがわる妖精さんを愛でている。何もしなくていい、と言われたのはいいがいざそうなると莫大な暇を持て余してしまうのだ。なので普段働かせている妖精さんをねぎらおうと構っているのだ。安楽椅子で姿勢が安定していることもあって妖精さんがうまいこと積みあがって私の全身で休息をとっている・・・ここが桃源郷か・・・!
「休み始まって3時間でそれかよ。あんた休みの日って何してんだ?」
「何って・・・まず1週間の予定を決めて、廃品回収して、ギルドに顔出して、たまった依頼片付けて・・・カズマたちと食事をして眠る?」
「休んでねーじゃねーか!それ半分以上仕事関係だろうが!はー・・・
「む、お前も人のこと言えまい」
「あんたが俺の週休2日って決めたんだろうが!あんたよりは休んでるぞ俺は」
「そうか、それはいいことだ」
「じゃなくてあんたも休めってことなんだよ・・・」
「あーあー聞こえんなあ」
シカマルの深いため息が聞こえるが聞かなかったことにした。いいだろう別に休みの日に依頼を片づけたりたまった仕事をやったりしても、毎日のルーチンワークが大事なのだ。一日途切れると途端におっくうになるタイプだからな私は。それだけにこの仕事禁止令がいたい、復帰したときに元の生活に戻れるだろうか・・・
「それはそうとアキレウス」
「なんだ姐さん」
ゴーヤに付き合って鬼ごっこ(大人げなく逃げる役だった。捕まえられるわけがなかろうに)で遊んでやっていたアキレウスがその敏捷性でもってほぼ瞬間移動の速さで船の舳先付近から私のいる船尾まで移動したアキレウスに私は頼みごとをする。
「休みに申し訳ないとは思うが折角だ、カズマを少し鍛えてやってくれないか?強くしろとは言わんが逃げられるくらいにはしてやりたい・・・あの様子だと毎度結構ギリギリのようでな」
アキレウスはさっきのアクアの醜態を思い出したのか若干噴き出すのをこらえるような顔をしたあと、気の毒そうな顔になった。うん、彼女らは特化した能力は一流を大きく超えているがそれ以外はまあ・・・な?察してくれたようでありがたい限りである。それでも見捨てないあたりカズマもお人よしなのだろう。
「ああ、ああ、了解了解。ま、あんたが目をかけてるやつだし俺が多少手を出してもいいだろう。武器は?」
「ショートーソードとアグニタイトを使った玄翁だ。素手は全くできないらしい」
「玄翁ってトンカチかよ。武器はまあ使えなくもないならできないところを埋めていこうか・・・つまり、パンクラチオンだ」
「・・・怪我させるなよ?」
「女神さんがいるだろ」
・・・人選間違ったか?こいつの訓練は割とスパルタだ。生死がかかっているからとどんな状況からでも生還するための訓練をこいつの部隊に配属された奴は必ず行う、
「アキレウス、カズマは普通の人間だ、私たちのように尋常じゃない体力や力、能力を持ってるわけではない。いつも通りやったら殺してしまうぞ」
「んなもんわかってるよ。まあ見てなって」
そのままアキレウスはカズマのところまで歩いていき、何事か話したところで全力で拒否をし始めたカズマの襟首をつかんで片手で持ち上げ移動し始めた。うむ、カズマ・・・死ぬなよ・・・
「死ぬかと思った・・・」
「死んでなくてよかったな、だいぶ手加減してくれたようだぞ」
「あれでか!?」
「やつが本気でやったら腕をとられた時点で腕が取れているだろう。やつ曰く「相手を捕まえたら必ず壊す」それがパンクラチオンだそうだ。まあ今回はさわりだけだろうけど少しは動けるようになっただろう?」
「そうなのか・・・?」
「うむ、最後のほうは動きがだいぶ良くなっていた。やはり素人の我流ほど怖いものはないからな、拳闘は武器がないときにとれる最後の手段、魔力も尽きたときの生命線だ。ほら、私の砲は周囲の被害が甚大だろう?特にパーティー戦においては撃てば味方にダメージが行く。だから私は基本的に拳を使うのだ。剣や弓はどうも性に合わないようでな」
これは私が脳筋というわけでは決してない。いやまあ、その・・・なぜか武器を手に持つと力が入った時に握り壊してしまうことが多々あってだな・・・元から転生時に持っていた武器はそうでもないみたいなのだがこの世界のものになるとお値段と耐久値の問題で私が殴ったほうがいいのだ、うむ。これが理論武装である、屁理屈ともいう。
しごかれたカズマが私の安楽椅子のひじ掛けにもたれながら愚痴をこぼしているのに付き合ってやる。いやあ、さすがわが社の戦闘部門の長、強く、判断力も高く、そして教え方もうまいと来たものだ。最初はいやいや付き合っていたカズマもアキレウスがうまい具合にやる気を引き出させながら教えてやると、割とすぐに夢中になった。
カズマのへなちょこパンチが空を切る音を出すようになり、蹴りのフォームがきれいになり、それに打たれるダクネスが頬を紅潮させよだれをたらしたり・・・・最後のは余計か。ちなみに今はアキレウスに謎のアピールをして軽く投げられて背中を打ち付け恍惚の表情をしている。
めぐみんとゴーヤがドン引きしてるのにも興奮してるダクネスをほっておいていつの間にか仲良くなっていたゴーヤとめぐみんが楽しそうに笑っている。
「しっかしあの人、アキレウスだっけ?あとシカマルさん・・・強いんだなあ・・・それに俺でも知ってるFateのキャラクターだし、NARUTOのキャラじゃん。アニメでみたわ、めっちゃ早くて硬い無敵超人みたいなのと、めちゃくちゃ頭がいい戦略家だったっけ」
「実にいいえて妙だが戦闘技術は自前だぞ?」
「どういうことだ?」
「特典として私ややつのような二次元キャラに転生した人物には基本的に技量はない。正確には体は覚えているが私たちの精神ではそれを扱ったことはないのだ。例えば私の場合、砲撃をどう扱えばいいのか、なんてことは転生後に妖精さんから教えてもらった」
「えーと、体は剣の達人で、剣の振り方とかも理屈はわかってるけど自分では振ったことはない、とかそんなかんじ?」
「そういうことだ。だから淀みなく技を繰りだすようになるまで結局は鍛錬がいる。一応体が覚えているからな、そのままでもそれっぽく戦うことはできるが、違和感が残るのだ。こうではなかった、この体の技術はもっと洗練されていたと」
「そういうこった。俺も体や記憶に残ってる技を結局一から習得しなおしたからな、もちろんいろいろ分かってるから0からよりは格段に早く覚えられた。いやー鍛錬するのが楽しくてしょうがなかったぜ!」
アキレウスがその俊足でもって私たちの会話に入り込んできた。こいつはほんと心臓に悪い、さっきまで100m先にいたと思ったら当たり前のようにそこにいて会話に混ざってくるのだから、予想があてにならない。
「じゃ、休憩も済んだし続きやるぞー」
「いやだあああああああ!!!」
脱兎のごとく逃げ出したカズマが威勢よく海に飛び込もうとジャンプしたが先回りしたアキレウスに空中でキャッチされ海面を蹴って戻ってくるというどうしたらできるんだと言いたくなるような技術を見せられた私が微妙な顔で両手を合わせ、どこかにいるであろう私の世界の神に祈った・・・・・たくさんいすぎてどれに祈ればいいかわからなかったが。遅れてアキレウスが蹴ったせいで波立てられた海面の揺れが、船を揺らすのだった。
「到着でござるー!2日間おつかれさんでつ!じゃ、拙者は元の拠点に戻るんでこれにてドロン!でござる!」
「癪でちがゴーヤもここでお別れでち。武蔵!仕事したら許さないでちから!ひげー!送って行ってほしいでち!」
「あいあいゴーヤたん。じゃ、体大事にしろよ大将!カズマも元気でやれ!」
「ああ、感謝する。またな、ティーチ」
「ゴーヤちゃんにティーチさん、ありがとう!またどっかで!」
ブラストについたと思ったらすぐティーチとゴーヤはとんぼ返りしてしまった。そういえばゴーヤに至っては明日からまたいろいろあるんだったか・・・いや、最悪を引いてしまったとはいえ申し訳ないことをした。アキレウスに抱かれた私はシカマルに手招きして彼の耳に口を寄せる。
「ゴーヤのシフトを調整して次の仕事が終わったら休みをやってくれ、今回は悪いことをした」
「わーったよ。ったくめんどくせーな・・・あー、馬車持ってくるからアキレウス、馬かしてくれよ」
「おーいいぜ、ペーダソス!」
ピュイッとアキレウスが口笛を鳴らすと何もない空間から一頭の立派な馬が現れた。アキレウスの宝具「
「立派な馬だな・・・神器、なのか?」
ダクネスがその肢体をみて感嘆の息を漏らす。この世界の馬は大事な移動手段の一つだ。利用する機会が多い分皆目が肥えているからな・・・その住人を前にして花丸をもらえるとは流石は神代の名馬だ。
「おっ見どころあるじゃねえかダクネス。こいつはペーダソス、ギリシャ一の名馬だ。なあ?」
アキレウスにこたえるように高く嘶いたペーダソス、しゃべれなくとも人の言葉を介し、戦車を使わないアキレウスの騎馬戦で一番よく使用される彼はもはや一心同体、阿吽の域に達している。ダクネスにも挨拶するようにかっぽかっぽ近づいて顔を近づける。ダクネスも慣れた手つきで鼻づらを撫でてやってご満悦のペーダソスにアキレウスが指示をだす。
「ペーダソス、シカマルについていって馬車引いてきてくれ。お前ならでっかいのでも一頭で十分だろ」
ブルルン、と鼻を鳴らして答えたペーダソスがシカマルについて歩き去っていく、手綱を引かなくても勝手についていくあたりやはり頭がいい。ノーリードの犬の散歩を見ているようだ・・・めちゃくちゃでかいが。
しばらく待っているとペーダソスが引いた馬車と御者台に乗ったシカマルが戻ってきた。まあ普通より若干大きいくらいのサイズだな、アキレウスに乗らしてもらって奥のほうで腰かけて人心地着く・・・やっとアクセルにもどれるな・・・
カズマたちも乗り込んで御者を変わったアキレウスが御者台につき、シカマルが最後に乗り込んでドアを閉める。そうすると滑らかに馬車は動き出した。一頭で引っ張っているとは思えないほどに力強く、余裕のある走りだ。これならさほど時間もかからずにアクセルに帰れるだろう。うむ、自分の家のベッドが恋しいな・・・あと帰ったらカズマたちにも報酬を払わねばいかん。
普通の馬車より圧倒的に速い速度で走る割に揺れが少ないのを疑問に思って外を見るアクアたちを眺めながら、私はこの先を憂うのであった。
祝!お気に入り1000人突破!ありがとうございます!
思い付きから始まった本作ですが、沢山の方に評価や感想をいただきありがたい限りです。
これで長かったオリジナル編は終わり、原作の方面へ戻っていきたいと思います。
一応流れとしては今まで原作→オリジナル→原作→オリジナルという流れでやっていこうと思っているので私のネタの泉が尽きるまでは頑張ろうと思います。
更新速度については亀ですが、どうかこれからもよろしくお願いします。
興味がある話に投票してくれたら嬉しいなー
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