デストロイヤー警報、それは魔導大国ノイズが開発した迷惑極まりない機動兵器・・・アクシズ教以外絶対引きつぶすマンこと機動要塞デストロイヤーが町に近づいた場合にのみ発令される極めて限定的な警報だ。もちろんこれだけ大きな扱いをされているだけあって機動要塞デストロイヤーが通った後には本当に何も残らない。一部情報を信じるのであればアクシズ教徒は残るらしいのだが。アクアの信徒はオリハルコンか何かでできているのだろうか?
「デストロイヤー・・・?ってあれか?前少しだけ話題に出たこの駄女神の教徒以外はみんな全滅するってあれ・・・」
「ちょっと!いくらなんでも私の教徒を何だと思ってるのよ!「あーいまはいいから」なによー!!あっまずいわ!すぐに荷物をまとめないと!行くわよカズマ!さっさとしなさい!」
「あっおいちょっと引っ張んな!ギルド集合って言われてんだろうが!おい駄女神!」
そうこうしてると急に興奮したアクアに引きずられてカズマは引きづられていってしまった。アクアのあの様子からすると逃げるために荷物をまとめに行ったといったところだろうか?めぐみんはともかくとしてダクネスは逃げることを良しとはしないだろうな。それは彼女自身の真面目さもあるのだがそれとは別の理由もある、彼女が逃げることはないと考えていいだろう。
もしカズマたちが逃げたとしても責めはすまい、あくまで冒険者は命を担保に金を稼ぐものだ。担保が先になくなるのが確実な依頼は受けないのが賢明だろう・・・さて、私も行かなければ。この体でどれだけやれるかだが・・・こういう時に限ってうちの社員全員が別大陸にいて通常の連絡がつかんとはな。
「妖精さん、現在の修理状況は?」
「マダダメ!センビナオッテナイ!キカン、スクリューコワレタママ!」
「ちっそうか。機関を急ピッチで進めろ、立てれるようになるまででいい。動けなくても案山子程度にはなれるようにな、最悪アレを使う。耐えきれる程度にはやれ」
「リョーカイ!リョーカイ!」
敬礼して妖精さんが私の中に入って急ピッチで作業を進めていく。ガワだけ整えてくれればいい、砲撃さえできれば盾にも囮にもなれるだろう。地形ごといろいろ変わっていい・・・具体的には地図を大幅に書き直す羽目になってもいいのならば今すぐ妖精さんに頼んで緊急の通信を入れるのだが・・・まあ無理だろうな。だってそんなことしたら街を捨てたほうがまだ安いから、おかみが許容するはずはない。ついでに言うなら保障問題で私の会社がえらいことになる。
「ままならないものだな・・・」
仕方ないので資材だけ積めるだけ積み込んで妖精さんをフル動員、修理と並行しつつ車椅子に乗ってギルドへ向かう。艦これでは1日入渠させればなおるはずの傷もこの世界ではそんなに都合よくはいかない。実際の船を修理するのと同じくらいの期間がいるのが現状だ。1戦だけ持てばいい。すでに主砲も副砲も治っている、若干不格好だがこの際贅沢はいっていられまい。最後の手段としてデストロイヤーの目の前に
バン!とギルドの扉を開けて車椅子を魔力で操りながら入ると既に重武装の冒険者たちが一堂に会していた。思い思いの完全武装に身を包み緊張した面持ちでそこにいた。私に気づいた幾人かがほっとした顔をしてるが私は現状役立たずだぞ。修理が間に合うかどうかすらもわからんからな。
「ああ、武蔵さん!よかった、来てくださったんですね!」
「ああ、こんな体で申し訳が立たないが最悪盾くらいにはなれるからな。だがあまり期待しないでほしい、完治どころか立てすらしないからな」
「いえ、武蔵さんがいらっしゃるだけで場が引き締まりますから。それに作戦会議にも口をはさんでほしいところでしたので」
「・・・そうか」
急ピッチで会議ができるように椅子と机が整頓されていく、途中できたカズマ一行や既に来ていたミツルギ達を軽く会釈しながらなぜか用意された上座の席について先に用意された作戦を聞く。まず足止め、そして全戦力を一気に使って沈めるというシンプルなものだがこれしか方法がないのも確か・・・ん?待てよ。アクアはどうなのだろうか?彼女はいろいろあれど間違いなく女神、そして先日の依頼で用意した結界は紅魔族のめぐみんから見ても手放しでほめるものだった。結界構築に詳しいのであれば・・・結界破りもできるのではないだろうか?・・・要相談だな。
結界が晴れれば・・・私が・・・いや、砲をやみくもに打つのは避けたい。まともに撃てれば外すとは思わんが・・・そういうわけではない。なぜならそもそもここには水がない。水がなくても
「・・・これならいけるか?すまん、すこしいいか?」
受付嬢を手招きして考えたことを伝える。受付嬢がうんうん頷いてくれたのでもう先に動くことにする。今回掘る穴は深さもでかさも規格外、時間はいくらあっても足りない、ならば急がねばならない。
「伝達です!エレメンタルマスターの皆さん!これから武蔵さんについてきてもらって足止めのための大穴を掘ってもらいます!詳細は武蔵さんからお聞きください!」
「時間がない!移動しながら話すぞ!該当の物は挙手してからすぐに準備しろ!」
「「「「はい!」」」」
あとは連絡役として一人妖精さんを置いておくか・・・車椅子を移動させながらポッケに手を突っ込んで私がやることを伝えてカズマめがけて投げる。すまんカズマ、あと妖精さんも。
「カズマーーーー!!」
「おわっ!?妖精さん!武蔵さんこれ」
「すまん、確認してほしいことがあるのだが時間がない、その子から聞いてくれ!行くぞお前ら、妖精さん、GO!」
「「「おう!」」」
「イクゾー!」
引っ張り出した妖精さんの本体をカズマにつけ、分身が車椅子ごと私を担ぎ上げてありったけのマナポーションを用意しつつギルドを駆け出していく。
「武蔵さん、作戦てのはなんだ!?」
「いいか!全員よく聞け!今からデストロイヤーが確実に通るポイント・・・地図上のここ、この地点に縦260m、横幅35m、深さ15mの穴を掘ってもらう!穴の形はアーモンド形にしろ!」
「デストロイヤーに落とし穴は意味ないはずです!それならいったん戻って・・・」
「違う!これは私の神器を使うための準備だ!私の神器は船の形をしている!その穴に神器をはめ込んで無理やり地上で直立させる!そうすれば搭載された攻城兵器を使うことができるはずだ!もしできればアクセルを防衛できる可能性はグッと上がるだろう!気張れ!お前たちにかかっている!」
「そういうことなら!」「俺たちの独壇場だ!」「よし、急げお前ら!怪我人に無茶させちゃアクセルの名折れだぜ!」
途中でウィズとすれ違ったが話す余裕はなかった。彼女もギルドへ向かってるようだったしカズマたちに任せよう。すぐにアクセルの街を出た私と優に50人は超える現役、引退済み合わせた冒険者たちが森の中を全力疾走する。引退済みとはいえ経験豊富なエレメンタルマスターもいるのはありがたい。
私のポケットの中から一人の妖精さんが顔を出す。通信担当の妖精さんだ。どうやらおいてきた妖精さんから連絡が来たらしい。同時に予定のポイントまでついた。すぐ後ろが最終防衛ラインとなり、そこに最後の砦としてアクセルに常駐する数少ない騎士たちが配置されるのであろう。
「ホウコク!ホウコク!キカンシュウリジョウキョウ8ワリトッパ!ノコリオオヨソ20プン!カズマカラニュウデン!」
「よし!残り急げ!カズマ!聞こえるか!?」
『武蔵さんか!?妖精さんから話は聞いた!アクアの結界破りだけど、やってみないとわからないみたいだ!けど、できるかもしれないってことでアクアが結界を破ったらめぐみんとさっき来てくれたウィズが爆裂魔法で足をつぶすことになった!そっからは直接乗り込むって話らしい!』
「よし!それがわかれば十分だ!全員よく聞け!勝算ができた!後はやることをやるだけだ!各自妖精さんを一人つける!マナポーションを受け取って妖精さんの指示に従って穴をあけていってほしい!作業を始めろ!」
「おっしゃ!」「任せとけ!」「ここか!?よし、アースオペレート!」
私が声を張り上げて作業のはじめを合図する。修理中の妖精さんを一人引っ張ってきて分身させてそれぞれにマナポーションを持たせて作業が始まる。精霊に頼んで地面の形を変えたり魔法で地面の土を別の場所に移動させたり様々だがあとは任せるしかない。
とりあえず私は零式水上偵察機を飛ばして現在のデストロイヤーの位置を確認する。位置と速度から換算するに・・・あと約1時間・・・!ギリギリだ、間に合うかどうか・・・それ以前に作業量的に脱落者が続出してもおかしくないのだ。こういう時に何もできない自分が歯がゆい。みな、必死にやってくれているのに・・・!
そこからおおよそ30分、穴の3分の2が完成と他ところで作戦会議を終えたカズマたちやほかの冒険者が駆け込んできた。ギルド職員や驚いたことに町の土木工事を担当している者たちも一緒だ。
「お前ら!俺たちの街を守るためだ!今ここで今まで培ってきた技術を使わなくてどうする!手伝うんだ!野郎ども、いくぞ!」
「「「「おおおおおおおお!!!!」」」
土木業者たちが屈強な肉体とスコップ、つるはしを駆使して作業に加わってくれたおかげで飛躍的に効率が上がった。これならいける!ギルド職員に後を任せたカズマが主要メンバーを引き連れてこちらに向かってくる。
「武蔵さん!待たせた!ウィズ、めぐみん、アクア!こっちだ!ミツルギも来てくれ!」
「カズマ、よく来てくれた。アクア、確認してほしいんだが・・・今、こっちに向かっているデストロイヤーの映像だ。何か参考になればいいのだが」
妖精さんが持ってきた画面に映された8本の足をせわしなく動かして森をなぎ倒しつつこちらに進撃するデストロイヤーの映像をアクアにしては難しい顔でうーんとうなりつつ見つめる。ややあって口を開いた彼女は
「・・・うん!多分これなら結界をどうにかすることはできるわ!アクア様にまっかせなさい!」
「ほんとに大丈夫かよ・・・?」
「なによー!?」
ドン、と胸を叩いて太鼓判を押したアクアにカズマが不安そうな顔をするが、アクアは間違いなくできる女神だ。その能力は間違いなく最高峰、信じるに値する。あとは・・・
「めぐみん、ウィズ。あとはお前たち次第だ。信じているぞ」
「・・・はい、任せてください。これでもアンデッド最高峰のリッチー。アクア様が魔力結界を破ってくだされば、必ず・・・・だめだったら仲良く土に還りましょうね」
「・・・やらなきゃ、私が絶対にやらなきゃ・・・できます、私ならできます・・・爆裂魔法なら・・・きっと・・・」
まずいな、めぐみんが大分きている。くそ、私はこういうのはダメなんだ。激を飛ばすことはできても優しく慰めることなんかできはしない。それに、一度めぐみんに私は本気で怒った。ある意味でトラウマだ。そんな人物が今更優しくしたところで逆効果だ。・・・すまんカズマ、たのんだ。カズマに目配せをしてカズマがめぐみんに話しかけ始めた。私はそれを確認してミツルギに向き直る。
「ミツルギ、お前は・・・」
「僕はデストロイヤーを止めることに成功した場合、中に入る冒険者の指揮を頼まれたんだ。もしも、失敗したときにうちの部隊で全員担いで逃げる役目も、だけど。また一緒に戦えるのは心強いよ、武蔵さん」
「ああ、頼りにしている・・・ダクネスは・・・残ったか」
「うん、いま最終防衛ラインで騎士たちの指揮を執って避難とバリケードの構築を進めているところさ。彼女、すごいね」
「やつは、まあいろいろあるのだ。信頼できることは確かだがな・・・む、きたか」
話し込んでるうちにデストロイヤーが近づいてきたのだろう。唸るような地響きとかすかな揺れが感じられてきた。穴の方は・・・どうだ?
「武蔵さん、完成っす!後はお願いします!」
「よぉし!よくやった!後はこの武蔵に任せておけ!全員、必ず成功させて帰るぞ!いいな!?」
「「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」」
冒険者たちの雄たけびをかき消すような地響きが迫る。魔法で拡声させたギルド職員の作戦開始の合図、私はそれと同時にようやっと動くようになった足で
『では皆様、作戦を開始します!アクセルの街を、守ってください!」
任せておけ。今だ手負いのこの身でも、たかが巨大なクモもどき、日本最強の戦艦の一つ、武蔵が負けるわけがない。
機関に火を入れる。臓腑を灼熱が抉るような感覚がした。治ってなかったか、動くならそれでいい。
機関を最大へ、動力を全体にいきわたらせる。無理やり動かしているせいかひどい痛みがする。痛いだけならまだ捨て置け。
各部チェック、スクリューは喪失、機関は出力最大から下げない。主砲、副砲問題なし。力を籠めろ、いくぞ―――――!!!
「武蔵っ!!!改二!!!」
今更だけど武蔵さんの会社が総出でかかればデストロイヤーを制圧するくらいのことはできそうな気がしますね。つまらないからやらないですけど。
次話は気長に待ってください
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