ほう、とため息をつく。現在私は両足をやらかしてしまい絶賛休職中である。2日前、見事にモンスターにぼこぼこにされた私は黒ひげにブラストまで送り届けられシカマルとアキレウスが用意してくれた馬車に乗ってカズマたちと一緒にブラストに帰ってきた。シカマルはそのあと私の家から仕事に必要なものを持っていき、忍らしく一瞬で本社のほうへ去っていった。
で、アキレウスだがそのあとまだ休みが残っているそうで1日だけ私の家に泊まり、カズマを
ちなみにその時私はアキレウスが出していた3頭の馬に囲まれてうち一頭からはアキレウスの愚痴を聞かされていた。なに?もっと呼び出して戦闘に使ってほしい?荷運びは嫌だ?それはアキレウスに言え。多分お前らが全力で走ったら大体のことが終わるし周辺の抉れ方がとんでもないことになるからだぞ。いや、確かに作中で芝刈り機にたとえられていたが森を草のごとく平地に変えていくものだからまあ、そうなるわけだ。残ったのはでこぼこの荒れ地、どうしろという話なんだが・・・
それが終わってアキレウスも帰ってしまい、カズマたちと私はいつもの日常に戻りつつあるわけだ。
ということで今現在、カズマたちにきっちり報酬を払って文字通り暇になったうえに遠くまで動けない私が何をしているかというと・・・
「いい湯だ・・・・」
長風呂である。家にいることしかできないうえに移動の要である足をつぶしてしまった私のできることなんて、寝るか、読書をするか、日向ぼっこをするか、風呂に入るか、仕事をするか・・・仕事ができないならもっと減る・・・自分でもあまりの無趣味に笑いそうになってしまうが実際いつも動いてばかりいたのでじっとしながら動かず何かをするなんてことは前世のSE時代以来だ。私も変わるものであるな。
私が帰ってきたことを知った住人たちが私の怪我を知っていろいろ差し入れてくれたものの一つ、この世界にもあった柚子を入れて柚子風呂を楽しんでいるが、柑橘系のさわやかな香りと熱い湯につかっていると足に負担がかからず痛くないし実に気持ちがいい。いつもぶら下がっている乳房も浮いて肩も楽だし、風呂で浮き輪を使って浮いている妖精さんも癒しだし・・・妖精さんが作った檜っぽい湯舟と合わさって実に心地がいい。あぁ・・・それにしても暇だ・・・・。
もう午前中をずっと湯船につかって過ごしているのでそろそろ上がるかと考え、妖精さんにお願いして体を持ち上げてふいてもらい着替えさせてもらう。むぅ、いつも動く足が動かないというのは不便だな・・・下着を履くことすら他人の介助が必要だなんて。まて、なんだそのフリフリの下着は?なに?似合うって?私のような武骨な女にそんな少女趣味なものにあうわけがなかろう。いいからいつものを・・・あっちょっ履かすんじゃな・・・・はぁ、もういい。
着替え終わって妖精さんが30分で作った魔力式車椅子(設計万能の天才)に乗って家を出る。バリアフリーとは程遠い家だがなぜか揺れもしないしたおれもしない、不思議なものだ。冬の寒い気温もへっちゃらな私は広場に車輪をすすめ妖精さんと一緒に日向ぼっこを始めた。
しばらくするとギルドの方から4人の男女が歩いてきた。いかにもこれから依頼に行きますといった風体の彼らの中に見知った顔・・・つまりカズマがいるのに疑問を覚え、なおかつそのパーティーの中にいつもいるはずのダストという男がいないのを見て首をかしげていると向こうから声をかけてきてくれた。
「おっ武蔵さんじゃねえか。怪我は大丈夫なのかい?」
「ああ、テイラー。なに、そのうち治るさ。ダストはどうしたんだ?カズマが今日一緒なのか?」
「それがだな・・・」
なんでも先ほどカズマがギルドに入るとダストが挑発したらしい。上級職の中に最弱職がいるとなじり、お前が足を引っ張ていると嘲笑いおまけに毎日パーティーメンバーをとっかえひっかえしていい思いしてんだろと下ネタをかましたらしい。一応それでもカズマは何も言わず耐えてたらしいのだが、ダストが変わってくれなんて言ったもんだから大喜びで変わった、というわけらしい。まず・・・
「ダスト、相変わらずのようだな」
「ほんとよね。私たちにも失礼だしカズマたちにも失礼よ。ま、任せておいてよ武蔵さん。駆け出し君はきっちり守ってあげるからさ」
「ははは、リーン・・・カズマもそれなりに強いからきちんと戦わせてやれ。カズマ、折角だし普通の冒険者の冒険・・・楽しんでくるといい」
「ああ!いつもは指示する側だしたまにはこういうのもいいな!武蔵さんも体大事にしてくれよ」
そう言って彼らはそのまま門を出て出発していった。たしかゴブリン退治だったな?まあ今日の夜近場で野営して明日の朝討伐すれば明日昼には帰ってこれるだろう。そういえば最近初心者殺しが出没してるって話を小耳にはさんだが大丈夫なのだろうか・・・?
彼らを見送って暫くすると今度はアクアたちが来た。ダストは少し楽しそうだがアクアたちはあんまり彼に気を許していないようだな。
「やあダスト、それにアクアたちも。カズマにあったぞ?面白いことをしてるじゃないか」
「お、武蔵さんじゃねえの。いーじゃねーかよあの最弱職くんがいっつもいい思いしてんなら俺がそうなってもよー。ま、せいぜい楽しくやらせてもらうわ」
こいつはもう・・・まぁ何も言うまい。まあこいつももしかしたらアクアたちを上手く使えるかもしれないからな。ま、お手並み拝見というやつだ。ついでにアクアたちに一つアドバイスをしてやろう。
「アクア、めぐみん、ダクネス。別に緊張する必要はない。
「あったり前じゃない!今にカズマが泣いて戻ってくるに決まってるわ!アクア様じゃないと俺はやってられないです~!って!ぷーくすくす!そうなるのが楽しみだわ!」
「うむ、こういったプレイも、その・・・嫌いではない」
「爆裂魔法の布教にもってこいの機会です!私の力を見せてやろうではありませんか!」
うむ、気合十分で実に素晴らしいことである。惜しむらくはその気合、十中八九空回りしてトラブルが降ってくるというのが残念ではあるが・・・まあそれをどうするかはダストの腕の見せ所であろう。やる気を充填して外へ向かっていくアクアたちを見送って私はそのまま家に帰るのであった。
そして数時間後・・・露天商から買い物をしてホクホク顔の私が家に帰る道を進んでいると・・・前方にダストたちが見えた・・・予想通りボロボロで、頭に歯形が付きなんだか湿っぽいアクアは泣きながらめぐみんを背負い、ダストは気絶したダクネスを背負っている。そして全員ボロボロのドロドロだ。見事に予感が的中したな。
「やあダスト、昼以来ではないか。いい思いは・・・ぷっ・・くくく・・・できたのか・・・ふふっ・・・?」
見事に予想通り過ぎて思わず笑いがこみあげてしまいそれを噛み殺しながら声をかけてやる。ダストはその生気を失った顔をゆるゆると私の方に向け、ぽつりと言葉を放った。
「武蔵さん・・・俺・・・あいつに謝りたい」
「そうかそうか。いろいろ理解が及んだようでなによりだ。いい薬になっただろう?お前も」
「うん、俺もうちょっと自分を見直すことにするわ・・・・」
そこまで言ってようやくダストの瞳に光が戻った。彼は突然まくしたてるように思いのたけを叫び始めた。
「なんで各自にできることを聞いたら爆裂魔法撃ってガス欠になるんだ!そしたら初心者殺しが寄ってきて逃げようって言ったらこのクルセイダーが突っ込んで勝手に気絶するし、この青いのはまた無駄に突っ込んで頭かじられるし!ようやく巻いて逃げてきたんだよ!カズマ!俺が悪かった~~~!!!!」
「お、おう・・・まずよく生きてたな。あといい加減アクアは泣き止め、おーよしよし、痛かったな。初心者殺しがいるって話は本当だったわけか。うん、命あっての物種だ。命拾いをしてよかったな。ギルドに行って報告をしてくるといい。カズマも明日には戻るだろうから」
「ああ・・・いくぞ・・・」
そう言ってダストたちは幽鬼のような足取りでふらふらと立ち去って行った。思わず黙祷を捧げ、そそくさと家路をいそぎ、食事をしてそのまま寝た。
翌日、いつも通りラッパ・・・というわけでもなく休みだからぐーたら寝過ごして車椅子で出かけて市場を冷やかす。ウィンドウショッピング・・・とはまた違うが、青果店で買ったみずみずしいリンゴにかじりつき店主と話しながらここ最近の出来事を聞いている。こういうのが大事なのだ、彼ら商店は元の世界と違ってフランチャイズなんてあってないようなもの、個人同士の結びつきが非常に強く情報収集にはまさにうってつけなのだ。次の飯の種を予想して先回りすれば儲かるというわけだな、例えば少し前の鉱脈の発見とかがまさにそれだ。いやーあの時は疲れたが実にいい稼ぎがでた・・・結局仕事から離れられてないがまあ仕方あるまい。
いろいろ食べ物を買いこんで膝の上にのせてギルド前の広場で食べる。うむ、寒い中食べる熱々のホットドッグほどうまいものはあるまい。揚げたてのポテトフライにハンバーガー、串焼きのボア肉。とどめのBLTサンド、やはりこの世界の食べ物はどれもこれもうまい。基本的に元の世界と似たような食材がそろっているが、生態がなかなかややこしいことになっている。まあ食べれたら一緒だ、食べるまで多少煩雑になっただけ、ああ!旨いな!
もぐもぐと食事に舌鼓を打っていると門へ通じる道からカズマたちがやってきた。随分と仲良くなったらしくみんな笑顔だ。ほう、どうやらいいことがあったと見える。守るべき対象として少し下に見ていたカズマに対等かあるいはそれ以上の存在として見ている感じだ。ふふふカズマ、よくやれたみたいじゃないかとハンバーガーを頬張りながら見ているとカズマが気付いたようだ。
「あ、武蔵さん!帰ったぜ!お、うまそう!」
「ん、お帰りカズマ。食べるか?どれもこれもうまいぞ」
「さんきゅー!じゃ、この串焼きを・・・」
「ずるいぜ武蔵さん。あんたカズマのこと知ってて黙ってただろ?いやーまさか初心者殺しをやっちまえる冒険者だとは思わなかったぜ!なぁお前ら!」
「・・・は?いや待てそれは初耳なんだが?」
カズマが初心者殺しを討伐しただと!?思わず目を白黒させてしまう。いや確かに装備を見れば不可能なわけではない、がそれほどの経験も技量もカズマにはないはずだ。思い当たる節といえばアキレウス・・・奴が何かをしたとしか思えん。
「テイラー、話もらないでくれよ。もう一回やれって言われたってもうできないぜ俺は。偶然だ偶然」
「えー!?あんなに鮮やかに討伐したのに?ゴブリン退治だって大活躍だったじゃん!」
話を聞くとカズマがあれこれ初心者魔法でゴブリン退治を圧倒的に楽に終わるように整えてやり余裕の依頼達成、のあと帰ってくる途中でなぜか苛立っている初心者殺しに遭遇したらしい。定石通り彼らは逃げたのだが、執拗に初心者殺しが追いかけてきて、仕方なく迎撃をしようとしたらなんとカズマが一人で終わらせてしまったそうなのだ。
「こいつすごかったんだぜ!初心者殺しに狙われたリーンの前に颯爽と割って入ったと思ったら前足捕って投げちまったんだ!」
・・・パンクラチオンか。アキレウスが手ほどきしたとはいえそう簡単にものにできる技術ではないはず・・・スキルか!?もしかして「パンクラチオン」というスキルがあって、それを取得したから・・・?なるほど、どんなスキルでも習得できる冒険者・・・習得するスキル次第で後衛にも前衛にもオールマイティに変われる職業だ。カズマの柔軟な思考があればそれは恐ろしい武器になるだろう。
「しかも、足を折りつつ投げたみたいで初心者殺しがのたうち回ってる瞬間に大工道具のハンマー投げたと思ったらそれが大爆発!息も絶え絶えな初心者殺しにショートソードで心臓を一突きして倒しちゃったのよ!駆け出し君なんて言ったことが恥ずかしいったらないわ!」
「スキルがうまくかみ合っただけだって。あーもう帰ってくるときずっとこの話題だったからもう恥ずかしいったらないぜ!もういいじゃねえか生き残ったんだからさあ」
「そりゃあんな鮮やかにやったら興奮するってもんだぜカズマ!うひゃひゃひゃ!」
赤面してしどろもどろに頑張って話題をそらそうとするカズマと余程いい場面だったのか繰り返し繰り返しカズマを褒めたたえるリーンやテイラー、キース。ふふふ、行くときは少し壁があったように見えたが帰ってきたらまるで往年の友人のような関係に変わってると来たものだ、これはいいものを見た。
「うっせえ!いいからギルドに報告いくぞ!じゃあな武蔵さん!ご馳走様!」
「ああ、楽しめたようで何よりだ。いい気分転換になったようだな」
カズマが肩を怒らせて我先にとギルドに向かおうと歩を進めようとすると、ギルドのドアがすさまじい勢いで開いて誰かが全速力でこちらに走ってきた。大方予想はつくがそこまでか・・・・
「すんまっせんしたぁ!!!!」
ずざああああと見事なスライディング土下座をかましたのはやはりダストだ。額を地面にこすりつけて全力でカズマに謝罪を始めたダストをリーンたちはありえないものを見るような目で見つめていた。
「ん、ああ・・・えっと・・・いろいろわかってくれた?」
「それはもう存分に!あんたすげえよ!あんなパーティー纏めてるなんてな!昨日はあんなこと言って悪かったよ・・・聞いてくれよ・・・」
「いやそれはいい。お前のその様子で全部わかるし知りたくないし聞きたくもない。あとパーティー交換あと1週間ぐらい延長していい?」
「「「賛成!!」」」
「いやマジでごめんなさい!何でもするから俺をもとの居場所に戻してくれ!!!」
ダスト、哀れなやつだ。それにしてもリーンたちがそんなに気に入ったのかカズマ。いやまあ、いつものパーティーより格段にいろいろやりやすいだろうというのはわかるのだが、もう少し躊躇いを見せてやってもいいのではないだろうか?と情けなく懇願するダストに対して大きく出てるカズマを見ながら私は最後のポテトを口に放り込みながらそう考えるのであった。
カズマに初心者殺しが倒せるわけないだろ!いい加減にしろ!という方には申し訳ありませんがカズマさんをある程度強化する方針ですのでここはまあどうか一つ。
「大剣」とかのスキルがあるみたいだし一定条件下で発現可能な「パンクラチオン」スキルがあってもいいじゃない(小声)
とりあえずデストロイヤーまでは終わらせたいですね。
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