「と、いうわけで明日はダンジョンに行きます。わかったかおまえらー」
「いやです」
「おお、いいのではないか?」
療養中で暇を持て余した私がカズマに車椅子を押してもらってギルドに行き、一緒に夕食をとっていると唐突にカズマが説明をすっ飛ばして発言した。まあ理由はよくわからなかったがダンジョンは生息するモンスターの内容が季節で変わることなく一定しており、場合によっては財宝が眠ってることもありうる一攫千金の可能性を秘めた冒険者の王道とも言っていいものだ。
なぜか即答で嫌がっためぐみんが、カズマに料理の皿を盗られて返してください!と足りない身長で奪い返そうとしてるのを押さえつけながらカズマは
「行きます。なぜなら借金を返さなければいけないからです。一応原因の一人であるめぐみんさんには荷物持ちをして参加する義務があると俺は思っています」
「ぐぅ・・・!」
カズマのにべもない切り捨てに唸っためぐみんはそれでも嫌らしく、首をふるふる振るっている。
「めぐみん、私はお前とパーティーを組んだことがないからわからないが、ダンジョンの何が嫌なのだ?アンデッド系ならアクアがいるだろう・・・もしや、暗いのが怖いのか?」
「違います!だってダンジョンって私ができることが皆無じゃないですか!爆裂魔法使ったら最悪ダンジョンが崩れてしまうんです!ダンジョンでの私なんてお荷物ですよお荷物!」
「その立派な杖で殴るぐらいの抵抗は見せられるだろう。それカズマのパーティーに入った時何でもすると豪語してたではないか・・・こう言っているがカズマ、どうするのだ?」
私がカズマに話を振るとカズマはめぐみんに皿を返し、ついでとばかりにデコピンをかまして私に向き直って話し出した。
「実際にゃめぐみんにダンジョンの中までついてきてもらうつもりはないんだよ。ダンジョンに着くまでの露払いと荷物持ちをやってもらうんだ。ダンジョンアタックは俺一人でやる」
「待てカズマ、それでは危険すぎる。大剣が折られているとはいえ盾ぐらいにはなれるから私もつれて行け」
「お前それ欲望を満たしたいだけだろうが。却下だ却下。モンスターと戦うつもりは一切ないからな」
「あら、それならいいんじゃないかしら。でもダンジョンに行くなら盗賊は必須よ?クリスでも連れていくのかしら?」
「自分が楽できると知っていってくれるじゃねぇかこの駄女神。いいよ、クリスにスキル習ったから潜入して財宝だけ持って帰るのは俺一人で。ハイ決定だ決定。」
「カズマ、その気概は素晴らしいと思うのだが・・・少々危うい気がする。悪いことはいわないからクリスを連れていくといい、といっても最近やつを見かけてはいないがな。どこにいるのだか・・・」
ダンジョンアタックは危険だ。いくらカズマのスキル構成的に可能だと言っても知識が不足してる点は否めないだろう。その点クリスがいれば少なくとも生きて帰ることくらいはできるだろう。最悪死んでなければアクアがどうにでもしてくれるだろうからな・・・行くダンジョンによっては行くこと自体を止めるべきだろう。
「いや、俺もそう思ったんだけどさぁ。クリス、急に忙しくなったんだってよ。なんでも昔世話になった先輩の尻ぬぐいのために暫くアクセルを留守にするんだと。で、そういうことならとダンジョンアタックに必要なスキルを全部教えてもらって習得したんだ。初心者殺しのおかげでレベル上がってたからな」
「・・・そこまで準備してるなら止めはすまいが、どこのダンジョンに行くのだ?お前が潜れるレベルなのだろうな?」
「ん、ああ、いってなかったわ。えーと、行くのはキールのダンジョンってとこだよ」
なんだ、あそこか。安心して送り出せるところではないか。
そんなことがあった翌日、カズマ一行は早速ダンジョンに行く準備を整え出発するところである。私も一応見送りということで門の前で彼らにあいさつをしているところだ。大きな頭陀袋を下げたカズマと憂鬱そうなめぐみん、何かを期待してるようなダクネス、めんどくさそうなアクアを前に若干心配になってしまった私はポケットの中をあさってそこからずるりと妖精さんを取り出した。
「カズマ、この子を連れていけ。きっと役に立つだろう。いいな?妖精さん」
「ン・・・ハッ!グッモーニン!カズマ、ゲンキデスカー?」
「いや明らかに寝てたんだろうけど・・・いいのか?こっちとしてはいろいろ嬉しいんだけどさ」
私に襟をつかまれてぷらーんとなってもなお寝ていた妖精さんの起床一発の挨拶を聞いて私はうなづいてカズマを手招きし、少しかがんでくれたカズマの肩に妖精さんを乗っけてやった。なんだかんだカズマのことが大好きな金剛風の妖精さんがカズマの頬にぎゅっと抱き着きながら顔をすりすりしてるのをみて自然に笑みがこぼれてしまう。
「いやなに、その子は基本担当が戦闘、航行でモノづくりが本業ではないのだ。できないわけではないがな。つまり私が暇な以上、その子も暇なのだよ。ずっと寝させているのもかわいそうだからな、万が一何かあった時はその子に頼るといい。普通に強いからな・・・そうだな、大剣が当たるダクネスくらいには強いぞ」
「・・・ダクネス、パーティーから外れるか?」
「っ!?まま待てカズマ!いやその、そういうのは私が求めているものではなくてだな・・・」
「まあ言ってやるなカズマ。妖精さん自体は硬いが、ダクネスのように踏みとどまれるわけではない。攻撃が当たれば普通に吹っ飛ぶ。壁役ならダクネスが最適だろう」
「わかってるって。冗談だよ冗談、というかダクネスのツボがわかんねーよ」
「普通に痛めつければいいのではないか?それ目的で防御に特化したのがソイツだからな。アキレウスに投げられて悦んでただろう?」
「そういえば組手の時にあまりにも攻撃しないもんだから結局アキレウスさんに代わってもらったんだったわ」
「・・・っ・・・ぁっ・・・」
私たちの言葉一つで頬を紅潮させ時折喘ぎ声を漏らして身をよじるダクネスを私とカズマがあきれた目で見やり、めぐみんは引いている。もじもじと嬉しそうだが恥ずかしそうであるダクネスを白けた目で見つめたカズマが妖精さんを撫でながら私から離れていく。
「じゃあ、行ってくるよ」
「ああ、無事で帰ってこい」
「お土産期待してなさいよ!」
アクアがビシッとこちらに指をさして宣言する。ダンジョンに観光にでも行くつもりなのだろうか?シラーっとアクアを見つめるカズマの目に気づけ。ほら荷物投げられたではないか。
頭に荷物が入った袋が着弾し撃沈したアクアの足を持って引きずってカズマは出発してしまった。うむ、まあその・・・・無事に帰ってきてほしい。
「ってことがあったんだよ。キールってリッチーの話もそうだけど、アクアがアンデッドに集られる体質だっつうのが一番驚いたんだよなあ。いや、前々からそうだっていうのはなんとなくわかってたんだけど、ふつうそういうのって大事だから伝えるもんじゃん?」
「ほう、キールのダンジョンの作成者がまだ生きていたとはな。アクアがよくそんな穏やかに送り出したものだ。ふむ、そういう話だとアルカンシアでアンデッドに会わなかったのは結界の効果がそれほど優れていたということだな、余計なものを呼んではくれたが」
カズマがダンジョンに出発した次の日、頭陀袋いっぱいの財宝を持って帰ったカズマは、そのままギルドに行って、大部分を借金返済に充てて私に妖精さんを返しに家に尋ねてきた。なんでも当初の予定とは変わり、アクアとダンジョンに潜ったのだそうだ。そこでアクアの神性にひかれて覚醒したダンジョンマスターのリッチー、キールに導かれ彼を浄化する代わりに彼の遺産を手にした、ということらしい。いつもいつも思うのだが・・・
「お前は何かとトラブルの渦中にいるな?普通だったらそこまで変わったことには合わないものだろうに」
「俺だってそうなってほしくてそんな目にあってるわけじゃねーーーよ!!!・・・はあ、とりあえず武蔵さん、この子返すわ。いやいてくれて助かったよほんとに」
「タダイマネー!」
「ああ、おかえり。役に立ったようで何よりだ。お前も無傷なようでよかった」
カズマがポケットから妖精さんを猫掴みして私に返してくれたので受け取り、妖精さんはそのまま私の中に入ってしまった。カズマはそれを確認するとまだ話したいことがあるらしく口を開いた。
「恥ずかしいんだけどさ、一回アクアとダンジョン内で口喧嘩しちまってスカルアーチャーの狙撃を受けかけたんだよ。その子がはじいてくれなかったら俺もアクアもヘッドショット決められてお陀仏になるとことだったんだ。ヒヤッとしたよ」
「それはよくないな。ダンジョンの中では油断は禁物だぞ?助かったのなら妖精さんに何かあげてくれ。やる気が上がるからな」
「おお、わかった!今度また貸してくれると嬉しいんだけど・・・」
「構わんが・・・・何に使うんだ?」
「・・・癒しが・・・ほしい・・・」
「・・・持っていけ」
「ホァー?ア、カズマ!ドウシタノー?」
どうやらまた寝てしまったらしい寝ぼけ眼の妖精さんを私はカズマに渡して彼の胃にそのうち穴が開くんじゃないかと心配になってしまった。
それからおおよそ5日後、カズマが屋敷を手に入れたと自慢げに私に話してくれた。なんでも幽霊が出るという話だったのだがアクアが墓地に結界を張ったことによりあぶれた霊がだれも住んでなかったその屋敷に集まっていたという話らしい。なんだそれはマッチポンプか?と思ったがカズマはどうやらすでに洗いざらい依頼人に話して臨時依頼の報酬なども辞退して、依頼人の好意で冬ごもりの場所を手に入れたとかなんとか。
「・・・さすがの運だなカズマ。こうも短時間でトラブルとリターンを繰り返すとは私に真似できないだろう」
「いやその、うん。なんも言えないんだけど・・・望んでやったわけじゃないというのはわかってほしいんだ」
「それはわかっているとも。ただ、私が転生してまあ半年以上たつわけだが、お前が来てからというものお前関連でいろいろ起こってるからな、随分騒がしくなったものだと思ったわけだ」
「それは悪いと思ってるんだけど・・・いやそれよりもさ、武蔵さん怪我どうなんだ?よくなってるのか?」
「あー、それなんだが・・・難航している。妖精さんが頑張って直そうとしてくれてるのはそうなんだが、引きちぎられたせいで部品と会わない場所が出てきたりしてだな・・・長くかかりそうで困っている」
「はーほんと大変なことになっちまったな・・・アクアの回復魔法が効かないのがなぁ・・・あいつが泣き喚きながらかけても治らない怪我とか・・・」
「それは仕方あるまい。私ではなく
カズマに尋ねるとカズマは少ししどろもどろになりながらポソポソ話し出した。話を聞くならせっかく立派な暖炉付きの屋敷を手に入れたのならそこにこもっていればいいものを。カズマの性格上アクティブに動き回りたくはないだろう。いつもは金に困って仕方なく依頼を受けているのだからな。
「・・・アクア」
「なに?」
「アクアだよ!あいつ自分で借金を返そうってつもりがこれっぽっちも感じられないんだ!あいつの借金のせいで俺は内職に手を付けなきゃいけないくらいなのにあいつときたら毎日毎日暖炉の前から動かずゴロゴロと・・・俺だってそうしたいのに!」
本音が漏れているぞカズマよ。ついポロリと本音が漏れたカズマが息せき切ってさらに私に対してガミガミとアクアの愚痴を積み上げていく。
「お前の借金なんだからやれって言っても手伝わないし!何もしないならせめて暖炉の前を譲ってくれって言っても聞かないし!おまけに俺の財布から金盗ってくし!あんまりにも頭にきたもんだから・・・」
親の財布から小銭をくすねる小学生かあいつは。しかも自分が原因の借金をカズマに押し付けようと画策してるわけか・・・ほんとに女神か?所業だけ聞いてると悪神といわれた方がまだ信じられるぞ。
「だから、お灸をすえてやろうと思って・・・」
「私の家にきたと・・・・」
「ああ、幸いあと2日で次の借金の催促が来る。俺の分は先にギルドに収めてきたから追いかけられるのはアクアだけだ。いい加減自分ひとりでどうにかしてくれるようになってくれないと困るしな、ちょうどいい。だから頼む!協力してください!」
「仕方ない、協力してやろう。客間を使え、見つからないように隠してやる」
アクアに思うところがないわけではない私は綺麗に土下座したカズマに対して協力の申し出をするのであった。バイトするならともかくぐーたらするだけとは・・・仕事したくてもできない私に対する当てつけか?いや、これは完全に私怨だが。そういえば、とカズマに尋ねる。
「ちなみに私が断ったらどうする気だったんだ?」
「ブラストあたりに雲隠れしようかと思ってた」
「えぇ・・・」
これは思った以上に本気だぞカズマのやつ・・・アクア、面倒になる前に謝ってくれ・・・・
武蔵さんをカズマにつけすぎちゃうと多分全部武蔵さんがどうにかしちゃう、できちゃうのでいったん離脱させるために怪我してもらいました
なのでしばらくの間、原作の出来事はカズマに聞く、という形になります。たぶん
興味がある話に投票してくれたら嬉しいなー
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