カズマが私の家に転がり込んでからおおよそ4時間ほどたった。カズマは客間に入って持ってきた材料で内職をしている。一人で黙々とやらせるのもかわいそうだと考えた私は暇な妖精さんと一緒にカズマの内職を手伝っている。こういったらなんだが数の暴力とはいったもので、見る見るうちに完成品が積みあがっていく。というか余計なものも積みあがっている気がする。なんか白いケセランパセランみたいなのとペンギンみたいなの・・・ってこれ失敗ペンギンじゃないか?
え?何か不足してるのか?資材か?資材なのか?・・・え?冗談だって?質の悪いことをするな!あっちょっ椅子を揺らすな!手元がぶれるだろう!ぬあああああ!?
きらりと瞳を妖しく輝かせた妖精さんが突如分身し、私が座っていた椅子を揺らして私を投げ出したのだ。妖精さんの謎パワーによって宙を舞った私はそれを地面に座りちゃぶ台の前で唖然とした表情で見ていたカズマの上に見事に落ちてしまう。
「んう・・・すまんカズマ、妖精さんたちが・・・」
「むぐ・・・むぐぐぐ・・・」
どうやら着地位置まで完璧に計算して投げられた私はカズマの顔に胸を押し当て、とっさにカズマが盾にした手が見事に空を切ってまるで抱きしめられているような形でカズマに覆いかぶさっていた。
「・・・重ねてすまんカズマ、私はいま姿勢の変更が効かないのだ、聞こえているならどこをつかんでもらっても構わないから横に投げてくれ」
かろうじて腕で体を起こしたがここで武蔵の胸の大きさが仇となった。腕の長さをもってしてもカズマの顔から胸が離れない。しまった、今日は上の下着をつけていないのだった。重力にひかれるがままの私の肉毬はそのままカズマの顔に覆いかぶさったままだ。んー・・・お、そこだカズマ、よしよしそのまま・・・ひゃっ!?
「ぶっはーびっくりした!武蔵さんだ・・いじょう・・・ぶ・・・?」
「・・・うむ、妖精さんが失礼をした。・・・その、できれば・・・離してくれるとありがたい」
どうやら私の話したことは聞こえていなかったらしいカズマが私の腰をつかんだと思ったら顔に乗っかってる物体が邪魔だったのだろうか、私の胸を見事に鷲掴みして私の体をどけてくれたのだ。まあどこをつかんでもいいといったのは私だし許そう・・・うむ、感触を確かめるように揉みしだくな。さっさと手を放せ、とカズマの頭に横からぺちんと平手を当ててやるとやっと再起動したのか寝た状態からバン!!と一瞬で私から飛びずさったカズマが土下座の態勢に入った。
「ごごごめん武蔵さん!いやその、ぶっちゃけ俺は悪くないと思うけど一応謝っておく!」
「そこまで言い切るとは逆に清々しいなカズマ。たしかにお前は悪くないし私はどこをつかんでもいいと言った。そしてこれはそこのグレムリンが悪い」
「ワタシタチハムサシサンヲオモッテ・・・」
「オウボウダー!」
「どの口が言うのかまったく・・・。お前とお前は1週間おやつ抜きだ。わかったらカズマに謝れ」
「アアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ウー、ゴメンナサイカズマ」
「あー、いやまあ俺はいいんだけどさ」
下手人の妖精さん2人が対照的な謝り方をした。というか一人はなんかこう・・・すべてを失ったような絶叫をしてるが大丈夫なのだろうか・・・?そんなにおやつが大事か、ならやらなければよかっただろうに。
「キョウミガマサッタ、ハンセイハシテイルガコウカイハイッサイナイ」
「お前は2週間に増加しよう」
「エッ・・・」
なぜか物理的に真っ白になった妖精さんをほっておいてカズマに頼んで起こしてもらおうと顔を向けるととそこにはなぜか同類を見つけたような顔をしたカズマがそこにいた。いや、この醜態をさらしておいて言い訳もしようもないがお前の方がよほど苦労してるぞ。というかこんな危ないいたずらを仕掛けられたのは初めてだ。
「なんだカズマ、その自分と同じ立場の人を見たみたいな顔は。言っておくがお前の方がアレだぞ。ついでにすまないが起こしてくれると助かる」
「うぇ!?あ、はいどうぞ」
図星という文字が浮き出そうなカズマの手を借りて地面に座りなおす、まったく私が怪我人だということが分かってるのだろうか妖精さんは。あ、そうだ。これは聞いておかねばな。
「カズマ、今日と明日は泊っていくのか?屋敷へ帰る気はないのだろう?」
「えー、あー・・・やっべ考えてなかった。どうしようかな・・・」
「さっきのことは私はもう気にしてない。私自身はいてもらっても構わんぞ」
「えーと、その・・・よろしくお願いします・・・」
「ああ、わかった」
神妙に頭を下げたカズマに私は了承の意を返すのだった。
ドンドンドン!と乱暴なノックの音が聞こえる。あれからしばらく内職を手伝いなんだかんだそのあとはしょぼんと真面目にやった妖精さんと私、そしてカズマは夕食をとっていた。日もとっぷり暮れた夜の帳のなか響くその音は、否応にも誰が来たのか分かってしまうというものだ。
「カズマ、私が応対するから食器を持って客間へ行ってくれ、妖精さんはカズマが客間に入ったら入り口を隠せ。いいな?」
「お、おう。ごめん武蔵さん、よろしく」
「「「リョーカイ!!」」」
「ああ、お安い御用だとも」
『ねぇー!ちょっと武蔵ー!?いないのかしらー?ちょっと用があるんですけどー!』
やはりアクアか。いやわかっていたことだが思ったより来るのが早いな・・・しかしコイツが自分で探しに来るとは思わなかったな・・・車椅子を動かして玄関前に行って扉を開ける。
「なんだこんな夜遅くに。何の用だ?食事中だったのだが」
「あぁいたいた!ねぇカズマここに来てないかしら!?お昼ぐらいからいなくなっちゃったのよねえ・・・まったくあのヒキニートは、私に迷惑かけてばかりじゃない!」
「それはカズマのセリフだろう。たしかに昼にカズマはここに来たが帰ったぞ?それにお前が何をしたのかも聞いている。自分の借金くらい自分で返せ、このままだとお前カズマに捨てられるぞ?」
まったく反省の色が見られない・・・いや危機感がないだけか。一応アルカンシアの依頼でカズマには釘を刺したが・・・こいつがこの調子ならその釘も抜けてしまいそうだ。実際カズマは耐えかねてるからな・・・うーん、困ったものだ。カズマとアクアは離れても問題ないことが奇しくも私のせいで証明されてしまっている。
「で、ここにはカズマはいないわけだがどうする気だ?」
「困ったわね~ダクネスに「お前が原因なのだからお前が責任持つのが普通だろう」なんて言われて仕方な~く探しに来てあげてるのに。さっさと見つかりなさいよ~」
「言いたいことは正直山ほどあるがとりあえず一つ、カズマから聞いたが明日が借金の催促日なのだろう?」
「そうよ?でもどうせカズマが払ってるでしょ」
「ああ、確かにカズマは自分の分は払ったと言っていたな」
「・・・・?・・・えっ?」
サーッとアクアの顔が青くなる。どうやら私が言わんとしていることを理解したらしい。そして、あくまでカズマはパーティーメンバーの責任として借金を払っている。これはめぐみんとダクネスも同じで、彼女らも日々のアルバイトや依頼の報酬をその借金に返済に充てている。
そしてカズマは何とも涙ぐましいことに、私が刺した釘を見事に守りに行ったらしくアクアの借金もきちんと払っているのだ。アクアの財政をお小遣い制にするのと引き換えに。たしか1週間5000エリスだったか?子供の駄賃みたいだが中身は実際小学生みたいなやつだ。唯一違うのは呑兵衛で散財癖があることくらいか?
「ちょちょちょっと!?私カズマにお小遣い制にされたせいでお金なんか持ってないわよ!?なんでよ!?」
「冷静に考えてみろアクア。他人に借金の返済を押し付け、内職を効率的にしようと思えば邪魔をし、危機感もなく働かない。こんな人物のために身を粉にして働こうと思えるか?」
「・・うっ、たしかに・・・」
「そういうことだ。しかもお前が自分で返そうとしたらなぜか借金が増えるという負のスパイラルを脱するためにカズマがお前のため、いや半分以上は自分のためだろうが・・・働いてるのだぞ?いくら女神といえどこの地上に降りたら生活費がいるのだろう?いまの自堕落に暖炉の前のソファで寝転がるお前を見て誰が女神だと言えるのだ」
「そりゃ~その・・・借金した原因の魔法を放ったのは一応私だし?悪いとは思ってるわよ・・・でもその、私が何かすると大体何かあるじゃない?それを考えてですね・・・」
「・・・内職くらい手伝えばよかったものを。相当怒ってたぞ、カズマは。無理をして働けとは言わんが、最低限の責任くらい果たせ・・・会えたら謝るといい。お前だってやればできるのはカズマだってわかっている。わかっているからこそ何もしないのが腹立たしいのだ。きちんと謝ればカズマだって許してくれるだろうさ」
「・・・うん」
来た時の勢いはどこに行ったのやら、しおしおに萎れたアクアは涙ぐみながらとぼとぼと帰っていった。罪悪感がないわけでもないが、思うところがあったのも事実。借金自体は不可抗力どころかベルディアのせいである。一応功罪を加味して加算された借金は利子もなく、期限も長いが返さなければ罪人いきだ。
正直アクアには危機感が足りないと思うのだ。払えなければ牢獄行きで払い終わるまで強制労働だぞ?困るなんてものではないだろうに。今回のことでこらえてくれて少し協力的になってくれるといいのだが・・・とドアを閉めて振り返るとどうやら話を聞いていたらしいカズマが困ったような顔で立っていた。
「あー、うん。アクアを怒ってくれてありがとう武蔵さん。ほんとだったら俺が言い聞かせなきゃいけなかったんだけど・・・あいつ、俺の言うことあんまり聞いてくれないからさ。働くとかそういうこととかは特に。依頼中とかならきちんと聞いてくれるんだけどな」
私は深いため息をついてからやっぱりか、とカズマが私に対して期待していたであろうことを話す。
「そんなことだろうとは思ってたよ。アクアにはパーティーメンバー以外からのお灸が必要だったんだろう?いつも一緒のお前らでは近すぎる、仲間内でどうこう言ってもなあなあで済ませてしまうことがあるのだろう?お前自身も、あいつらも。それで私に期待してきたわけだ」
「あーあーそこまでばれてんのかよ。そうなんだけどさ、俺って自分でも思うんだけどよく口が回る方だと思う。でも俺だと武蔵さんみたいに諭すなんてのはできないんだ。怒ってるのは怒ってるよ、でもある種売り言葉に買い言葉でさ、同じ目線なんだ。あいつと俺は」
「お前も損な役割だな。ま、そういうのは大人の役目だ。あれだけ言えば多少は堪えただろう。ここからはお前がやれ。どうすればいいのかはもうわかってるのだろう?そら、仲間の元に行くといい」
「うん、ありがとう武蔵さん。ごめん、夕飯用意してくれてたのに・・・」
「カズマ、コレモッテッテー!」
妖精さんが差し出したのは今日の夕飯を包んだおにぎり、それが2人前だ。ラッピングされたそれを受け取りカズマは妖精さんと私にお礼を言ってアクアを追ってアクセルの町中に消えていった。どこに行くのかわかるのか、なんて野暮なことは聞かん。思い当たりがあるみたいだしな。
「はあ、あいつらがいると話題に事欠かないな?妖精さん」
「カズマガンバッテル!アクアモガンバル!ミンナハッピー!」
「それはそうだ。1人より二人の方がいいに決まってるからな、うむ」
翌日、カズマときちんと謝って仲直りしたらしいアクアが2人でお礼に来た。あの後カズマがアクアを見つけいじけていたアクアと話し合って仲直りしたそうだ。アクアもこれからはきちんとアルバイトや内職の手伝いをするという話を自分からしたらしい。雨降って地固まるというがまさにこのことだな。
「あー、改めてありがとうな武蔵さん。ほんと助かったよ」
「カズマを隠してたのはいろいろ言いたいけど・・・ま、許してあげるわ!寛大なアクア様に感謝しなさい!・・・ありがとうね、武蔵」
「ああ、きちんと仲直りできたようで何よりだ。あんまりひやひやさせるなよ」
そんな感じでだんらんをしていると町中に響き渡る大きさで緊急警報が鳴り響いた。
『デストロイヤー警報!!デストロイヤー警報!!起動要塞デストロイヤーが現在この町に向かって進行中です!冒険者の方々はすぐに冒険者ギルドへ!住民は直ちに避難をお願いします!!』
・・・なんだと?
やぁっとデストロイヤー編に入れそうです。
え?遅いって?許してください!オナシャス!センセンシャル!
また時間を見つけて書いていくので見捨てないでください(懇願)
興味がある話に投票してくれたら嬉しいなー
-
カズマ、日本転生者同窓会に行く
-
アクアと不死系転生者
-
めぐみんと魔砲少女
-
ダクネスと盾持ち英霊