テンちゃんに餌をやり終わり、カズマとテンちゃんがぐにぐに遊んでるのを眺める。うむ、カズマはモンスターといえばジャイアントトードだろうからな、いろんなモンスターがいるということを知ってほしい。
「デンレイ!ゼンポウニモンスターアリ!」
「なに!?どこだ・・・あれか!」
行く先に現れたのはマッコウクジラ程度の大きさをしたサメだ。たしか名前は・・・シャークホエール!・・・まんまではないか。しかしどうする?あれがぶつかったとしても私は問題ない、がここにはカズマがいる以上、主砲も副砲も使えん。むぅ・・・と私が考えてるとテンちゃんがくるるぅ!!と鳴いてシャークホエールに向き合った。
「武蔵さんやばいよ!アイツ食われちまう!」
「いや、問題ない。言っただろう?テンダーネスドラゴンは船を護衛してくれると、そしてやつは曲がりなりにもドラゴンだ」
がぱぁと口を開けたテンちゃんの口腔内に急速に青色のエネルギーが溜まっていく、臨界を超え、球状の輪郭が崩れだしたと思うと、ドッパァァン!と青色のビームがシャークホエールに向かって吐き出された。そのビームをまともに受けたシャークホエールは周囲の海水ごと凍り付き、氷山の中に閉じ込められ、沈んでいく。さすがテンちゃん、頼りになるドラゴンだ。
「・・・すっげ~~~~~・・・・」
「語彙力が死んでるぞカズマ。アイシクルブレスだな。こんな温和で人懐こいモンスターではあるが、とんでもなく強い。この子がいるから近海の漁の安全性がある程度確保されてるのだ」
「モンスターって人間の敵ばっかだと思ってたよ。カエルみたいな」
「何を言うか。地球でも同じだったはずだぞ。牛、豚、鶏、馬・・・動物かモンスターの違いではないか」
「言われてみればそうだな・・・でもこんな強くはないわ。うん、正直怖い」
「かわいいではないか。私はモンスターであろうと敵対心がなければ愛せる自信がある」
「博愛主義かよ・・・」
「悪いことではなかろう。さ、艦橋へ戻ろうか。そろそろ縄張りを外れる」
縄張りを外れつつあることを察したテンちゃんが
「お、見えてきたぞカズマ。あれがブーステリア、「砂と魔道具の町」ブーステリアだ」
「へー、なんか俺が勝手に想像してるエジプトのイメージ通りみたいな町なんだな」
「うむ、私も最初見たときはそう思った。ではカズマ、降りる準備をしろ。日程は明日の10時出発、私は仕事をするからお前は自由行動だ。なに、さっきの注意とその妖精さんの言うことを守ってれば楽しめるさ。むこうは熱いから水分補給を欠かすなよ」
「おう!」
「お待たせした!ブーステリアに到着だ!接舷したあと、VIPルームから順に案内するからそのまま待機していただきたい。では、この度は弊社のサービスを利用いただき感謝する。それでは」
「じゃあ、妖精さんよろしく頼むわ。きっちり案内してくれ」
「オマカセアレー!」
「いってらっしゃい。くれぐれも無茶するんじゃないぞ」
カズマを見送り、妖精さんの貨物運びと乗客がすべてタラップを降りたのを確認し、帰りの荷物の搬入と艦内の掃除を妖精さんに行ってもらい、私自身はこの町のギルドに顔を出す。
「あっミス武蔵!お疲れ様です!今回の分の報酬はいつも通りでよろしいですか?」
「ああ、それで頼む。帰りの分の顧客リストと物資のリストはあるだろうか?」
「ええ、それはもちろん!いつもありがとうございます~!」
「ああ、気にするな。こっちにも利があるからな。それと・・・あれは手に入ったのか?」
「あれ・・・ああ、アレですね!もちろん入荷させていただきましたよ!えっと・・・・はい!こちらです!」
「ああ、感謝する」
小さい割にずっしりと重い2つの袋を受け取り、艤装にしまう。結構高い買い物だが後悔は全くしてない。1週間前から依頼という形で予約を入れておいたブツだが、うまいことこのタイミングで手に入ったのだ。
上機嫌で
「あー。ターメリック、クミン、コリアンダー、カルダモン、チリペッパーにオールスパイス・・・うむ、すべてあるな!」
カレーである。戦艦といえば海軍、海軍といえばカレー。そしてこの世界に来てから私はカレーを食べていない。いや、正確にはカレー自体はあるのだがインドカレーのような本格的なものしかないのだ。私が食べたいのは家で作るようなお家カレーである。せっかく金と時間はあるのだ。それを使わないでなんとする。
「あ、そうだ妖精さん!さっきもらったこれと買ったスパイス、加工しておいて欲しいんだが」
「モチロン!アレハセッケイショドオリデ?」
「うむ、夕飯終わったあたりで完成してるとよいのだが・・・」
「スバヤクテイネイニツクルデアリマス!」
「コレカレーデスー?チョウゴウシテオキマスネー!」
「さすが妖精さん、頼りになるな」
「ホウシュウハオカシデタノム」
「アイスクリームガイー!」
「いいとも。帰ったら作ろうか」
「ヤッター」
「ワーイ」
ぞろぞろと乗客と荷物が再び積み込まれている
つやつやの白ご飯を炊いて、あとはカズマが戻ってくるのを待つばかり。妖精さんを通じて連絡はしてあるのですぐに戻ってくるだろう。カレー!楽しみである。
「たっだいまー!」
「おかえり、カズマ。食事か?風呂か?・・・それとも・・・」
「できれば3番目で!」
「だ、そうだぞ。妖精さん」
「フツツカモノデスガヨロシクデスネー!」
「そんなこったろうと思ったよ!ちくしょー!」
「はっはっは。私をからかおうなど10年早いわ小僧め。さ、食事にしよう」
カズマが漂う香りに気付いたのか。その目を輝かせ始めた。そうか、流石に気付くか。ならば堪能するがいい!
「武蔵さん、この匂いってもしかして・・・・」
「うむ!カレーだ!仕事帰りによった店にスパイスが売っていてな!つい作ってしまったのだ。私もこちらに来て初めて食べる」
「おおおおお!!カレー!食べたかったんだ!こっちに来てもなんか本格的なのばっかりでちょっと微妙だったんだよなー」
ルンルンと上機嫌で席に着いたカズマの前にゴロゴロとした肉とジャガイモ、にんじんが入ったカレーをおく。辛さは中辛、私個人は甘口が好きなんだが、まあカズマの好みがわからない以上スタンダードなものでいいだろう。
「いただきます!」
「いただきます、だ」
カレー自体は旨かった。カズマは久しぶりの元の世界の料理ラッシュで食欲に火が付いたのかたくさん食べていたな。いいことだ。
食事が終わり、コーヒーでくつろいでいるとカズマが話しかけてきた。
「えーと、あの・・・武蔵さん」
「ん?なんだカズマ、もじもじして」
「いやー、あの・・・今回旅行に連れてってくれてるわけじゃないですか・・・武蔵さんは仕事なのに。だから・・・その・・・お礼ってことで、これ!お納めください!」
カズマが差し出してきたのは、綺麗にラッピングされた袋だった。思わずといった感じで受け取ってしまったが、何かお礼を言わねば・・・・!
「ありがとう、カズマ。これは私が勝手にやっていることだが、こんなことをしてくれるなんて私は嬉しい。・・・開けてもいいか?」
「それはもちろん。こんなんじゃ返せないと思うけど、一応俺が稼いだ金で買ったんだ。お礼第一弾ってことで!」
「ふふっ・・・なんだそれは。ありがたくいただくよ。・・・どれどれ」
丁寧に包装を開けると、そこに入っていたのはリングネックレスだった。私が指にしているシルバーのリングと対になるような金色のシンプルなものだ。ふむ、カズマは意外とセンスがあるのだな。ネックレスのチェーンを外し、自分の首にかける。胸元で光るリングがなんだかまぶしく感じる。
「・・・似合うか?」
「もっちろん!さすが俺のセンス!」
「ギリギリマデナヤンデタネー」
「余計なこと言わなくていいんだよ!」
「ヤメルネー!」
「ふふ、ありがとうカズマ。今までもらったものの中で一番うれしいよ。それの返礼というにはアレかもしれないが、私からも2つ、プレゼントを贈らせてもらいたい」
そう、この町のギルドで依頼してたブツを妖精さんに加工してもらったのだ。それを使いこなせばカズマは強くなることができるだろう。
「・・・へ?でもおれもらってばっかりで返せてないぞ?」
「いいのだ。私としてはもっとキミと仲良くなりたい。そのためには互いに相手のためになるようなことをするのが一番だ。というわけで妖精さん、例のものを」
「ワタシタチノギジュツノスイヲアツメタノ!」
そう言って妖精さんがもってきたものを見たカズマの第一声が
「・・・トンカチ?」
「うむ、トンカチだ。君はすでにショートソードを持っているだろう。私からのプレゼントの一つ目はそのトンカチだ」
「大工仕事でもしろってこと?いやでもなんか普通のトンカチとは違うような・・・」
「うむ!よく気付いたなカズマ!それは柄の部分をアダマンタイト、ハンマー部分をアグニタイトという鉱石で作った妖精さんお手製のトンカチなのだ!」
「おお!ファンタジー金属!・・・もしかしてすごくお高い?」
「値段は気にしてはいけない!で、どういう効果があるのかだが・・・移動しようか、甲板へ」
「うぃっす!」
甲板に移動した私たちは、妖精さんが分厚い鉄板を用意してくれていた。さすが妖精さん、準備がいい!
「アグニタイトという鉱石はな、アダマンタイトに迫る硬度を持ちながら一つ特殊な性質を持っている」
「おお、お約束」
「そうだ。この鉱石は魔力をため込み、衝撃が加わると加わった方向に爆発を起こす。試してみよう」
私はスキル「補給」でトンカチに魔力を詰め、思いっきり振りかぶって鉄板にたたきつける。ドカァァン!と爆発が起こり、鉄板に大穴が開いた。うむ、さすがいい仕事をするな。
「カズマ」
「カズマです」
「いい威力だろう。今なら何と専用の腰ホルダーをおつけして君にプレゼントだ!まずはこれを使いこなせるようにしろ。そうすればお前はもっと上に行けるだろう」
「ありがとう武蔵さん。・・・でも俺にはこいつに魔力を入れる方法がないなぁ・・・どうしようかな」
「そこで私からもう一つのプレゼントだ!今私がこのトンカチを使えた理由がわかるか?」
「んんー・・・あ!もしかして魔力を込めるスキルを持ってるのか!?」
「その通りだ!今のスキルは「補給」という!自分から物へ、物から自分へ魔力を補給することが出来る!注意点は自分以外の生きてるものには使えない!このスキルをさっき見せ、説明した。お前の冒険者カードには獲得可能スキルとしてもうあるはずだ。スキルポイントまではプレゼントできないがそれは許してほしい」
カズマは自分の冒険者カードを取り出し、スキル欄を見ている。目的のものを見つけたカズマは悩むことなくあっさりスキルを習得したようだ。トンカチをホルダーに収め、こちらにニカッと笑顔を見せるカズマに私も笑みを返し、そのあとそれぞれの時間を過ごした。
翌朝同じようにブーステリアからブラストに戻り、
アクセルに戻る馬車の中でカズマはうずうずしていた。早くトンカチを使いたいというのもあるだろうが、ある意味ホームシックでもあるのだろう。3日ぶりのアクセル、堪能したらいい。まあもっとも、カズマが忘却してることがあるのは確かなのだろうが。
「ん~~~!やっと戻ってきたぜアクセル!武蔵さん、旅行楽しかった!ありがとうな!」
「ああ、こちらこそ有意義だった。もしよかったらまた「あ~~~~~~!!!!」・・・む」
「ちょっとちょっとどこ行ってたのよ!女神たる私をバイト漬けにしておいて自分は旅行なんていい度胸してるじゃない!寂しかったのよ!謝って!謝ってよ!」
「ようアクア。きちんとバイトしてるかー?俺は3日間でだいぶリフレッシュしてきたぜ?」
アクアがどうやってかかぎつけたようで、カズマに対し泣きながら文句を言っている。うむ、旅行中のカズマもよかったがやはりこうでなくてはな!
いつの間にか集まってきためぐみんとダクネスも合わせての文句の嵐を受け流すカズマを見ながら、改めて私はそう思うのであった。
オリジナル編へのお付き合いありがとうございました。書いてる途中で幾度となく「これはこのすばの2次としてしまってもよいのだろうか」なんて考えていましたが皆さんが受け入れてくれてうれしかったです。
カズマがプチ強化されてるのは許して(懇願)