カズマ、アクアとともに夜のアクセルの町を歩く。結局あのあと着替えて出た私を出迎えたのはカズマの土下座であった。苦笑し気にしてない、元男として気持ちはわかるとフォローを入れて立ってもらい、ギルドに併設されている酒場まで歩いて向かう。
「腹減ったー・・・結局宿を見つけるのも一苦労だったし、それも馬小屋だし・・・異世界ってつらいんだな」
「ああ、私も最初は苦労したよ。特典が使えたから討伐クエストには難儀しなかったが、住む場所がな・・・結局土地だけ買って自分で作ったよ」
「あの家自作だったのかよ!?道理で日本っぽいと思った・・・」
「といっても作ったのは妖精さんだがな。彼女らには世話になっている・・・頭が上がらんよ」
なんて話をしながらギルドに入ると流石酒場、夜も結構にぎわっている。注文を取りに来たウェイトレスにメニューから適当に注文する。この世界の食材はすこし元の世界とは変わっていて、特に野菜は食べ方に注意がいる。
ほどなくしてきたのはトカゲのハンバーグやカエルの唐揚げ、イノシシのステーキなどのガッツリとしたワイルドな料理だ。この酒場は冒険者ギルドと併設されてるおかげで毎日新鮮な肉が手に入る、ゆえに肉料理の品質がいい、ちなみにブラストでは漁村らしく魚料理が発達している。といっても畑で魚が育つ世界だ、あまり気にしてもしょうがないがな。
「おーうまそーだな!いただきます!」
「あたし唐揚げ―!」
「ああ、いただこう」
肉を頬張り、シュワシュワと呼ばれるこの世界におけるエールで流し込む、これがまたたまらないのだ。私は艦娘になったせいなのか酒はザルで酔わないのだが、昔からビールは好きだった。ある意味ではちょっとした楽しみだな。
カズマたちはそれぞれ肉を頬張って食べている。やはり1日労働した後に食べる飯は旨いのだろう。いい笑顔をしている。アクアがカズマの皿から唐揚げを奪い去ってるのも、カズマがそれに怒ってるのも険悪な空気ではなくおちょくりあいみたな空気がある。
「んで、気になってたんだけどさ・・・武蔵さんの特典って結局なんだったんだ?」
「む?ああ、カズマ、元の世界にあった艦隊これくしょんというブラウザゲームを知っているか?」
「ああー名前だけ知ってるよ、確か艦娘っていうのを集めるゲームだっけ?」
「まあ大体あってるが・・・私のこの姿はその艦これに出てくるキャラクターのものだ。言うなれば「二次元のキャラになりたい」という特典だな」
「てことは妖精さんとかその馬鹿力とかも副産物?」
「そういうことだ。職業も「艦娘」なのだぞ?」
「なにそれチートじゃんうらやましい。この駄女神と交換してくれ」
「残念ながらクーリングオフはしてなくてなあ・・・我慢してくれ」
「何よそれカズマ!まるで私がお荷物みたいな言い方じゃない!」
「実際お荷物だろうがこの駄女神!武蔵さんいなかったらお前はヌルヌルのままだし金だって手に入らなかったんだぞ!」
なんてワイワイ話しているとやはり楽しいな。この世界じゃ珍しい同郷の人間、価値観や話が合う人間がいるのは好ましいものだ。是非ともこれから仲良くしていきたい。
「すいません武蔵さん、何度もおごってもらって」
「気にするな。これから生活するのに金が要るのはわかる。明日からも同じように働かねば生活できないのだから、今日だけは特別だ。ふふ、内緒だぞ?」
酒の飲みすぎでつぶれたアクアを背負ったカズマが頭を下げてくるが、まあこの水の女神さまの面倒を見るのは大変だろう。自業自得とはいえ心づけというものも必要だ。
「では、私はこれで。明日からも頑張れよ」
「ありがとうございました!」
カズマと別れ家に帰る。妖精さんが各々作業を終わらせねこけてるのを確認し、魔道ランプを消してわたしも眠るのだった。
数日後、妖精さんの起床ラッパで起きた私は、風呂を沸かせて入り、身だしなみを整えローブに着替えて冒険者ギルドへ向かう。今日は次の運行で運ぶ商品のリストと量をギルド長から聞くことになっている。大陸の中、山やら魔王軍やらモンスターやらで貿易が危険極まりない中、この世界の船とは比べ物にならない速度で物と人を運べる私は結構重宝されている。
一応テレポートという魔法はあるにしろ町一つ分とかの物資を運ぶには適さないからな、海運業はあたりであったということだ。
ギルド長の話を聞き、リストを受け取ってギルドの2階から降りると、カズマとアクアがいた。座って何事か話してるようだ。
「おはよう、カズマにアクア。数日ぶりだな。早起きなのは良いことだ」
「おはよー、武蔵さん。いや、単に寝苦しくて・・・あんま眠れんかった」
「ははははは!!それはそうだろう!敷き藁だからな!」
「家がある人はいいなあ・・・で、アクア全然来ないんだけど」
「おっかしいわねー・・・このあたしがいるんだからより取り見取りで来るはずなのに・・・」
「何をしてるんだ?」
「あーパーティーを組みたくて・・・アクアに任せたのが悪かったのかな・・・」
なるほど、パーティーの募集をしていたのか、これはカズマには言えんが、すでにアクアのポンコツぶりがアクセルの町全体に広がっているのだ。私も朝ギルドに向かう途中迷惑をかけられなかったかと道行く人に心配されて、少し困ってしまった。
「あ、そうだ!武蔵さんパーティー組めないか!?」
むぅ、そう来るだろうとは思っていたが・・・無理なのだ。一応海運業をしてる身でもあるし、定期的にブラストまで行き貿易船として動き、そして緊急の依頼や、高レベルの冒険者として動かねばならないこともある私は思ったより忙しいのだ。今は割と落ち着いてるが2か月前に鉱石の鉱脈が発見された時は人員輸送に物資補給と大忙しだった。
正直彼らのパーティーに入れば幽霊メンバーとかしてしまうだろう。それでは彼らがかわいそうだ。
「すまんがこれでも冒険者以外に定職に就いていてな、自由度が高いソロのほうが都合がいいのだ」
「そっかー・・・ダメもとだったけどそりゃそうだよなー」
「すいません、募集を見てきたのですが・・・」
「「ん?」」
振り返ると魔女のような黒い服と帽子を被り、眼帯をした少女がこちらを見上げていた。パーティーの募集に応募しに来た子だろうか?しかし、あまり見覚えのない顔だ。カズマたちが来るまであまりギルドには顔を出していなかったからな・・・新人だろうか?
「そうだけど・・・あなたは?」
アクアが訪ねると・・・彼女はバッとポーズを決めながら名乗りだした
「我が名はめぐみん!アークウィザードにして至高の攻撃魔法、爆裂魔法を操るもの!」
「冷やかしなら帰れ」
「冷やかしちゃうわい!」
ふむ、中二病というやつかな?この年頃の子ならそういうこともあるだろうと思ったが・・・彼女は紅魔族のようだ。あまりいい覚えのない種族だが・・・私の艤装を解体しようとしたり、妖精さんを捕まえて解剖しようとしたり、自分の欲望に忠実すぎる人物が多い種族なんだが・・・
めぐみんの眼帯を引っ張りながらアクアの紅魔族解説を聞いてたカズマが納得いったのか口を開いた。
「すまん、冷やかしだと思ったわ」
ばちーん!とすさまじい勢いで戻った眼帯がめぐみんの目をひっぱたき、めぐみんの「いったあああああ!!!」という悲鳴を聞きながら私は遠い目をしていた。思い出したことだが、爆裂魔法・・・これはすさまじい魔力を消費する割に威力が大きすぎて使いどころが限られるという悲しみを背負った魔法だったはずだ。
具体的に言うならカンストした武蔵改二が大破したとき並みの消費資材が襲ってくると思っていい・・・一部にしかわからない答えだがまあとんでもないということだ。
私が考え込んでる隙にいつの間に頼んだのか朝飯を平らげためぐみんとカズマたちは爆裂魔法を見に行くとのことで町の外へ行ってしまった。私も仕事をするか。
家に帰り、妖精さんに相談しながら武蔵の保管庫と貨物室等にどういった風に荷物を詰め込むかを相談する。全長263mを誇る武蔵は、乗員3000人以上を乗せることができ、それらの人間が消費する食料等を保管するものも莫大になる。さすがに本職のタンカーや間宮といったものを運ぶことに特化した船にはかなわないが、人やある程度の物資を運ぶだけなら十分だ。
VIP待遇の人間に士官室等を、普通なら兵員室等で泊まってもらう。動かすのは妖精さんと私だ。別に私だけいれば動くしな。空き部屋はたくさんある。
ついでに装備を変えて新型高温高圧缶と改良型艦本式タービンを装備すれば早く目的地に着く、部屋の居心地などあまり関係ない。
「ふむ、まあこんなところか。妖精さん、この並びであと当日分どれだけ入るか計算も頼む」
「リョーカイ!」
「ハコブダケナノニワライガトマラナイゼ」
「シュホウモサビガハエチマウグライヘイワデス」
「ワレラガムサシサンニテキナシ」
わらわらと妖精さんが散っていき、私の中に入るものや机を占拠して作業しだすものなどいろいろだ。私は一息入れようとお気に入りの甘味処で茶でも飲もうかと出かけると・・・ちょうどドアの前でノックしようとしたらしいカズマとヌルヌルになったアクアとうつぶせで倒れるヌルヌルのめぐみんがいた。
「・・・聞きたくはないが一応聞こう。どうした?」
「助けて武蔵衛門!」
「私はそんな古臭いドラえもんではない」
とりあえずめぐみんとアクアを公衆浴場に送り出し、カズマに私の部屋で事情を聴くと案の定爆裂魔法一発で魔力が枯渇しためぐみん、囮になったアクアが呑まれたのをきっかけに戦線が崩壊、めぐみんも呑まれ死に物狂いでカズマがクエストを終わらせ逃げてきたということらしい。・・・うむ、おつかれさまだ。
「なんだよ紅魔族って・・・アークウィザードとかいうのだから期待したのに大砲一発しか撃てないみたいなもんじゃないか!?」
「うむ、お前たちがクエストに出発してから思い出したが、爆裂魔法は威力は強烈なのだが消費魔力が膨大、おまけに使える場所も選ぶとなかなかに悲惨な魔法でな。少し心配だったのだが」
「それを先に教えてください・・・・というわけで、おそらく顔が広い武蔵さんなら割のいいバイトとか知ってるんじゃないかなって」
「ふむ、割がいいかどうかは知らんが土木系のバイトなら渡りがつけられるぞ。装備をそろえて挑戦しなおしたらどうだ?」
「ぜひお願いします!もうこれ以上出費がかさむと生活できないんだ!」
「お、おお・・・よほど深刻みたいだな。では、明日の朝、8時にここに来い。妖精さん、時計を渡してやってくれ」
「ドウゾー」
「あ、ありがとう。アクアも妖精さんくらいかわいげがあったらいいのになあ」
「カワイゲー?」
妖精さんが満面の笑みで渡した懐中時計を受け取ったカズマが妖精さんの頭を撫でているのを見てなごんでいると・・・めぐみんとアクアがさっぱりした様子で戻ってきた。
「ただいまーさっぱりしたわ!」
「すいません、お風呂代払ってもらって」
「ん、戻ったか。じゃあカズマ、クエストの報告に行ってくるといい」
「あ、よかったらそのあと一緒に飯どうだ?今回は食事代くらいの余裕はあるんだけど・・・」
「うむ、いいぞ。じゃあ少し準備してくるから待っているといい」
といって洗面所に行って着替える。私はローブしか外出用の服を持ってないが、艦娘は暑さ寒さ程度でどうにかなるもんではないらしく、冬でもへっちゃらなのだ。
「待たせた。行くか?」
私の家からギルドまでの道を歩く途中、めぐみんが話しかけてきた。
「あの、武蔵さんでしたよね?もしかして「アクセルの不沈艦」の武蔵さんですか?」
「・・・その名前はあまり好きではないのだが・・・まあおおむねその通りだ」
優れた冒険者には二つ名がつくことがある。私の場合、大和型戦艦としての絶大な防御力で攻撃を全て受け止め、なお無傷であったという話が肥大化、ついでに同時期に海運業をしたとあって不沈艦という二つ名をいただいたのだ。どうせならビッグセブンとかカッコイイ横文字がよかった。
「武蔵さん二つ名とか持ってたんだな・・・まあ有名人みたいだし、そんなもんか」
「どうせあんたもすぐにヒキニートのカズマとか呼ばれるようになるわよ」
「んだとこの駄女神!もう引きこもってないし働いとるわ!」
いつものアクアとカズマの口喧嘩をほほえましく見守ってると、ギルドについた。
「ほら、ついたぞ二人とも。喧嘩をやめて報告に行ってこい」
さて、何を食べようかな。
なんか詰まってる他作品と比べてするするかける不思議・・・妖精さんパワー?